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長曲「仁宗不諗母」の復元

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斗酒庵 「秘曲」をひもとく! の巻『清風雅唱-外編』「仁宗不諗母」の復元(1)

STEP1  前説・簡解

 本稿では富田渓蓮斎『清風雅唱-外編』に掲載された長曲「仁宗不諗母」の歌曲としての復元を行う。テキストとして用いた国会図書館アーカイブの資料は乱丁本であり,歌譜は画像のコマ数でいうと----

・16-20コマ(5)>
・30-31コマ(2)>
・24-28コマ(5)>
・57-58コマ(2)

----の計14コマで完成する。
 他の資料に収録された同題の歌譜に基づき,画像を正しい順でつなぎ合わせたものが以下である。


 歌詞対照譜,符字のほかには句点と音の長さがきめられていない不定拍長音の記号だけが付されている。もちろんこの譜単体で曲調が読み解けるようなものではない。
 歌詞の頭に「○」と「・」の指示がついている。どちらもの記号も書中に解説はないが,ほかの資料ではここが「oo」と「・」となっていることから考えると,板(=拍板:打楽器)の指示ではないかと思われる。「○」が2拍「・」が1拍,もしくは「○」で板を入れ「・」は板の入らない歌詞の切れ目ということかもしれない。

 譜は長くはあるが,曲は最初と最後の部分以外ほぼ同じようなフレーズとその小バリエーションの組み合わせ,および繰り返しで構成されており,そのほかに2箇所「白」,すなわち短い科白の挿入がある。

 復元作業は,以前に手がけた「四不像」などと同じく,符字順列上の類似や句点などを参考として,全曲をあるていどの大きさのフレーズに区分し,音長の手掛かりのある他資料を参照しつつ,再現された曲調をMIDIで組んで実際の音楽としながら,頭から一つ一つ読み解いてゆくこととなる。

 今回,主として用いた参照資料は,土岐達『月琴雑曲集』である。これに収録された「仁宗不諗母」の譜には,不完全・不正確ながらいちおうの音長指示が付されている。基本は----

 無指示の符字:1字1拍
 符字下に「レ」:2拍
 「。」:休符1拍
 傍線:半拍

 そのほか作者による解説はないものの,復元される楽曲と他の譜との比較から,「レ。」は2分半+休符の全符(近世譜だと「上--○|」),「上~尺」と符間に「~」の記号をはさむものが2分半4分もしくは4分半8分の不均等関係,「…」が不定拍長音である可能性が高い。
 本稿では以降これを「土岐達」と略称する。
 土岐達の長音指示は,あくまでも備忘録的に曲中の「ここは必ずのばす」「ここでぜったい切れる」といった重要点を指し示しているだけのもので,渓派の付点や四竃訥冶などの近世譜のそれのように,それによって全体の曲調を再現できるようなものではない。ただ本曲の場合は,使用されているフレーズの多くが他の清楽曲,とくに「○○流水」と題されるような一群の曲中に類似の例を数多く見いだすことができるため,フレーズ中の数箇所,長音や句点の位置が分かるだけでも,そうした類例との比較検討上,相当に役に立つものとなることだろう。
 ほかに符字や歌詞の参考資料として,河副作十郎『清楽曲牌雅譜』(=略:河副)と,筆者所蔵の写本『小蘇女史清楽譜(仮)』(=略:小蘇女史),長崎歴文所蔵の『清楽』(中村18:34 地巻=略:歴文清楽)などを用いる。

 以下各項,はじめに掲げた3桁の数字が小分けにしたフレーズの番号と工尺譜,次段に歌詞,続いて各フレーズの考察とそれによって再現された曲調を,4/4,1字1拍の近世譜で表わすこととする。


(つづく)

funen02.txt
斗酒庵 「秘曲」をひもとく! の巻『清風雅唱-外編』「仁宗不諗母」の復元(2)

STEP2 復元前半

001 尺六五。工工尺上四合。尺工。尺上尺上(切)。

 ニイ イュイ エー ツャン ツィン サア ツァヲ チュウ リャウ
○你 与 爺 ・将 青 沙 𦋃 住 了

 ニャン ニャン レン フワア ラ ラ イン シャン リャウ 
・娘 々 臉 ・花 喇 々 引 ・上 了
 ウ チャウ メン ワイ
 午 朝 門 外

 はじめの「尺六」2音,歌詞「你与爺」,土岐達では「…」で不定拍の長音が指示されている。以前本書の譜では「你与」までが「尺」1音,「爺」は「六」がのびて小さな「五」につながっており,句切りの「。」が添えられている。不定拍長音の尻に付いた「五」は器楽に対する指示だろう。

(器楽)尺---|----|----|六---|
    --五○|
(歌唱)尺---|----|尺---|六---|
    你         与    爺
    ---○|

 「工工尺上四合」歌詞は「将青沙𦋃住了」,1字1音で末尾の「合」には不定拍長音の指示がある。土岐達はすべてを2拍としているが,不定拍指示のある末尾「合」を全符+2分,4小節として体裁を整えよう。

 工-工-|尺-上-|四-合-|---○|
 将 青  沙 𦋃  住 了

 続く「尺工」不定拍長音の2符で「娘娘臉」「花喇々引」という2つの小フレーズが唱えられる。画像の上では「花喇々引」のほうが長いが,後者の「喇々」は語気音の繰り返しであるので,両者同じくらいの長さで良いと思う。

(器楽)尺---|----|工---|----|
(歌唱)尺--尺|尺--○|工-工工|工--○|
    娘  娘 臉    花 喇々 引

 つぎの「尺上尺上」を土岐達は,はじめの「尺上」と末の「上」を各2拍,3符めの「尺」を不定拍長音とする。本書ではすべて不定拍長音で,3符め「尺」の不定拍の傍線の内がわ,歌詞「門」の横に小文字で「四」,末「上」の不定拍指示の尻に「切」と書かれ,句切りの「。」が添えられている。小文字の「四」は歌唱に対する指示ではないかと思われるので----

(器楽)尺---|上---|尺---|--上-|
    ---○|
(歌唱)尺---|上---|尺-尺-|四-上-|
    上    了    午 朝  門 外
    ---○|

としてみる。次の歌詞の頭に「○」があるのて,一度ここで句切ろう。


002 上工六尺。工四上尺。工四上尺。工四上尺四上尺工上四仩合。

 タウ キン チャウ ツウ テン キ
○到 今 朝 ・子 登 基
 クヮン ワン ミン ム キャウ キャイ ポ ネン ニャン ツィン
・管 万 民 ・母 叫 街 不 諗 娘 親

 「上工六尺」歌詞は「到今朝」で土岐達は頭の「上」のみ2拍,本書の譜より真ん中の「今」に「工六」2音があてられていることが分かる。3度くりかえされる「工四上尺」はいづれも「工」と「尺」が2拍,最期の「四上尺工上四仩合」は2つめの「四」にのみ2拍の指示がある。これをそのまま近世譜に直すと

  上-工六|尺工-四|上尺-工|-四上尺|
  -工-四|上尺-四|上尺工上|四-仩合|

となる。4/4の8小節ぴったりでおさまりはよいのだが,調子に対する長音の位置,前後の関係を考え,長音でないはじめの小フレーズの区切りに休符を置く,また次が器楽間奏であるところから末尾「合」をのばして2分半+休符の全符とするとやや見られる形に整った。

 上-工六|尺○工-|四上尺-|工-四上|
 到 今  朝 子  登 基  管 万
 尺-工-|四上尺-|四上尺工|上四-仩|
 民 母  叫 街  不 諗  娘親
 合--○|

 ここまでがいわゆる「序曲」「解説」にあたる導入部のようなもので,つぎの間奏から先が芝居の本筋である。


003 合四合四仩合四仩仩。伬伬仜合合四仩合。四仩仩

 間奏部,譜横に「流水」とある。本曲の間奏部の曲調は「○○流水」と題される他曲に文字順列上,フレーズの似通ったものが多い。土岐達の音長指示に従うと----

  合四-合|四仩--|○合四仩-|仩伬伬工|
  合○合四|仩--○|合四仩-|仩○

であるが,まず出だし「合四」以下の小フレーズは連山派の「林氏流水」など「○○流水」と題する清楽曲中によくある出だし部分と同じものであろう。それら類例から考えると,出だし2符「合四」は1拍2拍ではなく各2拍,すなわち「合-四-|」である可能性が高い。
 1番目の句点以降,2・3番目の小フレーズは符字順列上,「漫板流水(漫波流水)」の出だしと一致する。同様の曲調はまた「林氏流水」のほか「竹林流水」,連山派『声光詞譜』の「流水」,「如意串」などの中などにも見られる。
 これらを参考にすると----

 合-四-|合四仩-|合四仩-|仩--○|
 伬-伬仜|合-合四|仩-合四|仩-仩○|

という曲調が得られる。土岐達の指示・句点や原譜の2番目の句点を無視するかたちになるが,清楽曲としてはこれがもっとも妥当であろう。次の歌唱との間を考えると,末尾の「仩○」を全符の長さで揃えたほうがよいかとも思われるが,曲導入部のはじめの一段めが終わったところであり。間奏でぴったり8小節,これ以上間があくのもやや不自然なので,とりあえずはこのままとする。


004 尺六。工尺工尺工上

 ニ イュイ エヽ ツャン クヮン カゥ
○你 与 爺 ・将 官 告

 「尺六」にいづれも不定拍長音の指示,歌唱は「尺」で「你与」,「六」で「爺」を発音する。出だし部分と類似したフレーズなので,長さは 001 と同様か,それより少し短いくらいが適当であろう。本譜では「六」の後に小区切りの「。」が入っている。「工尺」で「将官」各1字,「告」に残りの4符があてられており,土岐達ははじめの「工尺工」までを各2拍としている。不定拍長音の部分だけは不明だが,あとは末尾「上」と次の器楽部分の間に休符を1拍置く程度でいいのではないかと考える。

(器楽)尺---|----|----|六---|
    -○工-|尺-工-|尺工上○|
(歌唱)尺---|----|尺---|六---|
    你         与    爺
    -○工-|尺-工-|尺工上○|
      将  官 告


005 上四上上。尺工六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 011,017,022,027,033,036,039,042,049 として同じフレーズが出てくる。
 歌唱なしの間奏部分。土岐達の指示だと----

  上四上-|尺工六-|尺六工○|工尺工尺|
  工六--|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

となる。16符めの「六」とつぎの「五」の間に音長の不均等関係を表すと思われる「~」が入っているが,これは2分半4分か4分半8分か分からない。長崎歴文の写本『西奏楽意譜』(中村18:57)の「林氏流水」の中などに,これと一致するだろうフレーズが見られる。符字順列は----

  上四上上尺工六尺六工工尺工尺工六五六工尺上合四上

この長崎歴文写本の「林氏流水」は符字順列から推測して,渓派や連山派で一般的な「林氏流水」とは少し異なり,「徳健流水」の出だしを「林氏流水」のそれに替えただけのような曲である。該当箇所は渓派の「徳健流水」(SG016)で言えば,2段8小節目からの以下のような部分にあたる。

                 上四上-|
  上-尺-|六-尺六|工--○|工尺工-|
  尺工六○|五六工尺|上-合四|仩--○|

これらのことから,前の間奏部分と同じくこの箇所も,「林氏流水」や「徳健流水」中のフレーズのヴァリエーションであろうと推察される。土岐達の長音指示とこれら類例の曲調を参考に少し整形すると----

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上○合四|
 仩-仩○|

というあたりが妥当であろう。


006 上尺工六工尺 合合四仩合四仩仩

 ホー パン リィ
○部 班 裡 

 018,034 に同様のフレーズがある。
 前半歌唱は3文字で符の配分は「上 尺工 六工尺」,土岐達はこのうち「上」と「六」に2拍の指示を付す。後半は器楽のみで,土岐達は1符めと7符めに2拍の指示,近世譜にすると

  上-尺工|六-工尺|合-合四|仩合四仩|-仩

となる。前半はそのままで良いが,後半「合合四」以下は前項同様,流水調の曲によくあるフレーズなので----

(器楽)上-尺工|六-工尺|合-合四|仩-合四|
    仩-仩○|

と整形する。
 「工尺」4分で切れるため,このままだと歌唱部分の切れかたがやや唐突でつながりが悪い。伴奏とは別に,歌にもう1音低い「上」を足して,間奏に少しかぶさるくらいにくらいすると,歌いやすく,また聞きやすくなるだろう。

(歌唱)上-尺工|六-工尺|上--○|○○○○|
    部 班  裡
    ○○○○|

007 (白)家 爺 為・何 不 穿 帯

 器楽なしの科白部分。


008 尺尺工六五仩五仩五五仩六工六 六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 ニイ キャア エー エヽ ヽヽ イュイ スエン ワン
○你 家 爺   与 先 王 

 013,019,024,029,044,046 に同じフレーズがある。
 前半歌唱部分,土岐達の指示によれば----

  尺-尺工|六○五仩|五○仩五|五-仩六|工六 

となる。これに歌詞をあて,合わせて多少整形すると

  尺-尺工|六○五仩|五○仩五|五仩六-| 
  你 家  爺 エエ エ エエ 与ガ先ナイ
  工-六-|
  王

というあたりになろうか。4小節目「五」をのばすか「六」をのばすかは少し悩ましいところなのだが,ここでは歌詞の「与」に語気音「ガ」がついているので,こちらを長音とした。歌詞の配分によっては「六」が長音で良い箇所もあるかと思う。土岐達による後半間奏部分は----

  六-尺六|工○工尺|工尺工六|--五六|
  工尺上-|合四仩-|仩

であるが,これも連山派の「林氏流水」「清響流水」「徳健流水」に,   六-尺六|工--○|工尺工-|尺工六-|   五六工尺|上-
というほぼ同じフレーズが見える。これにほかでも繰り返される末尾「合四仩仩」を足したものが妥当であろう。

  六-尺六|工--○|工尺工-|尺工六-|   五六工尺|上○合四|仩-仩○|

(器楽)尺-尺工|六○五仩|五○仩五|五仩六-|
    工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
    尺工六-|五六工尺|上○合四|仩-仩○|
(歌唱)尺-尺工|六○五仩|五○仩五|五仩六-| 
    你 家  爺 エエ エ エエ 与ガ先ナイ
    工-六○|○○○○|○○○○|○○○○|
    王
    ○○○○|○○○○|○○○○|○○○○|


009 上尺上尺六五六工尺 合合四仩。合四仩仩

 チョエン ヒャア サン リン
・穿 孝 喪 霊 

 014,020,025,030,037,043,047 に同じフレーズが見える。
 前半歌唱,土岐達の指示では----

  上-尺上|尺六-五|-六-工|-尺 

だが,これは歌詞の配置から考えて,2音を2拍にするだけで整う。後半は 006 と同じだが,最初の「合四仩」の後に句点があるので,「仩」を2拍から1拍+休符とする。

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 穿    孝    喪  ガ 霊
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|


010 尺尺工六五六五六五六六六六六 工尺工尺工上 

 ツャン ヒャン パンアヽアヽ ア アアア ターウ レエヽヽ ヅァイ
・将 香 盤 桃  列 在 

 同様のフレーズはここのほか 016,026,032,035,038,041,048 として登場する。
 土岐達の版では「六五」のくりかえし,連続する「六」の回数などに小変異がみられるが,本譜の場合,その文字順列はすべて同じである。
 土岐達ははじめの「尺」のほか,連続する「六」の後の「工尺工」3符および末尾の「上」に各2拍の指示が付けている例がある。近世譜に直すと----

  尺-尺工|六五六五|六五六六|六六六工|
  -尺-工|-尺工上|-

となるが,長音指示のない「尺尺工」から「六」の連までが,そのままだと不自然である。歌詞の配分のほか,連山派の「清響流水」中に類似のフレーズが見られるので,その音長を参考にすると

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 将 香  盤 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  桃 列  エ ヽヽ 在

という曲調が得られる。本項では一つながりになっているが,この後につづく例ではすべて,5連の「六」の最後のところに句点があり,2つの小フレーズに分かれている。そのためここだけは類例と異なり,「六」の2拍ではなく1拍+休符とするのが妥当であろう。


011 上四上上。尺工六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 005と同じ間奏。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上○合四|
 仩-仩○|


012 工尺工上尺上合乙四 四合四。合四仩四仩四合工工。六五六尺尺工六五六。尺工六五六工尺上。合四仩仩

 ツィン ランアヽヽヽ シャン 
・進 廊 上 

 本項のほか,023,040,045,050 に同じフレーズがある。また1符少ない 028 もこのヴァリエーションである。
 土岐達の版に長音の指示はないので,そのままだと1符1拍となるが,曲中の類似フレーズ中に----

  工尺工上尺上合乙四 

と長音指示がなされているものがある。これに従えば近世譜は----

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|
 進ガ廊    アヽ ヽヽ上

となる。歌詞との兼ね合いも,次とのつながりもよいのでこれで良しとしよう。。

 後半の間奏部分に関しては,連山派の「林氏流水」をはじめ「徳健流水」「清音流水」「漫波流水」などの中に前後を含め,ほぼ同様のフレーズが見られる。沖野竹亭『清楽曲譜』「漫波流水」では----

                 四合四-|
  合四仩-|四仩四合|工-工-|合四合-|
  尺-尺工|合四合-|尺工合-|四合工尺|
  仩仩合四|仩-仩-|

 柚木友月『明清楽譜』「清音流水」では

                 四合四-|
  合四仩-|四仩四合|工-工-|六五六-|
  尺-尺工|六五六-|尺工六六|五六工尺|
  上-合四|仩---|

 小差異はないでもないが,曲調はどの曲でもほぼ同じである。この種の曲における典型的なフレーズの一種らしく,これらを参考に組むと本譜は次のような曲調となる----

                四合四○|
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

 土岐達の版ではこれの前の歌唱部分にほとんど差異はないものの,こちらの間奏部分は----

1)五六五六五仩、五仩五六工工六五六、尺尺工六 五六、尺工六五六工尺上、合四仩
2)五六五六五仩五仩五六工工六五六尺尺工六五六工工六五六工尺上合四仩
3)五六五五六五仩五仩五六工工六五六尺尺工六五六尺工六五六工尺上合四仩
4)五六五六五仩五仩五六工工六五六尺尺工六五六尺工六五六工尺上合四仩
5)五六五六五仩五六工工六五六、尺尺工六五六、尺工六五六工尺上、合四仩仩
6)五六五六五仩五仩五六、工工六五六、尺尺工六五六、尺工六五六工尺上、合四仩仩

と長音の指示にわずかな差異がある。しかし1)を基本と考え「~」となっている箇所を「レ」と同じ2拍指示とし,2箇所長音を足すと----

                 五六五-|
  六五仩○|五仩五六|工-工〓|六五六○|
  尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
  上○合四|仩-仩〓|

と,筆者の組んだ上記の例と曲調上の差異のほとんどないフレーズとなる。出だしが「四合四」でなく「五六五」になっているが,これは符字が1オクターブ上のものになっているだけで,月琴で弾いた場合の曲調はほぼ同じである。


013 尺尺工六五。仩五仩五五仩六工六 六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 ショェン チ クィイヽヽヽ メン チャウ テン 
○双 膝 跪   面 朝 天 

 句点の位置が異なるだけで,008と同じ。土岐達の版ではこの箇所の該当フレーズに長音指示がないが,ほかの4箇所では出だしの「尺」に2拍の指示がある。

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 双 膝  跪  イ ヽ ヽヽ 面ガ 朝
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
   天
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 5小節目「天」は間奏の頭にかぶさる。この小節の歌唱は「工 六-○|」となろう。


014 上尺上尺六五六工尺 合合四仩。合四仩仩

 ゴ ハイ スェンナイ ワン
・哭 拝 先 王

 009 と同じ。

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 哭    拝    先    ナイ王
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|


015 工工工工工上工尺尺 合合四仩合四仩仩

 アイ イヽヽ スェン ワン ヱ
 噯 先 王 爺

 土岐達は前半歌唱部出だしの「工」5音を1音不定拍に,また末尾の「尺尺」を1音の「尺」2拍としている。後半は 009,014 と同じである。出だしの「噯イヽヽ」の部分は調子を整える語気句であるから長さ的にはどうとでもなるが,構成的に見て 014 と対で,014 の「先王」を受けて強調するだけのフレーズであると推察される。そこから考え,続く「上工尺尺」を各2拍として,「先王」の発音位置やフレーズの長さはそろえたほうが良いだろう。また「爺」の「尺尺」は,伴奏では「尺」2拍2音,歌唱では「尺--○|」1音として唱えるほうが自然である。

 工-工-|工工工-|上-工-|尺-尺-|
 噯    イヽヽ  先 王  爺
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|


016 尺尺工六五六五六五六六六六六 工尺工尺工上

 ネン ウィ ジン イヽヽヽ アヽヽヽヽ シウ ギュイン エン
・念 微 臣   ・受 君 恩

 010 と同じ。

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 念 微  臣 イヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  受 君    恩

017 上四上上。尺工六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上合四仩仩

 005 と同じ間奏。末尾「合四仩仩」前の「上」に句点がないので,ここを4分+休符でなく2分とする。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 土岐達の版は8小節目の「上」に休符がついているだけで,全体としてはこれに近い。


018 上尺工六工尺 合合四仩。合四仩仩

 ユウ スウ ザァイ
○有 数 載 

 006と同じ。後半の句点に小変異。

(器楽)上-尺工|六-工尺|合-合四|仩○合四|
    仩-仩○|
(歌唱)上-尺工|六-工尺|上--○|○○○○|
    有 数  載
    ○○○○|


019 尺尺工六五。仩五仩五五仩六工六 六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上合四仩仩

 ミン ヲィ ジン エヽヽヽ ヒャ テン チウ
○命 為 臣   下 澄 州 

 末尾「合四仩仩」前の句点がないだけで 008 と同じ。

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 命 為  臣  エ ヽ ヽヽ 下ガ澄
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
   州
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|


020 上尺上尺六五六工尺 合合四仩合四仩仩

 シン チイ キーヤー ミン
○賑 済 飢。 民 

 句点が省略されているだけで 009 と同じ。

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 賑  カ 済    飢 ヤ    民
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|


(つづく)

funen03.txt
斗酒庵 「秘曲」をひもとく! の巻『清風雅唱-外編』「仁宗不諗母」の復元(3)

STEP3 復元後半

021 上上上四合工尺工尺工上

 ヲイ チャウ チョエン ナ シュイ イヽ ヅゥ
○回 朝 転 ・那 誰 知

 土岐達は----

  上-上-|上四合工|-尺工尺|工上-

 とする。フレーズの間に休符を一つはさむだけで

 上-上-|上四合○|工-尺工|尺工上-|
 回 朝  転    那 誰  イヽ知

 となり,これで特に問題はない。

022 上四上上。尺工六尺六工。工尺工尺工六五六工尺上合四仩仩

 005 と同じ。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

023 工尺工上尺上合乙四 四合四。合四仩四仩四合工工。六五六尺尺工六五六。尺工六五六工尺上。合四仩仩

 チャウ チョン アヽヽヽ ロワン
・朝 中 乱 

 012 と同じ。

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 朝 中    アヽ ヽヽ乱
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|


024 尺尺工六五仩五仩五五仩六工六 六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 ヘウ コン リー イヽヽヽ チュウ リャウ
○後 宮 裡   出 了 

 008 と同じ。

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 後 宮  裡  イ ヽ ヽヽ 出ガ了
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
 ----
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

025 上尺上尺六五六工尺 合合四仩。合四仩仩

 スャウ コー ヲイ ワイ
○小 郭  淮 

 009 と同じ

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 小    郭    ヲ イ    淮
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

026 尺尺工六五六五六五六六六六六 工尺工尺工上

 ツャン ベン パウアヽヽヽ アヽヽヽヽ ター レイヽ ヅァイ
・将 莾 袍  打 列  在

 010 と同じ。

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 将 莾  袍 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  打 列  イ ヽヽ 在

027 上四上上。尺工六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上合四仩仩

 005 と同じ。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

028 工尺工上上合乙四 四合四。合四仩四仩四合工工。六五六尺尺工六五六。尺工六五六工尺上。合四仩仩

 カイ フヲン アヽヽヽ  フウ
・開 封  府 

 012 とほぼ同じ。「尺」1符を欠くが,本譜における歌詞の配分から考えて,以下のようになるものと思われる。

 工-尺工|上-上-|合乙四-|四合四○|
 開ヤ封  ア ヽ  ヽヽ府
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|


029 尺尺工六五。仩五仩五五仩六工六 六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 ニイ キャア エーヽ エヽヽヽ シャン キン デン
○你 家 爺   上 金 殿 

 008 と同じ。

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 你 家  爺  エ ヽ ヽヽ 上ガ金
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
   殿
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

030 上尺上尺六五六工尺 合合四仩合四仩仩

 チャウ ハイ シンナイ ギュイン
○朝 拝 新 君 

 009 と同じ。

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 朝    拝    新    ナイ君
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

     ワン スイ ユフ ツ セン パウ キン
031 (白)万 歳 有 旨 宣 包 卿 上 殿


032 尺尺工六五六五六五六六六六六 工尺工尺工上 

 ホ ティン テ エヽヽヽ アヽヽヽヽ キン パイヽヽ セン
○忽 聴 得  ・金 牌 宣 

 010 と同じ。

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 忽 聴  得 エヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  金 牌  イ ヽヽ 宣

033 上四上上。尺工六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 005 と同じ。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

034 上尺工六工尺 合合四仩合四仩仩

 ニン ハイヽヽ チャウ
○銀 牌 招 

 006 と同じ。

(器楽)上-尺工|六-工尺|合-合四|仩○合四|
    仩-仩○|
(歌唱)上-尺工|六-工尺|上--○|○○○○|
    銀 牌イ ヽ ヽ招
    ○○○○|

035 尺尺工六五六五六五六六六六六 工尺工尺工上 

 イ プ ルウヽヽヽ ウヽヽヽヽ ライ ヂゥヽヽ ヅァイ
・移 歩 児  ・来 住 在 

 010 と同じ。

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 移 歩  児 ウヽ ヽヽウ  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  来 住    ヽヽ 在

036 上四上上。尺工六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 005 と同じ。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

037 上尺上尺六五六工尺 合合四仩。合四仩仩

 ツウ スー クワンナイ チャウ
・仔 細 観  瞧 

 009 と同じ。

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 仔    細    観 ナ  イ 瞧
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

038 尺尺工六五六五六五六六六六六 工尺工尺工上 

 ナ シャン メン アヽヽヽ アヽヽヽヽ ヅヲ デ エヽヽ ズウ
○那 上 面  ・坐 的 是 

 010 と同じ。

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 那 上  面 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  坐 的  エ ヽヽ 是

039 上四上上尺工六尺六工工尺工尺工六五六工尺上合四仩仩

 005 と同じ。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

040 工尺工上尺上合乙四 四合四合四仩四仩四合工工六五六尺尺工六五六尺工六五六工尺上合四仩仩

 チン ミン アヽヽヽ ツイ
・真 命  主 

 012 と同じ。

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 真カ命    アヽ ヽヽ主
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

041 尺尺工六五六五六五六六六六六 工尺工尺工上 

 ナー リャン パン アヽヽヽ アヽヽヽヽ ザン リイヽ ヅァイ 
・那 両 傍   ・詀 立 在 

 010 と同じ。

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 那 両  傍 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  詀 立  イ ヽヽ 在

042 上四上上。尺工六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 005 と同じ。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

043 上尺上尺六五六工尺 合合四仩合四仩仩

 チョン ヲイヽ コンナイ キン
○象 位 公  卿 

 009 と同じ。

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 象  ガ 位イヽ  公    ナイ卿
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

044 尺尺工六五仩五仩五五仩六工六 六尺六工。工尺工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 ナー チョン ジン エヽヽヽ  ケン ガアヽ アン
○那 忠 臣 見 俺 

 008 と同じ。

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 那 忠  臣  エ ヽ ヽヽ 見ガア
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
 ヽ 俺
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

045 工尺工上尺上合乙四 四合四。合四仩四仩四合工工。六五六尺尺工六五六尺工六五六工尺上合四仩仩

 ウヒ ウヒアヽヽ シャヲ
・微 微  笑 

 012 と同じ。

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 微 微    アヽ ヽ 笑
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

046 尺尺工六五。仩五仩五五仩六工六 六尺六工工尺工尺工六五六工尺上合四仩仩

 ナー ケン シン エヽヽヽ   ケン ガアヽ ツァ
○那 奸 臣   見 咱 

 008 と同じ。

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 那 奸  臣  エ ヽ ヽヽ 見ガア
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
 ヽ 咱
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

047 上尺上尺六五六工尺 合合四仩合四仩仩

 モ モ ウワイ エン
・黙 黙 無 言 

 009 と同じ。

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 黙  ガ 黙    無    ワイ言
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

048 尺尺工六五六五六五六六六六六 工尺工尺工上 

 ツャン ベン パウ アヽヽヽ アヽヽヽヽ  ライ チェエヽ ポー
・将 莾 袍  来 扯 破 

 010 と同じ。

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 将 莾  袍 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  来 扯  エ ヽヽ 破

049 上四上上。尺工六尺六工。工尺工工尺工六。五六工尺上。合四仩仩

 005 と同じ。

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

050 工尺工上尺上合乙四  四合四合四仩四仩四合工工六五六尺尺工六五六。尺工六五六工尺上。合四仩仩 

 ナン フヘンアヽヽヽ ペン
・難 分  辨

 012 と同じ。

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 難ガ分    アヽ ヽヽ辨
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

051 尺六工尺工上工尺上工尺

 ツー ロ テ キャウ ドン アン チョン ディ ヒョン
○只 落 得 叫 同 俺 象 弟 ・兄

 土岐達は「尺六…工-尺工上-工…尺-上工尺-」とする。004 に近い。既出の項を参考に,また「象」にあてられた「工」の不定拍長音の傍線が「弟」横の「尺上」にかかっているのを,伴奏と歌唱の違いととると----

(器楽)尺---|----|----|六---|
    -○工尺|工-上-|-○工-|----|
    --工-|尺--○|

(歌唱)尺---|----|尺---|六---|
    只         落    得
    -○工尺|工-上-|-○工-|--尺-|
      叫同 俺      象 
    上-工-|尺--○|
    弟ヤ兄

とでもなろうか。不定拍長音のため実際の音長は不明だが,指示のない「叫同」を思い切って短くしたところ,緩急の変化がついて,より「それらしく」なった感があった。

052 工尺上尺 工尺上尺

 ツヲー パン ユウ プー キウ キン スゥ スャン
・左 班 右 部 ・九 卿 四 相

 土岐達は「工-尺上尺 工尺上尺」とする。後半の「工尺上尺」に長音指示がないのは,同じフレーズくりかえしとみて略したものとおぼしい。あとはフレーズの切れ目である「尺」を4分休符とするか2分半休符とするかだが,終曲の盛り上げ部分であり,前のパートが「緩」だったことを考えると,このあたり3フレーズは「急」の部分であろう。ならば----

 工-尺上|尺○工-|尺上尺○|
 左 班右 部 九  卿四相

と短くまとめるのが妥当と思われる。

053 上尺上尺 上尺

 ター ツウ スャウ パウ フ マ ペ
・太 子 少 保 ・附 馬 伯

 土岐達に長音の指示はない。
 ここまでが前からの続きで比較的「急」な箇所,次からふたたび「緩」となってゆくわけである。

 上-尺-|上-尺○|上-尺○|
 太 子  少 保  附馬伯

054 上尺 尺六

 ツィン リャウ ツャン ペン パウ
・請 了 ・将 莾 袍

 土岐達に長音の指示なし,最初の「上尺」までは前節からのつながりで,まだ「ゆっくり」程度。

 上-尺○|尺---|----|六---|
 請ガ了  将    莾    袍
 ---○|

055 六上六上 六上六上

 ツァ ヅァイ ペ ヨ°タイ  マウ ザァイ キン
○扎 在 白 玉 帯 ・帽 載 金

 ふたたび「急」。土岐達に長音指示はないのでそのままだと各1拍であるが,「玉」に符があてられていないことなどを考えて,全体を2拍とした,実際の演奏ではテンポのほうを調整して,ゆるく単調に繰り返す部分であったと思われる。

 六-上-|六-上-|六-上-|六-上-|
 扎 在  白玉帯  帽    載 金

056 尺上 尺上

 しめの4音。すべてに不定拍長音の指示傍線。4/4で組む関係上8拍,12拍の長さとしたが,実際の演奏では前項同様,しだいに遅くなってゆくテンポに合わせて音を自由にのばしてゆくところだろう。

 チェン ポ リ ギュイン メン チャウ トン
○臣 不 理 君 ・面 朝 東

 尺---|----|上---|---○|
 臣    不 理  君
 尺---|----|上---|----|
 面    朝    東
 ---○|

 今回の復元はあくまでも,全体的な曲調の把握を目的とした「おそらくこんなものだろう」というレベルの作業なので,歌詞や発音についての考察もなく,繰り返しされるフレーズもほぼ同じ一律に再現したが,実際の演奏では同じメロディでも,箇所によりテンポを違えたり,ブレスや長音の位置を移動させるなどして,単調にならないよう工夫していたことだろう。
 数年前に行った「四不像」の復元でもこれと同じく,はじめは音長の分かる資料が1つしかなく,作業は困難を極めたが,今回の場合は符字順列上の同定から,他の清楽曲のフレーズがほとんどそのまま流用できる箇所が多く,はるかに容易かった。むしろ今回は過去に入力した楽曲のデータがメインで,音長参考の資料である土岐達のほうが,補助的な確認・参考資料の位置にあったとも言える。
 より正確な再現は,もっと詳細な音長指示の入った新たな資料の発見を待たなくてはならないが,これまで行った「四不像」や「孟浩然」などの復元試行でもそうであったように,そうした資料が見つかった後で比較しても,出来栄えとしては意外に「それほど間違ってはいない」というくらいにはなっている,という程度には,憚りながら自信がある。(w)
 長曲であるが一定のメロディの繰り返しなため,演奏は比較的容易である。
 いっちょう覚えてみても面白いかもしれない。


(つづく)

funen04.txt
斗酒庵 「秘曲」をひもとく! の巻『清風雅唱-外編』「仁宗不諗母」の復元(4)

STEP4 仁宗不諗母(全曲近世譜)



 つなぎあわせた歌譜の画像と,MIDI と AquesTone で再現した曲を合わせて動画を作ってみました。
 以下の全曲譜とともに練習のお伴としてください。
 MIDI作製は SAKURA。もともとの工尺譜は文字譜,「"ド"と文字入力すればドの音が出る」というMMLとの相性が良く,五線譜と違って楽譜をテキストエディタで変換すればそのまま曲になります。それゆえに,この 2010年代末になってまだMMLなどという古代の技術を使っている庵主なのでありました。(w)

 尺---|----|----|六---|
 你         与    爺
 --五○|工-工-|尺-上-|四-合-|
      将 青  沙 𦋃  住 了
 ---○|尺---|----|工---|
      娘  娘 臉    花 喇々
 ----|尺---|上---|尺---|
 引    上    了    午 朝  
 --上-|---○|上-工六|尺○工-|
 門 外       到 今  朝 子  
 四上尺-|工-四上|尺-工-|四上尺-|
 登 基  管 万  民 母  叫 街  
 四上尺工|上四-仩|合--○|
 不 諗  娘親

 合-四-|合四仩-|合四仩-|仩--○|
 伬-伬仜|合-合四|仩-合四|仩-仩○|

 尺---|----|----|六---|
 你         与    爺
 -○工-|尺-工-|尺工上○|上四上-|
   将  官 告
 上○尺工|六-尺六|工--○|工尺工-|
 尺工六-|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 上-尺工|六-工尺|合-合四|仩-合四|
 部 班  裡
 仩-仩○|

(白)家 爺 為・何 不 穿 帯

 尺-尺工|六○五仩|五○仩五|五仩六-| 
 你 家  爺 エエ エ エエ 与ガ先ナイ
 工-六○|六-尺六|工--○|工尺工-|
 王
 尺工六-|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 穿    孝    喪  ガ 霊
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 将 香  盤 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  桃 列  エ ヽヽ 在

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上○合四|
 仩-仩○|

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 進ガ廊    アヽ ヽヽ上
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 双 膝  跪  イ ヽ ヽヽ 面ガ 朝
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
   天
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 哭    拝    先    ナイ王
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

 工-工-|工工工-|上-工-|尺-尺-|
 噯    イヽヽ  先 王  爺
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 念 微  臣 イヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  受 君    恩

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 上-尺工|六-工尺|合-合四|仩○合四|
 有 数  載
 仩-仩○|

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 命 為  臣  エ ヽ ヽヽ 下ガ澄
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
   州
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 賑  カ 済    飢 ヤ    民
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

 上-上-|上四合○|工-尺工|尺工上-|
 回 朝  転    那 誰  イヽ知

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 朝 中    アヽ ヽヽ乱
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 後 宮  裡  イ ヽ ヽヽ 出ガ了
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
 ----
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 小    郭    ヲ イ    淮
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 将 莾  袍 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  打 列  イ ヽヽ 在

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 工-尺工|上-上-|合乙四-|四合四○|
 開ヤ封  ア ヽ  ヽヽ府
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 你 家  爺  エ ヽ ヽヽ 上ガ金
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
   殿
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 朝    拝    新    ナイ君
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

(白)万 歳 有 旨 宣 包 卿 上 殿

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 忽 聴  得 エヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  金 牌  イ ヽヽ 宣

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 上-尺工|六-工尺|合-合四|仩○合四|
 銀 牌イ ヽ ヽ招
 仩-仩○|

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 移 歩  児 ウヽ ヽヽウ  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  来 住    ヽヽ 在

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 仔    細    観 ナ  イ 瞧
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 那 上  面 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  坐 的  エ ヽヽ 是

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 真カ命    アヽ ヽヽ主
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 那 両  傍 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  詀 立  イ ヽヽ 在

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 象  ガ 位イヽ  公    ナイ卿
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 那 忠  臣  エ ヽ ヽヽ 見ガア
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
 ヽ 俺
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 微 微    アヽ ヽ 笑
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五○仩|五-仩五|五仩六-|
 那 奸  臣  エ ヽ ヽヽ 見ガア
 工-六-|六-尺六|工--○|工尺工-|
 ヽ 咱
 尺工六○|五六工尺|上○合四|仩-仩○|

 上-尺-|上尺六-|五-六-|工-尺-|
 黙  ガ 黙    無    ワイ言
 合-合四|仩○合四|仩-仩○|

 尺-尺工|六五六五|六五六-|六-六-|
 将 莾  袍 アヽ ヽヽア  ヽ ヽ
 六-六○|工-尺-|工-尺工|上--○|
 ヽ ヽ  来 扯  エ ヽヽ 破

 上四上-|上○尺工|六-尺六|工--○|
 工尺工-|尺工六-|五六工尺|上-合四|
 仩-仩○|

 工-尺工|上-尺上|合乙四-|四合四○|
 難ガ分    アヽ ヽヽ辨
 合四仩-|四仩四合|工-工○|六五六-|
 尺-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
 上○合四|仩-仩○|

 尺---|----|----|六---|
 只         落    得
 -○工尺|工-上-|-○工-|--尺-|
   叫同 俺      象 
 --工-|尺--○|工-尺上|尺○工-|
 弟ヤ兄       左 班右 部 九  
 尺上尺○|上-尺-|上-尺○|上-尺○|
 卿四相  太 子  少 保  附馬伯
 上-尺○|尺---|----|六---|
 請ガ了  将    莾    袍
 ---○|

 六-上-|六-上-|六-上-|六-上-|
 扎 在  白玉帯  帽    載 金

 尺---|----|上---|---○|
 臣    不 理  君
 尺---|----|上---|----|
 面    朝    東
 ---○|


(おわり)


清楽月琴WS@亀戸 2018年9月!!

20180922.txt
斗酒庵 WS告知 の巻2018.9.22 月琴WS@亀戸 暑いですかあ? の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 9月場所 のお知らせ-*


 最高気温がそちらの最低気温より低い北の大地より告知いたします。(上からww)
 つつがなきや?

 2018年,9月の清楽月琴ワークショップは,22日土曜日の開催予定。
 会場はいつもの亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願い。

 お昼下りの,にょろにょろ開催。
 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもOK。

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。うちは基本,楽器はお触り自由です。

 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 8月は庵主帰省のためお休みにさせていただきまあす。

 57号時不知(石田不識)がまだ嫁き遅れております(w)興味あります御方は,試奏がてらにでもどうぞ~。

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