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おせんさんの月琴 (1)

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斗酒庵年末修理 の巻2018.11~  おせんさんの月琴(1)

STEP1 オレがアイツでアイツがヤツで

 11月の月琴WSでお預かりした修理楽器。

 ちょうど60号の作業もはじめたばかりでしたので,タイミングもよろしく(w)
 今季もまた2面同時修理と相なりました。

 京都の古道具屋さんにて見つけた楽器,とのことで。
 ラベル等はなく,例によって誰が作った月琴だかは分かりません,が……んん?

 こ……このニョロリわ。(汗)

 庵主,去年の暮れから今年の春先にかけて,このニョロリをここに付ける作家さんの楽器の,タタリと思えるほどの超連続修理に追われてましたが……もしや……またぁ!?

 ナニはともあれ,まずは観察から。

 全長:640,
 胴:縦355/横357/厚35
 (板厚オモウラ共:4)

 有効弦長:421±2
 (山口欠損のため推定)

 胴体が薄めで,わりとスラッとした印象のある月琴です。

 蓮頭 はただの雲形の板ですが,真ん中のあたりに接着痕があるので,ここに何か飾りが貼られていたと思われます。
 糸倉から棹 全体は黒く塗られています。これはウルシではなくて,ベンガラでしょうね。
 糸巻 は4本完備。多少サイズが不揃いのようですがオリジナル。材はホオやカツラより気胞の粗い木…タモですかね?スオウで染めた上からベンガラで黒塗り…ふだん庵主がやってるのと同じ染めですね。黒の底に赤紫が透けております。
 山口と第1・2・5フレットが欠損。
 棹上の第3,胴上の第6・7フレットは最近再接着されたもののようです。濡らすと白くなるアイツが,フレットの周囲に見えております。

 側部に飾り板 を貼り回してありますので,胴材の接合部が見えません。この板はクワかな?
 接着が浮いて板から少しハミ出ている ところが,胴周りのあちこちにあります。
 この工作,誰もが考えつくような細工ですが,きちんとやろうと思うと意外と難しいんですよね。これをして飾り板に浮きがまったくなかったのは,唐木屋の1面とこないだの61号(初代不識)の楽器ぐらいです。
 その飾り板の楽器右肩の裏板がわあたりにカケが1箇所,あと楽器尻にあたる部分に虫食い孔が点々と見えます。地の側板のあたり,かなり食べられちゃってるみたいですね(^_^;)。

 左右のニラミと扇飾り はオリジナルのようですが,ほかはおそらく後補でしょう。ただ,第7・8間についてる山サンゴの桃は,デザインに見覚えがあることからオリジナルかもしれません。

 表裏面板共に大きなヒビが1本づつ。
 最大で2ミリほども開いちゃってますね。表板は右がわに,裏板は中央付近に大きなフシがありますので,板の収縮による裂け割れではないかと。表裏板とも天地の側板のあたりがハガれてしまっています。

 半月 は棹と同じ黒塗り。
 外弦間:34,内弦間:25,高さは9ミリ。何の飾りもない平たい半月板ですが工作はきっちりとしていますね。
 現状,いちおう正位置にくっついてますが,接着はほぼ剥離してしまっているようで,底部周囲に刃物が入っちゃうくらいのスキマが出来てます。

 バチ布 は後補でしょうが,小鳥に紅葉をあしらった趣味のいい錦裂です。
 これはできれば残してあげたいなあ。

 まあ,そもそも要るのか要らないのか分からない孔(ww)なんですが……半月のポケットのなかに「陰月」が見えません。唐物楽器を真似た古いタイプの倣製月琴なんかだとついてないことも多いんですよ。

 棹を抜いてみましょう。
 胴側の飾り板の両端がここで合わさってますね。
 棹孔からのぞいた限りでは1枚桁の楽器のようです。
 内部のヨゴレはそんなにヒドくない,キレイなほうでしょう。響き線の構造は……全体は良く見えませんが,棹口から見えてる部分と振った時の感触から,うずまき線ではないかと思われます。

 棹なかごは長122とやや短め。
 棹本体はホオかな。そこにヒノキと思われる針葉樹材を継いでいます。延長材の継ぎがV字じゃないのは珍しいですが,これと同様の例もいままで数例見たことがあります。
 基部の表板がわに何か書いてあるようですが…クシャクシャっとしてて良く読めませんねえ。作者の署名でしょうか?

 といったあたりで次回に続く。


(つづく)


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