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玉華斎2(5)

GK02_05.txt
斗酒庵 たまたま玉華斎にまた出会う の巻2023.11~ 玉華斎2 (5)

STEP5 タマモナイスプレイ

 棹本体・延長材接合部の補修も終わりましたので,毎回恒例,執念のフィッティング作業に取掛ります。

 三線でも,棹と胴体を理想の設定できっちり合わせるという調整(ぶぅあてぃ)は,経験と年季の要る作業と言うことになっており----まあ弦楽器全般そうですね。地味なじみーな作業ですが,ここの出来如何で楽器の使い勝手が大きく変わりますんで,地味でも大切かつ重要な工程です。
 清楽月琴の作者には「楽器としての月琴」について熟知してないようなむきも多かったので,たとえプロの楽器職の作でもここがテキトウで。外見も構造もちゃんと月琴のカタチになっているし,材質もイイのに,楽器としては弾きづらいだけのシロモノになってたりする例が少なくありません。

 玉華斎というヒトも,「どこをどうすれば良い」という基本的設定については,さすがに本場のヒトですし,周りにふんだんにお手本があったでしょうから分かってたようですが。そのために「どうすべきか」のあたりの意識がきわめて希薄なため作業がテキトウ,という----思わず後頭部を殴りつけたくなるような性格をしています。
 さて,作業中の鬱憤と怒りのオーラを発散させるための粘土人形と,錆びて曲がった細工釘や縫い針を大量に用意して。
 作業をはじめるざんすよ,えこえこあざらく。

 まずは胴体と棹の接合部分。
 工房に来た時点で,この楽器の棹はいくらキッチリ挿しこんでも,ここにスキマができる状態で。表がわで1ミリ,裏がわも2ミリ以上,棹基部が棹口から離れていました。棹の本体部分が胴とどこも接触していない,つまりは「胴にささってるだけ」という状態だったわけです。

 まあ月琴は弦圧の低い楽器ですし,棹も胴体も主材は最強の唐木・タガヤサンですので,通常の使用なら棹が浮いてる状態でも強度的な問題はなかったでしょうが,棹と胴体が噛合ってないということは,振動が楽器全体に伝達されないということ----これではちゃんとした音は出せませんな。
 まずはここを,きっちりと密着させてやらなければなりません。

 とはいえ----カタい…さすが鉄刀木と書いてタガヤサン。それもきわめて削りにくい木口部分の作業。そのうえ,この木は硬いかわりにモロいというイヤな性質を持っており,下手に刃を立ててザクっと削れません。表面を何度も何度も擦るようにひっかくようにしながら,少しづつ削り減らしてゆかにゃならんので,刃物と手が42ます。

 数日かけてちまちま削り,なんとか胴体とのスキマを解消。胴と棹をしっかり噛合せることに成功しました。

 次に取付けの調整。
 この楽器の棹は,よく庵主が書いてるように,山口のところで胴の水平面から3ミリくらい背がわに傾いている----という,理想的な設定にいちおうなってはいるんですが。
 内桁の孔と延長材の太さがまるで合っていないため,糸を張るとそこからシーソーかやじろべえみたいに,あっちこっちにオモテにウラに,かくんかくんと動いちゃいます。

 まあうまくいい位置に誘導できたとしても,前回書いたよう,棹本体と延長材の接合部に大きなスキマがあったわけですから,そこからの調弦もきわめてイバラの道であったことでしょう。山口や半月に糸擦れがなく,胴表にバチ痕がないことから,楽器として使用されたことはほとんどなかったとは思いますが,このあたりから考えると,実際には「使わなかった」というより「使えなかった」んでしょうねえ。

 棹孔や棹の指板面から,正確な楽器の中心を採り,棹がその中心線に則って固定されるよう,延長材にスペーサを貼ってゆきます。
 うむ----最終的に,延長材の裏がわと左右に2ミリ近い厚みを足すこととなりました。
 今回はオープン修理でないので,この手でいきますが,次にぶッ壊れた時にはがばッと板をひっぺがして,内桁の孔のほうをなんとかしたほうがイイですね。
 ちなみにこのスペーサは,少しづつ調整するため薄いツキ板を積層してますが,1枚目はニカワで,そこから先はエポキで接着して重ねていますので,それこそ「次の時」みたいなことがあれば,通常の手順で根こそぎがぼっとはずせるようにしてあります。

 道具の修理はただ「いま使えるようにする」だけじゃなく,次に修理する人のことを考えてやるべきというのが,古臭いながら,庵主の方針ですので。

 今回もけっこうな時間がかかっちゃいましたが,がんばった甲斐もあって,ようやく棹は原作者が当初企図していたと思われる設定で固定され,力がかかっても動かなくなりました。
 いつものことながら,他の作業をやりながらではありますが,月琴修理の全作業工程をのべ時間にした時,その三分の一以上は,間違いなくこうした,棹と胴体のフィッティングに費やされてると思いますよ。

 続いて半月の補修です。
 まずは見て分かりやすいほうから----

 原作者が回紋彫ってて欠いちゃった部分の補修ですねがっでむこのやろう。
 このままでもなんとか使えなくはありませんが,高音低音で弦高がびっこたっこになるので,フレットを必要以上に低くしなきゃならなかったり,高低のピッチが微妙に狂ったりと,弦楽器としてあまり嬉しくない状況になる未来しか見えません。

 ここはお飾りの補修なんかと同じ……ただしお飾りと違い,よりにもよって,弦のかかる糸孔の前をしくじってくれてやがりますので,かなり頑丈にしなきゃなりません。
 まずは以前の修理で出た,ツゲの端材を削ってはめこみましょう。

 さすがに櫛の目を刻むことのできる木,この寸法でもかなり細かな加工が出来ますね。
 場所が場所ですので,抜けないよう微妙な細工をしたうえで強力な接着剤を使いますが,後で整形するので,補材は扱いやすいよう,けっこう大きめに採って,イヤミの出っ歯みたいにしちゃいます。

 同じ材ではありますが,木色のままだとかなり目立っちゃうので。削って均した後,てってえてきに補彩して仕上げました。
 どやぁ----ちょっとそっとじゃ分かるまい。

 もう一つの故障は,見た目からだと分かりにくいものなんですが----たとえばこう,現状の半月を平らなところに置いて,こっちがわを押しますと。

 反対がわがパカっと浮いちゃいます。

 はずす時,左端の一部分しかちゃんと接着されてなかった理由はコレですね。この半月,底面がちゃんと平らになっちょらんのです!

 裏面を見てみると,楽器についてる時に浮いてたがわの加工はかなり雑で,ひどい凸凹になってます----そりゃ,こんなじゃちゃんとくっつきはしませんわな。
 おそらくはこのあたりに節か,木目の混んだ部分があって,加工時ヘンな感じで割れちゃったのを,そのまま使ったんじゃないかと。

 まずこの凹んでる部分をパテ盛りします----骨材は同じツゲの木粉です。全体的には底面の中央部が,わずかに盛り上がったカタチになっていますので,大半は次の作業で削られちゃうとは思いますが,削った後のきわめて浅い凹みをあとで埋めるのより,キズが深いうちに埋めて後でギリまで削るほうが,よりキレイに仕上がるからです。

 途中で透かし彫りに入りこんだパテをほじくりだし,さらにきっちり磨いて水平を出しました。これで胴のほうの接着面も少し均しておけば,かなり強力にくっついてくれるはずですね。

 といったところで,次回に続く!----

(つづく)


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