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ウサ琴EX (2)

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斗酒庵 ひさしぶりにウサ琴づくり の巻2022.1~ ウサ琴EX (2)
-過去のウサ琴シリーズ製作記事へは こちら から。-


STEP2 菊の花の咲くころ

 太華斎に使う予定だった板は,オリジナルのいちばん薄い部分に合わせて作ったもので。ふつう月琴の表裏板の厚みは4~5ミリほどですが,これは3ミリあるかないかといったところです。

 ギターのスプルースなんかと比べても桐は柔らかですが,三味線の絹弦を使用している限りにおいて,月琴の弦圧はそれほど高いものではないので,このくらいでも大丈夫----かと思いますが,まあ,月琴の板としてはかなりギリギリの厚みですね。
 さすがにちょいと気にはなりますので,裏から少し補強することとしましょう。

 まずは表板(上左画像)。
 内桁は唐物と同じく1枚ですが,半月の上辺(糸の出る真っ直ぐなところ)の前あたりに,細い板材で補強を入れ,さらに半月が接着される一帯に薄いツキ板を貼っておきます。
 裏板(上右画像)には縦方向の補強材を入れます。
 清楽月琴の胴体には本来,縦方向への支えがほとんどありません。円形に組んだ胴材を,表裏から板でサンドイッチしただけの構造ですんで,あえていうならこの表裏の桐板が,弦の張力とかを受け止めてるわけですね。

 最初に書いたように,今回の板はこの楽器のものとしてもうすーいシロモノですんで,そのあたりにはやっぱり不安が出ますから。
 この細板自体は裏板に接着されますが,ネックブロック,内桁,エンドブロックの中央には凹が彫り込んであり,板接着時に補強板がガッチリはまり込むようにしてあります。

 胴中央を支える内桁は,針葉樹材で厚7ミリ。
 清楽月琴の標準だと,厚みは1センチくらいのが多いですね。胴材の内壁にごく浅い凸を刻んで,そこにはめこんであります。
 この内桁は,中央部分が左右端より2ミリほど幅広くなっており,板がかぶさると,表裏,ごく浅いアーチトップ/ラウンドバックになるようにしてあります。左右の音孔部分を強度の限界まで削り,さらに内がわに向いた面の角も丸めて,極力共鳴空間の邪魔にならないようにしてます。
 現在の大陸の月琴では,この内桁に相当する部品が一枚の板ではなく,庵主が板ウラの補強材に使ってるような,胴内を渡る薄くて細い板と,棹のなかごを受ける中央の四角い小板を組み合わせたものとなってることが多いのですが,板を削ったか3ピースかの違いはあれ,窮めてゆくとけっきょく,似たような発想,カタチに落ち着くもんですわい。
 内桁以外の補強材はすべて広葉樹材で,ネック/エンドブロックやバスパーはカツラ,ツキ板はブナですね。

 響き線は庵主お気に入りのZ線。
 工作と調整がしやすく,弧線に近い余韻の効果が期待できる構造で,たぶん,この楽器に日本人が加えた種々の改造のなかでは,いちばんマトモで画期的なものだったのじゃないかな----ぜんぜん広まりはしなかったようですが。(w)
 今回はそれをWで。
 34号などで見られたオリジナルの構造は横向きですが,庵主はこれを縦向きにして,ネックブロックのところから左右下に展開させます。
 空からカミナリが降ってきてるみたいなんで「天神」と名付けたこの構造は,以前,三味線の胴に響き線を仕込むという依頼を受けた時に思いついたもので。制限のあるせまい空間のなか,いろいろと実験した中で,もっとも効果の高かった組み合わせでした。

 棹は前回書いたように,以前の修理のとき予備として作ってあった唐木屋の楽器の複製品を使いますので。
 これに糸巻の孔をあけて,胴に入るなかごの部分を削りこんだら,あとはぶっぴがぁーんと合体させるだけ。
 糸巻もまえに染めに失敗して放置したのが1セット見つかりましたので,これを削り直してぶすッっとな。今回は黒染めしちゃいますので,多少の染めムラは問題ナシです。
 ----まあもっとも,イチから作らなくて済んだだけで,取付け位置や細かい角度の調整で,三日も四日かかっちゃうところは変わりませんが。(泣)



(つづく)


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