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連山派・梅園派の「紗窓」について

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斗酒庵 贅六の清楽に挑む! の巻2019.1~ 連山派・梅園派の「紗窓」について

 さて,九連環・茉莉花と並んでWSでよく演奏される「紗窓(サアチャン/しゃそう)」についてです。

 工尺譜の詳しい読み解きなんかは,HPのほうに本うpするのを待ってもらいまして,今回は連山派の「紗窓」と,あと渓派の「紗窓」の違いなんかを中心にお話ししましょう。

 「紗窓」という曲は連山派では第一楽譜の『声光詞譜』にはもう載ってますし,よく演奏されたらしいので同派内ではメジャーな曲でした。
 山本有所の『雅俗必携月琴自在』では「紗窓」ではなく「七言絶句」と題されてるとおり,清楽家の間では「漢詩の七言絶句を歌う時の曲」と認識されていたようです。文人趣味に偏ったところのある渓派の清楽家連中がいかにも好みそうなものですが,渓派のほうだと譜は渓蓮斎のお弟子さんたちが編集した『清風雅唱 外編』くらいにならないと出てきません。長崎派の譜集には入ってますんで,それ以前から伝わっていたとはおもうのですが,花井信『清楽指南』(M.25)なんかでも「新曲」の分類に入ってますので,渓派の清楽家にとっては「あまり馴染みのない曲」だったのかもしれません。
 「紗窓」は薄絹のかかった窓,現代中国語だと「網戸」の意味になります。障子紙のかわりに薄い絹布が張ってある,と思えばよろしい。そういう薄布をカーテンみたいに垂らしてある窓もそう呼ばれたようです。
 ほか「砂窓」「沙窓」と書いている例もあります。こちらだと「砂窓」が最近の中国で「すりガラス」みたいなのを表すことがありますが,基本的にイミフですね。「紗窓」というのは,俗曲では女の子もしくは女性の部屋の暗喩で,なかにいるのはたいてい美人です。艶歌めいた曲題なわけですが,歌詞がお堅い七言絶句というあたりになにやら違和感は感じますね。あんがい「紗窓」なんて題で広まっちゃった後,そういうあたりに気が付いて,慌てて字面を変えやがったんじゃないかとも思います。(w)
 連山派の「紗窓」はこんな感じ----

 六--○|六--○|工-上-|尺-工-|
 尺--○|四-仩-|伬-四仩|合--四|
 合--○|工-工-|六--○|工-尺-|
 上-工-|尺--○|四-仩-|伬-四仩|
 合--四|合--○|四--○|四--○|
 四-仩-|四合工合|四-仩四|合--○|
 上-工-|尺-四-|上-工-|尺-四仩|
 合--四|合--○|

 歌詞は基本的に七言絶句ならなんでもあてはまるようになってるんですが,李白の「春夜洛城聞笛」とか張継の「楓橋夜泊」になってることが多いですね。連山派系では2種類の歌いかたがあったようです。

 
(中井)
(鈴木)
 
(中井) 
(鈴木) 
 
(中井)
(鈴木)
 
(中井) 
(鈴木) 
 
(中井) 
(鈴木) 
 
(中井)
(鈴木)
 
(中井)
(鈴木) 
 
(中井)
(鈴木)

 (中井)は中井新六『月琴楽譜』(M.11),(鈴木)は鈴木孝道『月琴独習自在』に基づいたもの。歌詞のかかってない真っ黒な部分は楽器の演奏だけになるわけですが,2行目と5行目で発音のタイミングが異なるのと,最期のほう,シメにかかる直前,鈴木のほうに3音1小節半の「溜め」があるのが特徴的です。

 WSではよくこれと裏曲を合奏する,ということをやっています。清楽で「裏曲」「伴奏曲」と呼ばれるものは,オーケストラのパート分けのようなものではなく,ある曲のために作られたものでありながら,それぞれいちおう基本的には独立した曲として扱われます。同時に演奏した時に「アラ不思議,なぜかぴったり合っちゃうわ!」みたいな感じなんですね。

 「紗窓」には「弄月(ろうげつ)」「露月(ろげつ)」という裏曲があります。「弄月」のほうが少し古く,「露月」のがちょっと新しい曲みたいですね。まずは「弄月」の譜----

 合四仩四|合-工-|○合工尺|上-尺上|
 四-合-|凡合凡合|四-四合|仩伬仩四|
 合--○|工合四-|合-工-|○合工尺|
 上-尺上|四-合-|凡合凡合|四-四合|
 仩伬仩四|合-四-|○乙乙四|乙伬乙四|
 合-四合|工-尺-|上尺工-|尺上四合|
 凡合凡合|四-上合|仩-仩伬|仜-上伬|
 仩-四仩|合--○|

 「露月」のほうはこんな感じです。

 合-合凡|合四仩伬|仜仜𠆾-|伬-仜𠆾|
 伬-伬仩|五凡六六|尺上尺凡|合-五仩|
 合--○|仜𠆾仜仜|𠆾-五-|仜𠆾伬仜|
 仩伬四仩|伬-伬仩|五凡六六|尺上尺凡|
 合-五仩|合--○|四四仩仩|四-仩-|
 四仩四仩|四合工尺|工-合四|上--○|
 仩合仜合|伬仩四合|仩合仜𠆾|伬-四仩|
 合凡合四|合--○|

 「茉莉花」にも「秋風香」と「秋籬香」という似たような名前の裏曲があることを,前回の記事で話題に挙げましたな。あちらには「三曲伴奏スル,尤妙ナリ。」と3曲同時弾きするとキレイ,みたいなことが書かれてましたが,こちらにはそういう注釈は見つかりませんね。
 歌いかたの異なるもの2種類と,裏曲2種類----それぞれを組み合わせて歌付きのファイルにしてみました。聞き比べてみてください。

 再現曲(弄月+中井)
 再現曲(弄月+鈴木)
 再現曲(露月+中井)
 再現曲(露月+鈴木)

 ちなみに渓派の「紗窓」。
 歌詞対照譜が少なく,結局『清風雅唱 外編』くらいしか見つからなかったんですが,こちらのはこんな感じです。

 再現曲(渓派)

間 奏
間 奏
間 奏
 
 

 連山派で全符の長さだった出だしの2音が,半分の2分になっています。あとは3行4小節の「上-工-」が「上-工六」になってますが,歌は「上-工-」で「六」はおそらく楽器で出す音なんだと思います。そして曲尾まで歌詞がかからず,最後の「四合」もまた楽器だけになります。裏曲がないんでテンポは少し遅くしてあります,連山派のにくらべると,ちょっとおとなしい感じがしますね。


(つづく)


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