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糸巻がゆるみやすいとき

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斗酒庵 糸巻指導 の巻糸巻がゆるみやすいとき

STEP0 ゆるゆるゆーてぃ

 ウチで修理した楽器の場合。
 とくに糸巻がなくなっちゃってて,新しく作った楽器の場合などは,糸倉と糸巻の噛合せ等ちゃんとやってますので,修理後スグにゆるゆる~なんてことはまずナイ(と思うんですがww)。

 音合わせがどうしてもうまくいかないとき,大きな原因のひとつがこの糸巻のユルみです。

 1) 気がついたら糸巻のところで糸がほぐれてユルユルになっちゃってる。
 2) きっちり音を合わせたのに,糸巻がはずれて糸がもどってしまう。

 というようなことが頻発した場合----まあもちろん,単純な加工不良が原因な場合もあるのですが,そこらへんを疑う前に,まず確認してほしい点がいくつかあります。
 今回はそこらへんをまとめてみましょう。


確認1 糸巻の扱いかたが三味線式

 ほかの楽器の前科餅(w)の方にけっこう多いのですが。
 三味線の場合,調弦の時は糸巻を糸倉から少し浮かして音を合わせ,最後に糸巻をぎゅッと糸倉におしこんで止めるとゆーことをします。
 しかしながら,月琴の糸巻と糸倉は,三味線のと違う作りになっています。さらに単音の三味線と違って,4弦2コースの複弦楽器。2本の弦を「同じ音」にそろえる,という行為はかなりセンシチブなものなので,三味線と同じやり方をすると,最後の 「ぎゅッ」 のところで音が微妙にズレてしまうため,いつまでたっても糸の音がそろいません。
  
 またこの方式でやると月琴の場合,「ぎゅッ」の後も糸巻が糸倉の中でちゃんと止まってない場合が多く,つねに抜けやすくゆるみやすい状態になってしまいます。
 三味線弾きの場合,クセもついちゃってましょうが,「おかしいな」と思ったら,ちょっと注意してみてください。

 月琴の正しい糸巻の持ちかた・扱いかたは以下の記事をご参照あれかしこ。


確認2 糸巻の握りかたが違う

 まず最初に----

 糸巻の握りかたが,画像のようになっちゃってませんか?
  
 これが初心者に最も多い 「ダメダメ握り」(w) というものです。

 月琴の糸巻は先細りになってますので,こういうふうな握りで糸巻を回すと,回したら回したぶんだけ,先端が糸倉から浮き上がって,どんどんはずれていっちゃうんです。
 ----そうですね。ネジ回しでネジを抜こうとしてるのと同じ状態,ってとこでしょうか。
 月琴の糸巻の回し方は,むしろドライバーでネジを押し込む時のほうに似ています。
 こういうダメダメなやりかただと,調弦の時,たとえ一時的に音がピッタリ合っても,糸巻が糸倉にちゃんと固定されていないので,手を離したら糸巻が動いて,音がすぐにズレてしまうわけですね。

 糸の張り替えで,糸巻によぶんな部分を巻き取るときなんかは上の握りかたで回しても構わないんですが。
 糸があるていどピンとなってから,「さあ音を合わせるぞ!」 ってときの,糸巻の正しい持ちかたはこうです----
  
  A(左):糸倉と糸巻のお尻に指をかけ,糸巻が抜けないよう「おさえこみ」ながら回す。

 あんまり糸巻を 「押しこむ」 ほうに気を入れると,こんなふうに糸倉パックリ割れちゃいますからね(泣)
 あくまで,「抜けようとする糸巻をおさえこむ」 くらいの感じでお願いします。
 これは沖縄三線のちんだみなどでやるのと同じ方式ですが,庵主なんかも手が小さいんで,これだと小指が糸巻のお尻にとどかないことがあります。そのときはB(右)の方法で,

  B(右):反対がわの糸巻をひざなどに当てて,糸巻のお尻のあたりを握り込み,軽くおしこむようにしながら回す。

 画像と反対がわの糸巻を合わせる時は,ヒザじゃなくて肩や胸に押し付けたりしますね。

 そのほか,A)に似たやりかたとして,楽器を膝の上に置いて,こんなふうにやる方法もあります----
  
  C:人差し指を糸倉にかけ,糸巻の尻をおさえこむようにしながら回す。

 曲げた人差し指の先を壁にして,糸巻をおしこむわけですね。
 演奏の最中とかならAかBのほうが,とっさの対応が可能なのですが,ゆっくり時間をかけて調弦出来る場合はこちらのやり方でもいいです。楽器を寝かせてやるので,面板の上にチューナーを置いて確認しながら微調整が出来るのも利点ですね。


確認3 巻き取った糸が寄りすぎてないか?

 ウチでは月琴の弦に,お三味の糸を使っています。
 月琴はお三味にくらべるとかなり短いんで,糸の余分は,糸倉のなかに巻き込み,巻き込んだぶんはそのまま,すぐ使える予備の糸としています。
 半月のほうで切れた場合,だいたい2回くらいまでは同じ糸をそのまま使えるので経済的なんですよね。
 しかしながらこの,けっこうな長さ巻き込んだ余分の糸が,糸倉の中で悪サしてることがあるんですねえ。
  
 糸巻がなんかの拍子にハズれて,ぎゅるんと戻っちゃった後とか,糸を張り替えた後なんかによく起こります。
 急いで巻いたりするとこんなふうに,テキトウに巻き込んだ糸が邪魔になって,糸巻を糸倉から押し出してしまうことがあるんですね。
 対処法は,糸巻から糸を引き出し,キッチリと巻き直してあげるだけです。

 糸が軸孔に噛んじゃうと,傷んで切れちゃうこともありますし,あんまり一箇所に寄せて巻いて,おダンゴを作っちゃうと,弦の反発がすごくなって糸巻が回ったり,最終的な音合わせがうまくいかなくなったりもしますので,糸はなるべく均等に,キッチリ巻いてあげましょう----この楽器の扱いの中で,意外と見落とされがちな部分です。


確認4 それでもうまくいかない場合

 まずまず初心のうちは,上記のような理由であることが多いんですが,以上を確認しても,まだユルみやすい,音が合わないといった場合には,次のようなマジ故障のこともあるのでご連絡を。

 1)糸巻の加工不良。
 2)棹なかごの接着剥離。
 3)棹孔の割れ。

 1)はまあ調整ミスですね,ないではないです,ごめんなさい。
 2)3)の場合は糸を張るときよく見てると,若干棹が浮き上がったり動いたりします。こういう時は,棹を抜いて胴体の棹口と,棹なかごの基部を確認してみてください。
 2)の場合,棹本体と延長材を持って軽く反りや曲げをかけると接合部にスキマができちゃいますし,3)の場合は棹口のどこかにヒビ割れが出来ちゃってると思います。棹口に指をつっこんで軽く広げてやれば確認できるかと。
  
 何度も書いてるように,清楽月琴ってのは13コしか音のない,おぼえちゃえばバカでもネコでも弾ける,ごく単純な楽器ですが,「音合わせ」はこの楽器を扱う上での最初の関門。とはいえ,弦楽器ってのはチューニングができなきゃ,基本弾けないものです。

 さあ,みなさんがんばって,快適な月琴ライフを!!!

(おわり)


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