« 月琴38号 (3) | トップページ | 月琴38号 (4) »

月琴28号 なると (3)

G028_03.txt
斗酒庵 10本も前の月琴をようやく修理する の巻2015.3~ 月琴28号 なると (3)

STEP3 支那ソバにはナルトがつきもの


  さてでは,月琴28号,修理を開始いたします。

  この楽器において最大の故障箇所は,やはり 「糸倉の損傷」
  糸倉の,楽器に向かって左がわにけっこう大きな割レがあります。
  大きく割れているのは一番下の軸孔の周辺ですが,ヒビの一方はうなじのあたり,もう一方は細いながら,いちばん上の軸孔のすぐ手前くらいまでうっすらと伸びています。

  ヒビ割れ自体はありがたいことに,衝撃による単純なパックリ割れで,ひねりやねじれによる歪みようなものも欠けもなく,部材の収縮による食い違いも少ないようなので,基本的に,合わせて接着すれば,ヒビが見えないくらいぴったりとくっつきます。
  もちろん,ヒビにニカワを流し込んで接着しただけでは,使用強度的には足りませんので,ヒビがまた割れないよう,「チギリ」 を打ちます。

  まずは一番下の軸孔の左右に,真ん中にヒビが通るような形で上下に穴を二つ。貫通はさせません。板厚の8割ってくらいの深さで。
  これをチギリのカタチにアートナイフで整形,それに合わせてチギリを作って埋め込みます。今回はツゲで作ってみました。

  チギリを埋め込む接着充填材にはエポキを使用しました。ここはなるべく環境の影響を受けて欲しくない箇所なので。 エポキにチギリを作る時に出たツゲの粉を混ぜ,ツマヨウジで穴の中に落とし込み,内壁にペタクタと塗りまくったところで,チギリをギュギュッと押し込み,ぐにゅッとあふれさせます。(擬音が多い…w)

  うむ----まあ,こんなもんじゃろう。
  これって,1コでアナ二つ,埋められたんじゃね?----てくらい余分に突き出てますよね。

  庵主,こういう作業をするたび,
   むかし世話になった指物の親方がよく言っていたことを思い出します。


  「小さなものは大きく作れ」----小さく,そして精密さを必要とするものを作る場合。はじめからギリギリの大きさの材料で作ろうとするな。 ちょっと勿体ない気がしても,大きな材料から作り出せ。 土台が大きければしっかり固定できるから,ずっと正確で精密な作業ができる。 そうやって作って,最後に要るぶんだけちょんと切り離す。 そのほうがはじめからギリギリの大きさでやって,何度も失敗するより,間違いなく経済的だ。

  ちなみに 「大きなものは小さく作れ」 とも言われました。

  大きなものを大きな材料で作ろうとすれば,それはキモチいいかもしれんが,出来上がったものはかならず,元の材料より小さくしかならない。 しかし,小さな部品を一つ一つ,組み合わせて積み上げてゆけば,どんな巨大なものでも作ることが出来るじゃないか----なるほど,至言ですよね。


  はいはい,もうお世話になってから20年以上たちますが,今でもありがたく実践してますよ,親方。

  一晩置いて整形。糸鋸で余分をチョンと落として,あとは得意のヤスリ・ワーク。
  チョン切ったぶんは,こんど同じような作業があったときに使えばいいですもんね。カケラとはいえ国産ツゲですもの,けっしてムダにはいたしません。(w)

  これで通常の使用ではほとんど問題ないはずです。 もちろん壊れてるには違いはないので,あまり無茶したり,あちこちにブツけられるとちょいと困りますがね。



  つぎに,棹と延長材が泣き別れしてますので,これもへっつけておきましょう。
  調査報告でも書きましたが,月琴でこの形式の接合は庵主,はじめて見ました。
  ふつうは棹基部を横から見て < に切り取り,そこに根元を < に削った延長材
を入れ込み,接着しています。
  工作的にはもちろん本器の形式でもまあ構わないっちゃあ構わないんですが……

  通常,月琴の棹は背面側に少し傾けて取り付けられます。
  V字型の接合ですと,その工作に際して,微妙な角度の調整が可能ですが,この形式だと若干問題がありそうです。なにかあるとすれば,そのあたりくらいでしょうかね。


  続いて軸(糸巻き)を削ります。

  調査のほうで書いたように,ついていた4本のうち,1本はこの楽器のものじゃなヨソ者部品で,1本は先が折れてます。ヨソ者は変な改造がされてますし(途中で切って別材を間に継ぎパテで覆っている),折れてるほうも補修はしてあるものの,やや心配。 この2本は使えそうにないので,新たに2本作らなきゃなりません。
  材料には¥100均の 「すりこぎ(大)」 を使います。¥100均各社で材質や大きさが異なるんですが,今回のオリジナルは長さも太さも通常一般の月琴のそれより大きめです。とくに太さが最大で3センチほどもあるので,これに合うすりこぎを探して,¥100均を徘徊放浪いたしましたよ(w)

  標準よりはやや大きいものの,デザイン的にはよくある六角一溝の糸巻きなんですが,軸尻の溝が細く一定の太さになっています。ハテ,どうやったのかな? とイロイロ考えた結果,精密細工用の糸鋸で刻んでみました。
  まだ先端にポッチを埋め込んでませんが,まあだいたいこんな感じかと。

(つづく)


« 月琴38号 (3) | トップページ | 月琴38号 (4) »