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明笛について(28)52号(2)

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斗酒庵 長いものにまかれる の巻明笛について(28) 明笛52号(2)

STEP2 ふさぎこむもの

 篠笛とかに比べると,明笛の唄口は小さい。

 Webで見ると,管径に対して唄口が小さいと甲音ばっかり出て呂音が安定しない,みたいな事がよく書かれてますが……これホントでしょうかねえ?
 庵主はいっつも,甲音が出ないんで苦労してるんですが………………

 52号,修理に入りましょう。
 前回書いたように,この楽器で唄口が広げられたのは,そういう使用上の調整ではなく,前修理者が間違って一番大事な唄口の真ん中へんを潰しちゃったためと推測されます。
 孔を広げる工作もちょっと雑で全体の形も少し歪んでますし,その広げてる方向にヘコミが続いてるのですから,そもそもこのやりかたではどれだけ削ってもキレイな周縁には戻りませんな。

 ヒビ割れ修理のため,管を紐か細いハリガネで縛ったためについたものであろうこのヘコミは,ごくごく浅く,ちょっと見には分からないていどのものですが,唄口を横から見ると,本来ならきれいな弧になってるはずのラインが,真ん中のあたりで微妙に歪んでしまっているのが分かります。

 さて,まずはこのヘコミをどうにかせにゃならんわけですが。
 肝心のヘコミがあまりにも浅すぎるので,通常のパテ盛り工作ではうまくいかなそうです。
 こういう場合はむしろ,削って均してしまったほうがラクなんですが,管の肉厚がそれほどないようですし,唄口の周辺ですので,後々どういう影響が生じるか分かったものではありません。
 そこで,まずは骨材を入れずエポキだけを盛ってみました。

 木固めの塗装下地でここだけ厚盛りしたようなものですな。
 エポキだと浅いヘコミにもしっかり食いつきますし,透明なので硬化してから均し,上から保護塗りをすれば目立たなくなります。

 一晩置いて整形。
 とりあえず唄口周縁の管表面が面一で平らになりました。
 これでふつうに音が出れば,唄口の拡張工事自体には目をつぶり,全体をさっと保護塗りして終われたとこだったんですが。

 試奏してみたところ。
 呂音は若干引っ掛かりがあるものの普通に出せましたが,甲音がまったく…ピクリとも…いくらふンばってもスカしてもプっとも出ない状態----なるほど唄口が大きくなると…(以下略,冒頭にもどる)
 つても篠笛に比べると,現状でもずいぶんと小さめなんですが。(^_^;)

 まあ前修理者の工作が雑だったあたりで,こうなる予想はないでもなかったんで,あきらめて唄口を再生することといたしましょう。
 今回はツゲの木粉をエポキで練ったパテを使い,こんな工法でやります。

  • まずはクリアファイルを幅3センチほどの短冊状に切ります。
  • 丸棒に両面テープを少し貼り,先ほどの短冊を巻きつけて,細いマスキングテープで留めます。
  • これを管内に差しいれ,唄口のところでマスキングテープを剥がし,管の内側に展開させ,棒をそっと抜き取る。
 ----従前は,ちょっと固めに練ったパテを硬化直前に唄口へねじ込んでいたんですが,それだとオリジナルの部分への食いつきがイマイチなのと,管の内がわにあふれたぶんをキレイに均すのが(表からまったく見えない作業なので)けっこうタイヘンだったのですが。この方式だと,パテが多少緩くても管内にほとんど入り込まないので,後々の作業がかなりラクですね。

 骨材を混ぜると,エポキの硬化が若干遅くなるようですので,二日ぐらい時間をとってから次の作業に。
 管表面の余計な部分をなるべく傷つけないように,パテを管表面と面一に整形したところで,パテ部分の強化のため,エタノで緩めたエポキを塗って滲みこませます。また一日置いて,表面をも一度整形。

 そして穴あけです。

 クリアフォルダは,孔を開けたあと,ツマヨウジか棒で少し押しこんでやれば,ペコンと簡単にはずれてくれます。
 そこでこれを入れる時に使った棒に最初より多く両面テープを貼り,くっつけて管からひきずり出したらお役御免。

 指孔の大きさカタチを参考に,孔を広げてゆきます。

 時折息を入れ,具合を確かめながら削ってゆきます。
 実際に吹いてみるまでちゃんとした調整は出来ませんが,それを見越し,後々で拡張可能なよう,ちょっと小さめなところでやめときましょう。
 パテ部分はそれなりに固いのですが,角の部分はまだごくモロいので,だいたいのカタチができたらもう一度,緩めたエポキを滲ませまておきます。
 ここまでやったところで外に持ち出し,吹きながら最後の調整。

 せっかく直した唄口が傷つかないよう,やわらかい紙を幾重にも巻いて,公園まで持って行きましたよ~

 従前よりずいぶんと小さい唄口となりましたが,こんどは呂音も甲音もいちおう出るようになりました。
 あとはパテ盛りした部分の補強と補修箇所の誤魔化しのため,少し濃いめの色で保護塗りします。


(つづく)

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