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田島真斎(1)

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斗酒庵 田島真斎と邂逅す の巻2021.10~ 田島真斎 (1)

STEP1 田島真斎の楽器が届きました,正気度38でダイスを振ります。

 さてさて,月琴の修理というものは,だいたいにおいて単体で舞い込むことはなく,必ずのようになぜか重なるもので。
 今回も,やってきましたもう一面。

 こちらは国産月琴。裏のラベル残片から,田島真斎作の楽器と分かります。

 名字のほうは「田"嶋"」と書いてることもありますね。本名は「勝」。楽器製作者であると同時に渓派の清楽家でもあります。最初のほうの内国勧業博覧会で何度か受賞してることからも分かるように,月琴作家としての腕前はけっこうなものです。

 以前修理した中では8号,あと「合歓堂」の銘の入った楽器が彼の作と考えています。
 庵主がふだん使っている石田不識とは,同じ渓派で作風もよく似ているため,8号なぞは当初,不識の楽器と考えていました。見分けるコツはいくつかありますが,一つは真斎のほうが作りがやや華奢で繊細,半月下縁の面取りが細かい,菊の飾りの花弁の長短が逆,といったあたり。
 参考画像が小さかったり解像度が低かったりすると,ほとんど区別がつきませんね。ああ,あと装飾や細工は田島真斎の楽器のほうが丁寧で豪華ですが,楽器としての音は不識のほうがわずかに上でしょうか。

 で,まあ。いつも言うておることですが----

 今期修理の2面……並べてみると分かる通り,太華斎はヨゴレて真っ白ですが,こちらは一見キレイ

 ちょっと見,そのままで使えちゃいそうな感じ,でありますが----「 "キレイな古物" には気を付けろ!」でありますよ。

 はははは----なにかね,このお飾りは?
 蓮頭や胴オモテ中央部,あと半月の上面に,なにやら他の古物からハガしてきたとおぼしい石の飾りがペタペタとへっつけられております。不識の楽器ではあまり豪華なお飾りの付けられることがないのに対して,田島真斎の楽器にはけっこう豪奢な装飾が施されていることはあるのでが,すくなくともそれはコンナジャナイ
 胴オモテ左右のニラミ中心の飾りはおそらくオリジナルと思われますが,それ以外は柱間飾り,フレット・山口も含めて後補部品のようですね。特にこの半月の上のがなんとも……庵主,これを 「ヴェルサイユ」 と呼ぶことにします。
 これら後補の部品や石飾りの縁に,かなりヤバげな感じで透明な接着剤のハミ出てるのが見えますが,たぶん同じ接着剤が使われてるんでしょうねえ----

 棹が,抜けません。

 ええ,ビクともしませんとも。

 さらにこの棹----詳しく調べてみるとどうもアヤしい

 糸倉の輪郭がなんかやたらとヘロヘロしてますし,本来左右対称であるべきフクラの部分の形も合ってません。きわめつけは糸倉左右の高さがバラバラ,斜めに傾いちゃってますね。

 上で述べたようにこの楽器の作者の田島真斎は,内国勧業博覧会で何回も賞をもらってるような人です。そしていままで見てきた楽器から言っても,その木工の腕前はかなり良く,精確緻密----この胴体接合部の加工一つからでもその技術の高さは分かりますね。
 そういう人が,こんなヘロヘロな糸倉を作るわけがないわけです,ハイ。
 棹全体が茶色の塗料で塗りこめられてるのでハッキリしませんし,もしかすると前修理者がオリジナルの棹に何か魔改造を施そうとした結果なのかもしれませんが,今のところ棹も後補の可能性アリ,というところで。

 とりまこの棹が抜けないと,修理にならんわけではありますが,まず使われている接着剤がどういうものか調べるため,同じ接着剤で固定されているとおぼしい後補の蓮頭をはずしてみることにします。
 まず細く切った脱脂綿にお湯を含ませて濡らしてみましたが,三日浸してもビクともしません。エタノールにも反応ナシ,シンナーの類を使っても変化がないですね。
 しょうがないので,ちょっと浮いてるところにピラニア鋸をさしこんでぶッた斬ります----ゴシュゴシュゴシュ…庵主的には,けっこう嗅ぎなれた樹脂のニオイがしました。

 これはもしや……………………………………エポキ?

 やりやがったな前修理者。

(つづく)


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