玉華斎2(4)
2023.11~ 玉華斎2 (4)
STEP4 タマモブラックタイ 剥離の作業でけっこう濡らしちゃいましたので,一日二日,乾かしてからの作業再開です。 まずはバチ布下のでっかい虫食い痕を,桐塑(桐の木粉+寒梅粉のパテ)で埋めましょう。 一晩置いて乾いて固まったところで,「薄皮一枚」くらいまで余分を削り取り,埋まった虫食い痕に沿って小筆で樹脂を滲みこませます。ただ埋めるだけなら桐塑だけでもいいんですが,ここ,後でまたバチ布貼るのに濡らしたりもしますからね。 裏板の周縁に接着のウキが2箇所ほどと,小さいですがヒビ割れが1箇所ありますんで,ついでに補修しておきましょう。 さて,では棹のほうへまいりますか---- まずなによりやらにゃならんのは,糸巻の製作ですね。 オリジナルが4本とも残っているのに,それが4本ともナスビになっており,残ってるのに1本として使いモンにならんというのは………いッそ「糸巻全損」だったほうが罪がないというくらいで,やり場のない怒りが左腕に封印された邪龍を喚び醒ましそうです。 原作者は後で殴る,ぜったいだ。 ぐぬぬぬぬ----落ち着け,歴史の闇に潜み眠りし禍々しき魂のチカラよッ!!(左腕に巻かれた包帯と右目を抑えながら)いまはこのやり場のない哀しみと萌えあがる復讐をムネに,糸巻を削りまくるのだァ! 怒りのパワーは素晴らしい…いつもニガテな素体作り,並行でやってるウサ琴EXのぶんもふくめて20本近く,イッキにやっちゃえましたね。(w) 玉華斎の糸巻は,天華斎とほぼ同形---握り部分のお尻の面取りが違うだけですね----の六角丸軸。操作性も考慮して,オリジナルより少し長めにしてあります。 それぞれの軸孔に合うよう1本いっぽん削ってゆき,削り終えたところでいちど磨いて,エタノールに2時間ばかり漬けこんだ後で樹脂を浸透させ,補強します。 つぎに糸倉の天の部分の補修です。 間木の接合が雑でスキマができてますので,これを埋めておきましょう。 ここも現状ではいちおうくっついてるのですが,いつパチュンとはずれてもおかしくない状態なので,そのままにはしておけません。 唐木の端材を薄く砥いで,ニカワを垂らして埋め込みます。 同じような作業なので,同時進行で延長材との接合部の補修もやっておきます。 棹と延長材の接着自体はしっかりしており,現状,割れても剥がれてもいませんが,延長材の先端部分にけっこう大きなスキマがあります。 向こうからライトで照らすと,光が通ってきちゃうくらいのスキマです。 棹本体のタガヤサンはきわめて硬く丈夫ですが,延長材に接がれているのは柔らかな針葉樹材です。それでここに,こういうスキマがあるとどうなるか? 以前にも似たような例があったのですが,こういう場合,糸を張るとその力で,硬いほうが柔らかいほうに食い込むようなカタチになって棹が浮き上がり,いつまでたっても調弦が決まらない,という事態になります。 ふつうに楽器として使用されていたモノであれば,通常操作が繰り返されるうちに,接合部分が割れたり延長材がはずれたりと,目に見える故障になってくれるものなのですが,本器のように,あまり使われたことのないモノだと,原因が分からないまま,あとで不具合だけが発生するといった状況になりがちです。 手順は糸倉の間木と同じですが,ここは楽器の操作に直接影響の出る箇所なので,かなり丁寧に埋め木を削って,きっちり埋め込みます。 ついでに棹背の大きなエグレも埋めておきましょう。 ここも弾く箇所によってはかなり指がひっかかります。 このあたりにはおそらく元材からの大きな割れ目があったようです。残ってる痕跡からすると,加工ちゅう,原作者も思ってなかったほどかなり大きく割れたらしく,この楽器の棹が細めなのも,棹背のラインがやや不自然にのたくっているのも,それをリカバーするための処置だったんじゃないかと推測されます。このエグレも,ここをこれ以上削ると棹背が薄くなり過ぎちゃうので,妥協で残ったところみたいですね。 唐木の粉を骨材にしたパテを,少し多めに盛っておきます。 といったところで,次回に続く!---- (つづく)
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