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月琴48号 (4)

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斗酒庵 壊れ月琴の飽和攻撃その後 の巻2015.10~ 月琴48号 海保菊屋 4

STEP4  わたしのこころは夏もよう

 暦の上ではとっくに秋なのに,まだまだ暑いきょうこのごろ。 いかがお過ごしでしょうか。

 北の大地より帰京して,まずは夏前に使い切ったスオウ液やら,ヤシャブシ汁やらを作り,浅草の藍熊さんへ行って,柿渋等不足物資も補充。さて…48号修理作業再開です!

 今回の楽器は,本体部分の保存状態しごくよろしく,こちらとしては,壊れたりなくなくなってる部品をいくつか足してあげるくらいのことしかできません。 表板のちょっとしたヒビ割れの補修以外は,楽器の音に直接影響のあるような作業もなく,ある意味平和でございます。


 まずはフレット作り。

 山口(トップナット)はオリジナルをそのまま再接着。なくなってる棹上の4枚を牛骨で作りましょう----あいかわらず硬いなあ(汗)
 棒状の骨のカタマリから1センチ幅くらいの小板を切出し,両面を削って平らな板にするわけですが,切るのも削るのも一苦労です。
 切るのは糸鋸,平らに整形するのは80~100くらいの空砥ぎペーパーを貼った擦り板を使います。
 はじめ,やや大きめ高めに作り,糸を張った楽器に実際当てながら,高さや幅を調整してゆきます。
 この作業においては,硬いのが逆に幸いして,かなり精密な微調整が可能ですね。

 調整が終わった板は,左右端をやや斜めに落とし,横から見て頭の丸い二等辺三角形になるよう,表裏を削り,フレットの形にしあげます。ついで240~400くらいまでで表裏を磨き上げて,まずは軽く二度ほど,アルコールニスを塗っておきましょう。
 このニス塗りは「塗装」というよりは「目止め」「滲みこみどめ」の意味合いが高いですね。牛骨は象牙に比べると多孔質なので,染液や油を余計に吸ってしまいがちなのです。このあと表面処理にヤシャ液やら油やらを使うのですが,それらが余計に滲みこみすぎないようにするための加工だと思ってください。 数日してまだ表面がベトつくようなら,アルコールでさっと拭ってしまってもいいです。

 ニス塗りして数日乾かしたフレットを,ふたたび600~1000くらいで軽く研磨。30~1時間ほどヤシャ液に漬けこみ,黄色っぽく古色を付けます。染めないとまさしく「白骨」って感じに真っ白なので,安っぽくなっちゃうんですが,目止めしとかないと10分も漬け込まないうちにまっ黄色になっちゃうんですよ! あらかじめニスで目止めをしておくと,多少漬けすぎても,ちょうどいいぐらいのほのかな「象牙色」で落ち着いてくれます。

 ヤシャ液に漬けたフレットを一晩二晩乾かしたら,最後の仕上げ。Shinex の目の細かいやつに,亜麻仁油とヤシャ液を数滴たらし,白棒の削ったのをふりかけて,そこで磨き上げます。
 この作業も,あらかじめニスで染み止めしておかないと,フレットにたちまち油じみが出来てしまいますからね。

 こういう加工されちゃうと,もうニワカ目利きでは象牙と区別がつけられませんね。手に持てれば密度と重量感で,刃物を当ててられれば粘りのあるなしで,一発判定も可能ではありますが,目視だけだとかなり難しいでしょう。ただし,こういう板状のものだと片面に,黒く細かな筋模様がいっぱい見えるので,そのあたりで判断するしかないかなあ。これは骨髄のがわ,骨の表面がわに比べると密度がいくぶん低いからですね。
 …ふむしかし,このくらいの高さの板なら,馬や牛の大腿骨あたりの骨だと縦割りでも作れます,そうなるとまあ,ほとんど判別ムリかなあ。(元古物屋の小僧談)

 はじめ,再製作は棹上の4枚のみで,胴上の4枚はオリジナルをそのまま使うつもりだったんですが,棹上のをいつものように弦高に合わせてギリギリで作ったら,第4と第5フレットの落差がスゴすぎて,音が出るところまで押さえると,糸が余計なところにひっかかり,響きが死んでしまうようになっちゃいました。

 山口はいじっていないし,棹の角度も直していないので,おそらくオリジナルでは,フレットの丈が全体に低く,フレット頭と糸との間がかなり空いていたのだと思います。
 もちろんその設定でも音は出せますし,フレットの位置をちゃんと加味すれば,音階もある程度は揃えられます。しかし,糸を余計に押し込まなければならないぶん,音高は不安定になりますので,多少扱いにくい楽器だったかもしれません。「ミ」を出したくても,その前後の音が微分音で混じってしまうわけですね。
 まあ,当時の清楽の演奏ではこれでよかったんでしょう。音程の不安定さに対する感性も「そんなもの」って感じだったのだと思いますが,現代ではみんなむかしより音階に敏感ですから,このあたりは調整しておかなければなりません。

 けっきょく,棹上の新作に合わせて,胴上のフレットもあと3枚削ることにしました。最終第8フレットのみ,オリジナルの第5フレットを流用します。第5と第8はほとんど幅がいっしょ,たまたま当ててみたら高さ的にもバッチリでしたんで。

 出来上がったフレットセットは,総じてオリジナルより1ミリほど背が高くなりました。
 それでも,清楽月琴としてはふつうなくらいですので,さして問題はございません。運指に対する反応のより良い,フェザータッチな楽器を目指しましょう。

 後で削った3枚も,ニス塗り>ヤシャ染>油磨き の作業をして,はんなり象牙色のとぅるっとぅるに。

 今回は上手くゆきました。

(つづく)


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