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月琴43号 大崎さん(4)

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斗酒庵 またまたの平行作業 の巻2015.9~ 月琴43号 大崎さん(4)

STEP4 大崎村に半分の月のぼる

  糸倉の補修,胴体構造の補強----はじめのほうで書いたように,この楽器は欠損部品が少ないので,ここまでやってしまえばもう直ったようなモンですわい,わははははは。(w)

  構造を強化した胴体に,裏板を貼りつけます。
  裏板は5枚に分かれていますので,まずはこれを組み合わせて3枚にしようと思います。何か所か矧ぎ目に沿って木端口が虫に食われているところがありますので,矧ぎなおしの前にそうした虫食いや,エグレの個所は木粉パテで埋めておきましょう。


  この3枚の状態で楽器に貼り付けて,真ん中のあたりにスペーサーを埋め込むスキマを作っておきます。部材の経年変化,修理作業による変形,そうした誤差がありますんで,木製の円形楽器に,もとついてた円形の板をそのままもどそうったって不可能です。板より長く----縦方向にふくれてしまったような場合には板自体を取り替えるよりどうしようもありませんが,月琴という楽器の胴体は,その構造上,弦の力によって縦方向につぶれる傾向があります。ですので,たいていは横幅を変形による誤差のぶんわずかに広げれば,最小限の損失で板をもどすことができるわけです。
  最後に,胴体から飛び出た周縁を削り取って側板との段差をなくします。
  さて,これにて胴体はぶじ「箱」の状態に戻ったわけですね~。

  表裏の板の始末がついたところで清掃。
  裏板上には,この楽器の名前の由来となった墨書もありますから慎重に。いつものように Shinex#400 を重曹を溶いたぬるま湯につけながらコシコシコシ。

  ヨゴレとともに浮いてきた汁は,最終的にはぜんぶぬぐい去ってしまうのですが,このとき,スペーサーを入れた個所や修理によって色が薄くなったところに,板から出たヨゴレ汁をちょっと集めるようにしながらこすりつけておきますと,修理痕が目立たなくなります。
  全体に薄汚れてはいましたが,さほどのこともなくだいたい一度で清掃完了。画像では濡れてまっ黄色になっちゃってますが,この楽器としては染めが薄いほうです。

  一日二日,板を乾燥させて,半月の接着に入ります。
  いつものことながら,ここまで来ますと,ああ,もう少しだなあ,という気になってきますねえ。

  オリジナルは,おそらくホオかカツラで作ったもので,糸擦れで縁に近いほうの糸孔が切れてしまったものと思われます。もとの所有者は,切れてしまった孔の奥に孔を開けなおし,前縁部を削って下げて,それでも使おうとしたご様子----うう,その努力にナミダがちょちょぎれます~。

  ここまで使われてこれはこれで本望でしょうが,さすがに庵主でもこれをどうにかしてまた使うのはちょっと難しい。
  オリジナルを参考に,新しいのを一枚作りました。
  今度は糸擦れごときで切れたりしないよう,素材は唐木のカリン。
  もとの半月の素材からも分かりますが,この楽器は普及品の数打ちモノですので,これだけでも実質かなりのグレードアップ(w)です。
  オリジナルの半月を見ながら,大きさや高さ,糸孔の間隔などをそろえ,スオウとオハグロで染めて紫檀っぽくしてあります。

  ではこれを置いて棹を挿し,糸を張って,最適な位置を探ります。

  月琴の工作はときおりテキトウなことがあるので,もとの位置にそのままもどすのはちょと危険。有効弦長は記録してありますので,上縁の位置取りは決まってますが,左右の微妙な調整で,弦のコースが大きく変わってしまいますので,けっこう慎重に,何度も確かめながら位置決めをしてゆきます。

  決まったところでシルシをつけ,ニカワを塗って接着します。

(つづく)


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