« ウサ琴EX3 (2) | トップページ | 玉華斎2(2) »

唐物月琴(仮称)(1)

GK02_01.txt
斗酒庵 たまたま×××にまた出会う の巻2023.11~ 唐物月琴(仮称) (1)

STEP1 平成3強のバラード

 ウサ琴作りの途中ですが,依頼修理の時間です。(w)
 多少見慣れない工作・構造の部分はありますが,古渡りの唐物月琴ですね。
 さて----

 全長:(含蓮頭)628
 胴径:352,厚:33
 表裏板は側板に埋め込み,胴外縁7ミリほどに側板がかかる。
 有効弦長:395

 棹・胴ともに主材は鉄刀木(タガヤサン),蓮頭や糸巻・半月なんかはツゲの類ですね。
 フレット2枚と柱間の小飾りが欠落している以外,部品はおおむねそろっているようですし。まだ細かく見てないので分かりませんが,ぱっと見,状態は悪くなさそう----しかし,楽器は本来「道具」なので,古物でキレイというのは逆におかしい,オソろしい,というのがいつものハナシ。
 「道具」は使ってナンボ,廃れた楽器とはいえ,たとえば「使われなくなった」のではなく「使われなかった(だからキレイ)」と言うような場合,そこにはかならず理由があるもんです。注意深く観察していきましょう。

 頭から見てゆきましょう。

 まず蓮頭。意匠は牡丹で,老天華や天華斎の楽器などでも良く見るデザインになってます。ただでさえツゲや唐木の類は接着が悪いのに,それをこういう透かし彫りにすると,接着面も不安定で落ちやすくなります。その対策として所有者が,こうやって裏に桐板など接着のいい別板を貼ってるのはよく見る手なんですが。そもそも天地逆にへっつけられてますし,桐板貼ったにしてもやたらガッチリとくっつきすぎてるので,再接着の疑いアリです。

 糸倉には問題ナシ。軸孔の工作に多少雑なところはありますが,使用上の問題はなさそうです。背面側の角を丸めて断面を船形にしてるのはよく見ますが,この楽器ではオモテがわの角も丸められてますね。

 真っ黒になってますが山口さんもツゲのもよう。
 胴上のフレットは竹のようですが,この棹上の3枚はツゲっぽくみえます。

 その棹上のフレットのうち2枚に再接着痕。ハミ出てる部分を爪先でつついてみると弾力があるので,たぶんゴム系の接着剤ですねえがっでむ。

 唐物にしては棹が細く,寸法として特に長いわけではありませんが,スマートな印象があります。指板の部分で幅が26ミリ,棹背のいちばん薄いところは19ミリくらいしかありません。

 棹背に大きなエグレがあり,またそこから糸倉基部に向けてのあたりのラインがみょうにヨタついていて不自然なことから,このあたりに素材的な問題……たとえば節目があったのを避けたとか,削ってたらいきなり割れたとか---「最狂」の称号を持つ唐木・タガヤサンではよくあること---があって,そのせいでこんなになったのじゃないかと思われます。エグレの下に薄いヒビも走ってますので,このあたりの材質に問題があるのは間違いなさそうですね。

 胴上,ニラミは龍。細身でかなり意匠化されちゃってますが,まだまだドラゴンと分かるレベルですね。

 扇飾りのほかは,中央に凍石の丸飾り,意匠は鸞です。

 そして----うん,なにより目立つのがやっぱりこの半月ですね。

 全体の形状はよく見る板状半月なんですが,そこに透かし彫りで「海上楼閣」が描かれています。船運で栄えた福州の楽器ならでは,って感じもありますか。右下のほうに顔を出してるのが「蜃」。ここでは巨大ハマグリではなく,ミズチ(蛟龍)の姿になってますね。口から吐かれた息が,くるりと一回転して,何もない海上に壮麗な楼閣を出現させ,波から花も咲くこりゃ。

 さらに上辺と側面にもびっしりぐるりと回紋がめぐらされてます。
 彫りそのものの腕前はそんなにスゴくないんですが,素材や時間を考えると,かなり気合入ってますねえ。

 ----といったあたりで,次回に続きます!

(つづく)


« ウサ琴EX3 (2) | トップページ | 玉華斎2(2) »