月のあしび
月琴修理報告別館
プロフィール
ホームページ
月琴修理報告INDEX
斗酒庵茶房
明清楽復元曲一覧
清楽曲譜リスト
明治大正期楽器商リスト
カテゴリー
おすすめサイト
そのほか
アニメ・コミック
イベント
工尺譜
文化・芸術
明笛
月琴
楽器修理
楽器製作
胡琴
趣味
音楽
最近の記事
2023年師走の月琴WS@亀戸!!
名前はまだない(11):RE
名前はまだない(10):RE
名前はまだない(9):RE
名前はまだない(8):RE
月琴WS@亀戸2023年11月!!
月琴WS@亀戸 2023年10月!!!
「明清楽復元曲一覧」 部分更新!!
月琴WS@亀戸 2023年9月!!
清楽月琴WS@亀戸 2023年7月!!
バックナンバー
2023年11月
2023年10月
2023年9月
2023年8月
2023年6月
2023年5月
2023年4月
2023年3月
2023年2月
2022年12月
« Yさんちの天華斎(2)
|
トップページ
|
長崎よりの月琴4(2) »
長崎よりの月琴4(1)
hirano4_01.txt
2016.12~ 長崎よりの月琴4 (1)
STEP1 ミッション No.4
Yさんちの天華斎と前後して,
長崎よりまた1面,依頼修理の楽器が舞い込んでまいりました。
何度も言ってますが
「楽器は楽器を呼ぶ」,
重なるときにゃあ重なるもンですねえ(w)
お話がきたのが11月の末。
庵主ァべつだん江戸ッ子じゃござんせんが,宵越しのゼニは持たず,年越しの仕事ァしたくねえ,ってもンで。
さてさて恒例の多重修理,晦日までにあがるやいなや!!
ざっと見たところ,ラベルもなく内部に署名等もないようで,どこの誰様の作だかは分かりませんが,すらりとした姿のいい国産の清楽月琴ですね。
んじゃまず棹から。
蓮頭の代わりに
ナニヤラへっつけてある
ほか(仏手柑…かなあ家具の部品? 彫刻した薄板を厚めの桐板に貼り付けてある),山口も
なんかヘンなカタチ
だし,フレットも低すぎる----てかこの棹上の3本,高さが同じですね。糸倉には
三味線の糸巻
が刺さってますし,この山口(?)の乗っかってるあたりをふくめ,何箇所かネズミに齧られてるようですね。
山口の取付けは指板が山口の前で切れてて,
棹本体に直接接着
するタイプ。名古屋の鶴寿堂なんかもやってますが,よく見る工夫の一つですね。 単純に平面に貼りつけるのじゃなく,段を作ってそこにはめ込むようにすれば,
より頑丈にへっつけれるんじゃね?
という発想でしょうが,指板の厚みはふつう1ミリあるかないかなので,どこまで補強の効果があるのかは少々ギモンです。 まあ,指板には多く接着の悪い唐木材が用いられるので,そこにつけるよりはカツラとかホオで出来た
棹本体に直接つけたほうが良い
だろう,という考え方だったとすれば(w)まだ分からんでもないです。
糸倉はスマートで,国産月琴としては標準的,
あまり特徴のないカタチ
をしています。棹背はややアールがキツめ,
反り返りが美しい
ですね。現状でやや
表板方向に傾いで
おり,表板のふちと指板の間に
少し段差
もあるようです。
胴の表板はかなりいい板だったようです。けっこう目の詰まった桐板で,
矧ぎ目が見当たらない。
棹上のお飾りはなくなって痕だけになってましたが,胴上には3つばかり,けっこういい出来のお飾りが残ってます。いちばん上が
「霊芝」
つぎが
「瓢箪」
最後が
「魚」
ですね。左右は定番の
「菊」
,扇飾りは
「葡萄」
,中央はええっと----
「菱木瓜(ひしもっこ)」
ですかね。作者か所有者の家紋かな?
ピックガードは欠損。
接着痕に
かなりヒドい虫食い
がありますねえ。
たぶんヘビ皮が貼られてたんでしょうが,溝は浅いもののもう縦横無尽に食いまくられちゃっています。
半月は単純な板状の半円形。同タイプとしては
かなり低め
に作られてます。たぶんカツラかホオを染めたもので,多少角のところに色がスレて薄れた部分があるものの,基本的には健康。糸孔の擦れや広がりもあまりありません。
この半月のところのほかにも,表裏板のあちこちに
大小の虫食い痕や虫穴
が見えます。保存状態が悪く,かなり美味しくいただかれちゃってるようですね。
裏板は例によって表板に比べるとかなり質の劣る板で出来てます。とはいえ,よくみる月琴のよりは高級そうで,矧ぎも少ない。
「板目を合わせる」なんて基本的なこともしてませんが,
3枚矧ぎ
くらいかな?(ふつうは5~7枚の小板をつぎはぎして作る。10枚を越えることもある) 矧ぎ目が割れてて現状ほぼ三つに分離しちゃってますが,その割れ目の周辺に虫食い穴がいくつもみえるんで,ここもたぶん,
矧ぎ目に沿ってだーッと
食われちゃってるんでしょう。
ドタマに貼りついてる飾り板や三角形の山口,なんだか足りないフレットなどが後補なのはもちろん,
本体の材質や工作などと比較すると,多少チグハグなところがある
ので,残りの装飾もオリジナルかどうか疑問はありますが,楽器の質としてはまあそこそこ,中の上は行ってるかと思われます。
棹の色はかなりトンじゃってるようですが,胴側はスオウの黒染が真っ黒に残っていますね。このあたりは保存がいい。
また
胴体接合部の工作
が良かったようで,単純な木口同士の擦り合せに過ぎないのにスキマもほとんどなく,いまもガッチリへっついてて,弛みのひとつもありません。
虫食いやら割れやらで傷んではいるものの,現状,表裏の板はだいたい胴体にくっついています。ただし,胴周縁のあちこちに段差ができちゃってますし,裏板の下縁にはかつての持ち主が板の浮きをとめようとしたのでしょう,
錆びた小さなクギ
までささっちゃってます。
この楽器の面板はもともと,かなりの範囲の接着がトンで,ハガれちゃってたんだと思うんですが……
そういう板のあちこちに,
不吉な再接着痕
---というかはっきり言って接着剤のハミ出しが見えますねえ。
どうやら,すこしでも見てくれ良くしようと,
親切な古物屋さん
が,だいぶん頑張ってくれやがったようですね………
ふふふふふ,嬉しい,うれしいなああああ。
(と,ワラ人形に五寸釘を持って立ち上がる)
(つづく)
« Yさんちの天華斎(2)
|
トップページ
|
長崎よりの月琴4(2) »