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月琴59号 ぴょんきち(3)

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どっこい生きてる 斗酒庵 の巻2018.3~ 月琴59号 山形屋ぴょんきち(3)

STEP3 ガールフレンドがいたよね,カエルの。

 さて,自出し月琴59号・山形屋ぴょんきち。
 修理に入ります。

 世界の中心が愛を歌うように,修理も中心からはじめましょう。
 雄蔵様の野郎殿がエラいもんブチこんでくださりやがったため,まずはなにより内桁の補修から。
 前回も書きましたように,単純な構造である月琴にとって胴体の構造を支えるこの内桁は,楽器の背骨でもあり腰骨でもある重要箇所。これをしっかり直しておかないと,他の作業になんて移れません。
 いっそ新しいちゃんとした材で作り直そうかとも思ったんですが,いちおうこれでもオリジナルの部材。割レ欠ケに節抜ケ,けっこう複雑な感じですが,手順さえ踏めばきちんと直りそう。とりあえずはやってみるといたしましょう。

 まず,木目方向の割レをエポキで継ぎます。

 ここは本来壊れてちゃいけないパーツなので,頑丈なバケガク系接着剤の使用も可とします。
 針葉樹は材に油分を含んでますので,あらかじめ割レ目全体にエタノをふりかけてしばらくおき,そこに同じくエタノで少し緩めたエポキを流し込みます。
 元通りに合わせたところで,くっつかないようにラップ,ズレないように輪ゴムとかクランプをかけ,これで一晩固定。 
 割レ目がくっついたところで,つぎに表板にへっついていたがわの欠ケをなんとかします。

 用意するのは-----

 ひのきのぼう
 こうげきりょく:2 ねだん:15

 ななめに欠けた部分を整形して平らにし,うまく合わさったところでテープや輪ゴムで固定します。ここもまた接着はエポキ。

 またまた一晩圧着。くっついたヒノキの棒の余分を取り去ったら,最後に節穴を埋めます。

 エポキと木粉,骨材はもちろん,欠ケの補修で出た同材のヒノキの粉を使っております。

 これだけの部品ですが,足かけ三日かかりました。
 作業前は節穴のあったあたりから割れてグラグラ,潰れてグシャっとなってましたが,こんどはビクともしません。

 内桁の修理が終わるまでの間に,胴本体のほうもできることはやっておきましょう。
 ひとつめは響き線の手入れ。
 前回も書いたように,外が真っ黒だったわりに内部はキレイで,響き線もたいしたサビは浮いてませんでしたが,ちゃんと磨いて,柿渋とラックニスで防錆処理をしておきます。

 ふたつめは接合部の矯正です。
 2か所ばかり部材の変形からくる食い違いが出ています。
 はみ出てるほうの板端にお湯を刷き,さらにヒドい箇所には濡らした脱脂綿とラップをあて,太輪ゴムを渡してそのかけ位置をズラしながら,接合部の両端がピッタリ合うように調整してゆきます。ゴムだけでうまくいかない時は,さらに当て木とかクランプも使うんですが,今回はそこまでではなかったようです。

 側板の矯正と並行して,表板の剥離個所の再接着も行います。事前調査時には右下の一箇所だけだったんですが,接合部の矯正でゴムかけたら,その圧力で天の側板にもハガレが出ちゃいました。(^_^;)
 とはいえどちらも軽傷。
 出来たスキマにお湯とニカワを流し込んで,クランプかけて部分接着。このへんは山形屋,もとの工作が確かなので助かります。

 矯正が終わったところで,三つの接合部にニカワを流し込み,再接着。
 ニカワがじゅうぶん行き渡ったところで,周縁にゴムをかけまわし,接合部を密着。高度な加工技術を持った山形屋,側板の厚みは最大で8ミリ,接合部となる端のほうは5ミリあるかないかというところ。材が薄いので矯正も効きますが,接着面がせまいので接着はたいへん。いちど矯正した部材を,ピッタリ合うようにさらに指先で微妙に調整しながらの精密作業です。

 また一晩おいて,接着に問題がないと確認したら,いつもの補強。
 接合部の裏がわに,薄い和紙を重ね貼りします。
 緩く溶いたニカワを染ませ,硬めの筆で叩くように,目を交差させながら3重ねさせます。
 空気とか入っちゃうとそこからハガれたりしますので,けっこう慎重に。
 紙ってのはもとは木ですからね,薄くても木の板貼りつけてるのと同じですし。ニカワを染ませるてことは,木と皮の複合素材にするみたいなもの,かなり丈夫です。乾いたら補強・保護&防虫に柿渋を2度ほど塗り,表面にラックニスを刷いて完了。

 胴四方の接合部もカッチリと固まり,立派な「桶」の状態になったところで問題の内桁を戻します。
 接着部を筆でじゅうぶんに濡らし少し柔らかくしたところで,ニカワを塗った内桁をハメこみ,重しをかけます。この内桁,音孔のあたりが薄々なので,当て木を工夫して,なるべく桁全体が密着するように調整してます。

 20号とかでもやったんですが,下桁の左右端に端材を削ったスペーサを挿入して,下桁と側板とのスキマを埋めました。

 唐物月琴がそうであるように,この楽器は内桁が中央一枚だけでも本来構造的な不利はなく,国産月琴の下桁は「見た目的により安定したカタチ」にするため入れられるようになったもので,当初はあってもなくても構わない,盲腸的な部品だったと庵主は考えております。ここの取付けが不安定なカタチになっている例はほかでも見られるので,この楽器の作家の間では,あるていど広く伝えられていた工作だったのでしょうが,この工作自体に確たる意味や効果はなく,おそらくは唐物楽器から国産月琴が出来てゆく過程で生みだされた迷走的工夫の一つだったのだと思いますね。
 現に,渓派の月琴の系を正しく引く石田義雄などは上桁も下桁も完全なハメ殺しにしちゃってます。また,この楽器は胴体がしっかりした箱になってるもののほうがより良く鳴るというのも,いつも言っている通り----ここはもうガッチリへっつけちまいましょーぜー。

 さて,接合部の補強もバッチリ,内桁もガッチリ噛み合いました。
 いよいよ裏板を貼って,胴体を箱に戻します!

(つづく)


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