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「月琴掛け」を作ろう!

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斗酒庵夏にかける! の巻2020.7 「月琴掛け」 を作ろう!

STEP1 HOOK or RACK

 さて,みなさんはふだん部屋の中で,月琴をどのようにして置いているでしょうか?

 琵琶なんかは 「琵琶掛け」 にかけて床の間に置いたりしますね。お箏なら油単に包んで壁にたてかけておくところかな。ギターはギグではスタンドにかけたりしますが,ふだんは…ケースに入れて戸棚の上とかですか。
 琵琶は床の間でもいいんですが,月琴の場合,床置きはあまりお勧めしません。弾くときは川岸とか池の傍とか,比較的湿気のあるところが好きな楽器ではありますが,部材が琵琶よりヤワなんで地面に近いところに置いたままだと湿気を吸い過ぎちゃうんですよ。
 まあ床に置いてあるとつい蹴飛ばしちゃったり,おヌコさまに爪研がれたりもしかねませんしね。
 軽い楽器なんで蹴飛ばしたら飛んでゆきますヨ?ヌコパンチでも穴あきますからね?(www)

 ほかの楽器と同じように,長期弾かないような場合には,桐箱みたいなケースにつめて保管するが最善ですが,日常しょっちゅう手にしてるような場合には,柱や鴨居からぶる下げておくのが,月琴の場合いちばんヨイ保管方法です。
 糸倉に飾り紐をつけてある方なら,それをどっかにひっかけてもいいでしょうし。袋に詰めてあるなら,お部屋にある衣類をかけておくハンガーなんかに,コートと並べてぶるさげておいても構いませんが。いつでもぱッと手に取ってちゃッと弾きたい----というムキには,紐も袋もけっこうわずらわしいものです。

 ということで,今回はそういう人向けの お手軽な月琴専用ハンガー,「月琴掛け」を作ってみましょう。

 これは糸巻のところでひっかけるだけなので,まさにぱッと取ってちゃッと弾けますからね。
 鴨居に懸けるタイプなので,「鴨居」のない未来風のお家や呪われた洋館だとちょと困るかもしれませんが。その場合も壁とか戸棚の上とかに,ちょっとした引っ掛かりになる板でも取付ければ使用可かと。

 まずは材料。

 10センチ四方の大きさ板が一枚,あとコンビニの竹割箸が1本(ふつうの木の割箸でも可)。
 そのほかは接着剤----ええ,楽器本体に使うわけじゃないので,木工ボンドでも瞬間接着剤でもかまいませんよ。

 庵主は部屋に転がってた松の板を使いましたが,まあ基本的にはベニヤだろうがアクリルだろがMDFだろが構わんと思います。楽器がヘビー級の総唐木とかじゃなく,恒久的なものじゃなくて良いのなら,丈夫な厚紙とか段ボールなんかでもイケるかと…まあそれで楽器が落っこっても責任は持てませんが。(^_^;)

 木取りはこんな感じ。

 赤い部分は切り抜いて捨てる箇所です。
 庵主みたいにこういう部分が捨てられなくなる病気(端材捨てられない病)にかからないよう,切り取ったら目をつぶってゴミ箱へ!

 フックの部分の薄い②の板が右,分厚い①の板が左。③が左右をつなぐ支えになります。

 月琴の糸巻には左右で2~2.5センチほどの段差があるので,フックの部分が左右対称じゃないんですね。
 よほどサイズが異常だったり糸倉の形が変わってるもの以外は,だいたいこれで間に合うと思います。
 これを板に写して,糸鋸やカッターで切り抜きます。

 板を切り抜くときは,真ん中の空間を先に貫いてからやると失敗が少ないですね。フックのあたりは曲線が多いので,最初にいくつか糸鋸の刃の入るぐらいの孔を穿っておいたほうがいいですよ。

 3枚そろったら,まずは③の「支え板」を加工します。
 真ん中を 4.5センチあけて,左右を一段削り下げ,①②の板のフックの根元にあるくぼみにうまくはまるように加工します。
 つぎに①②の板の鴨居にひっかけるところに3ミリくらいの孔をあけておきます。ここにはあとで割箸の支えを入れますよ。

 ここまでやったら各部材を整形。
 軽く木口や表裏をペーパーがけします。楽器をお迎えするにあたり当るあたりは,特に角を少し丸めておきましょう----日本の伝統「おもてなし」の精神は大切ですよ(w)

 部品がキレイになったところで,接着剤をつけて組み立てます。
 形が崩れないように,固まるまでは支えを置いたり,洗濯バサミとかクランプで保定したりしときましょう。

 接着剤が固まったら,支え板のはみでた部分を切り落とし,竹割箸を切って頭のところに支えを入れます。

 まあ,素材と接着の強度によっては,この頭の部分の支えは別段なくて大丈夫とは思いますが,ヴィジュアル的にはついてたほうが何か構造的に安心できるって感じですか。(w)

 コンビニの竹割箸はいちばん太いところで径7ミリ,先っちょで5ミリくらいですので,3ミリの孔に入るよう,左右を凸に加工。設計図通りならここも,真ん中の幅は4.5センチになるハズですが。まあ人生,そう思ったとおりにはならないものですので,寸法は実物合わせで調整したほうがよろしい。
 左右の凸はあんまり長くすると入れられないので,これも適当に切り縮めてください。
 実際にハメてみて,いー感じにハマるのを確認したところで,凸先に接着剤を盛り,左右の板をちょっと広げるようにしながらインストール!

 ----できあがりです。

 あとは実際に楽器をぶるさげてみて,最後の調整をします。

 月琴の糸巻には上下の段差のほか,三日月形にカーブしてるため前後にも若干の距離があります。

 デフォルトのままですと,第2もしくは4軸が②のフックの先端にひっかかったとき,第1もしくは3軸は①のフックの平らなところをすべって,楽器は右がわがやや前面に出てくる感じで安定します。
 まあ落っこちることはそうナイので,そのままでもイイんですが。どこぞの酔っ払いみたいに傾いてぶるさがってるザマは,見ててなんかカッコ悪いですからね。
 もちろんはじめから,①のフックの部分を糸巻の前後の距離ぶん厚くして,第3軸が滑らないようにするのも手ではありますが,そうすると今度は楽器を外す時にちょっとひっかかっちゃうんですよ。
 傾きの原因である糸巻の前後の関係は,上下の関係に比べると個体差が大きいのと,糸倉自体の形状とも関係してヘタに設計をいぢるとかえってグアイが悪くなっちゃうようなので,下のいづれかをおためしください----

 やりかたA:①のフックの平らな部分を曲線に削る。
  ちょっと上級者向きですか。
  曲りのいちばん深くなってるとこに,糸巻が自然とおさまるように削ります。あんまり深く削るとこんどは②のフックのほうで糸巻が浮いちゃいますからね,ほどほどに。

 やりかたB(オススメ):①の平らな部分に浅い刻みを入れる。
  実際に楽器をぶるさげ,楽器がまっすぐになる時の糸巻の位置にシルシをつけ,そこに糸巻がひっかかるていどの浅い刻みを入れます。

 うん,ラクですね。これもAと同じで,あんまり深くキザみこんじゃいますと,左右のバランスが悪くなりますのでご注意。

 まあ,ここまでやらんでも。
 ¥100均で売ってる「二股ハンガー」 を改造しても,同じようなものは作れますんで,メンドくさがりと根性ナシはこちらをどうぞ。(w)

 画像のように,片側の先っぽのキャップのところにちょっと刻みを入れ,タコを糸張るだけで,見かけはちょいとアレですが,これでじゅうぶんモノノ役にはたちます。
 ちなみに,庵主のとこでは主にコレ使ってます。楽器が増えるたび,いちいち作るのメンドくさいし,根性もナイもので~(w)


(おわり)


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