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月琴53号 (1)
G053_01.txt
2017.4~ 月琴53号 (1)
STEP1 チャイナ・シンドローム
その楽器
が届いたのは,ちょうど50号から52号の修理が終わった直後くらいのこと。
小ぶりな器体に,短い棹,絶壁のうなじ。棹と胴体は
タガヤサン
でできてます。
一目見て分かる唐物の月琴ですね。
板は表裏とも真っ黒。お飾りは白茶けて,蓮頭と糸巻がなくなってます。
側板の継ぎ目に大きなヒビも入っているので,ちょっと見にはけっこうな損傷に見えるんですが,蓮頭や糸巻は消耗品……というほどでもないものの。まあよくなくなったり壊れたりはする部品なので,どうで修理するがわとしては
さほど気になりません
し,古物の月琴では,だいたい胴体の接合がどうにかなっているものなんで,これもまた
どうせ手を入れなければならない
部分。
気にしない,気にしなーい。
(本音:うおぉ…けっこうな重症患者だ!! gkbr)
裏板にラベル痕が残っていますね。
楽器中央上部やや右寄りのあたり。幅22~25ミリ,長さは6センチくらいでしょうか。
この種のラベルは,天華斎のエピゴーネンと思われる「玉華斎」や「太華斎」,依頼修理で扱った「清音斎」においては,裏板の左右端寄りに貼りつけられているのがふつう----ですが,庵主は唐物月琴の中で唯一,
この楽器とほとんど同じ場所
にこの種のラベルを貼りつける作家さんを一人知っています----でも,まだ証拠が足りませんねえ。
言うのはも少し,あちゃこちゃ調べてからにしましょ。
全長:620。
胴は縦が355,横が350,厚み33。
糸倉に損傷はナシ。
間木もしっかり着いてるし,左がわ側面にちょっと手に引っかかるカケがありますが,べつだん割レが入っているわけではないようです。
糸巻は1本のみ残ってました。
長:115,最大径:23。ほっそりした溝の深い六角丸軸。唐物月琴や古製の国産月琴でよく見るタイプです。
加工が粗い感じですが,それもそのはず。これもまた胴や棹と同じ,硬い硬いタガヤサンでできてますものねえ,ここまで彫れれば上出来。ほかの楽器の例からしても,唐物月琴のオリジナル糸巻とすれば,これでかなり細工上等の部類ではないかと思われます。
山口(トップナット)とフレットが若干ヘン
ですね。
ふつう唐物月琴の山口は国産月琴のより背丈がいくぶん高く,11~12ミリ以上なのがふつう。でもこれは高さが6ミリくらいしかないうえに,上面がやたらと平らになっています。そして棹上のフレットは,高音になるほど高い(ふつうは山口から高音がわになるほど低くなります)----ありゃありゃ。
原因はコレ
(上右画像参照)
ですね。
棹本体と延長材の接合不良。
現状,部分的にくっついていてはずれはしませんが,きちんと噛み合っておらず,スキマがあいてるので,ちょっと力をかけるとぐらぐら動いちゃう。
ここがこんな状態で糸を張れば,とうぜん棹が持ち上がり楽器前面へ傾いて,胴との接合部のところを中心とした浅いV字形になります。V字の真ん中のところがいちばん弦高が高くなるので,上で触れたように,山口を低くしてフレットをだんだん高くしていかないと,弦が引っかかって音が出せません。おそらくそれに合わせて山口やフレットを削っていったんでしょうねえ----ここはもちろん要修理。
棹本体の基部に
「与」の字に見える墨書
があります。ハテ,なんでしょうね?
全体に汚れてはいますが,ここまでで部品の欠損は蓮頭と糸巻三本,あとはお飾りが少々,ってとこでしょうか。胴体だけ,とかいうのに比べれば
軽い軽い。(やせ我慢)
胴側部はタガヤサン。
凸凹継ぎになっている四方の接合部のうち,
3箇所までが割れちゃってます。
とくに楽器向かって左上の損傷がひどく,接合部からななめに割れが入っていますが,どこも単に「ぱっきり逝った」って感じで,カケてなくなってるような部分はナシ。
板は表も裏もあちこち浮きまくりハガレまくっていますが,左右側部と内桁ががっちり接着されてるようで,カタチは保たれています。
板,薄いですね。
オモテは3ミリほどでだいたい均等なのですが,ウラはところにより厚かったり薄かったりしています。
オモテ板は3枚,裏板は4枚くらい矧いでます。
オモテ板は真ん中に木目の大きな谷をひとつ置いた景色の板。裏板は大小のフシ目のある安い板を矧いだもの。こっちはちょっと暴れそうな感じです。
さて,このニラミ(胴左右の飾り)。
じつは片方がオリジナルで,片方はどうも日本人が補作したもののようですが,どッちがどッちだか,お分かりになれますか?
正解は----「左がオリジナル」。
(上左・比較画像,クリックで別窓拡大)
右の補作のもけっこうイイ線行ってるんですが,輪郭部分がツルリとキレイに処理されちゃっています。ほらこのように----唐物のお飾りは,輪郭部分に
ギザギザの鋸痕
が残ってるんですよ。
こういうの,糸倉のうなじをなだらかつるつるにしちゃったのと同じで,
日本人にとってはどうしてもガマンのできない(w)
細工なようです。
同じ根拠で,扇飾りもオリジナルと考えられるワケですね。こちらも輪郭がギザギザ。
柱間の小飾りは棹上x1,胴上x2の3コ存。どれもよくある,花だか実だか分からないデザインの奴で,オリジナルの位置に貼られているかどうかは不明です。
バチ皮は欠損。
かなり古い時代にすでにハガれちゃってたらしく,日焼け痕も接着痕も残ってません。
半月は小ぶりで,
糸孔に擦れ防止の円盤がはめこんであるタイプ。外弦間:30,内弦間:21.
下縁部右に少し割レがあるほか,板との接着がハガれかけてるらしく,前縁部に浮きが少々見られます。
(つづく)
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