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楽器製作・名前はまだない(5)
GEN002_05.txt
2019.10~ 楽器製作・名前はまだない(5)
STEP5 わたしは 見ます ひとつの 赤い とびらを
長棹の台湾月琴に現在統一された規格はなく,寸法は作家により微妙に異なっているようですが,だいたいは----
全長:850~900
胴径:360~400,多くは370前後
棹長:500±30
有効弦長:650±20
といったあたりなようです。
まあ
清楽月琴などもっとバラバラで,
個体によって全長や有効弦長が4~5センチ違ってたりしますからね,よそさまのことはとやこう言えぬ。(w)
徳川美術館所蔵の御座楽(琉球の古い宮廷音楽)の月琴は,全長820,胴径400,棹の長さは420,有効弦長は510で,有効弦長をのぞけば外見上の寸法は,
この台湾の月琴に近い
のですが,
棹と胴体のバランス
から見ると,清楽月琴のほうにいくぶん近い----中間的な楽器ですね。
ただ御座楽の月琴がずっとこういう姿だったかというと,
若干疑問があります。
現に「座楽並躍りの図」(沖縄県立博物館蔵)の絵巻に見える月琴は4弦なところは同じなものの,琴頭が現在の台湾やベトナム月琴と同様,
三味線のような海老尾型
となっていますし,天保時代に描かれた琉球楽器図の月琴も,棹が長く琴頭も海老尾型。琉球関連の資料の絵図で見られる「月琴」には現存南方の長棹月琴の姿に近いものしか見られません。
このシリーズの第2回で紹介した
「丐弾双韻」
が,長870,棹360(おそらく糸倉琴頭ふくめず),胴径351,胴厚55,有効弦長551。有効弦長からすると,台湾月琴と徳川美術館の御座楽の月琴の中間くらいですが,図で見る限り,この楽器の糸倉と琴頭の形状は
徳川美術館の御座楽の月琴と同じ
です。もしかするとこれ自体が本来は「丐弾双韻」として作られた楽器だったのかもしれませんね。
徳川美術館の「月琴」に響き線が仕込まれているかどうかは分かりませんが,
荻生徂徠
が見たという琉球使節の楽器には,「琵琶に似ていて,茶筒を横に切ったような丸い胴体で,胴の中に仕掛けがあり振ると金属の音がする」というものがあったようです(『琉球聘使記』宝永7=1710)。
残念ながら寸法などについては描写がないため,これが長棹タイプであったのか短い棹の清楽月琴タイプの楽器であったのかについては判然としません。
これらのことから考えて,御座楽で「月琴」として使用された楽器には,実際には
いろいろな種類のものがあった
と推測されます。
また,琉球使節招来の楽器については,唐渡りのものであった可能性も,唐渡りのものを模して当地で作られたものである可能性もありますから,そこで何らかのアレンジが加えられたかもしれませんし,
琉球オリジナルの楽器
であった可能性もないではありません。
こうした長棹円胴4弦の楽器が,そのまま中国南方を含む地域で当時流行っていたものかどうか。またこれらが,今の台湾月琴や清楽月琴を含む「短い棹の月琴」に直接つながってゆく楽器なのかどうかについては,まだいまひとつ調べが足りませんが,ともかく,
長崎ルートで清楽月琴が流行る以前の「月琴」
には,長棹のものも含まれていたことは間違いないようです。
さて製作です。
裏板がついて胴体が箱になりました----まあ,
エレキ仕様なんで穴だらけ
ですけどね(w)
まずは周縁を削ってキレイにしましょう。
裏蓋のふちも,テープで蓋を仮止めして,いっしょに削ってしまいます。
表板は厚みを落としましたが,裏板はそのままでいきますよ。
次にやることは棹孔の補強。
側面の材エコウッドの原材料はスプルース。ギターの表板なんかに使われる木ですので,音響特性とかは問題ないものの針葉樹材です。内部に1センチちょい厚みのあるネックブロックが付けられていますので,強度的な面では問題がないんですが。表裏板の桐と同じで
表面が柔らかめ
なので,糸を張り続けてると接合面が圧縮されて棹が微妙に傾く可能性も考えられます。
棹孔の周りに
ブナの突板
を貼りました。
そういえば同じ工作----以前,ウサ琴シリーズでもやったことがありましたね,なつかしい。
あの時の製作実験は,同一の胴体に対して複数の違う種類で作られた棹を挿し,その音質等の変化を探るというもの。一つの胴体で何度も棹を抜いたり挿したりする必要があったので,棹孔のまわりを補強したのでした。
同じような補強工作は,ベトナムの長棹月琴でも見られます。あちらは台湾月琴よりもさらに棹が長いですからね。ここにかかる弦圧もけっこうなものだからでしょう。
ほぼ同時の作業として棹の染めも開始。
まずは赤染め。
いつものようにスオウを刷いてミョウバン媒染----なんですが。
今回は棹本体が米ツガ。
染まり自体は悪くないんですが,
染めの作業による退け
がすごくて…染液塗ってから乾かすと,
せっかくツルツルにした表面がでっこぼこ
になってしまいます。
これを防止するため,ニ三度下染めをしたところで,
サンディング・シーラー
を塗って磨き,染液の吸いを抑制しました。
シーラー塗ってもちゃんと染まりますからね。
もちろん,塗る前より染液の浸透は悪くなりますが,これで表面の退けもほとんどなくなりました。
これで,
たださえ細い棹を,色付けのためにさらに削る
ようなことは避けられたわけです。
胴のほうも----側面はスプルースですからね。
同じような加工が必要でしょう。
こちらはもう染める前にシーラーを塗布しちゃいました。
今回はいつものウサ琴シリーズのように
竜骨
(内部から側面形状を支える構造)を仕込んでいないので,染めの作業で胴側が歪んだりしたらタイヘンですし。
さて,棹も胴もまっかっか。
剣をとっては日本一か,3倍速い赤い人のザクのようになりました。
このままでも悪くはないのですが,今回はこれを----
----黒く塗れ!
(つづく)
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