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ウサ琴EX3 (4)

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斗酒庵 ことしもウサ琴づくり の巻2023.10~ ウサ琴EX3 (4)

STEP5 棹だけ屋のヒミツ

 今回は,胴体と同時並行で作ってた棹の作業記録です。
 そういえば,前2作はウサ琴と関係なく,資料として作ったまま忘れてた,唐木屋や鶴寿堂の棹の複製を使いましたので,棹自体の製作はありませんでしたね。
 唐木屋の棹の複製品を使った1号ちゃんは実際使いやすかったし,デザイン的にもトラディッショナルで無難,機能的にも実用第一なので,今回も唐木屋やその元となったであろう関西の松音斎・松琴斎あたりの棹をモデルとすることにします。

 斗酒庵謹製の月琴棹は基本的に3ピース---実際の数で言うと,5つの部品で構成されてますが---ちょっと硬めの中心材を,カツラやホオの板でサンドイッチにした構造で作ってます。

 今回はカツラの板を買ったら,銘木屋さんが杢の入ったいかにも良さげなカバの端材をオマケで付けてくれたので,これを中心材にして2本,カツラの同材で1本作ろうと思います。

 中心材は14~15ミリ厚。この厚みがそのまま弦池(糸倉の弦のおさまる部分)の幅となります。清楽月琴の平均がだいたいそのぐらい。すこし広めのほうが,弦の交換などの操作がやりやすいですね。

 次に,型紙をもとに,左右の部分をカツラの板から切り出します。
 こちらの板は昔買った粗材で,厚みは7~8ミリ。
 切り出した左右の板を2枚づつ両面テープで接着し,左右対称になるよう整形します。
 部品が揃ったところで,中心材と左右を接着して一カタマリにします。

 ニカワでもできますが,ここらへんはエポキでやってます----ここの3P構造は,別にメンテの時にバラす必要がありませんしね。ただし,糸倉の天につく間木はニカワで接着します。国産の楽器でまれにある一木造りの棹だと一体で作られますが,本来ここは蓮頭といっしょで,糸倉に衝撃がかかった時,はずれることで被害を少なくする役割もあるところですので。

 左右がくっついたら,上面をキレイに均して指板を接着します。
 今回は黒檀ですね。
 むかーし,銘木屋さんでもらってきた端材がまだあります,ありがたや。

 盛大に木粉が飛び散りますので,この後の整形はお外でやりましょう。
 いちおう棹の形になった四角い物体---棹の素体---を削ってゆきます。

 最初にまず,棹背部分の余分を削ぎ取り,胴にささる部分----棹基部になるところに切れ目を入れます。
 つぎに,山口(トップナット)が乗るところ…三味線だと「ふくら」にあたる部分の左右側面に区切りの溝を刻みます。

 この区切りの溝のところが起点となって,左右側面のテーバーが決まったり,糸倉と握りの境目----「うなじ」の曲面へとつながったりしてゆきますので。ある意味ここが,棹の製作において全体のフォルムを決定するもっとも重要な箇所と言っても過言ではありません。

 どんどこ削ってゆきます。

 棹背を削ぐの以外はほぼ各種ヤスリのみによる作業で,画像ではそう見えませんが,足元はもうけっこうな量のおがくずだらけです。

 最後のほうになると,もう寸法とかじゃなくて,手で握り指でなぞって,実際の感触を確かめながらの作業になっちゃいますね。
 同じ型紙から作っても,木の目や整形時の削り加減で,一本いっぽん微妙に違うものになっちゃうあたりは,むしろ手作りゆえの特徴,と思っていただけるとサイワイ(w)

 二日ほど夕方の公園に通って,3本なんとか完成!
 ここでいちど樹脂で木固めをして,糸倉の背やうなじ部分など細かいところをさらに削り込み,表面を磨きます。

 胴体に表板がついたところで,基部を各胴輪の棹孔に合わせて整形。それぞれきっちり入るようになったら,V字の刻みを入れて延長材を接続します。

 前2作では針葉樹材を使いましたが,今回はホオでいきましょう----いえ,別に意味はなく,端材入れの中からちょうどいいサイズのが見つかったので。

 最後の部分はちょっと作業を急ぎました。
 と言いますのも,このあたりで修理の案件も入り,作業スペースの関係から,こっちの3面を早く画像の状態にまでしておきたかったんですね。
 ここまでやっておけば,胴体を棹と別にして横置きする必要はなく,いっしょにどこかにひっかけておけますからねえ。なにせ工房兼住居の四畳半一間,ただでさえせまいとこに,楽器3面の同時製作+古楽器の修理となると,まさに足の踏み場もなくなっちゃいますのよ----しくしく,あすこがアタシの寝床です。


(つづく)


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