« 太清堂5 (1) | トップページ | 太清堂5 (2) »

月琴ぼたんちゃん(再)2

botan_08.txt
斗酒庵 再修理編 の巻2018.3~ 唐木屋月琴ぼたんちゃん(再)2

RE:STEP2 唐木屋は何度も甦る

 さて,唐木屋ぼたんちゃんの再修理。

 延長材を挿した後も,棹の調整は続きます。
 接合部に段差なく,山口のところで胴表板面から-5ミリ,抜き差しスルピタ,が理想です。
 今回はオープン修理じゃないんで,胴内の様子が分からない盲作業。調整はあッち削り,こッちに貼ってでかなりタイヘン----長時間の神経戦が続きました。

 なんとか棹がおさまったところで,補修部分の補彩に移りましょう。
 大きな損傷だったので,補修したのが少し分かるくらいになってたほうが,後々を考えると良いのですが,丸見え丸わかりってのもさすがにどうかと思います。(w)

 まずは新しく挿しこんだ補材の部分を,スオウやヤシャブシで下染め。

 色が着いて少し目立たなくなったところで,ベンガラを柿渋で薄めに溶いたものを何度も塗り重ねます。ベンガラは隠蔽性が高いので,全体にベタっと塗ると,いかにも「塗ったー!」って感じになっちゃいますから,補彩部分を隠すよう濃いめに塗ったほかは,なるべくムラムラにしました。

 手に取って見れば分かっちゃうけど,遠目にはまず分からない,くらいの感じを目指しましょう。
 棹全体にも少し色を足しながら………まあ,こんなものですかね。

 色止めに数度,柿渋と亜麻仁油を交互に塗ってできあがり。
 一見すると黒っぽい棹だったのが手擦れで色が落ちた,みたいな。ストラトのタバコ・サンバーストみたいな感じで,これはこれでなかなか(w)

 補材部分はまったくの新材なので,染料とかを吸って今はわずかに膨れてます。数年もすると枯れて,今度は痩せてきますので,今は少し目立って気になっちゃうかもしれませんが,ご容赦のほどを。

 …なんとか直りましたねえ。
 楽器は道具ですから,使われて壊れるのはまったく構わないんですが,演奏と関係のないところで壊されると,やっぱり少し悲しくなりますね。


 棹のほかは,棹口のめくれてるところをニカワで着けたのと,表板の胴体下部に板のハガレが少しあったので再接着したくらいのものです。後者のほうは今回の事故での損傷か,経年の接着劣化,もしくは前回のワタシの修理ミスによるものかちょいと分かりません(w)が,いづれも軽傷。
 今回の損傷,衝撃のかかった場所がもう少し棹先がわなら,糸倉も破壊されて棹の全交換・再製作くらいまでいったかもしれませんし,もう少し胴体がわだったら,さすがにもっと全体滅茶苦茶になっていたかもしれません。ほんとにまあよく棹の付け根だけ,ピンポイントで破壊しやがったもんですねえ。

 唐木屋ぼたんちゃん,その意味では寸手のところで死線をくぐりぬけた,と言えなくもありません。
 車にはねられて異世界に転生するとチート能力が与えられるのは定番ですし,ニンゲンに限らず何もかもそうなんでしょうが,一度死ぬような目に遭うと,いろいろと世界が変わるもの。今回は棹以外の部分にはさほど損傷はありませんでしたが,何らかの影響が楽器の音色にあらわれるということはやはり避けられないと思います。楽器の修理は,形を直すことも使えるようにすることもできますが,「完全に元と同じ音にもどす」ことだけはできないんです。
 ただ,前にも書きましたが。買ってすぐしまいこまれ,おキレイな状態で伝えられてきた楽器より,ボロボロでたどり着いた楽器のほうが,修理した後はなぜかよく鳴ります。

 では,そんな死線をくぐりぬけた勇者に,ご褒美を。
 新しい蓮頭を彫ってあげましょう。

 猫と牡丹…前回もオーナーさんからのご要望で,同じテーマの蓮頭を彫ったんですが,ちょっと凝り過ぎて失敗----Wハッピーの窓越しに牡丹を活けた花瓶が見える…はずだったんですが。うむ,見えない,何もだ!!(w)----という具合でしたので,ここはまた再挑戦ということで。

 ううむ,また牡丹が少々葉ボタン(キャベツ?)気味になりましたが,中国年画風景色の中にちょっとリアルな眠り猫。これはこれでまあアリかと。

 これを取付け組み立ててフレッティング。
 修理と棹の再調整の影響で,第1~4フレットがやや低くなり,第4フレットが棹上から胴端に移動しました。そのほか,低音弦のコースがわずかに右寄りになってしまうので,山口の糸溝を線1本ぶん外がわにズラして新しく切り直しました。

 操作性は上々。まあもともと唐木屋の楽器はクセがなく使いやすいのが信条です。
 うちの7号コウモリさんは同じ唐木屋製の楽器ですが,庵主は昔から気難しい人とのコラボとか,失敗の許されないような一発録りなんかの時は,好んでこの楽器を持ってゆくことにしています。ふだんギグとかで使ってる石田不識の月琴に比べるとパワーの点では劣りますが,万人向けの優しく分かりやすい音色とバランスの良い操作性で,いちばん信用している楽器ですからね。

 わずかですがフレットが低くなりましたので,運指への反応も多少違っているかと。
 音に関しては前の修理の時より,ずいぶん甘やかな感じになってる気がするなあ----ただこれは今回の修理のせいなのか,前回の修理から数年たって板や補修部が乾いたので音色が変わっただけなのか,ちょと分かりませんね。

 **** 月琴の分解梱包について ****

 棹を抜き,糸巻も外して右上の画像みたいな感じで重ねます。この上からもう一枚,棹をくるむみたいにプチプチ入れればカンペキかな?
 これがいちばん安全な状態です----まあもちろん,「こわれもの」「下積み厳禁」にするのはお忘れなく。

 とはいえ,また壊れたらいつでも直します。
 弾いてもらえることこそ,楽器にとってのシアワセ。弾いてもらったうえで壊れるなら,楽器も本望というもの。
 また,ぞんぶんに弾いてあげてください。

(おわり)


« 太清堂5 (1) | トップページ | 太清堂5 (2) »