« 2019年4月 | トップページ | 2019年6月 »

清楽月琴WS@亀戸 2019年六月場所!

20190615.txt
斗酒庵 WS告知 の巻2019.6.15 月琴WS@亀戸! 六月場所の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 6月 のお知らせ-*


 2019年,6月の清楽月琴ワークショップは,6月15日土曜日の開催予定!

 さて5月末にもう猛暑日の今日この頃,
  いつもだと梅雨の季節ですが,
 こんどはどうなってることやら?

 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費は無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。
 美味しい飲み物やお酒に,なんか美味しいものでもちょとつまみながら,月琴弾きにきませんか?

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもOK。

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。うちは基本,楽器はお触り自由です。

 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 57号時不知,前回のWSで無事お嫁に旅立ちました。
 現在,お嫁入り先募集中の楽器は60号「碧空(あおぞら)」。
 修理の時にイロイロびっくりのあった楽器ですが…音はいいンだよな~。
 興味ありますれば,試奏がてらにでもどうぞ~。

連山派 『声光詞譜』 復元楽曲改訂!

20190515.txt
斗酒庵 告知 の巻2019.5.15 連山派 『声光詞譜』 復元楽曲改訂!


 東京を中心に勢力があったため「東京派」とも呼ばれた渓派(渓菴派)の基本的な楽曲に関しては,去年までの研究で長編の歌曲いくつかをのぞき,だいたいのものについて,あるていど標準的な曲調を確定する作業が終わっております。
 なんといっても庵主,関東在住ですので,やはり手に入る資料は渓派のもののほうが多かったためもありますね。

 今年に入ってからは,清楽のもう一つの大派閥,関西を中心に覇をなした連山派(大阪派)の基本楽曲のほうに取り組んでおりました。
 ちょっと前も,2~3記事を書きましたもんね。
 ご存知の方も多かったかと。

 ちなみに庵主のやり方でいうところの「楽曲の標準化」とか「標準的な曲調」っていうのは,複数の資料を参考に,演奏者や付点者による楽曲のブレ----たとえば演奏者の個人的な追加演出や筆記者による誤写・誤謬----をなるべく排し,「この曲のメロディはだいたいこういう感じ」という,可もなければ不可もないような曲調を模索するところにあります。当時の誰が聞いても「○○○」に聞こえただろう,というくらいの平均的なメロディ。それらはあくまでも「標準」や「平均」であって,別に「正しい」ものを規定しよう,というわけではありません。博物学の標本みたいなものものですね。その種の中で平均的な個体,基準となる標本が決まってなければ,亜種やら変異という個体別の差異は論じられませんもの。

 でまあ,いままで入手できた「連山派」およびその東京における分派・「梅園派」(連山の妹・長原梅園による流派。こちらも東京を中心に活躍したため大阪の連山派に対し「東京派」と呼ばれることがある)の資料をかき集め,あーでもないこーでもないと校合をはじめていたんですが,そんなさ中ふとこんな資料が手に入ってしまいました----

 写本の『声光詞譜』。
 薄くて丈夫な用紙を横綴じにし,こまかーい文字でぎっちり書き込んだ,手書きの譜本です。
 「和泉」という印が捺してあります,巻末にも「明治三十年七月/和泉蔵」とあるものの書写者は不明。『声光詞譜』と題してはいますが,中身には『声光詞譜』刊本に含まれていない楽曲も入っています。
 残念ながら,付点があって,曲調を解読できるのは巻首からの58曲だけですが,一部は歌詞対照,かなりレアな曲譜も収録されています。

 いままで庵主の手元にある『声光詞譜』の付点本は加藤先生からいただいた刊本3冊本しか資料がありませんでした。曲譜の比較自体は沖野勝芳の『清楽曲譜』の近世譜とか柚木友月の『明清楽譜』などでいままでもある程度することはできてたんですが,今回この資料が手に入ったおかげといいますかせいといいますか。
 基本第一楽譜である『声光詞譜』の楽曲の全面的な見直しをすることとなりました----基本資料の根っこみたいなところに新資料が加わったわけで,「標準化」とか何とか言ってる場合じゃない。まずは資料の整理整頓,棚卸の必要が出てきたわけですね。

 新資料のテキスト化と,もともとあった『声光詞譜』の楽曲の見直し。「見直し」といっても,前のを修整した,というよりは入力のところから全面的にやり直した感じですね。うん,入力間違いもいくつかあったし,付点の解釈なんかいっぱい間違ってました。

 先に公開したコンテンツでは,今回の見直しを経て新たに組み直したMIDIと,各楽曲の譜についての解説が見られます。連山派の付点法における基本的な問題もあって,「標準化」への道はまだかなり遠いものの,前より少しマトモな再現になってるとは思われます。

 同じページで見られる,渓派の同じタイトルの曲と聞き比べてみたりするのも面白いかと。

 「明清楽復元曲一覧」リンクはこちら----

http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html


エレキ月琴 "Luna" 修理(1)

luna_re01.txt

 

娘が…娘が帰ってきよたあああっ! の巻2019.4~ エレキ月琴 "Luna" 修理(1)

 

STEP1 【ふっかつ の きょうかい(ただしアクシズ教)】

Luna大破!
おお ゆうしゃ ルナ よ。
しんでしまうと
は なさけない。

 庵主作のエレキ月琴としては3面め,スルーボディのカメ琴シリーズとしては2面めにあたる自作楽器,カメ2Lunaがかえってまえりました。

 ……うわあ,バッキリいったね。

 月琴というのは構造的にも単純で,基本的にこの手の弦楽器のなかでは比較的丈夫なほうであるんですが,この楽器のアキレス筋,いちばん弱いところがこの糸倉周辺。1号ちゃんも黒猫に糸倉ふッとばされて帰ってきたことがあったねえ。まあふつうはそう壊れませんがなんせ弱点,軽い衝撃でも「当たり所」が悪ければ----

かいしん の いちげき

 で,こうなることがママございます。

 

破断部(1) 破断部(2)
 糸倉の背の曲りのちょうど真ん中あたりにその原因とみられるヘコミがありました。おそらくここに何かがぶつかったはずみで,うまい具合にパキャっと逝っちゃったのじゃないかと。

 

打撃痕?
 ではサクっと修理。
 そしてさらに補強し,殴っても逝かないくらいの強度にしてさしあげましょう……ふふふ,コワくない。コワくないよぉ。ちょっとだけ……ちょっと先っちョ(糸倉)をアレ(修理)するだけだから。

 

合わせてみた
 まずは割れ目を継ぎます。
 こうした「かいしんのいちげき」系の破損では,破断面がパックリと,木目にそってキレイに分かれていることが多く,バキバキひびが入ってたり,欠片が散ってたり,断面がボサボサになってるようなことはまず滅多にありません。
 基本的には割れ目を合わせれば,きっちり噛合う状態になってます----今回の場合もそう。

 

ダボ埋(1) ダボ埋(2)
 まずは破断面にタボを通す小孔を穿ちます。
 挿しこむタボは竹串を直径2ミリくらいに削ったもの。これはあくまで破断部が接着時にズレないよう止めておくための補助・ガイドみたいなもので,この工作自体に補強的な意味合いはあまりありませんね。

 

ダボ埋(3) 接着後
 破断面をエタノールできれいにしてから,これまたエタノを加えて少し緩めたエポキを塗布。
 ちょっと置いて,少し染ませてから接合します。
 エポキはもともとあまり浸透性のない接着剤ですが,こうしてやるとわずかながら表層に染みこんで,接着剤の層の薄い,面同士の強固な接着が可能です。

 断面をキッチリ合わせたら,ズレないようにラップで巻き,その上からゴムテープをかけて保定します。こういう曲面の部品をくっつけるときたいへんなのが,どうやって保定し,正しい方向に圧をかけるかなんですが。接着物をまとめてラップで軽く固定してから,ゴムテープをギュッっとひっぱりながら巻きかけると,どんな曲面の部品でも比較的うまく,思う方向に圧をかけながらの接着保定が可能ですね。
 最近,靴屋さんの靴底修理法見て思いついたやりかたなんですが,いちいち治具に頼らない,使い捨ての保定法としてはこれ,なかなか使えます。

 二日ばかり放置してからほどきます。
 ふむ----まあスキマもなくうまくへっつきましたが,もちろんこれだけでは 「カタチを元通りにした」 だけのこと。強度的に不安がないわけではないので,ここから補強をしてゆきます。

 

チギリ加工(1) チギリ加工(2)
 まずは割れ目を中心にして輪鼓(りゅうご)型の孔を彫る。
 そう,お馴染みの「チギリ」を埋め込みます。
 チギリの埋め木は,細かな細工調整が出来るのでツゲ。

 ただ,この楽器の糸倉の材はカツラ。月琴という楽器の材料としてはじゅうぶんな強度と耐久性を持っていますが,木材としてはさほどカタくも頑丈なほうでもありません。また今回の場合,割れた場所と糸倉のデザインの関係で,チギリを一面1箇所しか埋めこめませんでした。まあさほど弦圧の強い楽器ではないので,エポキによる破断面の強固な接着とこのチギリによる補強なら,通常の使用にさほどの支障は出ないくらいにはなってると思うのですが----なんとなく不安なので,さらにもう一策練りましょう。

 

チギリ加工(3)
 次の日に,チギリの余分を切り落とし,整形するのといっしょに,糸倉左右の塗装を完全に剥がしてしまいます。
 そしてここに----唐木の板。
 大洗の4号戦車なみにシェルツェン(増加装甲)を施すこととしましょう,パンツァー・フォーッ!!

 

補強板接着(1) 補強板接着(2)
 糸巻の孔があるので,片面づつの作業となります。
 なぜって?----両方いっしょにやっちゃったらどうなるか…ちょっと想像してみてくださいってばよ(w)
 貼りつけたのは本紫檀の板,厚4ミリ……あ,これ銘木屋のおっちゃんが惜しそうにしてたやつだ(w)白太が混じってるんで泣く泣く切り捨てた部分ですね。貼る前に,ちょっと濡らして木色を見てみましたがひゃっはー,実にうつくすぃ。まあ自作の楽器の修理に使うのがもったいなくないかと言えば,若干思うところもないではありませんが,板の大きさ的にイマイチ中途半端なので,こういうときに使ってしまわないとただの死蔵になっちゃいますからね。
 だいたいのカタチに切り抜いたものを,製材時の鋸目の残ってる部分を表にして貼りつけ,クランプで固定・圧着します。

 

補強板接着(3) 補強板接着(4)
 片面を貼ったら,反対がわの糸巻の孔からドリルや錐を通して孔をあけ,リーマーでほじくって拡張。最後に両面貼ってからも一度調整するつもりなので,この時点ではだいたいでいいです。
 バッチリへっついててくれないと困る箇所ですからね。確実に接着するため一日一作業として,硬化時間を長めにとります。

 

補強板接着(5) 補強板接着(6)
 接着の養生もふくめ,両面でつごう三日ほどかけました。

 

補強板接着(7) 補強板接着(8)
 糸巻の孔をちゃんと通し,貼りつけた板の周縁を整形。表面の鋸目を落として磨いたら……ううむ,びゅーてほー,ですね!!

 

仕上げ(1) 仕上げ(2)
 カツラは白っぽい木なので,このままだともちろん逆シベリア。(w)
 増加装甲の部分がやたらと目立っちゃいます。

 

仕上げ(3) 仕上げ(4)
 まずは塗装を剥いだ糸倉のカツラの部分と,増加装甲部分の整形時に削れた棹の一部をスオウで赤染め,木口の向いている糸倉の表と背がわは特にベンガラやオハグロで黒染めにして,貼りつけた紫檀の板と色を合わせます。

 仕上げはカシュー。
 いつものように下塗段階での塗装と乾燥をじっくり。

 塗りこんで完成です!!

 

仕上げ(5) 仕上げ(6)
 木口方向はやや厚めに,紫檀板を貼った左右面は拭き漆くらいの感じで。うむ---

 一見,総唐木作りみたいな高級感。

 中身がベニヤ板の某国製唐木家具なんかでも良く使われてる手法ですね。(ww)

 今回の修理,欠損部品はありませんが,糸倉の幅が変っちゃったので,前の山口が使えません。
 これだけは新らしく作んなきゃね。

 

新作山口(1) 新作山口(2)
 増加装甲の紫檀板同様,こちらもある意味庵主の秘蔵品。
 国産木の宝石・薩摩ツゲでこさえましょう!
 糸倉の色が前よりずっと濃くなったので,この材のまっ黄色が映えるでしょうしね。
 唐物月琴に多い左右のエグれた富士山型にします。
 指板が山口の手前で切れるスタイルにしてあるので,高さ15ミリ……月琴の山口としてはかなり背の高く大き目なモノとなりました。

 

山口(3) 山口(4)
 高さ調整でちょっと底面を削りすぎちゃって,指板との間に少し段差ができちゃったのはナイショだ----すんません,さすがにもう一個削る余裕がないんで,これでイかせていただきます!(泣)

 

完成!(1) 完成!(2)
 Lunaは唐物月琴をコンセプトに作った楽器なので,棹の指板と糸倉の幅が同じですが,今回その糸倉に増加装甲を貼ったので,山口(トップナット)のところにふくらみのある国産月琴に近いフォルムとなりました。
完成!(3)
 この場合,本来なら国産月琴と同じように,棹の左右を削って山口方向に少し幅のせばまったカタチにするのが自然なのですが,棹と糸倉を構成する3ピースの左右の板がもともと少し薄めなのと,唐物をなぞった原コンセプトの部分を残しておきたかったので,今回はこのままとします。
 ほんとはついでに仕込み刀とか自爆装置なんかも取付けたかったんですが,オーナーさんに拒絶されました。
 次に大破してきたら変えてあげましょう(w)

 従前のLunaはその棹と糸倉のコンセプトもあって,スラっとした印象のある女性的な楽器だったんですが,ま四角な指板にすこし厚く,太くなった糸倉。これはこれで武骨モダンな感じもしないではない。。
 なにかちょっと「漢前」感が増したような気がします。


 さあ,これでちょっとそこらの何か殴っても2~3発は大丈夫(たぶん)
 またバリバ~リと使ってやってください。


(つづく)


 

 

古楽譜PDF公開のお知らせ

20190509.txt
斗酒庵 告知 の巻2019.5.09 古楽譜PDF公開のお知らせ


 これまでもどっかの共有ファイルサーバーにあげたり,ウィキにあげたりはしてきたんですが,次から次へと潰れたり消えたりしちゃうので,あきらめて今回はHPにうpりました。
 『清風雅譜』各版6種,『声光詞譜』2種に『小蘇女史清楽譜(仮)』。『声光詞譜』の3冊本はZIPにまとめましたが,ほかはPDFそのままで公開しています。
 商用でない限り,使用・引用・複製・再配布は自由とします。

http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html#PDFS

 まあ古楽譜は持ってても読み解きが大変なので,ふつうそのままでは演奏できませんし,研究者でもない限りさして役に立つものでもありません(w)が,自分がどういうものを使ってそれをホザいているのか,モトとなってる資料が公開されてなければ意味がありませんからね。また,こういう古い資料は公開して色んな立場のヒトの目に触れることで,はじめて意味を成すものでしょうし。

 同じページでは亀戸のワークショップで使ってる楽譜集も配布してますので,楽譜見て弾きたいかたは,そちらもどうぞご覧アレ。

http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html#PDF

« 2019年4月 | トップページ | 2019年6月 »