「明清楽復元曲一覧」 部分更新!!
「明清楽復元曲一覧」 部分更新!!
さて,庵主は毎年,春先と夏の帰省時に,データベースへの入力や研究のまとめをやってるんですが。 最初に入力する時は,ただひたすらに入れ込んじゃればイイものの,データベースってのは,大きくなればなるだけ,個々のデータ間に関係性が出てきて複雑になり,改訂が難しくなってゆくもんです。 春先の帰省時の作業で,連山派の基本楽譜『声光詞譜』の楽曲についての記事を書き終わり。これで清楽・明清楽の東西の二大流派,渓派と連山派の基本的な曲目については,だいたい網羅しえたのですが。前回までの作業では,各楽曲の「器楽」の部分,なによりも各曲の曲調の基本的な目安となる「標準譜」の作成に重点を置いていたのと,とにかくデータベースとしての体裁を構築するため先を急いだもので。「歌」のついてる曲について,その歌詞や意味についてのあたりはかなりすッとばしました。 今回からは,そうした「歌」のついてる曲の歌詞の部分。その意味や発音などを語学や民俗学のほうから調べて増強していきたいと思います。 最後に入力した『声光詞譜』の記事が,フォーマットとしてある程度完成していますので。そちらの記事を基点にして内容を増強し,そこから係累のある過去記事を改訂してゆくカタチにしました。ほんとうはどの記事を一見さんで訪れても同じように理解できるよう,ぜんぶ均等にやってゆきたいのですが,ワタシの寿命と個人作業の労力を考えますと,このあたりが限界かと(w) まあ単純にやってもけっこうな分量になるのと,いままで別個に入力してきた,それぞれの流派の記事を擦り合わせる必要もありますんで,そんなにポイポイとは進めませんね。 今回は『声光詞譜』天・地・人巻の2冊目地巻までの歌曲が中心。 「金線花」とか「将軍令」みたいな長めの曲までは届きませんでしたが,「九連環」「算命曲」「茉莉花」「紗窓」といったメジャーどころについては,だいたいまとめられました。 まず各曲解説の曲調復元部分----ここに関しては些少の訂正を加えたほかは,ほとんど手を付けていません。各派複数の版本における工尺譜およびその付点の比較,近世譜への起譜,符号譜や五線譜など,標準的な曲調の復元に関して有用な情報はなるべく取り上げてあります。 それぞれの派で,その楽曲がどのような曲調で弾かれていたか,分かる限りの資料を駆使して,当時の誰が聞いてもその曲だと分かるような,基本的で「標準的な」メロディラインをさぐってゆきます。この「標準譜」がないと,どの資料がどう間違ってるのか,とか,記録された譜の個人的なアレンジの範囲はどうなのかとかも区別がつけられませんからね。 今回の改定ではまず,前回までに制定したこの「標準譜」と,歌詞との関係を視覚化するところからはじめてます。曲のどの音「符」が,歌詞のどの語に割り振られるのか,というのを「符割り」と言いますが,これを1拍1マスの表仕立てにしたものを付けました。 庵主が純粋に音楽畑のヒトだったら,ぜんぶ五線譜に起こしちゃえば済むことだとは思いますが,オタマジャクシの行列がメロディに見えるほどの修業は積んでませんもので(w)。この工尺符字と歌詞をマス目で区切って表示するやりかたは,明楽の楽譜のほか,関西大のアーカイブで公開されている遠山荷塘の『嫦娥清韻』などでも用いられてますね。 どう考えてもややこしくなる点打ち式の付点法に比べると,分かりやすい点もあるんですが,けっこう描くのが面倒くさいのもあって,清楽家の間では普及しなかったようです。 次に歌詞の全文とその読みを追加しました。 前回までは漢字の部分とフリガナを別枠で横に並べていたんですが,今回はいちおうフリガナっぽく見えるよう,上下に配置しています。 さすがにルビみたいに,漢字とカナの位置をぴったり合わせるとこまではできませんが,まあこれで少し見やすくはなったかと。 続いて語釈の部分を大幅増強。 清楽家のほとんどは,中国音楽の専門家でもなければ中国語の専門家でも民俗学者でもありませんから,歌詞に関しては文字も意味もかなりテキトウです。もともとの歌詞の意味も知らないで書き写すものだから,伝言ゲームの間に違う字になってたり読みになってたり,しまいには分んなくなったところを捏造してたりで散々です。 庵主はもともと中国方面のほうが専門ですから,大陸の古い資料なんかも駆使して,なるべく歌詞のもともとの意味に迫れるよう,いろいろと調べてみてますので,日本での通説や過去の解釈なんかとは違ってる部分も多々出て来てます,あしからず。 そして最後に日本語訳。 原歌詞の「正確な意味」については語釈を参考にしてもらうとして,日本語の訳詩はその大意をとって,なるべく「歌えるように」組んであります。 そう----原曲のメロディで「日本語で」歌ったならこんな感じかな~,と。 「紗窓」なんかは歌詞が漢詩ですからね。訳すのなら書き下しでいいんでしょうが,中国の歌は基本ライムです。いまでは唐詩をリリックにビートを叩きつけるムキも珍しくありませんが,庵主が『中国のマザーグース』を訳したころには,「らいむ?----押韻ってなーに。」って感じで,ラップもヒップホップもまだそんなに一般的じゃなく,日本語でライムして訳したのにあんまり気づいてもらえませんでしたねー。 まあどれもこれもライムしたわけではありませんが,原歌詞の抑揚になるべく合うように訳すのは,それはそれで面白かったですよ。 各記事,かなりの分量がありますので,必要なところだけ飛ばし読みしてお楽しみください。とうぜんMIDIやMP3での再現も付いてますので,なんなら耳でもお楽しみあれ。 「明清楽復元曲一覧」 http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html -渓派『清風雅譜』『清風柱礎』 -連山派『声光詞譜』 ----の各書項目,曲目一覧から曲のタイトル部分をクリックすると,各記事へ跳べます。 「清楽曲曲譜リスト」 http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/LIST.html 上掲同書の各項目末「リンク」のところにある「解説」をクリック。 どっちからでも飛べます。 最初のほうに書いたように,まだ全面改訂ではありません。ぜんぜん改訂されてない記事もたくさんありますが,そのあたりの更新も追々やってゆきますので,これからもよろしくお願いいたします。 |