依頼修理の月琴(5)
2024.11~ 依頼修理の月琴 (5)
STEP5 月琴荘バラバラ○人事件 さて、楽器の内部構造どころか、原作者の内面までもが垣間見えた分解作業。 当初は必要最小限の分解にしようと思っていたところ、原作者先生の積み重ねやがった試行錯誤と努力の痕残りまくりなうえ、そのほかいろいろな粗も見えてまいりました。
まずはこの内桁。
材は桐板ですね。
そこそこ厚みはあるんで、強度的には問題ありません。板端に大きな節があるのも……まあ自然木なのでしょうがないっちゃあしょうがないんですがよ。 その節のところがバッキリ割れて欠けちゃった----うん?、まあしょうがないけど…いや、でもさすがに使うのやめようよ。 そこに木片つっこんで塞いだ----えっ!?コレまだ使う気? そしてその「補修箇所(?)」、なんと、ちゃんと接着されてません。<イマココ。 なァにしィさらしてくれとンじゃ、ワりゃあッ!!!(超怒) 前回紹介したように、円形胴を二枚の板で支える国産月琴の方式から、中央に一枚の板だけで支える唐物月琴の構造に替えたわけですよね。 見た目にも安定した二枚桁から、見た目ちょっと心配な一枚桁に減らしたのですから----すなわちこのたった一枚の板が、楽器のすべてを支えているわけですよね----わかります?「大事な部品なんだヨ」って言ってるコトが。 外からは見えない部品ですんで、ちょっと質の悪い部材が使われること自体はけっこうあるんですが……でもこれはちょっとヒドすぎない?
スキマもあるし、パックリ割れてグラグラしちゃってますね。 前回少し触れたよう、現在内桁が取り付けられているこの溝は、作者の試行錯誤の末、最後に作業された箇所と思われます。 その時点では、胴体はすでにあらかた組みあがっており。加工作業は裏板のみがはずされた、非常に作業しにくい環境でなされたものと推測されます。 そのためか、組み立て前の段階であらかじめ切られていたと思われるいちばん上の溝とかにくらべると、溝の底がきわめて浅く、加工自体の質もあまり良くはありません。
とりはずした内桁を清掃し、あらためて入れてみると。 きっちり定位置にハメこんでも、こんなふうに板端にスキマができちゃいます。 ここもこの楽器の構造上、大切なところのひとつですので、なんとかせにゃなりませんな。
まずは例のフシアナあたりを補修・補強いたしましょう。 ちゃんと接着されていない節のまわりに、木粉を混ぜた接着剤をつめこんで充填接着します。 側板の取付け溝は、あらためてきっちり彫り直そうと思いますので、そこにきちんとはまるよう、左右端の木口に補材を足し、さらに端周辺を補強しておきますね。
そもそもの素材選びやその後の加工には多々問題があるものの。 内桁自体は中央がわずかにふくらみ、左右端にむかってすぼんでいるという、唐物月琴、それも天華斎あたりの上等な技術が、しっかりと反映・模倣されています。
内桁の幅は、中央で最大35ミリ、左右端で30ミリほどですね。 これによって表裏板の中央部にはわずかなふくらみができ、胴がごく浅いアーチトップ/ラウンドバックとなるわけ-----なんですが。 この加工が効果を発揮する前提条件は、貼りつけられる板が精密かつ平坦に加工されていること、なんですよ。
---うん、むり。 板ウラがあちこちエグレだらけなうえ、板厚も一定してません。 凸凹だしガタガタだし----内桁と接着されるがわ、ウラ面の加工とくに…、あまりにもちょっとヒドいですね。
まあ、そこにへっついてたがわの、桁の接着面も、ハツり痕が目で分かるくらい残ってて、仕上げが粗いんですが。(Haha....スティーブ、これは何事だい?) 基本、この内桁と表裏板がちゃんと密着していないと、真ん中をふくらませた唐物月琴風加工も意味をなしませんし、中途半端な加工では、かえって楽器としての音質に大きな悪影響が出てしまいます。 ここはきちんと密着するよう、どちらも平坦に整形する必要があります。 実際の技術や結果はともかく。 この原作者の観察眼はそこそこに優秀で。唐物月琴の内部構造の特徴を、かなり詳細なところまでしっかり捉えています。ただし、こういうものは「どうなってるか」が分かっているだけではダメで、「なにゆえに、そうなっているのか」というところまでさかのぼって検証しないと、こういうただ中途半端なことになりがちですね。
まずは側板の垂直を出します。 板自体の狂いもあって、表裏板がわの接着面もかなり歪んでますからね。 次に補修した内桁がしっかりハマるよう、取付け溝を均一な深さで、きちんと切り直します。 表板はバッキリ2つに割れちゃってますので、まずはこれを1枚に接ぎ直しましょう。
オモテがわはいいんですよ、後でも。 板ウラ面は、べつだんオモテ面ほどツルツルしてなくてもいいんですが、凸凹のほうはオモテ以上に許されません!(とくに内桁と側板の接着部分)埋めては削るのくりかえし、水平リーベぼくのふね。
実際に仮組して、パーツの合わせ具合を確かめながら作業を続けます。
内桁の片方の端を底まで押し込むと、もう片方の端が、ちょこんと飛び出します。
----これでいいんです。 この内桁、真ん中がふくらんでるんですからね。
板ウラの凸凹を均しつつ、全体が均一かつ平坦になるよう、より削り込んでゆきます----さすがに木粉がすンごいので、室内じゃあできませんね。
並行作業で側板の表裏板面も調整してゆきます。接合部のあたりで高さの合わないところには、唐木の薄板を貼り足して削り込み、きっちり寸法を合わせて、直角を出します。
細かな作業を重ね、裏板のウラも同様に平たく均し。 数週間かけて、胴体の主要部品の整形と調整が終わりました! さあて---いよいよ再組み立てですね。 (つづく)
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