月のあしび
月琴修理報告別館
プロフィール
ホームページ
月琴修理報告INDEX
斗酒庵茶房
明清楽復元曲一覧
清楽曲譜リスト
明治大正期楽器商リスト
カテゴリー
おすすめサイト
そのほか
アニメ・コミック
イベント
工尺譜
文化・芸術
明笛
月琴
楽器修理
楽器製作
胡琴
趣味
音楽
最近の記事
依頼修理の月琴(3)
依頼修理の月琴(2)
依頼修理の月琴(1)
月琴65号 清琴斎初記(6)
えいこうの月琴WS@亀戸!ラストワルツ!
月琴65号 清琴斎初記(5)
月琴65号 清琴斎初記(4)
月琴65号 清琴斎初記(3)
月琴WS@亀戸!2024年11月!!!
月琴65号 清琴斎初記(2)
バックナンバー
2025年1月
2024年12月
2024年11月
2024年10月
2024年9月
2024年8月
2024年6月
2024年5月
2024年4月
2024年3月
« 月琴47号 首なし1(4)
|
トップページ
|
月琴47号 首なし1(5) »
月琴43号 大崎さん(5)
G043_05.txt
2015.9~ 月琴43号 大崎さん(5)
STEP5 大崎村はどっちだ
さてここからは仕上げ作業。
まずは胴体側部の染め直し・塗り直し。
染めに使うスオウは板の清掃に使われる
重曹(アルカリ)に反応
して発色してしまいますので,この作業は清掃してからじゃないとできません。
表裏板の木端口をマスキング。もともとの使用によって薄れてしまったところ,表裏板周縁の処置など修理作業によってついたキズ,まとめて均して磨きあげ,スオウ汁を塗りたくります。
こちらも棹と同じく
ミョウバン発色,オハグロがけ。
柿渋を二度ほど刷いて,三日ほど間をあけながら,亜麻仁油を何度か軽くしませて完成です。
オリジナルの蓮頭は上半分がトンでいました。
なくなってしまったその部分が真実どんなものだったのか----作者が分からず類例も調べ得ない現在,それを知る手立てはありませんが,下半分の意匠には,ほかの作者の作品に似たようなパターンがないではない----これはおそらく,庵主が
「宝珠」
と呼んでいる線刻模様の類であったと考えられます。そこでそうした類例を参考に
「だいたいこんなもの」
ていどのを一枚を作ってみました。
材料の関係で,オリジナルより若干薄めですが,まあこんなところでしょう。
棹と同じくスオウで染めミョウバン発色,オハグロで黒塗りですが,オハグロを
わざとムラムラに塗って,
下地のスオウの赤を見せ。オリジナルの黒柿のような色合いにしてみました。
今回はオリジナルの山口とフレットを使います。
通常,月琴の山口の高さは10から13ミリなんですが,この楽器のものはやたらと低く,8ミリほどしかありません。フレットも全体に低め,最終フレットが4ミリですが,糸を張ったところ,よくあるようにただ低すぎるわけではなく,これでちゃんとフレット頭から糸までギリギリになっています。
うむ,多少疑念はありますが,まずはこのオリジナルの設定で組み立てましょう。
8枚のうち7枚は何の問題もなくそのまま使えましたが,
第3フレット
のみは新しく作りました。これ1枚だけ加工が異なるのでどうかなあとは思っていたんですが,実際当ててみると案の定,このフレットだけが合いませんので,これだけは後補の部品と思われます。
ほかのフレットの工作に合わせて,冬に実家にいるとき買った牛骨で1枚補作です。
フレットをオリジナル位置に置いた時の音階は以下に,フレット番号の横の数字は山口の下辺からフレットの下辺までの距離,開放のところにある数値は有効弦長です。
開放
(428)
1(45)
2(82)
3(108)
4(143)
5(179)
6(215)
7(235)
8(267)
C
4D
+7
4E
-27
4F
+7
4G
+9
4A
+33
5C
+9
5D
-1
5F
+12
G
4A
-3
4B
-39
5C
+3
5D
+3
5E
+32
5G
-2
5A
-13
6C
-6
うん,やっぱり明治後期
…かなり末ごろの楽器ですかね。全体に
西洋音階の影響
が大きく見てとれます。
今回,胴上のお飾りは全存で,ほとんど損傷もありませんでしたので,ちょいと磨いてきれいにすれば,あとはこれを戻してバチ布を貼るだけです。いつもの梅唐草,臙脂のと紺色とどっちにしようかちょと悩みましたが,
全体が黒いのに合わせて紺
を選択。
2016年3月21日,月琴43号復活!!
やっぱりフレットの低さが気になります。
一般に清楽月琴は棹上の第3フレットまでが高く,第4フレットから先が一気に低くなり,5~8フレットはほとんど変わらない,というようになっていますが,この楽器の場合,トップナットの山口自体をやたらと低くしてあるので,全体に低くなってしまっています。
他の楽器で慣れてしまっていると,数ミリの違いではありますが,指はちゃんと下してるのに,なんか
いつまでたっても弦にとどかない
感じで,多少もどかしさというか操作性に違和感があります。
もしかすると,使用しているうち,棹が反ったのに合わせて所有者が
山口の底面を削った
ものなのかもしれません。今回,棹の反りをもとに戻してしまったので,ことさらに低く感じられているのでしょう。
しばらく実験的に使ってみたのですが,
やはりガマンできなかった
(w)ので,山口とフレットを作り直しました。
低すぎるんだよ~指がとどかないんだよ~(汗)
こんどは国産月琴として標準的な寸法で----山口11ミリ,最終フレット6.5ミリ。
ギターとかだと「弦高が高い」というのは,どっちかというとマイナス要素なのでピンとこないのですが,月琴という楽器の場合,その音色の要素にはこの
「弦高が高い」
ということも含まれています。簡単に言うと,板ぴったりに張られた糸と,空中に張られた糸では,振動が同じであっても,その音の広がりかたには差が出るじゃないですか。ああいうことだと思いますねえ。
まあ運指・操作上の関係もありまして,ただ闇雲に全体高ければ良いかというとそういうわけでもなく,低音域である程度高く,高音域で低い----
第4フレットあたりでガクっと低くなる
というのが理想なんだと思います。
フレット改修前には音の伸びがイマイチで,せっかくの響き線の効果が,かかりきらないうち音が消えてしまっているような感じでしたが,改修後には音もほどよく伸び,余韻の響きもかなり良くなってきました。
どっちかというとあまりクセのない,素直な音ですね。鉄線をびーんと弾いて震えるようなそんな音,音がなだらかに
予想通りに減衰してゆく
感じです。
操作性のほうももちろん,かなり改善されてます。
ただ基本,「クセのない音」というのは,それだけ
誤魔化しのきかないクリアな音
ということですから,チューニング,とくに同音に合わせるほうが少しシビアかな。
全体的に言えば,普及品なので良くもなく悪くもなくという感じですね(w)庵主は多少クセのある楽器のほうが好みなので,イマイチ乗り切れませんが,操作性も悪くはなく,
じゅうぶんに月琴らしい音が出てるとは思いますよ。
(おわり)
« 月琴47号 首なし1(4)
|
トップページ
|
月琴47号 首なし1(5) »