月琴の弾き方(4 中級者編)
月琴の弾き方(4 中級者編)
STEP4 も少しうまく,弾いてみよう! さてひさびさの月琴弾きかた教室。 えーと,前に書いたのが2012年………おぅ!5年もたってますやん!! 月琴はギターや琵琶なんかと同じ「撥弦楽器(はつげんがっき)」,糸を「はじいて」音を出す類の楽器です。 月琴の弦は4本ですが,2本づつ同じ音に調弦しますので,2本しか弦のない楽器と同じ。 同じ音に調整した弦を2本いっしょにおさえ,2本いっしょにはじいて音を出します。こういうのを「複弦楽器」って言いますね。 フレットは8枚。 基本,13コしか音の出ない,ごくごく素朴で単純な弦楽器です。 難しそうに見えても,あんまり難しく考えないように。 「できない」とか思ったら,そこで負けだよ(キラキラ) 糸のかけかたや調弦の仕方については,過去記事をどうぞ---- 改訂版・月琴の弾き方(1) 改訂版・月琴の弾き方(2) まず基本は「ピンカラ弾き」。 一音に一回,バチでパチパチ弦をはじいて音を出します。 ピンカラ鳴るので「ピンカラ弾き」と呼んでおりますが,兄弟ともトリオとも関係はありません(w) ではこれで「朧月夜」を弾いてみましょう。なのはーなばたけえにー 左手の指の位置をいちいち確かめなくとも,ドレミの場所がおさえられるようになり,弦をバチ先で確実にとらえることができるようになったら,次の段階に進みましょう。 「ピンカラ弾き」は基本ですが,これだけだとどんな曲弾いてもおんなじ調子で。どんなに良く弾けてても,おこしゃまのおゆうぎみたいに,どことなく幼稚に聞こえてしまうんですね。 音を出すのに慣れてきたら,弦をはじく回数を減らしてゆきましょう。 今回はそのテクニックのいろいろを。 まずは「スライド」。 弦をはじくのと同時に,指をすべらせて連続音を出します。1度はじいて2つ3つの音を出しちゃうワザです。 コツは,弦をあまり強くおさえすぎないこと。 あんまり「すべらそうすべらそう」と意識すると,指先にチカラが入りすぎて,指がフレットにひっかかっちゃったりします。(w) 指を離したら音は中途半端なところで止まっちゃいますから,目的のフレットまでは,指を弦から離さないこと。 あと,指に入れる力に強弱をつけましょう。 はじめの音(弦をはじくとき)はふつうの強さでおさえておき,すべらせた先ではちょっとだけ指先に力を入れてきっちり「止める」----弱……強!ってとこですね。 こんな感じ---- 「スライド」でうにょん,と音がつなげられるようになったら,つぎにトライするのが「ハンマリング」。 邦楽器とかだと「打ち音」って言い,清楽の古い楽譜ではカタカナの「ウ」で指示されてます。 基本的にはスライドと同じく,1度弦をピックではじいて,その音が残っているうちにほかの音を出す奏法のひとつ。 「スライド」で指をすべらすのの代わりに,弦に指先をたたきつけて鳴らすわけです。 ド・レ・ミと3回律儀にはじくより,ド・レではじいてミを「打ち音」で出すほうがなめらかに聞こえますし,開放弦のドではじいて,レ・ミの両方を「打ち音」で出したりもできます。 ギターには,このハンマリングの音が出しやすいよう,フインガーボードのフレットとフレットの間をエグってくぼませた「スキャロップド・ギター」てのがあるくらいですが,月琴の場合,ギターにくらべてはじめッからフレットの背丈が高いので,もともとこの「打ち音」が出しやすい。 慣れてきましたら,弦をはじかなくても指を打ちつけるだけで音を鳴らすことができるようになりますよ。 「ハンマリング」は,指を弦にたたきつけて出す奏法ですが,弦をおさえた指を勢いよく「離して」も音を出すことができます。 清楽では名前がない奏法ですが,ギターだとこれを「プリング・オフ」と言います。 指先にちょっとだけ力を入れて,ぷん,と指を離すと「みょん」って感じに鳴りますね。たとえば,ラ・シ・ド(高)の3箇所を同時に指で押さえておいてド(高)をはじき,その音が残っている間に,ド・シの指をじゅんぐり離すと,ド・シ・ラの3音が出せるというわけです。 これも慣れてくると,弦をはじいてなくても,指を離すだけで音が出るようになってきますってばよ。(ウソじゃないって) このハンマリングとプリングはセットみたいなものなので,組み合わせると,ドレミファソラシドが上からでも下からでも,低音弦1はじき,高音弦1はじきの2発で出せるようになります。こんなふうにね---- 「スライド」や「ハンマリング」で出せる2音め3音めは,もちろんピックで1回1回はじいたときの音よりは小さいので,大きく強調したい音はピンカラはじき,べつになんとなく聞こえてりゃいいや(w)くらいのとこや,とくになめらかにつなげたいとこで,この「スライド」や「ハンマリング」を使うわけですね。 ピンカラ弾きだけだと,どの音も同じ調子になっちゃいがちですが,そこにこういうテクをはさめると,演奏にメリハリがついてなんかいかにも巧げに聞こえる,しかも弦をはじく回数が少ないぶん省エネ----っていう寸法ですな。 では,ふたたび「朧月夜」を。 こんどはスライドやハンマリングの技法をまじえて弾いてみましょう。 ----はじめはまず「右手」のほうに注目。 右手が動いていないのに音の出てる時が,スライドやハンマリングを使ってるところですからね。 「スライド」も「ハンマリング」も,弦をはじく回数を減らす,音と音の間をなめらかにつなげるという意味合いでは同じなんですが,「スライド」の場合はAとBの間の音が入っちゃいます。つまりドからミにつなげたいのに,間のレのかすかながらどうしても入っちゃうわけで。ハンマリングだとド・ミと2音だけ出せますが,手軽さはハンマリングのほうが,音の大きさとぬるんとしたなめらかさはスライドのほうがわずかに勝ってますかね。 どの場面でどっちを使うかはフィーリングなんですが,まあ,スライドのほうが少しかんたんで分かりやすいので,まずはそちらから練習してみてください。 さて,最後は斗酒庵のお家芸,「トレモロ奏法」です。 大陸の月琴や少数民族の楽器ではふつうの奏法なんですが(もっと速いけどww),まあ,日本の月琴の伝統的な奏法には含まれてませんし,うちのWSでもここまで出来ると上級者なんで,今回は「参考」ぐらいに。 またまた同じく,「朧月夜」を弾いてみましょう。 この奏法では,右手はずっと弦をひっかいてます----そう,「はじく」んじゃなく,2本1セットで並んでる弦の「表面」を「ひっかいてる」感じで,バチを動かすんです。 わたしは人差し指の根元にバチのお尻のところをおいて,親指でぎゅっと押さえこみ。バチ先に中指の腹を当てて,おもに中指でコントロールしてますが,自分でやりやすければ,どんな握り方でもかまいませんよ。(斗酒庵流のピックの持ちかたは「改訂版・月琴の弾き方(3)」参照) 最初のうちはバチ先がスカったり,逆に,深く入りすぎてひっかかっちゃったりしますが,練習を続けると,だんだん長続きできるようになってきますから,がんばってください。 この奏法でも同じようにスライドやハンマリングが使えます。組み合わせて,よりなめらかに,キレイな音が出せるようにしていきましょうね。 (つづく)
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