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月琴64号(4)

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斗酒庵春にさかる の巻2020.3~ 月琴64号 (4)

STEP4 だがしかしのいか

 ついてた地の側板が,後補で使えないことが分かり。
 側板一枚でっちあげてハメこんだ,月琴64号初代不識……

 それでもいまのところ,修理は順調----と言えますね。
 表裏真っ黒,クギ打ちに板割れにヘンな塗装……おもに前修理者のシワザ中心ですが,あれだけの損傷・不具合があったにしては,さしたるストレスもなく,再生に向け順調にコマを進めております。

 これはひとつに。
 ふだん庵主の使ってるのが同じ作者の楽器なので,この楽器について,てのひらのところで熟知しているというところがあります。
 はじめの1号から,現在使っている27・61号もぜんぶ,自分で分解し,直し,使い続けてますので,アタマのなかにはこの人の楽器の事が,内部構造や工作のクセも含めて細部まで叩きこまれてる感じ。

 あと,最初のほうでも言いましたが。
 古物のくせに,保存状態が良く未使用みたいなキレイな楽器は,かならずその内にトンでもない悪魔を抱えており。修理をしてるといづれそいつがトンでもないジャマを仕掛けてくるものですが。
 表板の使用痕などから,この楽器は62号同様に歴戦の勇者,いわゆる「使い込まれた楽器」であります。楽器という道具は不具合をメンテしながら使うもので,使われるうちに不具合が矯正されてゆくものです。すなわち,この楽器には厄介な「初期不良」はあまり残っていナイ。
 さらにここまできちゃなくヨゴレ,クギまで打たれまくっちゃってますと,貧乏神も住めないアバラ家みたいなもので,ジャマをしかける者もなく,河童の川流れのように(誤用)物事もスッキリと流れてゆくものであるらしいです,ハイ。

 庵主の修理を妨害するものがあるとすれば----それはふたつ。
 「前修理者」と「原作者」のシワザ,で,あります。(w)

 「前修理者」のほうはまあ,無邪気にクギを打ったり,ヘンな色塗ったり,ボンドでへっつけたりするくらいなものでカワイイものですが(でも呪う)

 「原作者」のシワザは,その奥に「手抜き(メンドウ)」とか「吝嗇(ケチ)」とか「無茶」とか,時には 「むしゃくしゃしてやった,どうでも良かった。あとヨロシク。」 と言った理由が透けて見えたりするうえ,間違いなくすでに故人なので(ゲンノウで)殴るのに殴れないという腹立たしさがあります。

 とりあえず写真の残っているような奴は,画像拡大コピーしてダーツの的にでもしておきましょう,エイッエイッ!

 さて,64号,棹の修理に入ります。

 糸倉の先端に,欠けた蓮頭をけっこうぶッといクギ2本,ブチ込んでとめてましたが,これは調査の段階ですでに引っこ抜いてあります。これ自体はけっこうインパクトのあるシワザではあったものの,実のところこの他には,棹に「損傷」と言えるような箇所がありません。
 壊れているとはいえ蓮頭もあり,山口やフレットもオリジナルのものがそろっています。基本的には,表面になぜかムラムラに塗られたムラサキ色の塗料をこそげ落し,糸巻を4本新たに作れば修理完了,なのですが………

 こないだ見つかった鶴寿堂4の棹の指板部分の歪みは,棹を基部と糸倉の二方向から工作していったことが原因だと思われます。ブ○タモリでやってた札幌の街のハナシのように,両端から作っていって合わせ目のところで合わなくなっちゃったので誤魔化した,みたいなものですね。問題はそれを 「ま,いいかあ」 と放置しやがったことで(呪)

 同じような棹の歪みは,この初代不識の楽器でも見られました。ただしこちらの場合は,そういう工作加工が原因ではない----いや,ある意味その「工作加工が原因」なのですが,鶴寿堂の場合とはいささか異なる原因理由により生じてますね。

 初代不識の月琴の棹は,蓮頭を除く糸倉の頭からなかごまで一木で作られています。

 もともと,高価な唐木製の唐物楽器でも,胴体に入る棹基部から先には針葉樹材を継ぐのが一般的な工作です。初代不識・石田義雄は清楽の東京派流祖・鏑木渓菴の弟子だったらしく,彼の月琴もまた渓菴自作の楽器を模していると考えられるので,そのあたりから継承された構造だったのかもしれませんが,彼の楽器は安い量産版から高級な総唐木製のものまで同じ構造,棹は一木彫り貫き削り出しとなっています。

 一木作りの棹は一般的な構造のものより加工の難度が高く,それでいて不具合が出やすい。さらには後で調整・修整するにも限界があるため,製品としての歩留まりが発生しやすいものです。さらに言うなら,一般的なものと比べてとくに強度が上るわけでもなければ,思ったほど音響的な効果が顕著に出るわけでもありません。
 「なかごを継いだものよりは一木で作ったほうが音は良いはずだ!」 という現実軽視の妄想的満足を除けばムダとしかいえないこの工作(もうヤメてあげて!一木棹のHPはマイナスよ!)の数ある欠点の一つとして,一般的な構造の棹より大きな材料が必要となるため,材料由来の歪みや狂いが出やすいというのがあります。歪み・狂いは木取りの関係で,とくに細くなる棹の先端部(糸倉の手前あたり)と基部なかごの部分に発生しやすいですね。


 棹の狂いは,だいたい基部がわから糸倉のほうを見た時に,全体が右か左にねじれるようになっていることが多く,そうしたねじれは製作時にすでに生じていたこともあったようで,はじめから山口やフレットがそれに合うように左右に傾けて加工されていた例も見たことがあります。たいていは何年か経ってから生じていたようで,使用者がフレットの頭を削ったりして修整対応しているのをよく見ます。

 この楽器では棹基部の指板面を水平の基準とした時,糸倉がわが右やや高く,左方向にわずかにねじれたようになっていました。
 取り外した山口やフレットに,左右の高さを調整したような加工の痕跡はなかったので,使われなくなってから生じたものかもしれません。

 ありがたいことに,変形の度合いはそれほど大きくなかったので,表面を擦り直して均せば直るくらいのものではあったのですが,不識の楽器はどこもかしこもかなりギリギリな寸法で作られているため,調整で削ったぶん,表板と指板部分の間に段差ができてしまいました。一般的な構造の楽器なら,棹基部の調整でカンタンに修整できるのですが,上にも書いたように,一木造りの棹は,後で修整するのが難しいので----

 削ったぶんを足してやることで調整することにします。

 材料は紫檀の板。
 かつて銘木屋さんからもらってきた端材で,白太(色のついてない部分)が混じってたために切り捨てられた部分だったんですが,おっちゃんが 「これ…けっこういい紫檀だったんだよなー。」 と,板撫でながら惜しそうにしてた逸品(w)ですね。

 埋めたい段差は1ミリ以下なので,3ミリの板を2枚に挽き割ります。
 サイズからすると3枚に割りたいところですが,道具の関係でさすがにできません。
 まあ,やったことのある人は分かると思いますが,このサイズでも手道具でやるのはかなーりタイヘンです。
 2時間ちかくかけてようやく2枚に~~(疲)
 表裏を均し,修整して胴体面と面一にした指板面にへっつけます。

 おおーぅ……悪くないんじゃないですかあ?

 この楽器はもともと指板のついてない量産版タイプだったんですが,これだけで1ランクレベルが上がっちゃいますね(w)

 続いては,糸巻をこさえます。
 全損ですので4本ですね。

 毎度言ってますが,庵主,「糸巻を六角に削る」から先の作業はキライじゃないんですよ?
 その前の「材料四面を斜めに切り落として素体を作る」という作業が大ッ嫌いなだけなのです。(w)
 今回はほかにも全損のやら足りないのやらがあるためアキラメて,最初のほうで素体を14本ぶんも作っちゃいましたので気が楽です。何本か失敗してもだいきょうぶですからねえ。

 不識の月琴の糸巻はやや細め長めで,六角一溝,握りの帽子の部分がちょっと突き出てるタイプが多いですね。
 毎日のように握ってグリグリしてる部分,てのひらがカタチをオボえてますので削るのもサクサク----

 ----とは言っても,まあ1本小一時間はかかりますが。(汗)
 月琴の糸巻は,側面が握りの先端に向かってラッパ状に反り上がってるのが多いのですが,不識の糸巻は弦池に入る部分が細いのもあって,その反りがすこし顕著です。
 素材のクセもあり,なかなか思ったような曲面にならないことも多いのですが,今回は4本ともに,何とかそこそこ,うちゅくしい曲線に仕上がったかと。

 これであとは欠けた蓮頭----糸倉の上にへっつけられてるお飾りだけですね。この手のモノの修理,庵主は得意中の得意です!

 まずは剥離の作業中にクギ孔のところから2つに割れちゃったのを継ぎます。
 ど真ん中に2つあいたクギ孔は木片で埋め,欠けた前縁部分を整形。
 もぎ取られたようにガタガタになってたのを,まっすぐに加工してから補材を接着。その補材を同じ作者でほぼ同レベルの楽器,27号の蓮頭などを参考に,もとのカタチを模索しつつ加工してゆきます。
 右がわに打ち込まれていたクギは,打ちこむときに曲がったらしく,真ん中の円形になった部分にクギ頭の横たわった痕がくっきりついてました。ここらは木粉パテで埋めてあとで彫り直します。

 整形中に補材の一部を欠かしてしまい,ちょっと修整したりもしましたが。あちこちのモールドを彫り直すついでに,表面に塗られた塗料もハガしてしまいます。
 最後にスオウとオハグロで染め直し,カシューを2度ほど刷いて完成です!

 補修中のようす,右にあるのが参考にした27号の蓮頭です。
 はっはっは----毎度言うようですが,こういうのを修復したものだと一目で見破れるようなヒトは何らかのヤバいプロですのでむしろ注意してくださいヨ。(w)

(つづく)


月琴WS@亀戸 5月場所!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2020.5.23 月琴WS@亀戸! さっちゃん場所の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 5月 のお知らせ-*


 さてさて,コロナ禍のなか4月の会にご来場いただいた方々。
 まことにありがとうございました。

 2020年5月の月琴WSは23日(土)の開催予定!


 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費は無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼下りのさらさら開催。

 美味しい飲み物・お酒におつまみ,ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか阮咸とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 62号・64号の修理は完了。
 例によってお嫁入り先募集中でございます。
 ご思案の方は,連載中の修理報告などご参考になさってください。
 まだ嫁入ってなければ来月も持ってゆきまあす。

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

月琴62号清琴斎(4)

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斗酒庵春にさかる の巻2020.3~ 月琴62号 (4)

STEP4 黒の戦士--三たび深紅に染まる

 前回,棹が後補であることが判明した62号清琴斎。

 いやあ----人間,見たくなかったことを見ちゃうと,二度見するんだということを実体験しちゃいました。正直,したくはありませんでしたが(w)

 はじめは手熟れてないフォルムのがたつき修整だけでいいかな,なんて思ってたもんですから,けっこうショックだったものの,気を取り直して,糸巻の孔も修正しましたし,棹の修理はいまのところ順調。

 おそらくは,折れたか糸倉が割れたかしたので,その山口,フレット,指板を使って作りあげたものだと思います。その素材がサクラであること,弦池が彫り貫きになっているのと,先端背側が浅く三角に突き出た構造と形状は,清琴斎の一般的な楽器よりは,いま同時進行で修理している石田不識の月琴(64号)に近いですね。

 壊れた時期が,月琴があちこちにあった流行期だったとすると,もしかすると石田不識の楽器なんかも参考にしたのかもしれません。

 棹のほうはあちこちアラだらけですが,胴体のほうはほぼオリジナルのままのようなので,たぶんそんなに問題がありません,たぶん(^_^;)

 胴四方の接合部のうち一箇所が剥離しています。
 これは経年による部材の収縮が原因。ほか,表板に二箇所裂け割れがありますが,これも原因は同じようなもので。
 製作後百ン十年を経,棹が交換されるような目にも会い,さらにこれだけ全体真っ黒々になるような環境に置かれていながら,損傷がこのていどというのは逆に誉むべきかな,ホサナ。

 まず接合部のスキマには突板を埋め込みます。
 先端を少し薄く砥ぎ,薄めに溶いたニカワを流し込んだスキマにぎゅぎゅっとな。
 表板二箇所の割レのうち一箇所は,この接合部の剥離が原因ですから,ここもいっしょに処理してしまいましょう。
 接合部がはじけたせいで裂けちゃったんですね。断続的な裂け割れになってるのを,刃物で1本のミゾにつなげ,桐板をさしこんで完成。

 接合部の木口の合わせに少し食い違いも出てますので,埋め木を挿したら周辺を湿らせ,当て木の上からゴムをかけ,軽く矯正しておきます。当該箇所がたわむ前に木が乾いてしまっては元の子もないので,当て木の下には湿らせた脱脂綿を敷き,ラップをかけておきましょう。
 変形はわずかなので,このていどで大丈夫なはずです。

 もう一箇所,ピックガード横の割れは構造には関係なく,おそらくはここに貼り付けられていたヘビ皮のせいですね。
 何度も書くようですが,月琴の桐板は生皮の収縮に耐えられるほど丈夫ではありませんので,長年貼っておくと必ずこういうことになります。もともと意味のない恰好つけのためのものなので,現在貼ってる人も早いところハガして布か和紙にでも貼り換えたほうが良いですよ。
 これも板が左右方向に引っ張られたことによる裂け割れになっています。3~4本のやや不規則な割れ目が連続してますので,ここも刃物でつなげて1本にしてしまいます。もともとの割れ目はさほど広くないのですが,この長さになりますと,せまいミゾでは埋め木をうまく奥までおしこめないので,さらにカッターで切り広げ,少し太いミゾにします。
 あとはしっかりおさまるよう桐板を加工して,ハメこみましょう。

 接合部の矯めもあるので,そのまま二日ほど放置。

 接着具合などを確かめたうえで,各補修箇所を整形。

 そのまま清掃に入ります。
 さあて,洗うぞお!

 例によって重曹を溶かしたお湯にスポンジ型研磨材のShinexをつけてゴシゴシです。

 キレイになると,それまで見えなかったものが色々と見えてきます。
 まずこの表板,かなり目の詰んだ柾目板で構成されてます。群馬あたりの桐だと思いますが,硬めで清琴斎の楽器にしては良い材です。
 中央周辺のバチ痕……けっこうスゴいですね。

 清掃中に見つけたエグレなどを埋め,左肩の割れ目補修痕を少し修整。裏板の清掃に入ります。

 裏板には目だった損傷がありません。
 右端になにやら虫食いのような不定形の溝がありますが,やたらキレイなんで,これも後で食われたというより,もともとこの材についてた粗みたいな気がするなあ。

 とりあえずけっこう大きいので,清掃はこれを埋めてからですね。
 比較的保存の良い清琴斎の後期ラベルは,資料として貴重なので清掃作業の前に保護カバーをつけておきましょう。
 んでゴシゴシっとな…うん,表板より裏板のほうがキタなかったのかな,こっちのほうが出汁が濃く出ました。

 板がキレイになったら,最後にラベルのカバーをはずし,きれいな水をふくませた脱脂綿を置いてラベルの清掃。綿が汚れを吸って色が変ったら取り替えて,ニ三度やるとかなりキレイになります。

 表裏ともにきれいに染められていました。
 砥の粉はやや少なめ,ヤシャブシはけっこういい質のものが使われていたみたいですね。

 表板が乾いたところで,半月の周辺をマスキングし,半月を油拭きしておきましょう。
 油切れで少しパサついてますが,損傷はなく,接着もいまのところ強固で問題がありませんので,今回はこのままにしておきます。

 さて,工房到着時のこの楽器はどこもかしこもヨゴレで真っ黒でしたが,その下からのぞく木肌は,ほぼナチュラルカラーといった薄い木の色をしてました。
 半月とお飾りそれにカリンの指板が目立つ感じですね。

 今回,棹の不具合あちこち徹底的に直しました関係で,棹はその補修部を隠すためにも,すこし濃い色に染める必要があります。そうすると,胴側の色がそのままではいまいち合わなくなりますので,バランスを考えると,こっちも同じように染めなおしたほうがよろしいかということになりました。

 まあ,色の濃い薄いはあるものの,もともと染められてたのが使用と保存環境のせいで,色あせてこんな色になっちゃってたんでしょうから,染めなおすこと自体にはさほどの忌避感はありません,どんどこイキましょう。

 まずはスオウですね。
 棹の補修で木を盛り足したあたりは,数度余計に重ね,周囲より少し濃い色に発色するようにしときます。

 ミョウバンで一次媒染して真っ赤に。
 それから黒ベンガラやオハグロを銜えて紫っぽい黒褐色にしてゆくんですが……胴体のほうは1度でうまくいったものの,棹のほうが。
 補修部分がうまく隠れ,自然に見えるように染めてゆくのが難しく,2度ほど失敗しちゃいました。(^_^;)

 イチから染め直しての3度目に,ようやく満足のゆくような染まり具合に。
 下地を隠したいところにベンガラを塗って真っ黒にしておきます。

 そしてオハグロ液の濃度を少しづつあげながら塗布。
 スオウに鉄媒染で,全体を紫がかった黒褐色に染め上げてゆきます。

 このとき,多少のムラがあるとかえって自然な感じになるのでいいんですが,逆にムラなく上手に仕上がっちゃうと,妖怪ぬり壁みたいにのっぺりとした表面になってしまいます。
 いかに自然な稚拙さを出すか----という,修理を重ねることでムダに技術が上がっちゃった庵主にとって,むしろ難しい課題をつきつけられました。

 それゆえの,三度目の正直----

 染めの初期段階まで戻すこと自体はそれほどタイヘンじゃないんですが,いちどリセットすると,木が乾くまでちょっとした時間を食っちゃうんですよねえ。

 胴側はチョコレート色。棹は画像だとかなり真っ黒ですが,実際にはあちこちに赤が透けて,もっと赤っぽく見えます。
 清琴斎の楽器でよく見る色合いですね。19号なんかがけっこうこんな色してました。

 オリジナルに比べるといくぶん派手な色合いになっちゃいましたが,数年もすればスオウが褪せて,もうすこし落ち着いた感じになりましょう。

(つづく)


月琴64号(3)

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斗酒庵春にさかる の巻2020.3~ 月琴64号 (3)

STEP3 たのきんのギターのひと

 64号,修理はまず表板の補修から。

 月琴の分解修理で,組み直しの作業の基点となり基準となるのがこの表板。
 ここで手を抜くと,後々けっこう大きな誤差や支障となって返ってきますので,出来得る限りの最善を尽くし,丁寧にやってゆきます。

 前回やった周縁の補修部分を整形します。

 ついでに前修理者が木口木端口に塗りたくった塗料もこそげ落としてしまいましょう。

 補修前はクギ孔もあいてかなりボロボロ,補修中は埋め木が突き出てトゲトゲでしたが,縁がキレイになっただけでも,けっこうマトモになってきた感じがしますね。

 この板は中央部に虫食い由来の割れがあり,そこから分離していました。

 はぎ目部分の虫食いを埋め,木端口を整形。位置的にちょうどいいので,ここにスペーサを入れてはぎなおします。

 スペーサの幅は約2ミリ。
 位置がちょうど中央付近なので,これによって左右2ミリ,片方およそ1ミリの余裕ができ,組み直す時に側板や内桁の配置が少しだけラクになります。

 ひさしぶりに「はぎ台」の登場。

 といっても,ふだん使ってる作業板に,大きめのレジ袋かぶせただけのシロモノですが。(w)
 月琴の面板のはぎ直しは特別な用具がなくても,こんなふうに少し大き目の平らな板と角材が何本かあればなんとかなりますよ。
 大きさもそれほどありませんし,厚みがあるわけでもなく,桐はもともと接着の良い素材ですからね。

 まずは片側にストッパーとなる角材を固定。
 太輪ゴムを2本ばかり,横方向にかけておきます。
 各板のはぎ目はよく湿らせ,薄めに溶いたニカワをじゅうぶんに染ませておきましょう。
 そして,はぎ台に板を並べ,板が浮かないように上下に横板を渡します。

 ここでちょっと問題が発生----

 スペーサに使った板が,オリジナルより少し厚かったため,このまま横板を渡すとスキマができて,板を均一におさえこむことができません。

 そこで今回は,横板の下にクッションとして段ボールを敷くことに。
 段ボールはスペーサのところでちょうど切れるように配置し,この上に横板を渡して固定します。

 横板を軽く固定したら,ストッパーと反対がわに,台からすこしはみでるような押し板を置き,ゴムをかけてから軽く固定します。
 これで押し板にゴムの圧がかかって,小板の木端口をより密着させることができるわけですね。
 小板がストッパーと押し板にはさまれて,はぎ目からニカワがうじゅるとにじ出たら,各小板の位置等を確認したのち,横板や押し板のクランプをしめて固定します。

 一晩置いてスペーサを均し,表板の完成です。
 スペーサを入れた関係で,板の中心が若干ズレましたので,まずはしっかりと計測し,板裏に新しい中心線を書きこんでおきます。

 再接着は天の側板から。

 新しい中心線を基準に,オリジナルの板の縁になるべく合うよう,左右のバランスも考えながら位置決めをし,接着します。
 次の日に左右の側板,そして最後に地の側板………と,いきたかったのですが。

 この地の側板,どうやらほかの楽器からとられた板を改造して使っていたようですね。
 前回も書いたようにこの板,通常の側板の形とは逆に,真ん中付近が厚み2ミリあるかないかのうすうすに削られていたのですが。あの加工も,アールの合わない板を薄く削り,ここでへにょっと伸ばして,ムリクリ押し込むためだったようです。

 庵主,この後補の板の割れた部分を継ぎ,カケた部分を埋め,クギ孔を埋め,薄く削られた部分に補強板を接着----と,けっこう手をかけ,いっしょうけんめい直してたんですが。できあがって「元のカタチ」に戻ったら,ぜんぜん合わなくなっちゃいました(泣)
 そりゃそうですよね,もともとこの楽器に合わせたものじゃなかったんですからねえ。おそらく元は,これよりいくぶん胴の小さい月琴からとったものだったみたいです。

 しょうがない----新しく作りましょう。

 庵主いままで,首ナシの月琴に新しく棹を作ってやったことは何度かあるんですが,考えてみますと,胴体側板の作成,というのはハジメテかもしれません。

 月琴の棹は当時と同じような木取りで作ると,現代では材料費が高くつき,修理代がエラくなってしまいますので,庵主の場合,新しく作る時にはウサ琴と同じ,3ピースの寄木作りにしております。この胴材もオリジナルの工作だと,板から円周1/4の部材を切り出すことになるわけですが,1枚だけでも最低25x7,厚さ3センチの材料が必要となります。どんな材質でもヨイならできなくもないのですが,できればオリジナルの部分と同じサクラがヨイ。
 材料箱を漁ったら,サクラ材もあるにはあったのですが…見つかったのはふだん定規替わりに使っている,40x3,厚さ1センチの細長い板…………

 うん,もうこれでイっちゃいましょう。

 けっこう複雑なカタチである棹が寄木で出来て,もっと単純なカタチの胴材が出来ないはずがありません。
 まずは地の側板のついていた部分の板の縁をなぞって,型紙を作ります。
 そしてそれを定規に,この細い板からとれる限りの構成部材を切り出し,重ねます。

 ----定規,こんなンなりました(w)

 まあ,もともと楽器の材料として買ったのに定規として使っていたわけで。これで本来の目的に供されたのですから,本望っちゃ本望でしょうか。

 とりあえず,めっちゃツギハギではありますが,オリジナルと同じサクラ材の地の側板が出来ました。
 さっそく本体に合わせて大きさを調整し,接着します。

 新しい地の側板は少しだけ大きめに作ってあります。
 板の縁からハミ出るぶんは,胴が箱になってから削り落とそうと思います。

 四方の側板がそろったところで。

 まずは各接合部のスキマに,カツラの端材をうすーく削ったのを挿しこんで埋めます。

 翌日,その余った部分を落し,今度は各接合部の裏がわに補強板を接着。
 薄い桐板をそれぞれの接合部に合わせて削り,接合部をちょうど渡るような形で貼りつけてます。
 組んでみると接合部の段差もそれほどなかったので,補強としてはいつものように和紙を重ね貼りするだけでも良かったのですが,不識の楽器はもともと,この接合部のところにそれなりの負荷がかかるような作りになってますし,この楽器の場合,前修理者のマズい補修やクギ打ちにより,一部の板端に損傷も出来ちゃってましたので,ふだんよりいくぶん頑丈な補強方法を採ることにしました。

 これで胴側はスキマも切れ目もない輪となり,胴体が「桶」の状態となりました。

 接合部の接着で圧をかけるためにゴムをかけまわしたりするので,胴のカタチを保つため,内桁はずっと入れたままの状態にしてありますが,この時点ではまだ接着はされていません。
 
(つづく)


鶴寿堂4(4)

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斗酒庵春にさかる の巻2020.3~ 鶴寿堂4 (4)

STEP4 昼間助けていただいたツルですと言って窓にはりつく深き者。

 鶴寿堂の胴体は4片の側板に薄いカリンの「飾り板」を貼りつけた構造になっています。

 この構造は継ぎ目が見えず見栄えが良い。
 しかもペラペラの薄板一枚貼るだけで下地を隠せるので,たとえばそれぞれ別の板から採った木目や木色の合わないバラバラの材で組むとか,極端に質の悪い木材を使うとかいった,裏の経済行為を行うには最適なのであります。(ふっふっふ…越後屋,おまえも悪よのォ)

 ----ではありますが,悪いことには○太郎侍かヤンキーな将軍様のお仕置きが待っているように,この楽器をしばらく作っていれば誰でもが思いつくであろう一見単純そうなこの工作は,現在はともかく,百年前のふつうの用具で行うとなると,異常に高い工作精度や技術力,そして精密無比な加工とそれらを支える根気と根性が必要なものなのです。

 曲面に曲面をくっつけるのが,平面と平面をくっつけるのより難しい,というのは幼稚園の工作の時間でもう分かってますよね?
 いまならたとえば,一瞬でくっついてくれる優秀な接着剤もあるし,接着剤が固まるまで固定するのにも,たとえばゴムみたいに,どんな曲面にも対応し,均一な力で包み込んでしめつけれるような素材があったりもします。

 しかし百年前。この円形胴に薄板を貼りまわした時,使った接着剤は? ソクイかニカワですよね。どちらも乾くまで時間がかかります。
 ではその間,どうやって固定した? 円の外がわから締めつけることのできる,ピッタリな型枠みたいなものがあれば完璧ですが,まあ無理ですよね。
 そうなるとふつうの紐でぐるぐる巻きにするか,良くって濡らした麻紐・革紐ってとこでしょうか。

 できないことではないですよ。

 でもそれで,実際にやってみれば 「思ってたよりも(ちょー)難しい!」 ってことをすぐ思い知らされる作業なんです。
 そして月琴の製作者で,これがカンペキに出来てて,「ふッ」とニヒルに笑えるような作家はとても少ない----

 「木の仕事」においては,きわめて高い技術力と工作精度そして美的感性を有する鶴寿堂ですが。何度も書いている通り 「接着がドヘタ」 です。
 今回の楽器でも,外面調査の段階で飾り板の浮きが複数個所,裏板を剥がしたら側板接合部にスキマまで見えてます。古物としてはほぼデッドストック品,新品同様みたいな状態ではありますが,楽器として使うためには,オーバーホールで接着部分の貼り直しは,この作家の楽器の「修理」において既定の工程。まあ,そもそもこの飾り板を貼り回す加工をされてる場合,そこを直すのにもどこを直すのにも,分解し,一回ひっぺがして貼り直すしか手段がないんですよね。

 側板に濡らした脱脂綿をはりつけラップで覆い,ギタースタンドにひっかけて一晩。浮いたとこからハガしてゆきます。

 62号の中央飾りと同じで,この側板の飾り板というものも,壊さずに剥がすのがタイヘンに難しいシロモノです,というかどんなに慎重にやってもたいていはどっかで壊れます。 今回も,ヒビはもうあちこち,途中から2つに分かれちゃいましたが,まだマシな結果ですね。あんまりヒドかったら,新しい突板買ってくるところでした。

 剥がした薄板の裏,側板本体表面には例によって大量のニカワ。
 ニカワをこそぐと,飾り板の浮いていたあたりには凸凹があったり,曲面の歪みがあったり……そういう工作不良のスキマを充填するためにも,ニカワを塗ったくったのでしょうねえ。

 表面をきれいにした本体はしばらく乾かし,薄板のほうは継いだり埋めたり削ったり,と,細かな作業を続けてゆきます。

 表板の接着はさすがに比較的マトモで。
 飾り板の剥離作業で濡らしても新たなハガレなどは発生しませんでした。大量の墨書もありますので,一箇所,地の側板付近にあった板のハガレを直し,現状はハガさずに,このまま修理してゆこうと思います。


 まずは側板接合部の2箇所のスキマ,これは埋めとかなきゃなりません。
 カツラの端材をうすーく削り,ピッタリの形に整形してはめこみます。

 こちら側には最大1ミリに近いスキマがあったわけですが,反対がわの対角線にある接合部二箇所の接着は,鶴寿堂にしては珍しくカンペキといって良い工作で。カミソリの入るスキマもない,どころか接ぎ目も見えない感じにしあがっております。

 が,もちろんこれは彼の技術力が部分的にスーパーサイ○人したのではなく,接合面が水分や接着剤の滲みこみやすい木口面であったことと,外周に飾り板を貼り回す加工をしたことによる偶然の結果ですね。おそらくは紐で締めつけたときに,こちらの対角線上のどちらか近くに結び目があった,とかじゃないかな?

 乾いたところで整形。
 これでまず,4片の側板が途切れのない一本の輪になりました。

 つづいて内桁の再接着。

 下桁のほうは中央部分がしっかり接着されてるようですが,上桁のほうは板にも側板にもほとんど着いておらず,指でつまんでカンタンに引っこ抜けるような状態になっています。

 上桁はいちど取り外し,例によってガサガサに劣化したニカワをこそいでおきましょう。

 まず下桁,わずかにスキマの見える両端を中心に再接着します。

 真ん中がちゃんとくっついてて,両端がダメなのは,前回も書きましたが,この上下桁に両端と中央部で最大5ミリもの幅の差がつけられているせいです。両端を側板と同じに真ん中を厚くして,浅いアーチトップ,ラウンドバックにしようという加工で,ほかの作家さんの楽器でも見る工作ではあるのですが,通常その差は2ミリていど。材質的に無理な加工とは思いませんが,厚みの差5ミリ,というのは鶴寿堂の接着技術を考えると分不相応としか言いようがありませんね,コラぁ。

 下桁がしっかりくっついたところで,新しいニカワを塗って,上桁を戻します。

 これで胴体が 「水の漏れない桶」 の状態となりました。

 月琴の構造はきわめて単純で,楽器としての音の良し悪しは,ほとんどの比重が胴の構造とその作りにかかっています。いくら高くていい材質でできていても高い技術力で作られていても,響き線がちゃんと機能していなかったら,内桁や接合部に一箇所でも剥離があれば,それだけでパフォーマンスはダダ下がりに落ちてしまいます。

 逆に棹なんかは,多少材料や加工がアレでもあんがいどうにかなるもんなんですけどね,ははははは。

 でもこんなのわ………さすがにらめぇ!!!

(つづく)


月琴64号 初代不識(2)

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斗酒庵春にさかる の巻2020.3~ 月琴64号 (2)

STEP2 配管工が乗ってるあの緑色のやつ

 さて62・63・64号と,今回の自腹月琴は3面ありますが。
 最初に来ていた62号と,見ただけで重症とわかる64号の修理を先行させます。
 依頼修理の楽器と合わせて4面の同時進行。
 経済的観点から見て,単独の修理よりは複数同時のほうがムダが出ないので良いものの,さすがにこれ以上は工房の物理的空間的制限(四畳半一間)の観点から不可能と判断。(www)

 で,その64号。
 まずは解体いたします。
 もうそりゃ,バラッバラにしまっせ~。

 打たれているクギの状態を知りたかったため,外面からの調査中に蓮頭をはずしてみましたが……うん,かなりサビちゃってますね。

 クギの頭,平たくなってる部分はペンチでつまむと砕けて粉になります。本体部分はまだしっかりしているので,かつての太清堂クギ子さんに打たれていたものほどではありませんが,クギ孔の周辺の木部は鉄分が滲みて黒っぽく変色しており,削るとザリザリとした茶色の粉になってしまいます。

 例によって,筆でお湯を刷き濡らした脱脂綿をかけて,お飾りやフレット,半月をはずします。
 棹上のフレットは塗装で塗りこまれちゃってるかな,と思ったんですが,ペンチでひねったら比較的たやすくポロリしてくれました。

 考えてみれば,糸巻はぜんぶなくなってるものの,そのほかの欠損は蓮頭の前1/4,最終フレット1枚とコウモリの片方の羽根先くらいですもんね。器体の状態を考えるとかなり少ない,残ってるオリジナル部品は大事に扱いましょう。

 ヨッシー(石田義雄)は接着が上手い。
 同時修理の誰かさんに,爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいくらいですね。
 これだけ状態が悪くなってても,お飾りやフレットははずれてませんが,お湯を含ませてしばらくすると,自然にポロポロとはずれていってくれます。ちゃんとメンテナンスのことを考えた接着をしてくれてるんですよ。

 それに対して,半月の接着は強固。
 接着面をじゅうぶんに処理し,密着させているので,ちょっとやそっと濡らしても,水は中まで滲みていってくれません。今回の場合,半月の左右端に板の収縮によってできたわずかなスキマがあったので,そこにクリアフォルダを細く切ったのを挿しこんでしごき,内部に少しづつ水を滲ませながらはずしていったんですが,それでもあしかけ二日ばかりかかりました。

 ようやくはずれた半月。
 ヨッシーの月琴の定番の一つは,安い楽器でもここが唐木なことで…おや珍しい,これはホオかサクラを染めたものですね。はじめて見た。
 ほぼ同レベル,同時代の作と思われる27号でさえも,かなり低質ながらやっぱり紫檀だったんですが,それより後の量産化によるコストダウンの影響かな?

 半月取外しのためにかなり濡らしてしまったので,一晩乾かしてから本体の分解作業に入ります。

 表裏板のクギ打ちされてたところは,桐板がサビを吸って変色し,ガサガサになっちゃってますので,まわりごとざっくり切り取ってはずしてしまいます。

 表板をハガしたところで,目につくクギを抜き取ります。

 ペンチでどうにもならない状況なのは蓮頭の取外し作業で確認済み。小径のドリルでクギに沿うように孔をいくつも穿ち,えぐり出します。単純に引っこ抜くのからすれば大変複雑な作業ですし,抜いた痕もおおきくなっちゃいますが,サビが滲みて変色したりモロくなってる部分なんかもいっしょにえぐられちゃうのでむしろちょうどいいのです。
 数時間の格闘で,かくのごとし----

 表板がわのクギはなんとかすべて除去できました。

 地の側板が気になりますね。
 なんですかこのカタチわ。

 月琴の側板はたいてい,真ん中がいちばん厚く左右が薄くなってるものですが,この板は真ん中のあたりが薄く----それも極薄,うすうすのペラペラになっちゃってます!
 最薄のところで2ミリくらいですね。しかも,この極薄のところに何本もクギを!……まあ,そりゃ割れますわな,穴もあきますわな。
 材質もほか3枚とは若干違ってるみたいですし----ハテ?

 とりあえず,クギ抜き作業で出たゴミをはらい。真ん中の空間にラップを敷いて。サビ落としのため,響き線に木工ボンドをまぶしておきます。

 これが固まるまで,お休みお休み~~~。


 一晩たって。
 地の側板ともう一箇所,裏板がわに打たれていたのを抜いて,クギ抜き作業まずまず終了。

 側板も内桁も剥がして,完全バラバラ----「かつて楽器だったモノ」 まとめて一山の状態となりました。

 ちょっと前の記事でも書きましたが,楽器にいっぱい悪戯書き(?)を残してくれる鶴寿堂・林治兵衛さんと違い,ヨッシーこと石田不識は楽器に痕跡を残さない人です。
 目印とか指示線すらも,ストイックなまでに必要最小限。
 以前,ふつうはある,その手の指示線すら入ってないことに,分解しちゃった後に気がついて。戻す時,元の位置が分からなくなって焦ったことがあります。
 楽器の番号,今回の楽器だと「八」,27号だと「二十七」(偶然です----自出し27番目の27号は,棹を抜いたらなかごに「二十七」と書いてあった)といった漢数字以外で,いままで見た文字は「表」だったかというのが一件あったかな?
 文章らしきものなど,ほとんどキオクにございません。

 それが今回,分解してたら上桁の端っこに,何やらエンピツ書きを発見!

 「クラシマス」----かな?

 なんのこっちゃ。(www)

 あーよー,鶴寿堂ほど派手じゃなくていーから,いちど何かちゃんとした文章書いといてもらいたいね~。
 「お元気ですか?」
 ----とか。あ,それはそれでコワいか。

 側板のクギ孔をふさぎます。

 そのまんまにしておくとオモテもウラも薄々なんで,他の作業中,余計に壊れちゃいそうですからね。
 抜くときに周りをエグってるので,比較的大きな埋め木でいいのが逆にラクですね。ぴったりハマる小さいの作るほうがタイヘンですから。

 続いて板のクギ孔。

 こちらははずすときに大きく切り取って,孔でなく細い切り欠きにしてありますので,細切りにした桐板を挿しこむだけのラクな作業です。

 うむ,トゲつき月琴。

 ついでにヒビ割れたところやそのほかのカケ,ヘコミ,エグレの酷いところなんかも補修。

 表板は裏も表も丁寧に作業してゆきます。

 分解修理で組み立て作業の基点・基準となる部品はこの表板です。

 ここをオロソカにしますと,小さな誤差でも,組立て後の結果に大きな支障が生じますからねえ。

 分解作業も終わり,内部も記録いたしましたので,フィールドノートをどうぞ。

 今回はヤバい箇所多めのため,真っ赤だな(www---クリックで別窓拡大)

(つづく)


月琴62号清琴斎(3)

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斗酒庵春にさかる の巻2020.3~ 月琴62号 (3)

STEP3 黒の戦士-二丁目に行って棹を整形編-

 前回,取外しの時にバラけた中央飾りですが----

 バラバラですね。
 くっつきましたね。
 接着剤はエポキ,裏に薄い和紙を敷き,その上で接着作業をします。

 接着剤のハミ出たとこをアートナイフの刃先などでこそぎ。
 磨きなおせばほぉら。
 もう,ぜんぜんわからんちん。

 このお飾りの材料の「凍石」というのは,むかしむかし駄菓子屋で売ってた,道路に落書きする「ロウ石」というのと同じものです。書道のハンコなどにも使われますね。この部品はだいたい取外すことを前提に考えて作られてないので,たいていこういうことになります。石なので水は浸透しませんし,柔らかいうえ弾力はない。上手い人のシワザだと,そりゃあもうとれません(ヘタクソは接着面の調整が悪いので,逆にあっけないほどカンタンにはずれますwww)
 粉状に粉砕されない限り,だいたいはなんとかなりますが,どんなふうに割れるか予想不能なところもあるので,はずすときは修復可能な感じにバラけるよう,邪神さまに加護を祈ります,ふんぐる。

 さて62号,修理します。

 正直,胴体のほうはキレイに清掃すればそれでおしまいって感じですが……問題は後補とおぼしき棹のほうですね。
 基本機能上は問題なさそうですが,あまりに仕上げが悪い。

  1)糸倉のカタチ。(糸倉背先端左がわが低い,糸倉背中央が平坦,糸倉オモテの加工が粗い,うなじがやや浅い)

  2)棹表面が凸凹。(棹横二箇所のエグレ,棹背の加工不良)。

 ----と。問題点は大まかに言って2点,細かくするとあッちもこッちもでいっぱいなあたり。
 棹の仕上げに,どんくらい違ぁがあるのか…ちょうど,木の仕事では随一の腕前,鶴寿堂の楽器が同時修理中でありますんで,いっちょう並べてみますか?

 HaHaHaHa!----光の反射ぐあいだけ見ても,思わず外人になって肩すくめちゃうくらいの差ですね(w)

 糸倉オモテがガタガタになってるのや棹横のエグレはおそらく,原作者が使用している工具に問題があるのだと思います。
 サクラ,という材は浮世絵の版木に使われるくらいで,細かな細工が可能ですが,こういう曲面の多い立体物だと,目が混んでて刃が止まるわ,注意してても角チップするわでけっこうタイヘン。
 三味線屋さん…いや唐木屋さんだったかもしれないな。
 この棹の作者さんの使った刃物は,サクラには合ってなかったようです。そのうえ,刃物をあきらめてヤスリに奔る余裕もなかったようですね,うむ,急がせすぎじゃ。

 さて。

 木,というものは本来,削って減らすことはできるんですが,削ったら元には戻せない素材です。

 今回の場合,こういう棹表面の凸凹や糸倉オモテの曲面,後,うなじなんかは削って整形することができますが,糸倉先端とか糸倉中央部のほうは,原作者(棹の)がヘタこいて削りすぎたのが原因なのでどもならん----

 どもならん,とは思いますが,そうも言ってられないのでこうします。

 まず,糸倉の先端や中央部のふくらみが足りないところに,カツラの木片を接着します。

 棹横や棹背の浅いエグレやヘコミには木粉パテを充填。
 補材に続くカーブや左右のバランスなどから,これを棹の原作者がほんらい目指してたであろうカタチ(w)に整形してゆきます。

 うむ…順調っと。

 いちばん上の軸孔の小さいほうに,下孔をあけそこなったと思われる痕がありますので,ここもついでに補修しときましょう。

 そういや----この楽器の糸巻の配置って,どんなんなってたっけ?
 ああ,そうか。ウチに来たときは糸巻全損だったし,測りはしたけど確かめてなかったなあ。
 ちッっとそこらにある修理楽器の軸でも挿して……

 ……………えっ?

 ええええええッ!?(二度見)

 なんじゃぁこりゃああッ!!!(絶叫)

 おおおおお,第1軸の傾きが逆です!
 こいつは上向きなのがほんと。
 第2・3軸は比較的マトモでしたが,第4軸は糸倉に対しほぼ垂直…いや,これもやや上向きになってますね。
 言うなら4本全部がほぼ平行にささってる感じです。

 月琴の糸巻は糸倉に対し垂直,もしくは左右握り先端に向かって少し末広がりになってるのがふつう。さらに言うなら,わずかに楽器前面に傾いてるのが理想です(使いやすさから言うと)。
 角度を3Dで考えなきゃならないので,さんすう脳の小さい庵主も,ウサ琴の製作で何度か似たようなことやらかしたオボエはありますが………

 …うん,まあ,これでも使えないことはないよ。

 軸孔はしっかり焼き棒で加工されてるし,軸との噛合せも良さそう。

 あらためて調べてみますと,小さいほうの孔が右図のようになってました。
 月琴の軸孔は単純なテーバーでいいのですが,これは三味線のように,糸巻を浮かせて糸を巻き取り,最後にぎゅっと押し込んで固定するための加工----やっぱり三味線屋さんの仕事かなあ。

 ううううう,ちょちょいと鼻頭とかほっぺたにシリコン入れれば完成,みたいなもンだと思ってたのに………

 サクラの端材を刻んで,それぞれの軸孔にぴったりはまるような埋め木を作ります。

 それをこう…

 数日置いてからあけなおし。もちろん焼き棒使ってやってます。

 清琴斎の糸巻は比較的角度が浅く,垂直に近い感じのが多いですのでそのように。

 ふう…だいたいこんなもんでしょうか。

 後でフィールドノート確かめたら……庵主,ちゃんと測ってそのとおりに記録してありますね。
 ううむ,数字はウソつかない----今回は受け取るがわの「さんすう脳」の容量に多大な支障があったようですねえ。
 ふつうはあり得ない事態なんで,よくある測り間違いか誤差の類として,さして深く考えず放置しちゃってたみたいです。数値がおかしいと思ったときに,棒の一本でも突っ込んでいちおう確認していれば,こんなに進んでから大作業せんでも済んだものを。(泣)

 棹の整形はうまくゆき,軸孔も修正しました。
 胴体のほうは損傷がないのでちょちょいのちょい………待てよ,もしかして,そっちにもなンかあるんじゃないだろうな?

(つづく)


鶴寿堂4(3)

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斗酒庵春にさかる の巻2020.3~ 鶴寿堂4 (3)

STEP3 昼間助けていただいたツルですと言って来た四方赤良です。


 鶴寿堂4,前回の調査の続きです。

 棹孔から内部をのぞくと,まあ,表にも裏にも,何か文字…というか文章が書いてあるようです。2~3文字どころでない,けっこうな数の字が見えますねえ。

 鶴寿堂・林治兵衛は楽器に文字を仕込むのが好きらしく,庵主が最初に出会った5号月琴でも----

 師範代のとこに嫁った22号でも----

 と,板裏に墨書が残されておりました。あ,でも,もう1本手がけた「バラバラ鶴寿堂」だけは表板裏に「三裏」としかありませんでしたねえ。
 数打ちの量が多すぎてまず何か書いてあることのない清琴斎とか,石田義雄みたいに意地でも書き込まん!みたいな感じの作家さんもいるんですが,庵主としましては,楽器の製作年とか作者のことが分かったりするんで,どんどこ書んどいてもらいたいとこではあります。(w)

 書いてあったからと言って,オープン修理の必要がなければ拝めないものではありますが,今回は側板が飾り板で覆われているため 「分解しないと修理が出来ない」 構造となっておりますので,あとでじっくりと拝見させてもらうことといたしましょう。

 楽器外部からの調査は完了。

 外見的には良い状態ですが,側板の飾り板の工作に難があるほか,各部の歪みや浮きの原因となった何らかの故障,もしくは工作不良が内部にあることは間違いありません。
 いつも言ってることですが,楽器はいくら各部材の工作精度が高くても,内部に問題があれば,その本来のスペックを発揮できません。いくら外面が繕われていても,内部がダメなら置物です。ブレーシングのはずれてるギター,魂柱が盛大にズレてるバイオリン,中に黒猫の詰まってるバスドラム…どれも姿かたちはちゃんと楽器してますが,「音を出す道具」としては「壊れた道具」でしかないですからね。

 さあ,はじめましょう!

 まずは表板上のものをすべてはずします。
 今回は半月も,端のほうにわずかな浮きが見えますので一度はずして付け直しです。

 棹上,第2フレットは最近の補修(?)により,透明なボンド系の接着剤で止められていました。カリカリした感触なので木瞬かもしれません…後始末が厄介だな。

 バチ布はキレイな裂地ですので,ハガして裏打ちをし直しておきます。

 ほか2箇所ばかり木瞬と思われる接着剤で再接着された場所がありましたが,範囲は狭いので被害は少ないかと……キレイにこそがないと,場合によっては表面を削り取ってしまわないとニカワでの再接着ができなくなるんですよ。もう,ホントにヤめてくださいよね,楽器に木瞬使うのわ!!

 今回は 「一生涯,美味しいものを食べるたびに,口の中にかならずアルミホイルの欠片が出現する呪い」 でカンベンしてあげます。

 ((((ヽ( ゚Д゚)ノ)))オオオオオオオオ

 そのほかだいたいの部品はさして難なく剥がれてくれました。今回の楽器に関しましては,「接着がヘタクソ」という作者の特性もございますが,お飾り類については,ふだんはちょっとやそっとのことでは外れないのにちゃんとした手順を踏めばスグにはずれてくれる,というのが理想です。この楽器はちょっと何かいぢろうと思えば,必ずフレットやお飾りをはずさなきゃなりませんからね。

 板が乾いたところで,板の縁に4箇所ばかり小さな孔をあけておきます。

 この楽器では,側板に飾り板を貼り回している関係で,飾り板の厚みのぶん,表裏の板の縁が胴材本体からはみだしています。いつもの修理なら板を戻して多少ズレがあっても,板の端か胴材を少し削ればいいんですが,飾り板はちょー薄いので「削って調整」というわけにいきません。
 部材の収縮や修理工作の関係で,多少のズレが生じるのはしょうがありませんが,そうした場合の本体への被害を最小限におさえるため,いつもより正確に板を 「元の位置」 に戻してやる必要があるのです。
 この1ミリない小さな孔が,今回の修理の命綱,みたいなものですね。
 再接着の時,ここに細い竹クギを刺して板のガイドにするわけです。

 さあて,では裏板をひっぺがしましょう!!
 ----あそれ,ベリベリっとな。

 ((((ヽ( ゚Д゚)ノ)))オオオオオオオオ!!

 ----いや,呪ってませんよ。(w)

 出ました出ましたァ!!
 うぉ…表板がわ,鶴寿堂としては過去最高規模の書き込みですねえ。


 一部内桁に隠れて読みにくい部分もありますが…いくつかのブロックに分かれているようなので,順に読んでゆきましょうか。まずは上桁より上の部分,横1行,縦1行,これは----

 燕花林/表板

 「燕花林」というのが,この楽器の銘かと。
 「燕花」は帝から賜与されるごほうびのお花のことですが,22号の銘「花裏六」が雅な魔よけの下げもの「訶梨勒(かりろく)」の音通だったことを考えると,この「燕花林」にも何かそういうもう一捻りが施されてるかもですね。

 つぎに楽器中央,いちばん墨痕鮮やかに書かれている部分。
 これがメインかな?

  胡床倦坐(起)凭/欄人正忙(時)我/正閑却是(閑)中/有忙處看(書)纔/了又看山

 ( )のところは部分的に桁に隠れちゃってる字ですが,出てるぶんでだいたい分かる感じ,これは楊万里の「静坐池亭」ですね。

  胡床倦坐起凭欄
  人正忙時我正閑
  却是閑中有忙處
  看書纔了又看山
  胡床に倦み坐起して欄に凭る
  人正に忙時なるに我正に閑たり
  却って是れ閑中に忙有るの處
  看書纔く了して又た山を看る

 板右端一部側板に隠れてる2行は,同じこの絶句の最後のあたり,「有忙處看書纔了又看山」のようです。
 同じ文を2回も…書き損じか練習かしらん。

 漢詩の左に,作者名と年記が見えます。

  明治二十五年十月/名古屋市上園町/鶴屋治兵衛製造

 「明治25年」は1892年ですね。
 うちで扱った月琴5号が26もしくは27年,22号が32年。最初の記事でも書いたよう,蓮頭や半月のデザインも一致してるし,やはり月琴5号に近い楽器のようです。

 つづいて左端の2行----ううむ,これはどこにひっかかるのか。

 文化丁卯季冬 南畝覃題于鴬(上)
 之遷喬楼

 「文化丁卯」は文化4(1807)年です。
 「遷喬楼」は「南畝覃」ことお江戸の大趣味人・太田南畝=蜀山人の晩年の住居ですね,金剛寺坂の上にあったそうで。その下一帯を「鶯谷」と言ってたそうです,え?上野じゃありませんよ,小石川です。
 金剛寺坂の下には誰だったか,文豪の実家があったかと……


 あと,下桁の下,漢詩の部分の下にもなにやらこちゃこちゃ書かれてるんですが,墨も薄いし,どうやら途中で切れちゃってるようで,読めない部分も多い。読めたぶんだけ並べると----

  〓〓/〓〓〓/董堂

  复与行楮/正堪寶/寶堂況

  別 出一(機)軸馬/謂 龍跳神

 ----って感じになります。たぶんここらが,左端の「南畝覃題」に関係してるんじゃないかな。そう考えると「董堂」は中井董堂,「宝堂」は文宝亭文宝でしょうか?

  裏板のほうは1行書「燕花林 裏板」ですね。「花裏六」のもそうですが,ウラオモテ両方に銘を書くのがこの人の流儀みたいですね。
 5号には銘らしいものが入っておらず,お店の名前と住所だけでしたし,バラバラ鶴寿堂なんて板の指示だけでしたので,これはぜんぶの楽器に入れてるわけじゃなく,飾り板のついてるようなちょっと上等品にやったんでしょう。

 そのほかの内部構造について----

 響き線は2本,中央部に長めのが1本,下部に短いのが1本。
 方向を違えて取付けられています。
 線の材は柔らかな真鍮,胴に直挿しで,基部に煤竹の竹釘を打ってとめてあります。

 側板本体の材質はカヤ。
 飾り板で隠れちゃうとこなのに,けっこう厚めで良質な板が使われています。
 右上と左下,対角線にある接合部が破断して,スキマが見えます……いや,違うな,これたぶん最初っからついてなかったんじゃないかな。
 これと逆の対角線上の2箇所はぴったりくっついており,カミソリの刃が入らないどころか接ぎ目が見えないくらいになってます。何度も書いてるとおり,この作家さんは基本「接着がヘタクソ」なので,こちらのほうはおそらくは飾り板によってうまく締め付けられた結果でしょう。

 側板と裏板との接着面にも鶴寿堂の「接着がヘタクソ」な証拠が,過分なく残っております。
 左右側板接着面の表面に残るこのムラムラ模様……空気に触れて劣化したニカワなんですが,これはここが最初から密着していなかったことを表しています。塗ったニカワが板との間のスキマで水分を失い,バブル状に乾燥していった痕なんですね。
 ハガすときにも気づいてましたがこのあたり,板の縁のほう,ほんの数ミリがへっついてくれてたおかげでカタチを保っていたようです。

 そして,「接着がヘタクソ」という作者の特技に加え,さらにここがこうなった原因が,この内桁です!
 内桁の材はヒノキ,四角い音孔を左右に切って,胴材の溝にハメこんであります。下桁は表板にほぼちゃんとくっついてますが,上桁はもう接着がアレでアレで……ちょっとひっぱったら抜けそうですね。

 さらに測ってみますと,どちらも左右端はほぼ30ミリですが,上桁は中央部が32ミリ,下桁はなんと35ミリにもなっています。つまり中央部を太くして表裏板を内がわから持ち上げ,浅いアーチトップ・ラウンドバックにしてるんですね。
 この加工自体はほかの作家さんの楽器でも見るので,そんなに珍しくはないのですが----おい,鶴寿堂さんよ,分かってんのか。アンタ接着がクソだろう!?
 裏表合わせて2ミリくらいならともかく,5ミリって…そりゃ。
 ミノホドをわけまえなさい。(怒)

 というあたりで内部の観察もほぼ終わり,フィールドノートに記録します----いや,書き込みが多くてけっこうタイヘンでしたよ。

 側板や裏板に残る 「お役に立てなかった」可哀想なニカワ(たっぷり)を濡らしてこそぎ,キレイいしておきます。ニカワが活きてるともっとベトベトした感じになるんですが,もう劣化し果てて砂のようにザリザリですわ。

 次の作業は飾り板の剥離です。
 なるべく飾り板だけを湿らせたいので,脱脂綿を胴側の幅に切ってお湯をふくませ,それを貼りつけたあとラップで覆います。

 この状態で下手にどこかに置くと,お湯が垂れてエラいことになるんでこう----ギタースタンドにひっかけ,下にボウルを置きます。

 さてさて,毎回エラく苦労するんだよなあ,この作業。(^_^;)

(つづく)


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