『清風雅譜』 を弾こう!!
![]() 江戸幕末から明治にかけて,日本じゅうで大流行りした「清楽」の東京を中心として勢力をはった「渓派」。 その基本的な楽曲をおさめた第一楽譜集が 『清風雅譜』(鏑木渓菴・編 安政6年序)です。 庵主のWSでも,清楽の曲はこの本に載ってる楽譜をもとに演奏することが多いですね。 清楽で使われた 「工尺譜」 って楽譜は音符が漢字なため,そこでもうアレルギっちゃう人も多いのですが,音楽を書き留めるのに,日本人ならカタカナで 「ドレミ…」,英米なら 「ABC…」で書くところを,中国は漢字の国ですから漢字で書いただけのハナシ。 工尺譜の多くはお店で買ってきた段階では,それぞれの音符の音の長さが分からない状態になっているので,これに点とか線を書き足して(「付点」といいます),音同士がどういう関係になっているのかを表し,完成させるわけですが,渓派の付点法は難しくないので,慣れちゃえば漢字縦書きの状態でもそんなに苦労なく読み解けます。 とはいえ---- まあ,清楽やら月琴やらのナニがナニやら分からない段階で,いきなりそういう古代の呪文みたいなモノ読めつーてもムリがありますので。 WSではこの縦書き譜を,もうちょい分かりやすい 「近世譜」 とか,中国音楽の方でよく使われる 「数字譜」 の形式に変換したものを使っています。 庵主,この夏のしくだい3はこの楽譜の集大成。 原本の画像を対照させつつ,『清風雅譜』収録の31曲をまるッと,PDFの楽譜に仕立てました。 まだちょいあちこち改訂の要はありましょうが,とりあえず公開いたしますので,こういう音楽に興味のある方は,HPのほうからいちどご覧になってみてください。DLも自由ですよ。 まずは 「明清楽復元曲一覧」 にお入りください---- ![]() ここは庵主が楽譜から再現した曲のMIDIやらMP3やらが各本ごとに並べられてる部屋です。 簡単な解説の下,いちばん最初にあるのが「渓派」の項目。そこのいちばんめが『清風雅譜』の一覧です。 ![]() この一覧表の右上目次の最後のところ,マルで囲んだところにPDF楽譜(ファイルサイズ:約6MB)へのリンクが張られています。 ![]() お使いのPCにPDFリーダーが入っていれば,だいたいこんな感じの画面が別窓で開きます。 即DLしちゃいたい人は,ひとつまえのリンク張った文字のところで 右クリ>名前を付けてリンク先を保存(K) でもいいですし,ひととおり読んでから右上,赤丸で囲んだあたりに出てくる「ダウンロード」のボタンからDLすることもできます。 各曲のページはこんなふうに構成されてます。 ![]() 1) は底本とした『清風雅譜』の画像。 庵主所蔵のなかでいちばん状態のいい明治17年版のを使ってます。メロディの読み解きに使う点や棒線のほかに,歌を合わせる時や楽器操作に関するカナ書きの記号や,これ持ってた人が弾くときに入れた装飾音の符が朱書きでカキコされてますが,「はあ~元本ってこんななんだ~」ってくらいのものなので,気にしないでください(w)。 2) はタイトル。 渓派での一般的な呼び方をカナでふってあります。ほかの流派,たとえば関西の連山派・梅園派や長崎派では中国語ッぽい発音になってるのが多いのですが,渓派ではふつうの音読で呼ぶことのほうが多かったみたいですね。 3) これは「近世譜」 というもので,右の付点つき縦書き工尺譜を,1文字1拍,4/4拍子の横書き楽譜に直したものです。 「ドレミ…」いこーる「上尺工…」なんで,工尺譜の漢字の並びさえおぼえちゃってれば,こっちのほうがずっとラクですし,月琴以外のほかの楽器と合奏するときなんかはどうしても必要になります。 4) これが「数字譜」。 上の「近世譜」はこれの数字を工尺譜の符字に置き換えただけですね。明治のころに西洋から入ってきて,五線譜よりもカンタンなので流行りました。近世譜と同じに「1234567」が「ドレミファソラシ」に対応してます。 5) 最後にかんたんな解説をつけてあります。 再現曲の作成までの詳しい工程や,それぞれの曲に関する詳細は記述 「明清楽復元曲一覧」 からどうぞ。曲一覧のタイトル部分をクリックすると,それぞれの曲の解説に飛べますから。 近世譜や数字譜の読み方については,PDFの最初のほうにかんたんにまとめてありますので,そちらをお読みください。 こんかいは楽器で演奏する部分,器楽部分だけですが,歌つきのほうについてもいづれ。 さて,この31曲をぜんぶおぼえてしまえば,まあ渓派ではいちおう 「免許皆伝」 みたいなもんだったと思います。どうぞがんばっておぼえてやってみてくだされ。 (おはり)
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