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明笛について(25) 明笛47/48/38号

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斗酒庵 ひさびさにまたまた明笛を買う(W) の巻明笛について(25) 明笛47/48 そしてなぜか38号

STEP1 増殖する明笛団(ZMD)

 46号の修理がうまくいってなかった時期,

   ちょっと荒れながら夜中にポチって,

 朝気がついたら,明笛が増えておりました(w)

 前回は2本だて,今回は3本だてですが,いちばん下の長い1本は響き孔もなく,飾り孔も後づけで不自然。「明笛風」に作られたか魔改造された笛のようです。
 今回はこれを除いた2本を修理することとします。


明笛47号


 47号は全長480,今もある「紫山」銘の明笛です。
 当代の「紫山」の焼印は楕円形ですが,こちらのはほぼ四角。
 何代目のころの楽器なのかは分かりませんが,お飾りの意匠や寸法などから考えて,大正期以降に作られた,比較的新しいタイプの1本だとは思われます。

 お飾りは頭もお尻も,すっかりニカワが飛んでガタガタ,すぐ抜けちゃうくらいになってますが。このタマネギ型の頭飾りは特徴的ですね。

 今売られている明笛のお飾りは木とかプラ製が多く形も異なりますが,これには牛角や骨が使われており,けっこう重たいですね。

 この白いタマネギ部分はねじ込みで,回せば蓋みたいにはずれるようになってますが,黒いほうの胴体にあいてる孔は材料の牛角にもともとあいてたもの,特に加工した様子もなく,浅くてせまくて何も入れられんので,よくあるようここが小物入れになっているとかではないようです。

 まあそもそも----前にも記事で触れましたが----明治の広告なんかで 「ここに竹紙(響孔に貼る薄紙)が入れられる!」 とか,世紀の大発明みたいに書かれてるこの工作なんですが。ちょーーーっと,考えてみれば分かるように,こんなところに竹紙入れてても,演奏中にパッと取り出せるわけはありませんし,こんなものいちいちキコキコはずして中からつまみだすより,何かあけやすい,ちょっとした小物入れ持っていったほうが早いですわな。
 古い中国の随筆,『揚州画舫録』なんか読むと,笛子吹きは足元に 「笛膜盒」 とかいう蓋物の小物入れを置いて,そこから芦紙や接着剤の阿膠をとりだして使ってたみたいですね。明笛のモトとなったような中国の笛で,ここをそういう小物入れにしたなんてハナシは聞かないなあ。(ww)
 以前ここがそういうふうになってる笛で,実際に竹紙の切ったの入れて実験してみたんですが,入れにくいわ出しにくいわ…………まぁ明笛における「思いついただけ」の工作の代名詞みたいなものの一つですわな。

 ま,それはともかく。
 内外多少白っぽくホコリにまみれちゃってはいますが,全体的には比較的きれいな状態ですね。

 簡看される損傷は指孔3-4間の割レくらいでしょうか。あとは頭飾りの側面にネズミの齧った痕があちゃこちゃあります。

 そのほかは,他2本同様テープの類が巻かれていたらしく,帯状の日焼け痕がいくつかついちゃっていることくらいで。
 演奏可能な状態にするのに,それほど手間はかからない様子です。(あくまでも,いまのところww)


明笛48号


 48号はこないだの45号同様,管体を黒染めした明笛。
 47号よりは若干長め,お飾りのカタチなどもほぼ伝統的な明笛の意匠を継承しています。
 ただしこの2本はいづれも,唄口や指孔の形状がやや大きく,より円形に近くなっています----これは大正期以降に作られた比較的新しいタイプの明笛の特徴で,清楽に使われた古いものでは,46号とかいまの中国笛子と同様,小さくて細長いナツメ型のほうが多いですね。

 この孔の形状については以前ちょっと考察したことがあるんで,興味のある方は以下の記事もどうぞ----

 1)どうやってこのカタチにする?  明笛の作りかた(2)
 2)なんでこのカタチ? 明笛について(20)

 47号にくらべると若干使い込まれたのか,表面に傷があります。
 また内塗りも,47号はツヤツヤしてたんですが,こっちのは少しつや消しで表面がパサパサした感じ。状態は異なりますがどちらも例の顔料系塗料らしく,水を通してもビクともしませんが,エタノで拭うと溶けてきてテレピン油に似たニオイがします。

 ヒビ割れは見当たりませんが,管尻の飾り孔と裏孔のところに赤い絶縁テープが貼られていました。ハガすと接着剤がカチカチツルツルの層になって管の表面を覆っております。(^_^;)

 同様の痕跡が響孔のところにもありますので,ここももとは赤テープでふさがれていたのでしょう。

 実際にやってるところは見たことはありませんが----
 笛子では管尻の飾り孔を紙でふさいで管の調子を変えることがある,(=この2コの孔はそのためのものである)という記事を読んだことがあります----いやでも,考えてみると管の調子を変えるならそこじゃなく,まず裏孔をふさがないとならないハズなので些かマユツバものではありますが----まあ,今回の場合はそういうことじゃなく,単に明笛を知らないふつうの笛吹きが,理解不能な孔をふさいだって可能性のほうが高そうですね。

 こちらのお飾りは黒い牛角と白い牛骨のリングを組み合わせたもの。
 頭飾りは真ん中のリングのところで2つに分解可能ですが,こちらも内部に空間はほとんどなく,「小物入れ(w)」 にはなっておりません。

 頭飾りのほうに目立つ損傷はありませんが,お尻飾りはリングが欠け,小さいですが端っこの方にネズミに齧られた痕があります。

 テープ痕のテカテカがどうしたものか………多少厄介そうで不安ではありますが,大きな割レやらヒビやらもないようですし,唄口の状態なども悪くないようです。
 こちらも演奏可能な状態にまで戻すのに,さほどの難はないんじゃないかと思われます。


明笛38号

 で,ここでさらに1本を追加。

 あ,いや----この状況でまたポチっちゃったワケじゃないですよ!(w)

 このところ修理が続いてるんで,いつも笛の置いてあるあたりを整理してたら,ほとんど未修理状態の笛が1本出てまいりました。
 ああ,これ……38号ですね。
 古いタイプの管と思われる37号といっしょに手に入れ,その時の記事にもちょいとだけ姿が写っておりますが,ブログでは1行で済まされております。

 「…38号は修理すれども音出ず。(泣)」  明笛について(20)

 ----と。
 お尻のお飾りがなくなってるのと,唄口のすぐ内がわあたりの塗装が多少ハガれたり傷んだりはしていたんですが。
 外面から見た感じでは新品同様のピカピカで,特に何も問題がなさそうなのに,とにかく音が出ない。
 前所有者も何かしようとしたようですし。この唄口あたりに何らかの問題があろうとは思われたものの,庵主,べつだん笛の専門家ではなく,このデリケートな箇所をあんまりイジって,かえって取り返しのつかないことになるのもやだったんで,以降放置しておりました。

 その後,数々の修羅場を乗り越え……いいえ,ウソです(w)。けっこう無茶やっても音が出せるくらいにまで挽回する(誤魔化す)手段をイロイロと身につけてきたもので。
 この機会にも一度,ちょいと挑戦してみようかと思います。

 すでに述べたとおり,唄口の問題とお尻飾りがなくなっているほかは,管体にほとんどキズのない,新品みたいな美しい状態です。
 管の竹は皮つきで,篠笛なんかと同じ女竹だと思われます。
 管頭の飾りはツヤツヤ。たぶんこりゃ本物の黒檀でしょうねえ----妙なギミックも装飾的な彫りもほとんどないストイックな作りです。

 指孔や唄口は縦に長いナツメ型ですが,古管のそれよりは丸ッこくやや大きめですので,これもおそらくそんなに古い時代の作ではなかろうと考えられます。

 唄口内壁にあった塗装面の損傷は,おそらく前所有者が管頭の詰め物をズラしてピッチを調節しようとした痕と思われます。
 明笛の詰め物は基本固定されちゃってるうえに塗りで固められてますから,これを無理に動かそうと思うとそのあたりを壊さなきゃなりません。ふつうはそうした後でまた上から塗り直しとくものなんですが,この管ではそういう痕跡もなく,詰め物をズラしたぶん塗りのない竹の地肌が出ちゃってます。
 その痕跡からすると,当初は反射壁が唄口上端のかなりギリギリ,間1ミリないくらいのところにあったようですね。

 まあ,たしかにそれだと音が出しにくかったんでしょうが……しかし,今までの経験から言うと,内部が多少荒れてようが,管頭の詰め物がなくなっていようが,こんなふうに唄口のフチの部分さえきちんとしていれば,「出しやすいか」 「出しにくいか」 の違いはあっても 「音が出ない」 なんてことはそうありませんでした。
 そこからも,この笛で音が出ない原因は,この内がわの問題だけではなさそうです。
 そもそも,口に当てて吹いてみても,唄口にぜんぜん息が引っかからない----息が音になってくれない感じなんですね。
 よく笛吹き連中は笛の吹きかたを 「瓶の口を吹いて鳴らすようなもの」 なんて表現しますが,この38号だと 「瓶の横面を吹いてる」 みたいな感じがします。

 前回はとにかく,どうやってもこうやっても音が出ないんで,ハナからあきらめてすぐ放置しちゃったんですが,
 今回の3本のなかではこの笛が,唄口から裏孔まで310といちばん長い。
 48号がちょっと微妙なんですが,こちらは清楽の明笛として作られたものである可能性が高いんです。
 うまく復活できればそれなりのデータが採れそうですので,今度はまずまず,その「鳴らない」原因のところから,徹底的に調べてみたいと思います。

 ----以上,夏の帰省前最後のチキチキ明笛修理大レース,これをもって開始とまいります!!


(つづく)

明笛について(24) 明笛46号(2)

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斗酒庵 ひさびさにまた明笛を買う の巻明笛について(24) 明笛46号(2)

STEP2 フラットウッズへようこそ!

 管本体がワレワレのヒビヒビ補修の養生に入ったところで。
 この間にお飾りでも作っておきましょうか。

 管頭・管尾のお飾りともになくなっていますから,もとどんなのがついてたのかは分かりませんが,やや細身でスマートな感じの笛なので,あんまり凝ってない,シンプルなのがいいでしょう。

 材料は百均のめん棒(長33センチ)を使います。
 ちょっと前に44号(招月園)の修理で使った余りですね。
 庵主の修理ではおなじみ,月琴の糸巻の材としてよく使ってるもの----そういやこのお飾りも,整形の途中までは糸巻の工程とあんまり変わりがありませんな。


 まずは根元になる部分に,糸ノコで平均3ミリほどの深さの溝を1本,ぐるりと刻みます。
 そこに向けてカッターや小刀で削ってゆき,全体を先の開いたラッパ状に整形。

 ある程度カタチになってきたところで先端に孔を穿ち,リーマーで内がわもラッパ状にエグってゆきます。
 前まで使っていたブナパイプだと,この真ん中の孔をあける手間はなかったんですが,カタくって----切削の加工はこの百均めん棒のほうがずっとラクですね。

 中心の孔があるていど広がったところで首チョンパ。
 こんどは反対がわの取付部をえぐります。
 こちらの孔にはテーバーをつけず,中心孔をそのまま広げて,まっすぐ凹状に彫り込んでゆきます。
 この頭飾りは長さが8センチもあるので,手持ちのドリルビットでは反対がわまでとどきませんが,両方から穿ってうまく貫通させました。
 構造と機能からすれば,頭飾りのほうは演奏時のバランスをとるカウンターウェイトとしての意味合いのほうが強いので,べつだんパイプ状にする必要はあまりないのですが……まあ今回は気分ということで。(ww)

 管尾のお飾りは3センチ。
 工程は同じようなものですが,小さいぶんこっちのほうが加工はタイヘンです。
 首チョンパのあとは適当な丸棒をさしこんで,回しながら整形。こうでもせんと保定できません(w)
 本来は旋盤とかで作る部品ですもんね。

 肉の厚みを確かめながら,整形してゆきます。
 けっこう薄くしてもまあそう壊れることはありませんが,削りすぎて穴でも空いちゃったら,そこまでの苦労がダイナシですからねえ。

 同じような手旋盤で,一次整形段階ではほとんどまっすぐな側面だった頭飾りも,端の方が少し反り立ったなだらかなラッパ型に整形します。

 このめん棒の材は削るとボサボサした質感で,そのままだといかにも「木」----といったちゃッちイ感じですが,色自体はきれいな白ですので,しっかり磨いて導管を埋めると存外に骨っぽい質感になります。
 今回は百均エポキをエタノでシャブシャブに緩めたものをシーラー(下塗り剤)の代わりに塗ってみました。
 2度ほど塗って表面を磨くと----うむ,ちょっと見木っぽくなくなって悪くありません。


 一回めの補修で 割レ自体は継がれ,ヒビもかなり薄くなりましたが,まだ表面近くに浅いミゾが残っています。
 ここに再び緩めたエポキを2度ほど流し込み,最後に秘蔵の「粉」をかけて盛り上げます。

 ふふふふふ…ダンナ,粉ですよ,例の粉。

 前にも使ったことがありますが,これは煤竹の虫食い部分に詰まってた虫の食いカス----竹というのはながーい糸状繊維のカタマリで,通常は削っても砕いてもボサボサになるだけ,なかなか「粉状」にはなってくれませんが,これは虫さんが分解して粘土質の土のようにしてくれたもの。砕いて擂ってふるいにかけると,こんなふうにすごく微細な粒子状に…「粉」に変ります。
 竹由来の物質ですので,竹との相性がいいんですね。

 こういう修理は,深いミゾより----浅いミゾのほうが難しい。

 そもそもミゾ状のところにエポキをきっちり行き渡らせるためには,その粘度を下げなければなりませんが,エタノで緩めるとそのぶんわずかに引ける(エタノールの蒸発した分が減る)のと,蒸発時にエポキがエタノに引っ張られ,塗った範囲の外がわに寄ってしまうので,肝心の中央部分がいつまでも埋まってくれないという目に遭います。もろんその作業を繰り返せばいつかは確実にキッチリと埋まってくれはしますが,何度も充填と整形を繰り返すことになり,埋めたいところよりもその周辺が傷ついたり削れたりしてしまいがちです。
 まあ結局,どうやっても整形の時にどっかこっか削っちゃったり傷つけちゃったりはするんですが(^_^;)。
 作業の回数を減らし作業による損傷を少なくするためにはどうすればいいか----そう(w) 凹 をいッそ 凸 にしてしまえばいいのです。

 まずは浅いミゾに緩めたエポキ(ここはもう強度も硬化時間もさほど要らないので,硬化時間の短い百均のでおけいww)を筆で流し込んだら,粉をかけて軽く払い落し,10分ほど置きます。
 エポキを吸って少し固まり,粘土状になった粉をヒビの上に寄せて盛り上げ,さらに10分後,その上にクリアフォルダの欠片やラップの切れ端をかぶせ,指の腹で軽く押し付けて,溝の中にキッチリと埋め込みましょう。
 固まったらカバーをはずし,上からシャブシャブに緩めたエポキを2度ほど染ませて完了----ヒビの上の狭い範囲だけに,凸った部分を作り出します。
 もちろんあらかじめ粉をエポキで練ったパテを使う方法もあるのですが,いくぶん手間は少なくなるものの,「充填箇所の上で直接パテを作る」このやりかたにくらべると,やはり粘度の問題があるため確実さと精密さが劣るようです。

 ヒビ埋め箇所を整形したら,あとは内外の保護塗り。

 内がわの塗りは,ハミ出してる接着剤を軽く削ったあと,すでに塗られているオリジナルの顔料系塗料にカシューを滲ませ,下地として固めた上で2度ほど上塗り。
 最初のほうでも書いたよう,オリジナルの塗装に劣化や損傷が少なかったので,こちらはあまり問題なく仕上がりました。

 最後に外がわ。
 いつもなら拭き漆ていどで済ませますが,46号の管は皮つき(ニセの斑模様をつけるためですね)。皮のついた竹はもともと割れやすいですし,補修箇所も多いので,今回は補強のため表面に薄く塗膜を作るくらいに塗りこめます。
 カシューの本透明に透を混ぜ,古管っぽく少し飴色に見える感じに----

 と………庵主,ここでちょいとしくじりまして。

 一度塗り終わったところで,塗装を全面ハガすハメに……


 詳細はハブきますが,まあ 「ちョしちゃイケない時にちョした」 結果----このブログでも,自戒を込めて何度も書いてるくせに----とのみ書いておきましょう。(^_^;)

 この塗装のほうの失敗をとりもどす関係で,ちょっと作業に間があいてしまいましたので,気をそらす意味も兼ねて少々悪戯を----

 頭飾りにこれを仕込みます。

 自作の明笛や胡琴の棹,あとエレキなカメ琴シリーズなんかでも仕込んでますが,庵主はこれを「金鈴子(チンリンツ)」って呼んでます。
 太清堂の月琴の響き線から思いついた構造ですね。
 管体がうまく共振すると,金属っぽい余韻がわずかにつきます。

 笛の場合,聞いてるほうに聞こえる影響はわずかなんですが,吹いてるほうの耳のすぐそばにあるので,むしろ演奏者のほうにハッキリと聞こえます。吹音がちゃんと管に伝わって,全体ブルブルの状態,すなわち楽器のスペックがじゅうぶんに発揮されていないと作動しないので,これが聞こえない時には,聞こえるようになるように角度とか傾きとかを微調整し,ベストポジを探すわけです。その時の息とか唇の具合や調子とかを測るメーター,なんといいますか----「演奏者のためのエフェクター」って感じですね。


 さてさて,自らなしたしくじりの影響で塗装作業は大幅に遅れ,二週間で終わるはずの作業が,けっきょく一ヶ月近くもかかっちゃうこととなりましたが。(泣)
 最後の捨て塗りを乾かし一週間----右手に封印された邪悪な龍をおさえこみ,左手の邪鬼王の力を解放せぬよう,聖衣で編んだ包帯を巻き付け拘束しつつ,今回は無事に最後までちョさないでいられました(www…バンザーイ!!!)

 #1000のShinexで磨いて表面に付着したホコリや凸凹を削り落とし,亜麻仁油とコンパウンドで均し,#3000で磨いてカルナバ蝋で仕上げます。

 亜麻仁油の乾燥を待ってさらに数日。

 梅雨の合間を見計らい,お待ちかねの試奏へ----

 うむ----予想はしていましたが,ちょいと難しい笛ですわ。

 もともと,明笛はほかの笛類に比べると唄口が極端に小さいので,息を吹きかけて音が出るスィートスポットが篠笛とかよりずっと小さいんですね。さらにこの笛は管がやや細めなので,その範囲がさらに狭くなってるみたいです。

 慣れてくると唇のカタチで調整できるんでしょうが,ふつうの笛と同じつもりで吹いた場合,息の量に対し音に変換されるぶんが少なく,慣れてない現状ではしっかり音を出そうと思うとそれなりに息量が要ります。

 まあ庵主,もともと息継ぎが上手ではないせいもあるのですが,最初の1時間くらいはドレミだけでもうゼーハーの状態でした。(w)

 清楽における基本的な運指をもとに試奏してみた結果は,以下のようになりました。

 ○ ■ ●●● ●●●:合 4Bb+15
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5C+32
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5D-5
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5Eb+22

 当初の予想通り筒音,全閉鎖「合」はBbでした。
 古い清楽音階の基音ですね。全閉鎖からここまでは順調。
 続く「尺」が----

 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5F+30
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺 5F#-24

 とやや乱調。本にあるこの2種類の指ではやや安定しませんでしたが,いろいろ試してみて----

 ○ ■ ●●○ ○○●

 という変則運指がF+15で,音も比較的安定していました。「工」は

 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5G+35
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5G+25

 で,右手を全開放したほうが安定がよかったです。対して「凡」は

 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5A-5
 ○ ■ ○●● ○●●:凡  〃

 と,どちらの運指でも問題ありません。
 呂音の最高は----

 ○ ■ ○●● ●●●

 で,筒音のほぼオクターブ上,5Bb+25が出ました。
 ピッチはだいたい合っているみたいですね。

 べつだん音が出ないわけじゃありませんが,ふつうに勘所をとらえるようになれるまでがちょっとタイヘンそうです。

 甲音もはじめはほとんど出せませんでした。
 集束した息がひっかからず,スカー,スコーっと唄口を通り抜けちゃう感じ。
 何度かくりかえし,少し慣れてくるとふつうに出せるようになりましたが…全体にクセのある,「プロ用の道具」って感じがします。

 「初心者用」は誰が使っても比較的使いやすく,そこそこのパフォーマンスを発揮しますが,プロ用ってのは性能的につきぬけたところがあるぶん,扱いが難しいものです。見栄張って「初心者用」でなく,いきなり「プロ用」の楽器とか道具買っちゃって,けっきょく放り投げたヒト----周りにもけっこういますよね?(ww)

 なるほど 「ほとんど未使用」 の状態で放置されちゃったわけだ。

 使い込むとけっこうなパフォーマンスを発揮するでしょうが,すくなくとも庵主みたいな(w)初心者向けの笛ではありませんねえ。

 塗りがまだ完全に乾いてないので本意気の響きはしませんが,塗膜がカッチリしてきたらかなり鳴りそうです。
 同じ理由で「金鈴子」システムの効きがまだ悪いんですが,こちらも管体が乾いたらリンリンと金属音ひびかせてくれると思います。

 とまあ,自業自得の失敗の結果ではあったものの,思いがけず試奏までに時間のかかってしまった明笛46号の修理ではありますが----実はこれに手間取っている間に,さらに2本ばかり増えてまして……
 次回からもまだしばらく,笛の直しが続きますです,ハイ。


(つづく)

明笛について(23) 明笛46号

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斗酒庵 ひさびさにまた明笛を買う の巻明笛について(23) 明笛46号(1)

STEP1 ヒビヒビノワレワレハウチュウジンダ

 さてさて,もう1本の46号。

 ヒビヒビでワレワレなのは最初にも述べたとおり。
 歌口上下にも2本入ってますし,棹背のものは上から下までパッキリ貫通しちゃってます。

 直るか?----と問われても確約はできない。
 上手く行ったらメッケもの,というくらいのシロモノです。

 しかしながら,この笛,ドレミ明笛の45号に比べると,ずっと古いタイプの貴重な笛であろうと考えられます。

 頭尾のお飾りなしで管全長448ミリは,古いタイプの明笛としてはさほど長くもありませんが,歌口の中心から裏孔まで328ミリ,同じく指孔の一番下第1孔まで277ミリというのは調べてみますと歴代でもトップクラスの長さ。
 清楽の演奏に使われたことがほぼ間違いない31号が管長539に対して裏孔まで320,第1孔まで279,こないだ直した44号が535に対して312の274----どちらも長大な明笛ですが----管の全長に対してそれらより長いのは管の太さの関係でしょうが,こうした寸法からだけでも,おそらくは全閉鎖BもしくはBbの清楽音階の笛と見て間違いないでしょう。

 資料としても貴重な笛です。何とか直してあげたいものですにゃ。

 主要な損傷個所は以下 (下解説画像,クリックで別窓拡大)----

 ヒビ割れのうち特にひどいのは,歌口の上方と,指孔の2~4孔間のもの。

 歌口上方の1本は,場所により1ミリ近く開いており,指孔のほうのは真ん中あたりが管内まで貫通し,少し盛り上がって食い違い段差も出来ちゃっています。
 45号とは違い,いづれの損傷箇所にも修理の痕跡はありません。

 ヒビヒビのワレワレで,内も外もバッチイ状態ではありますが,歌口周縁や管内の塗りに損傷や劣化した部分は少なく,響孔のところの紙貼り痕をふくめて管表面にもほとんど使用痕らしい使用痕がありません
 もしかするとほとんど未使用のまま放置され,この状態になったものかもしれませんね。

 簡見の時にエタノでさっと拭いはしましたが,管内いまだ一面灰色の世界ナレド,ここまでワレヒビてるとさすがに中性洗剤で洗ったり水を通したりもできません。

 キレイにする前に,まずはとにかく,管を漏れのない状態にいたしましょう。

 エポキのなるべく硬化時間の長いやつを買ってきました。
 これを練ってからエタノールでゆるめて,細い筆で割れ目にふくませてゆきます。
 庵主は百均で買ったネイルアート用の小筆(5~6本入り)を使ってますね----使い捨てでも惜しくない感じ?

 先にエタノールだけをヒビの中に流しておくと,それに沿って緩めたエポキも流れてゆきますので,何度かやれば,見えないような細くせまいところまで,接着剤をじゅうぶんに行き渡らせることができます。

 割れ目がエタノと接着剤でダボダボ,飽和状態になったところで,近所のDIYで買ってきたホースクランプの類をかけてゆきます。

 この時はみだした接着剤はなるべく,綿棒などで丁寧に拭っておきましょう。
 硬化時間が長いのを利用し,割れ目を締め付け閉じながら接着してゆきますので,けっきょく接着剤はハミ出ちゃうでしょうが,ここで最初の余分なぶんをちゃんと処理しておくと後々の作業がラクになります。


 割れてる箇所が多いので,すこしづつ,順繰りやってゆきます。
 エポキ自体は半日ほどで硬化していますが,エタノで緩めたりしているので,接着養生の時間もじゅうぶんにとりたい----けっきょく 歌口・指孔がわで3日,管背に2日 ほどもかかりました。



(つづく)

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