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太清堂6らんまる (5)

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斗酒庵 月琴の呼ぶ声を聞く! の巻2018.4~ 太清堂6 らんまる (5)

STEP5 太清堂かく語りき

 さいきん,ちかくの公園で月琴を弾いてたところ。
 自転車に乗った小学生たちが,
 「お,なんだ,アレなに?!」
 「……バーチャルユーチューバーとかじゃね?」
 という会話をして通り過ぎてゆきました。
 そうか,月琴を弾いてる庵主は
 「ばぁーちゃるゆぅちゅーばー」だったのか。


 ----というわけで(w),太清堂らんまる。

 毎度おなじみ仕上げ工程しゅらしゅしゅしゅに向けて,あっちもこっちも進めてまいります----庵主はAのあとB,BのあとC,という工程より,ABC…が同時進行で進んでいき,最後のほうでイッキに合わさって完成!てのが好きでして。
 たがいにはほとんど関係なく進行していたいろんなことが,合体ロボの変形シーンのように ガキーン!ガシーン! と組み合わさってひとつのものになってゆく過程は爽快感すらあるのですが,毎回,最終工程になると作業が分刻み秒刻みになってちょっと死にかけますです,ハイ(^_^;)

 胴上のニラミ(左右に付く大型の装飾)が片方なくなってます。太清堂にしてはびっくりするほどいいデザイン(w)のお飾りですからね,これはがんばって再現してあげましょう。

 前の記事で書いたように,オリジナルはクスノキの板に彫られています。剥離のため水で濡らす前はもう少し濃い赤茶色をしていましたが,クスノキ本来の色はもっと薄黄色いので,扇飾り同様,スオウで染められているのは間違いありません。
 裏かえすと見える内がわ輪郭部の彫りは 「裏彫り」 といって,木彫で花弁や葉先などを薄く見せる時に使われるテクニック。楽器屋さんなんかは逆にこういうこと知らなかったりするので,ただ板に彫り目を入れただけの平面的なお飾りになってることも多いですね。

 補作はホオの板を使用。残ってるほうのお飾りで型をとり,糸鋸などで輪郭を刻み,オリジナルを見ながら左右逆転で彫りを入れてゆきます。

 こういうの上手い人の彫物は,彫り面に刃物の痕しか残ってないことが多いんですが,太清堂はトクサかヤスリみたいなものも使ってますね。シッポのほうとか,刃痕がほとんど見えずツルンとしてます。
 これを染め,褪色したオリジナルのほうは染め直して,左右と扇飾りが,蓮頭・山口・半月と同じような赤っぽい唐木の色合いになるように調整してゆきます。

 主人公:「うおぉおおおッ!我が "染色力(そめヂカラ)" のすべてを使って,キサマを同じ色に染めてみせるうッ!!」
 敵首領:「バ…馬鹿なッ!… "染色力" 2000,だとッ!」
 主人公:「…うおぉおおおッ!!」

 (「染色戦士ステインマン」第21話 「対決!悪の纐纈城!」)

 古めかした風合いももたせたいのでうちにある染め汁総動員。スオウで染めてミョウバン発色,薄めたオハグロ液を塗って月琴汁(月琴を清掃した時に出た重曹液を煮しめたもの)で二次発色,やや青黒い赤紫になったところで柿渋とヤシャブシでスオウの赤味をおさえつつ茶味を増してみました。現在はまだ補作のほうがわずかに赤味が強いのですが,半年ほどして褪色すると同じくらいの色味に落ち着くでしょう。

 胴体の作業とほぼ同時進行で,棹のフィッティングも行ってゆきます。オープン修理だと棹本体のほか,胴の棹孔や内桁のほうも大胆に調整できますんで,裏板を接着して胴が箱になる前に,おおまかなフィッティングを済ませてしまいます。

 ひとつ前のぽんぽこと同じく,この楽器の棹も設定としてはこの楽器として理想的なものになっているのに,それに合わせた加工や調整がなされていないため,結果としてスキマだらけのヘンテコな取付けという謎の工作になっております。
 すなわち,内桁のない状態で棹をきっちりはまるように挿しこむと,棹本体は背がわにわずかに傾き,山口のところで胴表板の水平面から-5ミリというベストポジションになっているのに,そうすると延長材の先が表板にぶつかっちゃったりするわけですね。
 「ここをこうすればヨイ」ということは「知ってる」のに「ナゼそうすればヨイ」のか「理解してない・分かってない」と,どんなに腕のいい人でもこういうチグハグな工作をやらかしちゃうもの----そうして百年後くらいにこういうヤツに m9(^Д^)pgr と指差して笑われたりしますのでみなさんも注意してください。(w)

 まずは,棹がきちんとその理想の角度で胴に収まるように,延長材をはずして付け直します。お湯で棹基部を湿らせ,さらに濡らした脱脂綿を巻いて接着をゆるめるのですが太清堂,,接着・接合の工作はむだに精密(w)なので,はずれるまで一晩ちょいかかりました,さすがです。

 はずれた延長材を乾かし,V字に尖った接合部を削って角度を変えます。従前は胴との接合面に合わせると,先端が面板についちゃうくらいでしたが,これを面板とほぼ平行になる角度に直して,棹本体と胴の接合はそのままに,先端がちゃんと内桁の孔に収まるよう調整します。
 58号の時は,オリジナルの延長材の長さがギリギリ過ぎて,調整のため削ったら内桁まで届かなくなっちゃうため,延長材をまるっと交換することになりましたが,これは先端に2センチ近く余裕がありましたので問題ナシ。今回の楽器はおそらく40号クギ子さんなどと同時期----ぽんぽこよりは後で,太清堂としての構造や工作は確立されているものの,いまだ一期での製作本数は少なかったころの作と思われます。58号の延長材がクリからホオとなり,短かめになっていたのも,のちの量産化にともなうコストダウンの影響だったんでしょうねえ。

 この作業中に気がついた(w)んですが,この延長材。オモシロい…というか,楽器屋としては納得のゆかない工作となっております。
 この延長材,一木ではなく,半分の厚みの板を二枚貼り合わせて作ってあるんですね。
 こないだの「ぽんぽこ」では極端に短い棹茎の先端になぜだが足し木がしてあったり,32号でも延長材の先端が意味もなく継がれてたりと,太清堂はこの部品でなにかしらヤラかしてることが多いのですが,今回もでしたかあ(汗)
 もちろん,庵主もこんなのはハジメテ見ます。
 まあ,ちょっと見では分からないほど貼合わせの工作も良く,現状,これでなにか構造的・強度的な問題が出ているわけでもありませんが。ここをこういう工作にすることに何らかの意味があったようにも,材料が貴重だとかいう経済的な理由があったようにも思えませず,いつもながらほとほと困惑いたしをりますです,ハイ(^_^;)
 調整後は画像のように棹茎がごくあさーい「ヘの字」になりますので,胴に入れる時にちょっとひっかかる感じがありますが,これでも使用上・強度上の問題はありません。
 つづいてさらに棹と胴がスキマなく密着するよう,さらに棹の接合面を微調整してゆきます。とくにこの指板と胴面板の接合部が面一のように,触っても段差が感じられないくらいになるまで続けます。
 見て分かるくらいだった段差が,指先でわずかに感じられるほど,たとえば紙一枚の厚みほど,たとえば平面に髪の毛やうぶ毛が置かれてるくらいの感触となり,やがて分からなくなる----それっくらい,こまかーい作業なんですよぉ。(泣)
 それでもこれもまた,太清堂の元の工作が精密なおかげで,今回もほかの楽器に比べればまだラクだったほうです。調整のため貼ったスペーサも3枚ほど……つってもやっぱり精密作業,なんやかんやで一週間くらいかかるんですよね,コレ。

 それにしても分からん……なぜ最初っからちゃんとこうしておかんのか。組むときにちょっと調整すれば,後の人間の苦労もナイものを(怒)

 山口はオリジナルのが残っていたので,今回はそれをちょっと補修してそのまま使うつもりだったんですが。棹の調整によって,指板面が背がわに傾いた影響で,オリジナルの山口では若干丈が足りなくなってしまいました。
 テールピース…半月の糸の出るがわの高さは9ミリ。通常の結わえ方をすると,糸はそこから1~2ミリほど下がったところから出ます。
 棹の指板面はの傾きは山口の手前で胴水平面より約5ミリ。この楽器の指板は山口の手前で切れて段差になってるタイプですので,山口の高さは最低でも「指板の厚さ+5ミリ+7ミリ」以上必要。操作性から言うと,そこからさらに1~2ミリ高ければ理想的です。
 というわけで,前回のぽんぽこ同様,丈15ミリの少し大き目な山口となりました。材はカリン。唐木なんでちょっと油でも含ませてから磨けば,そのままでもキレイですが,スオウなどで軽く古色付をしておきます。

(つづく)


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