月琴ぼたんちゃん(4)
2014.11~ 唐木屋月琴ぼたんちゃん (4)
STEP4 ぼたんちゃん修理(2) 棹口の割レと半月の鼠害という,二箇所の重要箇所の修理がまずまずうまくゆき。 月琴ぼたんちゃん,楽器としての機能の再生にもいちおうの目途がたちました。 ほっとしたところで細かい作業の準備にかかります。 まずは胴体表面のお飾りやフレットの除去。ここからの作業では邪魔になりますので。 何箇所か,素人古物屋さんのシワザとおぼしい,木工ボンドによる接着がされてましたが,それほど大きなものでもなかったので,今回はまあ,お尻からミドリ色のケムリがぷぅぷぅ出るくらいのノロイで許してやりましょう(w)。 オリジナルの接着はニカワ。さすが老舗の唐木屋,このへんの細工は分かってらっしゃる。フレットはけっこう頑丈に接着されていましたが,お飾りのほうはポイント接着。濡らせばすぐ浮いてハズれてきます。のちのちのメンテのことまでちゃんと考えてくれてるのですね。 つづいて,作業部分の補彩にとりかかりました。 実のところこういう染めやら塗りといった作業のほうが,バリバリガリガリっといった類の工作よりずっと時間を食います。 まずはスオウ汁を何度も塗布。 とはいえ,どっちも割れたところを貼ったり継いだりしてますからね。そうそう濡らしっぱなしにもできないんで,少量づつ塗って,きっちり乾かしては何度も塗り重ねるしかありません。 オレンジ色のスオウ汁がじゅうぶんに滲みこんだところで,お湯で溶いた重曹液を塗ると----ううむ,いつもながらカガクってフシギだなあ。そういえば,誰かジャガイモにヨウソを垂らすとムラサキ色になるワケを教えてください。いえ,デンプンに反応したからとかじゃなくって,「なんでムラサキ色になるのか」 のとこが知りたいですね,マジで。赤とかミドリ色じゃなくって。(w) そういうコトばかり考えてますと,こういうオトナになりますからね。 ご注意あれ。 補彩の合間にいろいろと済ませておきましょう。 まずは棹基部と棹茎の補修。 第2回でも触れたように,この楽器の棹茎には大きな節目とエグレがあります。 強度的にはこれでも問題ないんでしょうが,さすがに少し気になりますので,エグレてる部分にエポキ&木粉のパテを充填して埋めておきます。 あと,棹茎の接合部が少し割れちゃってますのでこれも直しておきましょう。 おそらくは棹口を割ってしまった時に,ここも割れちゃったのでしょうが,そうでなくても月琴の故障としてはよくある故障です。 ちょっとぐらいここが割れていても,楽器としては使えなくもありませんが,調弦が狂いやすく,演奏上にはかなりな支障が生じます。 そのうえこの故障,けっこう気づかないんだなあ。 いくら調弦してもなんかうまくいかないような場合は,糸巻きの噛合わせや糸のほかに,ここも疑ってみてください。 割れてるところにニカワを垂らし,じゅうぶんに行き渡ったところでクランプをかけます。 作業としては単純ですが,力のかかる重要な箇所なので,何日か固定したままにしておいて,確実に接着するのがいいでしょう。 棹茎の節目を埋めたのと同じパテで,ついでに気がついたとこをあちこち埋めておきます。 糸倉の背面に二箇所の鼠害痕,棹の根元のあたりにも二箇所ばかりキズがありますので。 乾いたところで整形して補彩。こちらも棹口とかと手順はいっしょですが範囲が小さいのですぐ終わりますね。 月琴ぼたんちゃん,古物の月琴としては少ないほうですが,欠損部品がいくつかあります。 まずは山口さん。ギターで言うところのトップナット。読みはもちろん「サンコウ」なんですが,「ヤマグチ」さんのほうが分かりやすいので,ついついそっちで言っちゃいますね。 ツゲの端材を削ります。あいかわらずキレイなものですねえ。 厚みは8ミリ,高さは1センチ。接着痕から厚みは分かりますが高さは分かりません。 でもまあいままでの経験からして,棹がちゃんと背面に傾いでいれば(山口のあたりで胴体表面板の水平面から3~5ミリ)この大きさで問題はないはずです。唐木屋の楽器は,そうしたあたりの工作がしっかりしてるので大丈夫でしょう。 つぎにフレットです。 なくなっちゃってるフレットは棹上の4枚。 象牙の端材を削ります。 新しく削ったフレットは,そのままだとまっちろで,オリジナルの古い象牙と色が合いません。 そこでこれをヤシャブシの液でちょいと煮込み,一晩ばかり漬け込みます。 鍋から引き揚げたらよーく洗って乾かし,表面をみがくとこう---- 少し染まって古色がつき,色がそろいます。まあふつうはここまでしなくてもいいでしょうが,今回は時間がありましたので。(w) (つづく)
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