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月琴54/55号 (1)

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斗酒庵 わらしべ長者 の巻2017.6~ 月琴54号/55号 (1)

STEP1 53号の遺産(1)

 53号は良いところへお嫁にまいりまして,お父さんとしては一安心。
 今回は向こうでお持ちの楽器と交換,ということで。
 以前にうちで修理を手掛けた山形屋の楽器が,代わりにやってまいりました。
 自腹切ったわけではないので「自出し」というわけではありませんが,まあこれを54号といたします。

 修理記は こちら。

 このあいだ修理した52号とタメ張るくらい,ピカピカ真っ白の新品状態で出てきた楽器でした。
 修理と言っても,原作者の手抜きっぽい棹の調整不足の補正と,内部でひっかかってた響き線の調整をしたくらいで,あとはほぼオリジナルのままで最高のコンでッション。

 帰ってきてから小リビジョン。
 原作で山口の糸溝がやや広すぎたのを,コース一つぶん内がわに切りなおしたのと,バチ布をエンジから黒紺のに貼り替えました。

 お江戸の月琴らしい,澄んだ,ガラスの風鈴みたいな響きの楽器----すぐ弾ける状態です。

 あらたなお嫁入り先ぼしゅうちゅう!


STEP2 53号の遺産(2)


 さて,こちらは今回の交換で 「これはオマケ」(ありがたや) としていただいたモノ。 これもまあ「自出し」ではありませんが(w),55号とさせていただきます。

 全長:635。
 胴縦:359,横:360,厚:37。
 有効弦長:430。

 胴側に唐木の薄板を貼りまわした満艦飾の高級月琴です。

 蓮頭,糸巻4本全損,山口,いちばん上の小飾り,棹上フレット全損。
 バチ皮はなく,接着痕には浅いですがけっこうな虫食いが見られます。そのほか胴に数箇所虫孔アリ。
 裏板中央付近に上下ほぼ貫通したヒビ割れ,あとは胴側の飾り板が数箇所浮いています。

 欠損部品と虫食いが少しあるものの,保存状態は上々。表裏板の質も悪くなく,工作もけっこうしっかりとしています。

 サイズ的にも工作の面でも,この間修理した「長崎からの月琴」や「佐賀県から来た月琴」にたいへん近い楽器ですね。


 コードネームは 「お魚ちゃん」。

 いちばん上の小飾りが何だったのかは不明ですが,そこから エイ,タイ,フグ? カレイ? アリゲーターガー?(w) コイ----と,小飾りが「魚づくし」になっています。

 扇飾りは凍石で菊,中央飾りは唐木でキリン。
 左右のニラミも唐木で,流麗な鸞が付けられています。

 糸倉はやや厚めで,アールがきつく,間木が分厚くなっています。
 うなじはやや長く平たく,棹背は鳥の頸。胴との接合部で33,うなじの手前あたりで21,なだらかな曲線を描いています。
 指板は唐木。関西に多い,山口のところで切れているタイプですね。


 棹を抜いてみましょう----なかごがかなり短いですね。
 断面がほぼ真四角。月琴の棹のなかごとしては太目です。
 棹本体は軽く染められ,生漆をさっと刷かれているようですが,なかごの基部のところは染められてないのでもともとの木肌が出ています。延長材はホオだと思うんですが,棹本体は木理やや粗く,アッシュなんかに近い感じ……シオジあたりかな? さて,どうでしょう。
 基部表がわに経木のスペーサが貼られており,棹はきちんと角度調節されています。測ってみると,山口のあたりで背がわに3ミリ----一見お飾り月琴ですが,そのへんのことはちゃんと分かって作ってる人みたいですね。

 棹孔からのぞいてみますと,内部は比較的清潔。
 桁は2枚で,棹なかごの長さからも分かるように,上桁は胴のかなり上のほうに取付けられています。部分的に見える下桁も,実にきれいに工作されています。
 表板を叩いてみた感じから,響き線は渦巻タイプだと思われるんですが,上桁には基部がない。おそらくは下桁か地の側板に付けられてるんだと思います。

 前回の「長崎からの月琴」は依頼修理だったので,何の理由もなしに,板ァひっぺがすわけにもいかず,内部構造に一部不明点を残したままで終わってしまいましたが,今回はいちおう自出し(系の)楽器。

 側部飾り板のウキの修理もありますので,心置きなく身ぐるみハガさせていただきやす。

 うぉりゃああッ!!
    ちゃっちゃと脱げやあッ!!!


(つづく)


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