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明笛について(28)52号(3)/53号(1)
MIN_28_03.txt
明笛について(28)
明笛52号(3)/53号(1)
STEP0 来笛閑話
楽器
というのはフシギなもので。
こうやって何か直してやってると,関連する何かが引き寄せられるようにやってくることがあります。
52号修理中に
2本の笛
が届きました。
1本はこちら----
明笛53号
----ラベルも破損することなくしっかり残ってますね。
他の製造元のラベルは管頭飾りのがわを「上」にしているほうが多いのですが,ここのは
唄口がわが上,
と逆になってますね。上段が
「OSAKA JAPAN」
真ん中斜めに
「SHEIZO MOTO-H.KIDA」
下段が
「MINTEKI TOKUSEIHIN.」
----うむ…多少ヘンテコな表記が混じってますが
「大阪・日本」「製造元-H.Kida」「明笛 特製品」
で間違いなかろうもん。
いまのところ,大阪の「H.Kida」に該当するメーカーさんに行きついておらず,製作者については不明です。
明治後期から大正時代ぐらいの明笛ですね。
唄口がやや大きく,表の管尻の飾り孔が省略されています。
人工斑竹(竹の表面に硫酸等の薬品をふりかけて焦がしたもの)の管体,骨製の頭尾飾り。
管内外ともに比較的きれいな状態で,
使用痕もほとんどありませんが,
管内の塗りが経年劣化を起こしており,唄口・指孔の縁をはじめ,あちこちでボコボコになっています。
この「塗り」はウルシではなく,例の
エタノで拭くとベトベトになる
顔料系の塗料ですね。清掃ついでに消毒しようと管内に流したら,露切りの布が真っ赤になって出てきましたわい。
あと,これは「損傷」には含めませんが…
尾飾りの一部が欠けて
います。
欠けてる部分がキレイに磨かれていることから,これは後でぶつけてこうなったとかじゃなく,
製作時に欠けちゃったのを,
そのままハメこんで
ツラっと出荷
したもののようですね。このレベルの明笛は,楽器というより玩具一歩前の扱いだったようなので,製作者の「もうイイヤ」加減が堪りません。
息を入れてみると,多少ひっかかりはありますが
いちおう音は出る
様子。全体に「キズ」は少ないので,問題となるのは内塗りの塗料と,このお尻の欠けたとこをどう処理するか,といったとこでしょう。
音はまだ分かりませんが,
派手な外見の笛
なので吹いてるとカッコ良さげに見えましょうなあ。
もう1本は…
うん「明笛」ではありませんね。
尺八?洞簫?
……尺八はオモテ4孔ウラ1孔,洞簫はオモテ5孔にウラ1孔ですが,これは明笛や古典調の篠笛と同じに
オモテ6孔,
管尻がわの裏面にもう一つ孔があいてますが,
ニンゲンという生物の指で押さえるのは不可能
な場所にあるので,おそらくは明笛の裏孔と同じく筒音を決めるための孔でしょう。
清楽の明笛といっしょに出品されていたので,清楽器として使用されていたものである可能性は高いのですが。
さてコレ,なんなのでしょうねえ?
イロイロとギモンはありますが,とりあえずこちらについての考察は後回し----続報をお楽しみに。
STEP3 なんじ牛刀となるも劉備となるなかれ
さて,
52号の修理は終盤。
いつものように
¥100均のめん棒
を削って,頭と尾のお飾りをこさえます。
前々回触れたように,この作者の笛のお飾りはごくシンプルな形ではありますが,頭のも尾のも単純な円筒形ではなく
ほんのすこーしだけ
先のほうが広がっています。寸法が短いのもあって,この微妙な開きを再現するのは意外とタイヘンでした。
次に,この楽器は両端にあったお飾りの取付部が
削りとられて
しまっています。
頭飾りはお飾りのほうに凸付けて管頭の孔に挿しこめばいいのですが,
尾飾りのほうはそうはいきません。
せっかく最長不倒記録を出した管で,ちょっともったいなくはあるのですが,端のほうを数ミリ削って段差を作り,取付部分を再生することにします。
骨とか象牙っぽく見せかけるため,これらは白木のまま緩めたエポキを塗って
キツめに目止め
して木材っぽさを消し,ラックニスやカシューの本透明でツルツルのピカピカに磨き上げます。
んで管頭のお飾りにはこうト----いつもの悪戯
「金鈴子」
を仕込みます。
以上これにて修理完了!
----さっそく音出しに公園へ!
○ □ ●●● ●●●:合 4B
b_4B
○ □ ●●● ●●○:四 5C
+25
○ □ ●●● ●○○:乙 5D
-5
○ □ ●●● ○●○:上 5E
b_5E
○ □ ●●● ○○○:上 5E
b_5E
○ □ ●●○ ○●○:尺 5F
_5F#
○ □ ●●○ ○○○:尺 5F
_5F#
○ □ ●○○ ○●○:工 5G
_5G#
○ □ ●○○ ○○○:工 5G
_5G#
○ □ ○●○ ○●○:凡 5A
_5Bb
○ □ ○●● ○●○:凡 5A
+35
○ □ ○●● ○●●:凡 5G
_5Bb
うむ…楽器の音階としては
少々アレ
ですかな?
もちろん唄口は再生ですから,オリジナルの音階とピッタリ同じというわけではありません。まあ,チューナーの針が高いほうで振り切れて次の音階の低いほう中間くらいまで行くというあたりでは
逆に「見事に揃って」る
と言えましょうか。
上の記録はまだ初期のころので,この時は呂音の最高 ○●● ●●● が出せませんでしたが,ちょっと練習してから測ってみたら,5B
b+40
くらい----ピッチはだいたい合ってるようです。
前回の報告で書いたように,後々調整するのを考えて
唄口を小さくあけてる
ので,慣れないうちは甲音が少し混じり気味になりましたが,慣れると中間音になってるあたりも,だいたい
低いほうの30%ほどプラス
のあたりでまとめられるようです。
いままでにも「小山」銘の明笛は,何度か見る機会はあったのですが,実物をじっくり調べられたのは今回が初めて。
管体が若干細い
のもあって,やや扱いにくいところはありますが,51号などと同じく
筒内に塗りが施されていない
ので,音はかなり中国笛子っぽい感じになり,アタック音がけっこう効きます。内塗りがないぶん多少
管理に手間
がかかりますが,慣れるとそこそこいい音で鳴ってくれますね。
この笛で残る疑問はこの管頭の刻書
----ううむ…
クセがかなり強くて
読めませぬ。
最初が「一枝」じゃないかなとか,5・10文字目は「去」かな,とかくらいで…いつもですと一部が分かればそこから何らかの漢詩が検索ヒットするんですが,今回はいかんとも…(^_^;)
お判りの方がおられましたら,是非ともご教授くださいませ。
(つづく)
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