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痩蘭斎旧蔵月琴01 (4)

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斗酒庵,縁ありて修理いたす の巻2025.9~ 痩蘭斎旧蔵月琴01 (4)

STEP4 襤褸着一枚足る身とて

 さて、表裏板と側板の一次清掃内桁の補修補強も、響き線のお手入れもだいたい終わりましたので。
 いよいよ胴体を組み立てていきましょう。

 組立ての際の基準となる表板は、小板の接ぎ目からぱっくり二枚に割れちゃってます。ここまでは、マスキングテープで仮止めして使ってきましたが、まずはこれを一枚に戻しましょう。
 接ぎ面端っこのほうに、ごく軽微な虫食いがありましたが、割れた原因はこれではなく、劣悪な保存状態によって、ごく自然に剥離したもののようです。接ぎ面自体は、全体的にキレイな状態だったので、ちょっとした凸凹を桐塑で軽く埋め込んでから接ぎ直します----カモン!簡易接ぎ台くん・スーパーデラックス!

 まあ、いつもの、作業台の板にビニール袋かぶせて、クランプで角材固定しただけのやつですがね。

 作業中に数箇所、板の端のほうに小さな割れが見つかったので、このあたりは一枚に接ぎ直した後、ニカワを流し込んで順次補修しておきました。

 表板がしっかり一枚になったところで、ここに部品を接着してゆくわけですね。
 最初にくっつけるのは、棹口のある天の板からです。
 原作者による中心線や、そのほかの部品の接着位置を示すような目印も、あちこちについてはいますが、量産器だとこういうのに必ずしも信用がおけないので。すべてあらためて測り直した上で、最終的には仮組した際の実物合わせで、胴体と棹の中心線が合う、最適の位置を探ってゆきます。

 天の板が確実に固定されたところで、左右、そして最後に地の板と接着してゆきます。
 経年の歪みや狂いは、この地の板のところで消化するとしましょう。

 この場合、地の板左右の接合部を削ったり足したりして、寸法の辻褄を合わせるわけですが、今回はけっきょくぜんぶ合わせても1ミリほども削りませんでしたね。
 木肌も見えないくらい真っ黒で、部材ぜんぶバラッバラという劣悪な保存状態で、何十年か放置されていたにも関わらずですよ----量産機とはいえ、良く乾燥していて狂いの少ない木が使われてるようですし、作者もちゃんと木取りのできる良い腕の人だったみたいですよ。

 周縁部が組みあがったところで、つぎは内桁を組み込んでゆきましょう。

 とはいえ胴四方接合部の補強もあるんで、まずは上桁だけです。
 この楽器の内桁は、基本的には側板の内がわに接着しているだけという、もっとも単純な工作ですが、上桁の場合は響き線の基部とその反対がわにある木片に懸けるようにわたされており、いちおう木口とここに触れる部分の二方向から固定されるカタチにはなってます。のりしろはどちらもせまいものの、きちんと接着されていれば、そう簡単にはずれることもないでしょう。

 接着面にニカワを塗ります。このときメインの接着箇所となる木口面は吸い込みが良いので、接着前に薄めに溶いたニカワをじゅうぶん吸わせていちど完全に乾かし、ある程度の滲みみ止めをしておいたほうが、接着不良の心配がよりなくなって良いですよ。

 板との接着面にも、じゅうぶんにニカワをふくませ、クランプや当て木で固定して、スキマなく密着させます。
 「構造の要(かなめ)」と言っていい部品ですからね。
 外からは見えなくなるとこですが、それだけに逆に、見えなくっても大丈夫なくらい丁寧な仕事を心がけましょう。

 二三日置いて、上桁が完全に固定されたのを確認。
 続いて、胴四方の接合部の補強をします。
 この部分がしっかり接合されているかどうかも、この楽器の楽器としての基本性能に大きな影響があります。
 単純なハナシ、ここの接合にスキマがあればそこで音の伝導は止まっちゃうわけですから。4つの部材が密着して、1本の輪っかのようになっているのが理想なのです。
 庵主自作のウサ琴が、オリジナルの月琴にくらべ素材や寸法で分が悪いハズなのに、オリジナルの月琴よりデカい音でキレイに鳴る理由の一つも、この胴の側面部分が、ほぼモノコック構造、一枚板の輪っかで出来てるからなんですね。

 この楽器の側面接合部は、凸凹の組継ぎとなっています。ほかのメーカーのものだと、外側からはピッタリ組み合わさって見えるものの、内側がスカスカ、スキマだらけだったりしますが、今回はオリジナルの工作が良いのでスキマも少なく、いつもほどガッツリやらなくても大丈夫のようです。

 まずは接合部裏側を桐塑で埋め込み、小さなスキマをふさぎ、裏面の凸凹を均します。

 つぎに部材を渡るように、薄くて丈夫な和紙をニカワで重ね貼り、柿渋を塗って防虫・補強をしておきます。

 下桁は接着位置がちょうどこの接合部にかかるため、作業は接合部の補強作業終了待ちとなっております。

 こちらには上桁のような支えはないので、接着面となる左右端を、側面内壁の曲面に合わせて慎重に整形します。
 接着は上桁と同じ。クランプと当て木で、上からも軽く圧をかけつつ、定位置に固定します。

 ほぼ同時進行で、棹の組み立てとフィッティングも開始です。
 まずは指板の補作と接着。
 オリジナルの指板は、山口のあたりをネズミに食い荒らされてたのと、前使用者の魔改造により傷みが激しいので、手持ちの唐木板で新しいのを作ることとなりました。

 手持ちの材料にオリジナルに近いものがなかったので、紫檀から黒檀になっちゃいましたが、たぶんこの板のほうが質は若干高いと思いますよ。
 厚みをそろえてから、だいたいのカタチに切り抜き、各種テープと輪ゴムでふン縛り、固定して接着します。

 接着後、棹からハミ出た部分を削る…のですが……うん、このくびれたところが難しいですねえ。ハマグリ(根付なんか作る時のヤスリ)があって本当によかった。

 まずまずキレイに仕上がりました。

 次に棹なかご、延長材を接着すれば棹は完成、なんですが。
 前使用者はどうやら棹と胴の水平面を面一に----つまり胴から竿先までを平らかまっつぐにしたかったらしく、棹基部や延長材に数多くのスペーサを接着して調整しています。

 庵主としましてはとりあえず、ここらを製造当初のカタチに戻し、原作段階での設定がどのようなものであったのかを調べてから、再度調整を考えてみようと思います。まずはこの、ゴテゴテへっつけられた薄板はぜんぶひっぺがしちゃいましょうね!!

 スペーサをぜんぶハガしたところ、延長材の先端に前使用者が削ったヘコミとかも見つかりました。削って足してと…お忙しいことですなあ。ここは樹脂と木粉のパテで埋めて、加工前のラインを復活させておきましょう。

 こうしてスペーサをハガしエグレを埋めた状態で、仮組みして測ってみますと、原作者による元々の設定は、棹なかごの上面(表板がわ)が表板とほぼ平行、棹本体は山口のあたりで3~5ミリ、背がわに傾くという、この楽器の理想値にほぼ近いものだったことが分かります。

 前使用者に棹基部(胴体と触れる部分)も少し削られちゃってるようなんで、この後も微調整は必要ですが、とりあえずはこのまま組み立てて問題ないようですね。
 棹と延長材にマスキングテープを貼って目印をつけ、新しく中心線を出してから、これに合わせた位置で接着・固定します。

 棹がととのったところで、胴体側の棹口と内桁の孔を棹なかごに合わせて調整・加工。また、棹口に原作段階の加工不良によるヘコミが見つかったので、ここもパテ埋めしておきます----こういう小さなところをきちんとしとかないと、この後の調整に支障が出ますからね。

 ううむ、こうして見てきますと今回の「修理」、どうやら庵主の仕事は基本的に、前使用者の「やらかし」を是正して、楽器を「原作状態に戻す」ことになっちゃうみたいですねえ。

 では、今回はこのへんで----
(つづく)


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