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月琴60号 マルコメX(3)

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斗酒庵いろいろみろり の巻2018.6~ 月琴60号 (3)

STEP3 接着は愛である名前はまだない

 ……ううむ。

 この楽器で棹茎を丸棒にすることにどんなメリットがあるのだろう?

 加工がカンタン?----いやいや,一木からこの丸棒部分を削り出すのは,四角いのよりずっと大変なはずです。まして棹の角度を考えながら,棹口から内桁の受けまでまっすぐとどいてきっちり入るよう,3Dで考えながら正確に加工するってのは……結構な技ですね。

 取外しがラク?----確かに。イメ-ジとしては四角より丸のほうが,スポっと抜き挿しできる感じがしますが。現実には,ビクとも動かないくらいガッチリ入ってましたよね。また逆に,これがユルユルだったら,棹の安定がまったくなくって,そもそも使い物にならなかったはずです。

 四角より丈夫?----これも,ないか。通常の四角い棹茎だと幅は棹と同じからその7~8割ほど。厚みは色々ですが,だいたいは基部のところで棹の厚みの半分くらいはあります。この楽器の棹茎は直径15ミリ。対比で考えると厚みではほかの楽器と同じくらいですが幅はかなり細い。しかも円形なぶん,同じサイズの四角い棒よりは細く削れちゃってるわけです。事故による予期せぬ方向からの衝撃,とか考えない限り,強度的にも四角のほうが上だと思いますね。

 見栄えは?----通常見えない部分ですから問題外ですよね。

 楽器を分解しながらずっと考えてるんですが,今のところ納得のゆく言い訳が「宗教上の理由」「うちの星ではそうだった」以外思いつきません。

 この点に関してご意見・ご指摘ございます方は,どうかご教授アレ。



 さて棹を抜くのに多少手間取りましたが,分解作業を続けます。
 前回述べたように,この楽器には庵主の前に二人ばかり修理した者がおったようです。
 一人は木工ボンドを使ってるのでごく最近。
 出品者さんがちょっと見栄えを良くしようと思ってやったのかな?
 もう一人は濃い色のニカワと木片を使って,面板や破断した側板や接合部の補強をした人ですね。
 この二人のうちボンド使ってるほうは,手を入れた個所も少なく範囲もごくごく狭いので「修理者」とは認定できません----まあ「手をつけた」って程度でしょうか----よって今回はその前のほうの人を「前修理者」といたします。

 オリジナルとの作業箇所の見分け方は,接着に使われたニカワと,その接着技術です。
 オリジナルの人…接着上手いんですよ,スゴくね。

 たとえば上画像は作業中に剥落した蓮頭。
 この状態だとニカワが塗ってあったとすら分からないくらいの状態です。
 ニカワの層がないのはもちろん,接着面のどちらを触ってもすべすべです。
 ところがこれを濡らして10分ほどおくと-----

 と,見事にニカワが浮き上がってきます。
 刃物でこそげると,使用されているのは色の薄いかなり上質なニカワのようです。
 しかもこの状態でほとんど劣化しておらず,このままくっつければ十分にへっつきますね。

 これは元の加工技術が良いため,部材同士の間にスキマがなく,ニカワが密閉された状態にあったためです。そのうえニカワの量も適量,木部への染ませ方もほぼ完璧だったということですね。
 楽器自体には色々と問題がありそうですが(w)この部分の技術に関しては,いままで扱った楽器の中でもトップクラスと言ってイイみたいです。

 こちらが「前修理者」の修理個所。
 ニカワはハミだしてるし,接合もスキマだらけ----一目瞭然ですね。

 この,前修理者のこんもり無駄に盛り上げたニカワを排除しつつ,さらにバラバラにしてゆきます。

 棹上のフレットをはずそうとしたら,ちょっと面白いことになってました。

 フレットがクギで留めてあります。
 この楽器のフレットは胴上が煤竹,棹上が唐木ですが,どちらのフレットも低く,薄く。
 厚みは3ミリほどしかありません。
 その薄いフレットの中央真ん中にクギを…しかも棹上のフレットはモロい唐木製。
 なんちゅう精密作業!

 このクギは過去の報告でも一度出てきたことがあります。

 前の時はサビが芯まで及んでおり,ボロボロでほとんど原形を留めていませんでしたが,今回は腐食も少なく,ちゃんと抜けてきました----両頭の細工釘。
 一般の大工さんとかはあまり使わない釘ですね。
 使うのは指物師とか唐木屋,あとは建具屋さんあたりかな?

 クギを抜いたところで棹全体を清掃。
 棹本体は胴と同じくホオだと思います。
 指板は唐木ではなく内桁と同じクリ?……けっこうカタいのでクワかもしれませんね。

 再組立てまでは作業の邪魔なので,響き線もはずしてしまいます。
 真鍮線をクギ2本で留めてあるだけ。


 なぜ2本も刺したし?----というあたりは多少ギモンですがまあ,見かけの安定感をつい求めちゃう日本人としては分からなくもない----これをこれ「考え過ぎ」と言ふ。

 古い四角い和釘。
 長さは1センチほど----細工釘ほどではありませんが,やはりこのサイズの釘は使用する職種が限られると思いますね。

 半月を残して,だいたいの部分の分解は終わりました。
 オリジナルの接着部は強力ですが,適切な手順を踏んで濡らせば剥離は容易です。
 「接着が上手な人」というのは,どこもかしこも「絶対にはずれないように」くっつけるのではなく,剥がれるべきところは剥がれるように作れる人ですね。

 それに対して前修理者の箇所は,余計なニカワが接着箇所の周囲に流れて悪さしてるとこも多く,こそげるのが大変です。板の再接着箇所なども,虫食い痕の始末をせずそのままニカワを塗っちゃってるので,虫の食いカスが食害痕のなかで固まってしまっています。
 ほんと,ホジくるのがけっこうタイヘンですわい。(怒)


(つづく)


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