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ウサ琴EX3 (5)

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斗酒庵 ことしもウサ琴づくり の巻2023.10~ ウサ琴EX3 (5)

STEP6 進撃の製作!

 さてさて,間に玉華斎2の修理と冬の雪かき帰省がはさまりましたので,ちょいと久しぶりの作業報告になります。
 前回までで,表板を貼り「桶」の状態となった胴体と,削り終わった棹をぶっぴがぁんできるようになり。バラバラに置いておいたせいで,庵主のウナギよりせまい寝床スペースを圧迫していた奴めらを,壁に吊るせるようになったわけで。

 ----快適な睡眠は,快適な作業につながるのであります,ハイ。

 では作業再開。
 まずは糸倉に糸巻の孔をあけます。

 同じ型紙をつかって切り出してはいますが,それぞれの板の質や整形上の関係で,3本それぞれ微妙に差異があります。
 それも考えたうえで,過去の例から最適と思われる位置を割り出してゆきます。毎度書いてますが,月琴の糸巻は糸倉からただ垂直に突き出してるわけではなく,左右2本づつわずかに尻広がりに開き,かつ楽器前方にも傾いてます。(巧い職人さんのはね)

 そのため孔の位置もそれに合うよう3Dで考えなきゃならないので,算数ニガテな庵主はいつもここが悩みどころです----いくら計算しても自信がないので,いまだに小さな下孔(φ2ミリ)からはじめ,棒を通して確認しながら,少しづつ広げてゆく方法でやってます。

 ドリルからリーマー,最後は¥100均の釘締めを削って作った,手製の焼き棒で焼き広げます。

 孔が開いたら,糸巻もなきゃなりませんね。

 今回,素体は玉華斎の修理のついでに作っておいたので,あのイヤなナナメ切りはないものの。1面につき4本x3の12本x六角形を削るっちゅうのは,なんにせえタイヘンな作業で。

 A・B号には定番の六角一溝タイプ,C号にはやや太目な六角無溝のタイプを用意しました。
 それぞれの孔に合うように先端を削り,調整しながら,全体を整形してゆきます。

 多少入替っても大丈夫なようにはなってますが,基本的には孔のいちばん奥まできちんと入るのがそこの孔の糸巻で,って方針ですね。
 できあがった糸巻は,それぞれ磨いてからエタノにしばらく漬けこみ,樹脂浸透です。

 おつぎは山口。
 琵琶の乗絃,ギターのトップナットにあたる部品ですね。

 今回は虎杢のトチで。前後から見て富士山型,横から見てカマボコ唐竹割りの伝統的形状です。

 半月は棹の左右を採った,カツラの板の端材から切り出します。

 予備も考えて4枚。素体はだいたいの寸法でそろえたのを,両面テープでまとめて一気に整形しちゃいます。

 どれをどれに取付けるかは決めてませんが,2枚は曲面,1枚は板状のものに追加装飾を貼りつける形式のでいきます。

 意匠は一枚目が「扶桑樹」,二枚目が「牡丹」,三枚目は「海上楼閣」となっております----え,「牡丹」以外の意味が分からん?

 そうですね。一枚目は中国の古い伝説がテーマです。むかしは太陽が十個あって,毎日日替わりで仕事してました。太陽の棲家は「扶桑」という巨樹にあり,朝になるとここから太陽が一つ天へ昇ってゆき,夕方には沈んだ太陽が樹の根元にある泉で身を休めてから,それぞれの寝床である葉っぱへと昇ってゆきます。

 半月真ん中の木がその「扶桑」。枝は十,葉の数も十枚。
 糸孔になっている4つのほかに丸が4つ,合計8コのマルが,それぞれ葉に乗っかり,マルのない葉が2枚。樹下には鳥が2羽。どっちがどっちだか分かりませんが,片方はこれから往くところ,片方はいま帰ってきたところですね。

 この扶桑樹のデザインはオリジナルですが,ほかはほぼ伝統意匠です。

 牡丹は他の楽器でも類似の作例があります。ここに花が付いてたら,まあ牡丹か蓮のどっちかですね。葉っぱがギザギザしてたら牡丹。葉っぱがないか,水面を表すような紋様がついてたら蓮かなあ。花自体は同じような彫り方なんで,区別のつかん場合も多いですね。

 最後の「海上楼閣」。すこし前に修理した,玉華斎2の半月もこれでしたね。
 日本ではハマグリになってますが,海中に棲む「蜃」という魔物が息を吹き,海上に壮麗な建物のマボロシを出現させてます。

 こうした,幕末から明治にかけ,大陸から日本に輸出された月琴の多くが福建省で作られたものです。
 時に,似たような意匠に「水晶宮」というのがあって,どちらも雲の上に乗っかった楼閣なのですが,「水晶宮」は「月」にある西王母の宮殿ですから,本来「月琴」に付けるならこちらで良さそうなところ,あえて「海上楼閣」としているあたり。これは海上貿易で栄えた福建の月琴ならではの意匠だったと言えるかもしれません。
 玉華斎2やさらに以前に手がけた天和斎の半月は,意匠を直接半月に彫りこんでましたが,福州のメーカーでいちばん有名だった天華斎では,これを薄板に彫ったものを貼りつける方法で作られていました。

 今回のは,天華斎方式の再現でいきます!
 追加装飾の板は,オリジナルではツゲが多いようですが,さすがに材料が高いし,カタいから通用する工具もないんで。手慣れたカツラの板(端材)の薄切りで。

 まずは余白部分をざっと彫り下げ,一度樹脂を染ませて木固めをします。
 固まったところで整形。土台となる半月にピッタリ合わせ,これが終わってから余白を抜き,少し細かいところまで彫って二度目の木固め…と,何度も彫っては固めるのを繰り返します。

 最後にいちばん外側に波紋様を刻んで完成です。
 ウサ琴の半月は,オリジナルのに比べるとちょっと小さいので,縦にぎゅっと詰まった感じになっちゃってますが,まあこんなところでしょう。


(つづく)


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