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胡琴を作らう!2 (2)

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斗酒庵 清楽胡琴作りに再度挑戦す の巻2014.6~ 胡琴を作らう!2 (2)

STEP2 3分間的清楽器レシピ


  はーい,では,ご家庭でカンタンに出来る胡琴作り教室をはじめまーす。
  まずご用意いただくものは----

 (1) 竹(胴体)… 直径5センチ,長さ10センチ程度のもの一節ぶん。
 (2) 竹(棹)… 太さ18~20ミリ程度(六分か七分)のもの,長さ50センチほど。
 (3) ¥100均の「すりこぎ」(長32センチ)… 1本。
 (4) 生皮(なまがわ)… 少々(10センチ角)。
 (5) 三味線糸… 太いのと細いの1本づつ。

  まあ,二胡の弓は用意してくださいね。もちろん弓まで自分で作っても構いませんが,今は通販で\3000くらいで買えちゃいますし。
  手に入りにくいのは皮と糸かな?
  庵主は例によってヘビの皮使いますが,ペットショップで買える,ブタやウシの皮でもぜんぜん構いません。
  え,そんなものペット屋のどこに売ってるって?大型犬用の「おやつ」や「おもちゃ」として売られてるガムとかフリスビーとか,ああいうのがブタやウシの生皮で出来てます。あれなら質的に楽器に張るのにも充分ですし,胡琴の皮は小さくていいですからね。犬ガム一個もあればお釣りが来ます。皮とか触るのがヤなかたは,桐板でも貼ってください,それでも悪くはない。
  糸のほうもまあ,お三味の糸が手に入らなければ,二胡弦でもギターの弦でもいいでしょう。


  まずは胴体になる太いほうの竹を切ります。
  文献では長9.6センチなんですが,さすがにこれだとちと短く,膝上に置いたときの安定が悪いので,ちょっと伸ばして12センチくらいにしときます。今回の製作の目的は,清楽に使われていた当初の胡琴の再現ですが,この部分は棹と違い,演奏上のスケールとはあんまり関係ないので,多少変更してもよろしいかと。


  切った竹筒は,表面を削って,ガラス質になった表層部分を落としてしまいます。
  この部分は,強度的には最強なのですが,あまりに強すぎて,かえって割れとかの原因となりますし,この部分が残っていると竹に染料やニスをしませることができません。ぜんぶ削り落しちゃいますが,この表層部分の下には表層部分の次に強くて美しい層がありますんで,あんまり削り過ぎないようにも注意しましょう。


  棹を作りましょう。
  小うるさいことを言うならば,材料の竹は間に節が何個あって,何個目の節がどこやらになってるのがイイ----とか書いてある資料もあるんですが,いちいち気にしてもられないので,まあ長さと太さが適当ならよろしい。
  こちらも表面を削って,表層のガラス質部分を落としておきます。

  棹の片方の端,胴体に入る部分は,先端を少し余計に削って,若干細くしておきます。
  竹の肉厚にもよるんですが,上面(糸巻きのつくほう)が底面になるがわより直径1~2ミリ大きいってくらいですね。


  棹の下処理が終わったら,胴体に棹を挿す孔をあけましょう。

  竹の表面はすべりがいいので,エンピツで直接書いた指示線とかがすぐ消えちゃいますんで,こんなふうにマスキングテープ貼ったうえから書き込むとやりやすいですね。穴あけの時などは表面のハガレ割れの防止にもなりますから一石二鳥です。
  ネズミ錐で下孔をあけ,リーマーでだいたいの大きさ(直径1.5~1.7センチ)まで広げておきます。
  胴体の長さは変更しましたが,こちらの位置は文献どおりとします。
  9.6センチの半分から二分すなわち6ミリほど皮のがわということですから,4.2センチ……あ……前回の図面,寸法間違ってますねえ。(汗)
  おわびして訂正をば(図はクリックで別窓拡大)----

  棹の太さは七分の竹で2センチちょっと,六分の竹で1.6~1.8センチといったところですが,このあとフィッティングしてゆくので,はじめは竹の太さより少し小さめにあけておき,実際に棹を挿しながら,棹孔を広げてゆきます。

  自然のものですから,棹竹は完全に真っ直ぐなわけではなく,その断面も真円ではありません。

  まずは胴体の上面の孔を通します。微妙な曲がり具合なども勘案しながら,棹孔や少しづつ広げたり削ったりして,胴体からなるべく真っ直ぐに立ち上がって見えるような角度で,キッチリうまくおさまるよう棹孔の形を竹の断面に合わせてゆきます。
  ついで下孔です。
  こちらは真円であけ,棹先を削ってぴったりはまるように調整します。胡琴1号では,この部分に木の丸棒が継いでありますねえ。

  棹のお尻は,下孔から5~7ミリほど出しましょう。
  胡琴には現代二胡のような琴台はなく,ここに弦をひっかけます。

  適当に孔をあけて竹に竹を通しただけでは,演奏中に棹がぐるぐる回ってしまうのでたいへん不便ですが,上孔を竹の断面に合わせて削れば,棹は回りません。ちょっとメンドくさいですが,この棹孔あけの作業はちょっと慎重にやりましょう。
  まあ,もし削りすぎたり調整がうまくいかなくってユルユルになっちゃった場合は,最後にくさびを噛ませて固定する手もあります。

  工作としてはそちらのほうが簡単なので,最初からそッちづもりでもいいですよ。

  棹の角度や向きが決まったところで,糸巻きを差し込む孔をあけましょう。
  だいたいですが。太い握りのがわがφ12~3ミリ,先端がわがφ10ミリといったところですね。


  今回庵主は,胴体に煤竹を使ってますんでそれなりのお金,かかっちゃってますが,竹はDIY屋さんなどで数百円で買えましょうし,お近くに竹林等ございますれば,主要な材料はほぼロハで手に入るってもんです。
  お手軽な楽器ですよね。
  さて,竹はまとめて買ったのを切って使ってますし,これに張る皮も,月琴のバチ皮とか弦子の修理のために買った大きいのの端っこを切って使うので,それぞれ単価がいくら,というのが出しにくいんですが,その中で,

  ふたつだけ原料単価がはっきり分かる部品のひとつとまいりましょう。(のこり一つは糸です。w)

  糸巻きを削ります。

  材料は¥100均で買った「めんぼう」(長32センチ ¥108 スダジイ)。
  両端を四面斜め削ぎにして,真ん中から半分に切り分け,一台分の糸巻き,2本の材料とします。
  ほかは竹なので比較的加工も楽ですが,まあこれだけがカタくてちと辛悩な作業となりましょうか。

  ご家庭に小型旋盤などございます裕福な方は,それであらかた削っちゃってかまいませんが,一般庶民たるわれわれは,切り分けた素体を,糸鋸やヤスリや根性で,六角形もしくは八角形の円錐状の棒に削ってゆきましょう。

  ひっひっふ~,
   ひーはーひーはー,
     ご~りごり。


  月琴の糸巻きの握りは六角形のものが多いんですが,胡琴は八角形が本当のようですね。ただし国産の胡琴では,月琴と同じく六角形となっている例もあります。庵主も八面は削るのがツラいんで,ふだん削りなれてる六角形にさせてもらいますね。


  あらかた削りあがったら,ざっと表面の処理をして,あとは棹にあけた孔に合わせ,しっかり噛合うように先端を調整してゆきます。糸巻きの先は,棹孔の前面から5~6センチほど出します。

  まあ,胴体の切り出しからここまで,およそ半日ってとこでしょか。


  糸巻きの握りは,月琴と同じラッパ反りでもいいですし,現代の京胡や二胡と同じような,お尻の丸まったドライバーの握り型のでも結構。
  『清楽独習之栞』の図のもそうなってましたが,余裕があればお尻の真ん中に象牙や骨のポッチを埋め込んだり,色材を積層してシマシマにするのも面白いかもしれません。

  ちなみに庵主の糸巻きは,こんなんなりました----

(つづく)


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