清楽曲 「四不像」 再現!
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HP「清楽庫」改訂 清楽曲 「四不像」 再現!
江戸幕末から明治にかけて,日本じゅうで大流行りした「清楽」「明清楽」という音楽。
庵主はそのうち東京を中心として勢力をはった「渓派」「渓菴派」「鏑木派」と呼ばれる連中とその音楽をおもに追いかけてるわけですが。
その「渓派」の基本的な楽曲をおさめた第一楽譜が 『清風雅譜』。
流祖・鏑木渓菴が安政6年に編んだと言われています。
楽器の音出し・音合わせなんかに使われる初心者用の練習曲「韻頭」からはじまり31曲。その巻末を飾るのが,長曲 「四不像(スゥポスャン)」 です。
古い清楽の楽譜はお経の本みたいに一枚の紙を折りたたんで作られてますんで,「ページ」で数えるのもなんかヘンなんですが(w),ほかの曲がだいたい1折の半分から数開きくらいなところ,この曲の楽譜はなんと17ページぶんもの紙面に渡っています。
バイエルみたいな楽譜の最後の曲ですから,まあこの曲ができるようになればとりあえず 「免許皆伝」 ってとこだったんでしょうが,この曲譜,調べてみるといろいろとヘンなところがあります。
まず第一に----おなじ『清風雅譜』でも,本によって楽譜の内容が違っているんですね。
『清風雅譜』はお江戸昔ながらの木版印刷だったものが多く。著作権もあやふやだった時代のこと,いろんな出版元から,文字の形や字組の違ういろんな版が出てます。上にあげたのは明治11年,雉子町の骨董屋兼清楽家・曽我鼎二と元大坂町の本屋・法木徳兵衛の版ですが,庵主がよく使う明治17年の本ではおなじ曲の楽譜が----
----となっております。まあざっと見ただけじゃ漢字が縦書きでずッと並んでるってくらいしか分からんでしょうから。もうちょっと分かりやすいように,楽譜の文字を色分けして並べてみますね。
11年版 | 17年版ほか
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01 尺工上四上尺五五六工五五六四上尺五五六工五五六尺工六尺工六六工尺工五六工尺五五仩五六仩五五工尺工五六上工尺尺六六尺工尺上四尺上
02
尺上尺上四尺上
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04
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五五工尺工五六六工六六尺六工工
08
六工尺工尺上尺上上
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10
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12
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14
工六工尺上工六工尺上上四尺上尺上四乙合乙四四五五六工六工六五五六五五○
15 仩五六工工尺六六工工五六五六六工六工六
16
六工六工尺上尺上上
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六工尺
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18
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尺工尺上四尺上o
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尺工尺上四尺上o
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赤い丸は「句点」って言って,メロディの切れ目みたいなものです。これが多い少ないってくらいならまだ楽器の違いだとか,実際に演奏してた人のアレンジの違いくらいで済むんですが----ミドリ色になってる部分に注目してください。これ,曲の中で歌のかからない「間奏」にあたる部分なんですが----右の楽譜,左のにくらべるとこれがやたらと少ないですよね。
曲の構成がここまで違っちゃってるともう,これを「同じ曲」と言っていいものかどうかは怪しいものですねえ。さらに庵主所蔵の『清風雅譜』明治31年版だと----
----とまあ,一見して分かっちゃうくらい,楽譜自体のレイアウトが変わっちゃってます。
さらにこれ,楽譜の中身も上の11年版のとも17年版のともびみょーに違っちゃってるんですね。
渓派では明治10年代の後半,富田渓蓮斎を中心に,伝承されてきた楽曲や楽譜の整理・統合みたいなことをやったようで,清楽が最も流行したころ,主として使われていたのはそうした作業を経た後の楽譜でした。この31年『清風雅譜』もそういう「訂正版」のひとつです。たとえば富田渓蓮斎の『清風雅唱 坤』に載ってる「四不像」は三国志の関羽ネタ,歌曲「灞陵別」のメロディになってますが,この曲譜部分は上の31年版とほぼ一致します。
庵主のこの夏のしくだい1,はこの「四不像」の再現。
本によってバラバラなこの曲を,庵主はどうやってサバいたか?
そしてそこからどんな曲が浮かびあがってきたのか?
詳細はHP「清楽庫」『清風雅譜』の「四不像」の記事でどうぞ~ッ!!
「四不像 解説」 http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/SGALL/SG_ALL31.html
(おはり)
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