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太清堂6らんまる (3)

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斗酒庵 月琴の呼ぶ声を聞く! の巻2018.4~ 太清堂6 らんまる (3)

STEP3 毎月もう夏休み

 さらに分解作業を続けます。
 糸倉の先っぽの蓮頭はオリジナルの部品ですが,上下逆に付けられちゃってています。そのうえその下の間木も接着が剥がれていて,糸倉左右とちゃんとくっついていない状態ですねえ。

 これを直すのにはまず蓮頭をひっぺがさなきゃならないんですが,ここに大問題。

 ----これ,よりによってウルシでつけられちゃってるんですね。

 前所有者がやったのか昔の古物屋がやったのか……楽器として「使うため」の修理にしては雑なので古物屋のシワザだとは思いたいんですが。蓮頭とかフレットとかお飾りがポロリするのがこの楽器の宿命とはいえ,時折イラッとする余りボンドや強力な接着剤を使っちゃう人もおりますから,前所有者がやったとしても,まあ気持ちは分からぁでもありません。
 ウルシは塗料としてのほうが有名ですが,たぶん日本の伝統的な素材のなかでは「最強」の部類に入る接着剤でもあります。硬化までの時間がやたらと長いのが欠点ですが,いちど固まったウルシは耐水耐熱耐薬品,硬く衝撃にも強く,ちょっとやそっとのことではハガれません。
 現在だとエポキなんかがこれに近いですかね。

 同じようにウルシを使った形跡が,棹や胴のフレット接着痕なんかに見えますが----

----これらのフレット痕はいづれも少しエグレてガタガタになっちゃってます。一度ウルシで固めたフレットを除去した際,下地の材もいっしょにモギとられちゃったんですね。このように,「壊れるべき時に壊れるべきところ」を「壊れないように」してしまった場合,それを元に戻すには「壊れなくてもいいような部分を壊さなければ」ならなくなるのです----分離とか分解ではなく,文字通り「破壊」しなきゃならないんですね。

 ウルシで接着されているこの蓮頭は「剥がす」ことができません。ここは装飾ではありますが,棹をぶつけたりしたときなど,はずれて衝撃を吸収してくれる,という機能もいちおう持ち合わせております。何度も書いている「壊れるべき時に壊れるべきところ」の一つなのです。

 ----というわけでこうだ。

 スプラッタ映画よろしく首をちョん切り,接着面についたウルシを粗いペーパーでこそぎとります。ウルシが滲みこんでるとニカワでの接着ができませんので,塗膜の下も少し削ってしまわなければなりません,がっでむ。
 ウルシまで使ったにしては接着があまりにも雑。
 こちらにとっては幸運なことに,間木がぜんぜんくっついてなかったので,左右のウルシ層を切ったら間木ごとはずれてきました。

 さらに分解し,まだ付着している固まったウルシを刃物やペーパーで丹念に除去します。上に書いたとおり,ここは丁寧にやっとかないと再接着の作業に支障が大です。
 きれいに清掃した糸倉の先は,さっさと再接着してしまいます。ここはそのままにしていると壊れやすいところですので。
 間木がもともと小さめだったようですが,削ったせいもあって少し痩せてしまいましたので,間に薄いスペーサを入れて調整します。色味が違ってますが,ここは後で染め直します。

 ウルシ接着による棹の被害個所をもうひとつ始末しておきましょう。
 指板上のフレットのついてたところがエグレてしまっています。庵主のやったみたいに切り取ればまだ良かったんでしょうが,かなり力まかせにモギとったらしく,かなり深くなってる箇所もありますね。
 唐木の木粉をエポキで練ってパテ埋め。フレット接着痕周囲にはウルシもまだ少し残ってますが,それは整形の時いっしょに削り落とすことにします。
 少し色味が違っちゃいますが,まあこんなものでしょう。

 唐木粉のパテを作ったので,それをついでに山口の上面にも盛っておきます。
 無駄な糸溝がいくつも切られてますので紛らわしい。ぜんぶ埋めてから,後でちゃんと切り直しましょう。
 パテはやや緩め,曲面ですので盛ったままにしてると少し流れて,てっぺんの部分が薄くなったりします。こういう時は盛ってすぐ,クリアフォルダの切れ端などをかぶせて少しおしつけてやると,思ったところに安定したまま硬化してくれますよ。

 次に地の側板の端の欠けを補修します。
 ここについていた補強の小板の接着が自然でしたので,製作後に衝撃か木質による自壊で欠けたのだと思いますが,大事な胴の接合部のところですので,直しておかないとちゃんと組み立てられません。
 まずは斜めになった欠け部分をヤスリで少し整形----なんかモロモロとした感触ですので,すこし腐れも入ってたのかな?
 ここに少し大きめに削った端材を接着します。
 ちょっと精密な細工になりますので,加工しやすいカツラを使っています。

 固まったところで整形。
 太清堂の工作は精密でこの部分などもピッタリ合わさってましたので,オリジナルの木口をなるべく傷つけないよう,補材だけうまく削っていきます。
 ----うん,ピッタリ。

(つづく)


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