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月琴WS@銀狐!2025年11月!!!

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斗酒庵 WS告知 の巻月琴WS@銀狐! 2025年11月!!!


*こくちというもの-月琴WS@銀狐 11月のお知らせ-*

 
11月の月琴WS@銀狐は、22日(土)16:30よりの開催!


 会場は台東区下谷・小野照崎神社(通称・小野照さん)のお隣、「銀狐」さん。
 最寄駅はJR「鶯谷」もしくは地下鉄日比谷線「入谷」となりまあす。

 前とかわらず、参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに Drink or Food のオーダーお願いいたします。
 ほぼ銀狐さんの通常営業にまぎれての、酔いどれ飲み会WS。

 予約は特に不要、参加自由、途中退席自由。
 楽器は余分に持っていきますので、手ブラでのご参加もお気軽に~~~!

 初心者、未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい、弾いてみたい方はぜひどうぞ。


 うちは基本、楽器お触り自由。
 絶滅楽器「清楽月琴」なんてぇものに触れられるエエ機会。
 1曲弾けるようになっていってください!



 依頼修理といただいた月琴、2面の修理を同位並行作業中----といってもまあ、一面毎、状況は異なるので、それぞれに同じ作業をしてるわけではありませんが。
 究極のエコロジー&SDG'S・エアコン「大自然」完備の我が家ですので、こないだまでのような暑い時期は修理どころの話でなく、室内での地球型生命体の生存もあやぶまれるほど---そもそもニカワが腐るわいな---ようやくおうちでふつうに作業ができるようになりました。

 また素材や染料の関係で、こうやって複数同時に扱うほうが経済的かつ効率的、まあ最大5面くらいまでは同時に作業できるかと。

 修理依頼等お考えのかたは、ぜひいまのうちにご連絡くださいませ。

痩蘭斎旧蔵月琴01 (2)

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斗酒庵,縁ありて修理いたす の巻2025.9~ 痩蘭斎旧蔵月琴01 (2)

STEP2 暑さ寒さもそれぞれなれど

 修理前の調査・計測をはじめたものの----

 各部あまりにもばッちィ過ぎ、層になったヨゴレに埋もれて、どこがどうなってるやら分からないような箇所がたくさん出てきました。
 正確な寸法も採りにくいし、埋もれてしまっている深刻な損傷個所があるかもしれません。
 楽器の原状把握のためにも、とりあえずあちこち、軽く清掃しておこうと思います。

 イキナリ本体部分から手を付けるのも少し不安がありますんで。
 まずはこの糸巻あたりからやってゆきましょうか。

 石のように固まったホコリとヨゴレが、握りの部分にびっしりと付着しています。
 木地にどんな染料が使われてるか分かりませんから、洗浄液ではなく、まずは「ただの水」で洗ってゆきましょう。
 ふだん洗浄に使っている重曹水はアルカリ性ですし、染料によっては中性洗剤で簡単に落ちちゃうようなものもありますからね。

 歯ブラシに水をつけてはゴシゴシ。
 木部になるべく負担をかけたくないので、ヨゴレが浮いたらすぐ拭う、のを繰返します。

 ここもけっこうカジられちゃってたみたいですね。
 六角形になった握りの部分の、角のところが何箇所か、丸くなるくらいまで減らされちゃってます。

 ひとまず作業してみたところ。
 かっちり固まって層になってるところも、作業をこまめに繰り返せば、ふやけてふつうにとれてくれるようですし。
 とりあえずは木地からの染料の沁み出しや、表面の過剰な変化や変色もないようです----「ただの水」で正解だったようですね。

 では、ほかのところも同じ方法でやっていきましょう。

 まずは棹。
 指板の表面を覆っていたヨゴレの下から、フレット痕が出てきました。
 元は山口と第1フレット間に、清楽月琴にはない追加のフレットが付けられていたみたいですね。
 下の3箇所と工作の様子が違うんで、これは後補。ほかの3箇所は、ほぼオリジナル通りの位置にあったようです。

 糸倉も洗ってゆきます。
 前面部分にかなりぶ厚くヨゴレが堆積していました----この楽器を壁からぶる下げて吊るしておくと、いちばんホコリがつくような部分ですね。
 ここの付け根部分が、ネズミによる食害のもっとも酷い箇所となります。

 楽器に向かって左がわ、糸倉部分の根もとのふくらんでいるあたりの食害がいちばんヒドいですね。
 前面部分は完全に角がなくなっちゃってますし、うなじ方向からも浅く齧り減らされてエグれています。

 右がわは左ほどではないものの、付け根のところの角がけっこう深く齧られてるほか、楽器前面部分の先端方向にも何箇所か小規模な食害があります。
 うなじのところ、絃池の端っこのところも少し食われてますね。このくらいならブツけて欠けたのと同じようなものなので、このままでもいいんですが…いや良くないか。実際手に持ってみると、指の腹が少し引っかかりますね。

 続いてはいよいよ大物----表板と側板を洗います。
 お飾りやフレットの位置、損傷個所などはすでに記録済みですから、そのまま修理開始できるくらいまで、完全に分解してしまいましょうね。

 その前に。
 なんか律儀にくっついてくれちゃってた側板一枚、これははずしちゃいましょう。
 この後の作業、これだけへっついてるような状態だと、かえって邪魔になっちゃいますからね。

 ここからはいつものとおり----表板上に接着されているものをぜんぶハガしてゆきます。

 お飾りの周囲や接着痕の上から、筆でお湯を刷き、濡らした脱脂綿をかぶせて、1~2時間ほど置きます。
 乾燥防止と、余計なとこまで水気が広がらないように、上から散切ったラップをかけておくといいですよ。

 ちなみにこの表板は、工房到着時には右がわの継目から2枚に割れちゃってたのですが、調査のとき、そのままだといろいろとやりにくかったので、現在は裏からマスキングテープでがっちり仮止めしてあります。

 古いものですから、部材への負担は少ないほうがいいので。
 順不同、はずれるとこからはずれるモノはさッさとはずし、接着痕をこそいで古い接着剤を除去してゆきます。
 中心部分は扇飾りを除いて、接着はニカワ。
 撥布(皮)部分には、裏打ち紙の残片と思われるものがへっついていました。ここの接着はたぶんフノリかでんぷん糊だったようですね。

 半月まで一気にいッちゃいます。
 今回は表板が板一枚の状態なので、ちょっとしたスキマがあればそこにお湯を挿し、あとは板をたわめたり戻したりすることで、効率的に接着部に水分を行き渡らせ、比較的早くニカワを緩めることができました。

 半月の内ポケットや透かし彫りの間なんかにも、けっこうな量のホコリが真っ黒になって詰まってましたあ。(ううう)そのあたりも、歯ブラシや硬めの筆なんかでキレイにこそげ出します。

 とりはずした部品は、さッと洗って乾かしておきます。

 胴中央の凍石飾りが半カケになっているのと、半月下に小さな虫食いが見つかった以外、表板上に残っていた部材に深刻な損傷は発見されませんでした。 2枚だけ残ってたフレットは象牙製のようですが、取付がやや斜めになっていたり、接着が雑だったりしたので、ほかの凍石製お飾り同様、これもオリジナルの部品だったのかは不明です。


 最後に残ったのが、この左右のニラミ。
 スキマはあるのに、お湯をふくませても緩まず----これ、明らかにニカワではない接着剤が使われてますね。
 まあ、接着剤がユルまなくても、下が桐ですからね。
 木地が水を含んで柔らかくなれば、早晩自然にはずれるのではありますが、そんな悠長にやってると変なシミが出来ちゃったりもしますんで。ある程度ふやかしたところで、クリアフォルダを細長く切ったものを挿しこんでゴシゴシと挽き切ります。

 接着痕にはきわめて硬質な、黒い物質が残っていました。
 扇飾りのところでも同じのがあったので、予想はしてたんですが----これ、ウルシですね。

 取り外したお飾り類を洗って裏を見てみますと…あれだけ濡らしたのに、硬くてガッチガチのガッサガサです。
 ウルシは主に塗料として用いられるものですが、実は樹脂系の接着剤としては最強のものの一つなんですよ。
 乾燥・硬化が極端に遅いという欠点はあるものの、いちど固まってしまえば、耐水・耐油・耐薬品、ある程度の高温にも耐えますし、密着していて空気の入らない場所に使われていたら、劣化もほとんどしません----まあ、ちゃんとくっついてれば、なんですが。

 唐木屋のやるような仕事ではないので、お飾りポロリにブチ切れた前所有者のシワザだとは思いますが。
 接着面の擦合せとかウルシを染ませる下処理とかぜんぜんやらないで、ペッと塗ってベッとへッつけただけらしく。ほんの一部しかくっついてなかったのが幸いしました。ウルシの接着は超強力なんで、このていどのお飾り板なら、ほんの数箇所断片的に付いてただけでも、ちョッとやそッとじゃはずれないでしょうねえ………実際これをハガすのに苦労しましたから。
 もしこの作業者が律義者で。ちゃんと手順を踏み、ガッツリガッチリ接着されてたらと思うと…ぞッとしますねえ。

 さあて、邪魔なものはぜんぶはずせました。
 作業箇所が乾いて変なシミが出来ないうちに、ざっと清掃してしまいましょう。
 洗浄液は定番の、お湯に重曹を溶かしたものでまいります。

 スポンジ系の研磨材を洗浄液に浸してはコシコシ。浮き出た汁はすぐに拭います。
 ----これまた、手ごわいですね。
 ここもヨゴレがけっこうな層になっていて、なかなか木地までたどりつけません。
 一箇所に時間がかかるので、へたに作業範囲を広げると板への負担が大きくなりそうです。
 ちまちまと、少しづつ除いてゆくほかありません。

 ----なんとか終わりました。
 まだなんかちょっと薄汚れていますが。この段階では見栄え的に「キレイにする」必要はありません。調査計測とこの後の作業に支障がないというくらいでイイので……まあそれでもけっこうタイヘンでしたよ、いつもの作業と比べて。

 粘性のあるヨゴレではなかったんですが、とにかく硬くて頑丈でしたね。ほぼ全体均一に層になってましたし。
 表板自体は、縁の鼠害とすでに割れて分離している部分以外、小さな割れが数箇所見つかったくらいで、大きな虫食い等もなく、あのまっくろくろすけだった状態にしては、かなり健全で良好な保存状態と言えそうです。

 あとは胴側版ですね。
 こちらはヨゴレにムラがあります。
 棹のささっている天の側板は全面真っ黒ですが、左右は上がわ半分がひどく下半分はそれほどでもありません。
 地の側板なんかはあんまり汚れてませんね。
 天の板から。作業前はこんな感じです。

 こちらが作業後。

 驚愕のびふぉーあふたぁですねえ(w)
 下地はロウか油で保護されてたらしく、軽く磨いたら、ヨゴレの下からほぼ当時色の表面が出てきました。
 あ、洗浄液はまた「ただの水」に戻していますよ。

 では、今回はこのへんで----
(つづく)


痩蘭斎旧蔵月琴01 (1)

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斗酒庵,縁ありて修理いたす の巻2025.9~ 痩蘭斎旧蔵月琴01 (1)

STEP1 小春日和も穏やかならず

 さてもさてさて、縁とは奇なるかな----
 先年、お亡くなりなられたさる先生のところで、未修理のまま所蔵されていた楽器が3面。
 めぐりめぐって庵主の許へとやってまいりました。

 楽器として生まれ、使われなくなり打ち捨てられて。ふたたび世に出ぬまま朽ちるも惜しとのことで、不肖斗酒庵、微力を尽くし、明治の音色を後世に伝えたき所存----とまあ、夏の帰省の果ててよりなお暑き日の続くものの、なんとか作業のできそうになった今日このごろ。

 秋の修理作業、再開です!

 まず手をつけるのは、3面のうちいちばんヒドい状態のヤツ----うん、分かりやすくバラバラですね。
 でもね、いつも言ってるように、古物の楽器はたいていキレイなほうが厄介なんです。
 逆に言うならこんなふうに、ヨゴレまくってぶッ壊れてるほうが健全、だと言えるかもしれません。
 楽器はふつうたいせつにされるモノなので、「百年前の楽器」が「キレイな状態」であってもおかしいこたぁないだろう…とピンとこないかもしれませんが、これが「百年前のトンカチ」ならどうでしょう?
 使われてキズだらけで、柄も何度も取り換えられて、もしかしたら打面がすこしツブれてたりするかもしれません。
 楽器には美術品的な側面があるとはいえ、基本的には「道具」の一つ----「実用品」なんです。百年前のトンカチが新品同様だったら、それは故あって「使われなかった」デッドストック品か、あるいはクギ打とうとすれば頭がトぶとか、丑の○詣りに使われてたとかいうような、危険な不良品、つまりは、そもそも何らかの問題があって「使いものにならない」モノだった可能性があります。
 そうでなければ、あなたがソレを手に取る直前に、古物屋がイラんお節介発揮して「キレイにしてしまった」可能性がありますな。

 その点、これは大丈夫。

 「ちゃんと」コワれてますので。

 あとは原作者か前所有者がなんかやらかしてる可能性はあるものの。
 見たところ誰ぞが「直そう」とした形跡はナシ----壊れてからは誰も手出しをしてない。つまりは「余計な手が入っていない」わけですな。
 正直、楽器として使われたことによる「故障」より、その楽器と直接関係のない後人の、そういう「余計なお世話」にからむ諸事態のほうが、「直す」のはタイヘンなんすよ。

 んではまず軽く、いろんなとこを見てゆきましょうかね。

 まあ、ざっとながめただけで、庵主、作者とか思い到っちゃってますが----たとえばこの特徴的な響き線。

 日本橋本石町「唐木屋」の楽器ですな。
 ソ連の国旗にあった鎌のカタチに似た、深いアールの響き線。
 (本石町「唐木屋」の歴史については こちら。唐木屋の楽器の製造者については こちら。)

 そして棹が細く、糸倉薄く、なかごが細い…作者は唐木屋所属二人の職人のうちの「唐木屋A」(推定正体:栗本桂五郎、上野黒門町)ですね。

 現状、表面板に側板が1枚、なんとかくっついているだけで、ほか、表裏面板はどちらも割れてますし、胴も棹もほぼ完全にバラバラな状態になっています。

 あとは糸倉の付け根のあたりとか、あちこちネズミにカジられちゃってますね。
 ----おのれURA安とMK張に棲まいし忌まわしき獣!アハっ!

 オマケに、あッちもこッちも、積もり積もって固まったヨゴレで、まっくろくろすけでござんす。

 とはいえ、ひのふの…と、残っている部材をチェックしてみますと。この木材の山を楽器として再生させるうえで必要な部品は、棹上の山口(トップナット)を除き、最低限いちおう一通りそろってるようです。

 面板の縁なんかも、あちこちネズミにカジカジされちゃってるようですが、いづれもそれほど深い傷ではなく。ほかにも割れたりヒビが入っていたりというような、部材の強度に深刻な影響の出るような損傷はないようです。
 あとはとにかく「ヒドくヨゴれている」というのが辛悩ですな。

 欠品は、蓮頭、糸巻2本、山口、棹上のフレット全部と、胴上フレット3枚、ってとこです。

 唐木屋の楽器ではあまり見たことのない、派手でデカめな凍石飾りが3つばかり付いてたようですが、本来第5・6フレット間にあるはずの扇飾りが、胴中心のほうに、不自然なかたちで移動させられていることからも推測されるように、この扇飾りとニラミのほかのお飾りは、ぜんぶ後付けのモノだと思いますねぇ。

 また半月も、唐木屋の楽器ではあまり見ないタイプ(唐木屋の半月は基本的に、単純な板状)なんで、これも他の楽器からの移植物であったかもしれません。

 前所有者のシワザと思われる痕跡はこんなところにも----

 胴上、第5・6フレット(上画像だと2・4つめ)間に、もう1枚、へッつけた痕跡がありますね。棹上の山口と第1フレットの間にも工作痕があります。これらは西洋音階開放C/Gだと、#/Bb、Bb/F2にあたる箇所です。後者のほうは庵主のウサ琴でも追加してますね。でもまあ、工作的に見ると正しい音階の位置に付けられてるとは思えず、なんにゃらとにかく均等音階みたいなのにしたかっただけかもしれませんね。

 あと、指板部分にはごく薄い唐木の板が貼ってあるんですが。これの山口(トップナット)が接着されてたと思われる箇所がさらに薄く削られ、段になっています。

 これは庵主が「名古屋式」と呼んでいる工作で、林鶴寿堂など、名古屋の楽器屋さん作の楽器で良く見かけるのと同じものですね。

 唐木は接着が悪いので、指板にニカワで貼りつけただけの山口やフレットが、ポロリしてしまうことは良くあります。フレットの1~2枚ならまだいいんですが、トップナットが飛んでしまうと、あたりまえのことながら、弦楽器としてまったく使えない状態となってしまいますね。
 名古屋式の工作は、そうした山口の接着固定への不安から生まれたものと考えられます。
 指板のところにこうした段をこさえ、そこに埋め込むように接着する。指板の木口もちょっとした支えになりますし、指板の下の棹材は、たいていは唐木より接着が良いはずですから、よりしっかり固定することができる----と、いうようなモクロミだったと思われるんですが。
 まあ、山口自体の材質が、その「接着の悪い」唐木だったり、あるいは「もっと接着の悪い」象牙だったりするんですから、けっきょくのところそれほどの効果はありませんね。実際、この工作をされてる楽器での山口残存率は、そうでないものと変わりませんわい。どっちもよーなくなっとります。

 相応の時間と手間をかけて、ニカワをじっくりしませてくっつけたほうが、よっぽどはずれませんですじゃよ。

 庵主は、唐木屋の楽器で同様の工作がされている例をほかに見たことがありませんし。指板を薄皮一枚残すというのも、意味が分からない。そして工作部分の表面加工がちょっと粗くて素人くさいので、前所有者の手になる魔改造の一つではないかと思います。



 とりあえず計測・記録をはじめたものの。
 各部ヨゴレがむちゃ酷すぎ、ヨゴレに埋もれて状態が分かんなくなっちゃってたり、寸法が測れなくなっている部分が多すぎます!
 こりゃ、まずは軽く、清掃しなきゃですね。
 というところで、次回に続く----
(つづく)


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