「明清楽復元曲一覧」 部分更新!!

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斗酒庵 夏休みのしくだい発表 の巻「明清楽復元曲一覧」 部分更新!!

 さて,庵主は毎年,春先と夏の帰省時に,データベースへの入力や研究のまとめをやってるんですが。

 最初に入力する時は,ただひたすらに入れ込んじゃればイイものの,データベースってのは,大きくなればなるだけ,個々のデータ間に関係性が出てきて複雑になり,改訂が難しくなってゆくもんです。
 春先の帰省時の作業で,連山派の基本楽譜『声光詞譜』の楽曲についての記事を書き終わり。これで清楽・明清楽の東西の二大流派,渓派と連山派の基本的な曲目については,だいたい網羅しえたのですが。前回までの作業では,各楽曲の「器楽」の部分,なによりも各曲の曲調の基本的な目安となる「標準譜」の作成に重点を置いていたのと,とにかくデータベースとしての体裁を構築するため先を急いだもので。「歌」のついてる曲について,その歌詞や意味についてのあたりはかなりすッとばしました。
 今回からは,そうした「歌」のついてる曲の歌詞の部分。その意味や発音などを語学や民俗学のほうから調べて増強していきたいと思います。

 最後に入力した『声光詞譜』の記事が,フォーマットとしてある程度完成していますので。そちらの記事を基点にして内容を増強し,そこから係累のある過去記事を改訂してゆくカタチにしました。ほんとうはどの記事を一見さんで訪れても同じように理解できるよう,ぜんぶ均等にやってゆきたいのですが,ワタシの寿命と個人作業の労力を考えますと,このあたりが限界かと(w)

 まあ単純にやってもけっこうな分量になるのと,いままで別個に入力してきた,それぞれの流派の記事を擦り合わせる必要もありますんで,そんなにポイポイとは進めませんね。

 今回は『声光詞譜』天・地・人巻の2冊目地巻までの歌曲が中心。
 「金線花」とか「将軍令」みたいな長めの曲までは届きませんでしたが,「九連環」「算命曲」「茉莉花」「紗窓」といったメジャーどころについては,だいたいまとめられました。

 まず各曲解説の曲調復元部分----ここに関しては些少の訂正を加えたほかは,ほとんど手を付けていません。各派複数の版本における工尺譜およびその付点の比較,近世譜への起譜,符号譜や五線譜など,標準的な曲調の復元に関して有用な情報はなるべく取り上げてあります。

 それぞれの派で,その楽曲がどのような曲調で弾かれていたか,分かる限りの資料を駆使して,当時の誰が聞いてもその曲だと分かるような,基本的で「標準的な」メロディラインをさぐってゆきます。この「標準譜」がないと,どの資料がどう間違ってるのか,とか,記録された譜の個人的なアレンジの範囲はどうなのかとかも区別がつけられませんからね。
 今回の改定ではまず,前回までに制定したこの「標準譜」と,歌詞との関係を視覚化するところからはじめてます。曲のどの音「符」が,歌詞のどの語に割り振られるのか,というのを「符割り」と言いますが,これを1拍1マスの表仕立てにしたものを付けました。

 庵主が純粋に音楽畑のヒトだったら,ぜんぶ五線譜に起こしちゃえば済むことだとは思いますが,オタマジャクシの行列がメロディに見えるほどの修業は積んでませんもので(w)。この工尺符字と歌詞をマス目で区切って表示するやりかたは,明楽の楽譜のほか,関西大のアーカイブで公開されている遠山荷塘の『嫦娥清韻』などでも用いられてますね。
 どう考えてもややこしくなる点打ち式の付点法に比べると,分かりやすい点もあるんですが,けっこう描くのが面倒くさいのもあって,清楽家の間では普及しなかったようです。

 次に歌詞の全文とその読みを追加しました。
 前回までは漢字の部分とフリガナを別枠で横に並べていたんですが,今回はいちおうフリガナっぽく見えるよう,上下に配置しています。
 さすがにルビみたいに,漢字とカナの位置をぴったり合わせるとこまではできませんが,まあこれで少し見やすくはなったかと。

 続いて語釈の部分を大幅増強。
 清楽家のほとんどは,中国音楽の専門家でもなければ中国語の専門家でも民俗学者でもありませんから,歌詞に関しては文字も意味もかなりテキトウです。もともとの歌詞の意味も知らないで書き写すものだから,伝言ゲームの間に違う字になってたり読みになってたり,しまいには分んなくなったところを捏造してたりで散々です。
 庵主はもともと中国方面のほうが専門ですから,大陸の古い資料なんかも駆使して,なるべく歌詞のもともとの意味に迫れるよう,いろいろと調べてみてますので,日本での通説や過去の解釈なんかとは違ってる部分も多々出て来てます,あしからず。

 そして最後に日本語訳。
 原歌詞の「正確な意味」については語釈を参考にしてもらうとして,日本語の訳詩はその大意をとって,なるべく「歌えるように」組んであります。
 そう----原曲のメロディで「日本語で」歌ったならこんな感じかな~,と。
 「紗窓」なんかは歌詞が漢詩ですからね。訳すのなら書き下しでいいんでしょうが,中国の歌は基本ライムです。いまでは唐詩をリリックにビートを叩きつけるムキも珍しくありませんが,庵主が『中国のマザーグース』を訳したころには,「らいむ?----押韻ってなーに。」って感じで,ラップもヒップホップもまだそんなに一般的じゃなく,日本語でライムして訳したのにあんまり気づいてもらえませんでしたねー。
 まあどれもこれもライムしたわけではありませんが,原歌詞の抑揚になるべく合うように訳すのは,それはそれで面白かったですよ。

 各記事,かなりの分量がありますので,必要なところだけ飛ばし読みしてお楽しみください。とうぜんMIDIやMP3での再現も付いてますので,なんなら耳でもお楽しみあれ。

「明清楽復元曲一覧」
  http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html

  -渓派『清風雅譜』『清風柱礎』
  -連山派『声光詞譜』

----の各書項目,曲目一覧から曲のタイトル部分をクリックすると,各記事へ跳べます。

「清楽曲曲譜リスト」
  http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/LIST.html

  上掲同書の各項目末「リンク」のところにある「解説」をクリック。

 どっちからでも飛べます。
 最初のほうに書いたように,まだ全面改訂ではありません。ぜんぜん改訂されてない記事もたくさんありますが,そのあたりの更新も追々やってゆきますので,これからもよろしくお願いいたします。

清楽月琴WS@亀戸 2023年6月!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2023年 月琴WS@亀戸!6月!!!


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 ろくがつ場所 のお知らせ-*


 (たぶん)霖雨蕭々たる梅雨の暇の2023年6月,清楽月琴ワ-クショップは,24日(土)の開催予定です!

 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。
 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼さがりの大開催。
 美味しい飲み物・ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか阮咸とか),やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。個別指導・相談事は早めの時間帯のほうが空いてて Good です。あと修理楽器持込む場合は,事前にご連絡いただけるとサイワイ。雨の時期なんで楽器,濡らしたくないですからね~。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 いきおくれのウサ琴EX2。(w)
 お嫁入りさき募集中です!
 うむ,がんじょう。それなりに弾きまくったので響きもあがってきましたよ。板が薄いせいか,楽器の育つのがちょいと早いですね。2年も弾いたら,かなりすごいことになるんじゃないかな?
 清楽月琴の上澄み技術でこさえた1本,ぜひWSにてお試しください。

月琴WS@亀戸 2023年3月!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2023年 月琴WS@亀戸!3月!!


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 やよい場所 のお知らせ-*


 2023年,3月の清楽月琴ワ-クショップは,18日(土)の開催予定です!

 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。
 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 もう咲いてるかな?サクラさかりのお昼さがりの大開催。
 美味しい飲み物・ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか阮咸とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。相談事は早めの時間帯のほうが空いててGoodです。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 いきおくれのウサ琴EX2。(w)
 お嫁入りさき募集中です!
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『声光詞譜』電子版 補遺6曲公開!

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斗酒庵 告知 の巻『声光詞譜』電子版 補遺6曲 復元楽曲と解説を公開!!


 今回復元した補遺6曲は,明治6年の『声光詞譜』には載っていない曲です。

 明治10年に出された,山本小三郎の『月琴手引草』(1枚刷り)と吉見重三郎『明清楽譜』(雪月花3冊)は,タイトルは違ってますが,内容は実質『声光詞譜』と同じで,本の最初のほうにある内題にも「声光詞譜」と銘打っています。要は本の内容をあッちからそッちうちしたもの。剽刻本とでも言いましょうか。
 ただ,この両書の巻末には,平井連山の『声光詞譜』には収録されていない譜が6曲収録されています。それぞれ版形も字組みも違いますが,各曲題も曲順も,譜の内容もほぼ一致しています。
 明治6年から10年の間に,この6曲を含んだ『声光詞譜』の増補改訂版が出てたのかもしれませんが,いまのところ不明ですね。
 明治17年に連山の妹・長原梅園とその息子の春田が出した,連山・梅園派の主要楽曲をまとめた第二楽譜集とも言うべき『清楽詞譜』にも,これらの曲はタイトルを変えて収録されてます。6曲中の3曲はいわゆる「裏曲」で,オモテにあたる曲と同時に演奏すると,あらふしぎ,かっこよく聞こえるよ!----というコンセプトの譜なのですが,もともと「○○(主曲の題)裏」となってたのを,この本では「秋籬香」とか「寒松吟」なんていう,一見してみやび~な感じに変えたりしてます。

 梅園の『清楽詞譜』が出た明治17年には,渓派でも中興・富田渓蓮斎が同派の第二楽譜集にあたる『清風柱礎』を刊行し,この前後には両派ともに楽譜の整理・統一や歌曲の音韻修正などをさかんに行っていたようです。まあ,どっちの「修整」も,もともと実は中国にも音楽にも大して詳しくないような酢豆腐連が,勢いにまかせてイロイロやらかしちゃったもンで----この時やったことのほとんどは,百年ちょいしてからその不正を庵主に暴かれてはプギャーされるハメになってますが。
 今回の6曲はそのはちゃめちゃ修整以前の譜ですんで,初期の連山派における演奏の様子がけっこう色濃く残ってる感じですね。

 1月なかばからほぼ1ヶ月,雪かきしながら組んでおりました。
 資料がそろわなかったものが多いので,標準化の作業までたどりついていないものがほとんどではありますが,閑時聊御笑納あれ。

『声光詞譜』電子版補遺
0)目 次
1)月 宮 調
2)耍 棋
3)松 風 流 水
4)茉 利 花 裏
5)平 板 調 裏
6)四 季 如 意 裏

(つづく)


連山派『声光詞譜』電子版(いちおう)完成!

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斗酒庵 告知 の巻『声光詞譜』電子版(いちおう)完成! 復元楽曲と解説を公開!!

 ----はいけい,ありまきねんがきますね。

 ことしのわたしのゆめはえふふ君です。
 あ,ぷぼ君もがばってね。

 なつやすみからこっち,かせぎ仕事のほかは,ずつと,このさぎょうやってまた。
 かなりへんたいだったでの,ねると,ねむるとやつがゆめにでてくるのです。

 これわ「もずべっろ」くん。

 いもうとの「えれがんとるびー」ちゃんもいたますよ~。

 おかしひ,ワタシのしってる「もずべっろ」くんはこんなんじゃなかったはずだ。
 あ,どうたいが…くびがへにょんとのびてぶらぶらおどってる。(SAN値判定 1d100=3)




 3年かかりましたねぇ…あ,いや,ずぅッとヤってたわけじゃなく。
 途切れとぎれの作業ではありましたが。
 ……長かったですねぇ。


 さて,清楽の楽譜「工尺譜」に使われている「符字」というのは,ドレミ…を「上尺工…」という漢字の羅列にあてはめただけのもので,書き込みがないと,基本その曲がどんな音階で進行するのかは分かりますが,それぞれの音が「どのくらいの長さ」かは分からない状態となっております。

 この「それぞれの音の長さ」を表わすために書きこまれる点とか記号が,「拍点」「付点」「符号」といったものなのですが。

 庵主がさいしょに取組んだ東京の「渓派」と,今回やった大阪の「連山派」とでは,その「音の長さを表わす」方法--付点法--が違っているんですね。

 ごくごくカンタンに解説しますと----

 渓派の付点法では,音が出てる間にタイコが3回鳴ったら,「タイコ3回分の長さの音」とします。
 曲がゆっくりで,音が長くなろうが,軽快な曲で音が短かろうが,「タイコ3回分の長さの音」はいつでも「タイコ3回分の長さの音」です。

 これに対して連山派の場合は,1・2・3…と心のフィーリングで数えて,たぶん3拍の長さだったら「3拍の長さの音」として,文字の横に点を3つ打ちます。1拍なら1つ,4拍なら4つですね。

 まあ分かりやすいっちゃあ,分かりやすい。

 渓派の譜は,基本的にごく数学的,数理的に読み解くことができるのですが,そのまま再現すると,人間味のないオルゴールみたいな音楽になっちゃうことがよくあります。
 これに対して連山派の方法は,長いところは長く短いところは短く記録されるので,いい意味で言うと,蝋管レコードとかみたいに,当時の人の演奏に近く再現されてるんですが。テンポやら拍子やらという概念がごくごくうす~くしかないために,「3拍だ」って書いてあるのをうかつに信じて,そのまんま五線譜とかにおこすと,拍子ズレまくりのはっちゃめっちゃな音楽にしかならない----そんなことが多々あるのです。

 そこで役に立つのが「符号譜」というもの。これは音の長さを「心のフィーリング」で数えるのさえメンドくさくなっちゃった人々(www)が,

 「あ,ここは "た~らら" でいいよね。」

----と,いう具合に。口拍子とか鼻歌で採った調子を,そのまンま「た~らら」って書くと何だか馬鹿っぽくて恥ずかしいので,「それっぽい記号」に換えて,楽譜に書きこむようになったものです。
 連山派の付点法だと,あたまから1音1音記録していくわけですから,「拍点の人」は----

 「えっと…これ何拍かな…2拍?3拍?あッ!と曲,進んじゃうよ!!」

とか,なりながらやってたのは間違いないところですが,これに対して「符号の人」は----

 「ふぅむ…ここは "た~らた~らたー" だ!」

みたいに。フレーズ単位で,あるていどまとめてやれますから「拍点の人」よりはラクで,すこし余裕を持って記録できたことでしょう。
 とはいえまあしょせん鼻歌ですんで。
 それぞれの音の「音楽的な」あるいは「(五線譜的な意味での)楽譜上の」正確な長さなんて分からないわけですが。
 拍点のヒトが「3・1・1拍」だと記録したところが,符号譜で「た~らら」となってたとき,「それ(拍点)がそう(符号)聞こえるか?」というところから,拍点で記録された音長関係----音の長さの組み合わせを,妥当かそうでないか判断する助けにはなります。



 今回の復元では,この二つの情報を組み合わせて,曲の骨子である楽譜の部分と,それを「音楽」にするための演出であるテンポの変化を再現しています。
 まだまだ資料が足りないので,曲調の「標準化」の部分では中途半端なところも多く残ってしまいましたが,歌付きの曲では,以前よりもそれっぽく復元することができるようになってると思いますよ。

 まずはお試しアレ。

 ELECTORICAL EDITED GENERAL TEXT OF "声光詞譜"

----こと,「連山派『声光詞譜』楽曲の復元と解説」へは-----

1)当ブログ左サイドメニュー>
  明清楽復元曲一覧>
  上端文字列の「連山派」を
  クリック(もしくは下スクロール)>
  >連山派『声光詞譜』M.11

 各楽曲の解説へは一覧表の曲題のところから飛べます。
 付点法等の詳しい解説は総目次のところ。連山派『声光詞譜』M.11の原書画像の横にリンクがあるほか,各曲の解説上下にある「TOP」のリンクからも飛べます。
 下にもリンク貼っちゃいましょう。

 「連山派『声光詞譜』楽曲の復元と解説」総目次へ

 このほか,上のように拙HP「斗酒庵茶房」TOPページの「明清楽復元曲一覧」のリンクから。あるいは「清楽曲譜リスト」内の明05『声光詞譜』のところからも飛べるようになっています。

 いづれはすでに公開済の資料や楽曲リストとも細かくリンクさせて,「清楽」「明清楽」の各楽曲の基本情報が,まとめて,かんたんに得られるようなデーターベースに仕上げたいところですが……まだまだお先が長ぅございますよぉ。

(つづく)


明笛について(30) 56号・巴山刻

MIN_30.txt
斗酒庵笛が長くなる呪いにかかる の巻明笛について30 56号・巴山銘

STEP1 長くなるノロイ

 なんと言いますか……ええ,また買っちゃいました。

 56本め(たぶん)の明笛は,竹でできてる部分の長さ(管長)がなんと 625!
 ここまでの最長は小山銘52号の575でしたから,一気に5センチも更新しちゃった----なんでしょうねえ,なんか買うたびに長くなってる気がするんですが,このままいくと数年後には1Mくらいある笛がきちゃいそうでし。
 とりあえずこの型の,長くて古い明清楽用の明笛は,当時の基本的な音階をほぼ直接的に知ることのできる大切な資料ですので。楽器自体が好きか嫌いかとか,庵主の腕前がどーとかいう問題じゃなく,超貴重なデータとしていくらあっても困ることはありません。(置き場以外www)

 お尻のほうのはなくなっちゃったみたいですが,唐木で作られた頭飾りがついています。

 先端開口部が七宝に透かし彫りされてますね。

 前にも書いたよう,『音楽雑誌』主宰・四竃訥次の本に記された「明笛の作りかた」の項目でも,ここはこういうふうにせい,となっているので,当時は定番の工作だったみたいです。
 材料が骨牙の場合は,他板で作って後ではめこんでますが,これは……一体かあ。 このカタい木を筒状にくり貫いたうえ,ここだけ残して透かし彫る…うわあぁ,NC旋盤でも貸してもらえない限り,ぜってぇにやりたくない。(w)
 工作は比較的丁寧なのですが,全体のカタチが少しいびつなのと,管の長さに対して短く,見た目のバランスが吊り合っていないこと。またこちら部分の接合部分の工作に,若干不自然さが感じられるので,これはオリジナルの部品ではなく,後補もしくはサイズの近いほかの笛から移植されたのではないかと考えてます。

 接合部を湿らせて抜いてみますと,管のほうの凸には糸ががんじがらめに巻付けられていました。
 糸を巻いて,ニカワかウルシでガチガチに固めたようですね。こっちの端から大きな割れが走っているので,その補修の一環だったかもしれませんが,現状見る限り,あまり効果はなかったみたいです。
 管頭に刻まれているのは白居易(白楽天)の「暮江吟」という詩ですね。刻まれてる文は----

 一道残陽舗水中,半江琴瑟半江紅。
 可憐九月初三夜,露似眞珠月似弓。

----ですが2句めの 「琴瑟(きんしつ:琴と瑟,どっちも楽器)「瑟瑟(しつしつ:水面の青く静かな様子を表す形容詞) の間違いですね。楽器なのであえてこうしたのかもしれませんが,あくまでも「紅」に対しての「瑟(青)」なので「琴瑟」だと意味無くなっちゃいますし,わざとやったにしては大して面白くもない(辛辣)。

 水面に一すじ陽の名残り,赤き川面もかた青鎮み。
 九月初三の夜はいとし,露は眞珠で弓の月。

 平安朝の方々だいすき『白氏文集』にも見える詩で,けっこういろんな物語や文章の下敷きになってます。一次水準の漢詩ですし,刻字も比較的読み取りやすい字体ですね。

 詩と行を換えて 「巴山刻」 と銘が切ってあります。同じ記銘の笛は以前にも見たことがありますが,実際手に取って扱うのは初めてですね。52・55号の小山銘よりは例が少ないですが,複数残っているとこからすると,それなりの数を作ってたとこなんじゃないかとは思いますよ。

 頭飾りと反対の端・管尾のほうは,飾りを取付ける凸状部分が除かれたうえに,開口部内がわが漏斗状に削られてしまっています。頭尾のお飾りをうしなった明笛でよく見られる修整ですが…端っこのほう,管の外径ギリギリまで広げられちゃってますねえ----ううむ,こっちがわのお飾り,どうやって取付けよう

 やや灰色に煤けちゃってますが,管内は比較的キレイ。ロウを流してあるか,あるいは生漆あたりを軽く刷いてはいるようですが,尺八や篠笛みたいに本格的な「塗り」が施されててるわけではなく,ほぼ素のままの竹の肌が見えてます。このあたりは大陸の笛子と同じ。明治後半になると,日本の笛と同じように内がわを塗りこめたものが主流になってきますので,これは比較的古いものか,あるいは古い形式で作られたものみたいですね。


STEP2 割れ笛をとじぶた

 例によってあっちこちバッキバキですようっひょー!

 各部の寸法や現在の損傷等を図にまとめてみました(クリックで別窓拡大)

 採寸結果の数字や状況をただまとめただけのものなので,縮尺にはなってませんからね。
 ふむ…明笛の場合,筒音(楽器の基音,全閉鎖時の音)は唄口から管の端っこまでではなく,裏孔までの寸法で決まります。管の全長625に対してこれが 310 てことは,この楽器の約半分は「お飾り」みたいなもの,というわけですね。

 ちょっと見そこそこ派手な割れかたはしていますが,頭部からの長い割れは,薄ヒビとなって唄口の横まで届いてはいるものの,このあたりではいまだ表面的なもので,唄口内部には影響ナシ。そのほか息向こうの縁の上端に薄ヒビが出てますが,これもさほどたいしたものじゃありません。

 笛は唄口がイノチ。
 逆に言うなら,唄口のあたりさえ無事なら,とりあえず音が出せる程度には回復します。
 笛専門のヒトに言わせると暴論かもせんですが,まあ庵主,専門じゃないので,修理前後の音質の違いとかニュアンスみたいのは分からんちんです----だいたい修理前に演奏可能な状態だったモノ,まずないですもんね。

 というわけで,さっそく作業に入りましょう。
 まずはなにより割れの処置ですね。
 いちばん大きな頭端からの割れを,唄口に近いまだ薄ヒビ状態のほうからとめてゆきます。

 例によって樹脂系の接着剤をエタノールで緩めたものを使います。竹の割れようとする力はハンパなものじゃないので,ここは強力な接着剤を使わなきゃなりません。伝統的な技法としてウルシで継いだような場合も同じですが,強力な接着剤にはそれなりのデメリットもありますので,そのあたりは充分に知ったうえでやる必要があります。頭が悪いとか不器用とかいう自覚のある方はけっして真似せんでくださいね。(w)
 ここの割れはとにかく長いのですが,上にも書いたとおり,唄口に近い部分がなんとかなっていれば,端のほうは楽器の機能上どうでもいいので,ガッチリくっついてればよし,割れ目の大きなところは痕が残っちゃっても構わないくらいの感じでやります。
 割れ目が大きく開いている端っこのほうは,そのまま樹脂を流し込んでも,ダバダバ管内に流れてくっつきません。樹脂の粘度を上げれば,あるていどは流れなくはなりますが,そうすると今度は,接着剤が割れの細部まで届かなくなっちゃいますので一計を案じます----前に唄口の再生をする時に使った工法の応用です。

 クリアフォルダを細長く切ったものを丸めてなかに挿しこみ,これを管内いっぱいに広げます。
 そして最初にゆるく溶いた接着剤,次に少し粘度をあげた接着剤を流し込んで充填し,締め上げて固定します。この方法でも内に多少あふれはしますが,そもそも反射壁のこっちがわは,中に多少凸凹があっても何ら問題はありませんし。割れの表裏にあふれたぶんが,ちょうどリベットみたいに」型に広がり,補修部分を補強してくれるのでかえってよいかと。

 このほか,反射壁の劣化箇所は蜜蝋を溶いたもので埋めました。内塗りがされてるものだと,ここも塗料でガッチリ塗りこめられちゃってますが,今回の楽器は日本の笛でよくあるようにここには蜜蝋が用いられてました。
 まあ篠笛とかだと蜜蝋を棒状にしたカタマリがつっこまれますが,これのは紙を丸めたものの表面部分を固めているだけですね。
 同じように内塗りのなかった51・52号では,ここだけ木糞ウルシでガッチガチに固めてました----けっこう工作の違いがあるもんです。

STEP3 飾りがうまぴょい

 頭飾りはいちおうあるわけですが,上にも書いたよう,すこしびみょーに合ってない感がありますので,今回もこさえるとします。
 ----かもん!めん棒!

 ぎゅ~~~ん!ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり!
 ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゅ~~~ん!!
(旋盤がなく手工具でやってるのがサミシイため,せめて音だけ口で再現しながら作業)

 はぁ…はあはあはあ。
歳なので余計なことをすると息が切れる)

 ぎゅ…ぎゅ~~~ん!げほげほ…ぎゅ~………
(アホなことを四畳半で独りやっている自分の姿がむなしくなり,以降黙り込む)

 ……………………う~うまぴょい
(悲しくなったのでうまぴょい伝説を聞きながら作業続行)

 …………できました。

 さすがに前修理者ほどの根性はないので,七宝部分は別材ハメこみで再現させていただきます。
 接合部分の工作痕から考えて,オリジナルはたぶん,元付いていた唐木製のものや55号についてたの同様,接ぎ目のところに段差のない,単純でスマートなタイプだったと思うのですが。今回はうちで定番の,リング状の段のあるタイプに変更します。お尻のほう,取付の凸がなくなっちゃってますので,スマートなやつだと付けられません。こちらのタイプなら,接合部が管径より少し大き目になりますから,リングの部分に管端をハメこむ凹を刻めます。


STEP4 後は任せろと言って,真っ先に逃げる派

 数日おいて,樹脂で継いだ部分を整形します。
 割れ目の締めても閉じきらなかったぶんが,多少見えてしまってますが,接着自体はバッチリ成功してますし。さらに目立たなくする工夫もないではないものの,庵主,明笛に関しては基本,音が出て,楽器として使用できれば問題ないので,あまり気になりません。

 また修理者として言うなら,対象が分野外の場合,前の人がどこをどうしたのか,こういうふうに分かるようになっていたほうが有難いですね。前から言ってますが庵主は糸物のヒトなので,あとは後世の竹人族に任せます~。

 あとは管の内外をカシューで塗り,表面を磨いて完成です。もともと生漆で拭いてあったようですので表面はその上から数度重ねたくらい。内塗りはたぶん施されてませんでしたが,今回した指孔部分の補修箇所保護のため,内がわも軽く一二回刷いておきました。

 最後に,管頭尾の飾りを取付けて完成!!

 頭飾りは元付いてたやつより若干長くしたものの,どちらも極力コンパクトに作りましたが,それでも 全長715…ううむ大陸の笛子なみの長さですね。現在,あちらのは多く,なかばから継ぎになってますが,当時手に入った天然竹の一節モノとしてもかなりギリギリな長さなんじゃないかと。


STEP5 頭のちょと軽いヤング

 試奏の結果は以下----

  ○ ■ ●●● ●●● 合 4Bb+30
  ○ ■ ●●● ●●○ 四 5C
  ○ ■ ●●● ●○○ 乙 5C#-5D
  ○ ■ ●●● ○●○ 上 5Eb-20
  ○ ■ ●●● ○○○ 上 5Eb+20
  ○ ■ ●●○ ○●○ 尺 5F
  ○ ■ ●●○ ○○○ 尺 5F
  ○ ■ ●○○ ○●○ 工 5G
  ○ ■ ●○○ ○○○ 工 5G
  ○ ■ ●○● ○●○ 凡 5G#+15
  ○ ■ ○●● ○●○ 凡 5G#-5A
  ○ ■ ○●● ○●● 凡 5G#-5A

 ちょっと微妙なとこもありますが,第3音がやや低めに感じるほかは,だいたい清楽の音階の範囲内かと。あと西洋音階にピッタリはまってるとこと,中間音が両方あるあたりは面白いですね。
 ----なんか,わざとこうしてる感もないではない。(w)
 呂音での最高は ○ ■ ○●● ●●● で,筒音のほぼぴったりオクターブ上,5Bb+25 が出ましたので,ピッチも問題はないようです。

 ただ……初見だとかなり吹きにくい笛ですねえ。
 唄口には問題はなく,唇の位置さえ決まれば,軽く音は出るのですが。その位置取りがけっこうシビアなうえ,うちにある他の明笛の標準とやや異なっており,わずかな差なんですが,マトモに音が出せるようになるまでちょいと苦労しました。

 まあ庵主の技量不足もあり,これはこれとして,慣れちゃえばさして問題はないでしょう。
 この現状の原因の一つとしては,ほかの明笛に比べ,管頭部分が極端に長いことがあげられるかもしれません。
 この笛はやや極端なヘッドヘビーになっているほうが,取り回しがラクなのですが。本器の頭部分は,長い割に中がすっからかんなため,軽すぎて勝手に動き,最適な構えを保持しにくい感じですね。古いタイプの明笛ではこうした場合,適度なバランスをとるために,管頭部分に鉛や鉄砂の重りが入れられてることがあります。もともと本器にそれが入っていたかどうかは不明ですが----いづれ入れてみるとしましょう。
 
(つづく)

明笛について(29) 54/55号

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斗酒庵性懲りもなく笛を買ふ の巻明笛について29 54号/55号

STEP1 Bamboo of the Princess Undine(Fake)

 さて,ひさしぶりの明笛の修理報告でごんす。
 いや~サボってると資料がどッか飛んだり,実物が(誰かに譲っちゃって)なくなったりしますからねえ。溜まらないうちに流しておきましょう。

 明笛54号 は,いつもの人工斑竹とはちょっと違い,おそらくは 「湘妃竹」 を模したと思われる大振りな斑点がついています。もちろん,これも薬品で焦がしたもので自然の模様ではありませんよ。

 「湘妃竹」というのは丸い同心円状の斑点のある竹材で,かなり稀少で高価なものです。まあ「湘妃竹を模した」といっても,正直ホンモノを見たことがあると似ても似つかないどころのレベルではないので,好く言って「ほンのお気持ち」程度ってとこでしょうか。

  ○ ■ ●●● ●●● 合 4B-35
  ○ ■ ●●● ●●○ 四 5C#-10
  ○ ■ ●●● ●○○ 乙 5Eb-40
  ○ ■ ●●● ○●○ 上 5E+27
  ○ ■ ●●● ○○○ 上 5E+30
  ○ ■ ●●○ ○●○ 尺 5F#+20
  ○ ■ ●●○ ○○○ 尺 5F#+25
  ○ ■ ●○○ ○●○ 工 5G#+30
  ○ ■ ●○○ ○○○ 工 5G#+32
  ○ ■ ●○● ○●○ 凡 5Bb~5B
  ○ ■ ○●● ○●○ 凡 5Bb+15
  ○ ■ ○●● ○●● 凡 5Bb+20

 呂音での最高音は ○●● ●●● もしくは ○○● ●●● で 5B+30清楽音階としてはそこそこそろってますが,西洋音階の曲を演ると部分的に「アレ?」っとなるような音はいくつかあります。
 全長535。やや太目の管体,唄口は少し大き目でしたが,響孔がやたらと小さく,竹紙を貼ってもあまり効果が出なかったですね。
 かなりキレイな状態で保存も良く,到着時にも管体に損傷はほとんどありませんでした。管内が少し煤けていたのと,管頭のお飾りに数箇所ネズミの齧った痕があったくらいですかね。

 ネズミの齧った痕は,唐木の粉をエポキで練って盛り付け,ちょちょいと補修。
 内塗りもしっかりしていましたし,唄口の加工も良くて実に吹きやすい笛。楽器としての出来は良かったのですが,「清楽の音階の資料」とするには少々作りが違うかな。大正時代のはじめぐらい---すでに清楽は廃れ姿的にも音的にも「清楽器らしい明笛」じゃなくて良くなってきたころ---の作じゃないかと思います。(譲渡済み)



STEP2 小山さんちのもう1本

 明笛55号 は「小山」銘----52号と同じ作者ですね。

 竹は古色が付きにくいので,材質の状態等からどっちが古いかとか分かりにくいのですが,管頭の飾りが良く見る明笛の典型的なラッパ状のものになっていること,また52号にはなかったしっかりした内塗りが施されていることなどから,これは清楽の流行とともに,日本の気候などに考慮して製作された楽器----つまり52号よりは後じゃないかな,とは考えております。
 管頭の刻字……李白の「早発白帝城」ですもんね。ポピュラー化の極み,第一水準の漢詩で,腐れ文人風味のある庵主だと,コレ使うの正直ちょっと恥ずかしいです。前作は文字もかなり奔放に彫られてて何書いてあるのか判別が難しかったのですが,それに比べると文字もかなり読みやすい字体になっていますね。(www)

 管尾の飾りが欠損していますが,この状態で全長644。
 管部分だけで564(飾り取付け部を含まず)これはここまで最長記録の52号とほとんど同じ…まあ作者が同じですからね。

 この長さの古い明笛がドレミ笛だった例は今のところないので,ほぼ間違いなく清楽に用いられた楽器と考えて良いでしょう。

 工房到着時はかなり汚れてて,管表は煤け管内も灰色の状態。棒の先にスポンジの欠片をくくりつけ,中性洗剤をしませたもので洗ったら,真っ黒な汁が出てきましたよ。
 管表も中性洗剤で洗って,すぐ拭き取り乾燥。
 ----かなりキレイになりました。

 欠損は管尾のお飾りだけですね。明笛の場合,筒音は飾り紐を通す裏孔の位置で決まるので,管尾のこのラッパは楽器としての性能を見るだけなら,まあ,あってもなくてもさほど問題ないのですが,無いとカッコ悪いのでさっさと作っちゃいましょう。

 52号では古典的なシンプルお飾りにしましたが,今回は管頭のに合わせて,よくある定番的なカタチので良いでしょう。
 材料は100均のめん棒。
 前に月琴の普通じゃないサイズの糸巻を削った時の余り材がありましたので,これで良いでしょう。長2センチくらいのものですからね。
 加工しやすい材とはいえ,旋盤がない状況で作るのはけっこうタイヘンな形状。だいたいの大きさに削ったところで切り離し,内孔をあけ,管尻の凸が入るようリーマーで広げてゆきます。
 表がわは裾に向かって少し広がる浅いラッパ型に。
 何度も言いますが,こういうの,旋盤なしで作るのはけっこうタイヘンなんですよ。(www)刃物やヤスリである程度のカタチにしたら,指とか棒にはめて,回しながら削って仕上げます。
 出来上がったら表面を磨いて,ジッパー付の小袋に入れてエタノにドボン。1時間ぐらい置いたところで,そのエタノでエポキを緩めてその中にドボン。水気のかかるところですし,小さくて薄い部品なので,表面に樹脂を浸透させて強化しておきます。

 こないだの52号は,前所有者によって唄口のところが「壊滅的に補修」されてしまっていましたので,掟破りの唄口再生手術でなんとか乗り切りましたが,今回の楽器もアレほどではないにせよ,唄口のところに若干手が入っています。

 孔のカタチ全体少し歪んじゃってますが,特に唇と反対がわ,音を出すのにいちばん大切な,息を切る縁の部分がなんか,上から見るとまっすぐになっちゃってます。
 ためしに吹いてみると現状でもまあ音は出るんですが,高音域がぜんぜんダメですね。スカーっと息が通り抜けちゃいます。ここは要再調整です。
 小山さんの明笛は姿が良いのですが,管体がやや細めな割に,デフォルトでは唄口がやや小さすぎるらしく,けっこうよくこうして所有者による加工・調整が施されているようです。
 唄口を少し大きくすれば吹きやすくなるのは確かなのですが,それをする加工技術がじゅうぶんにないと,52号の前修理者みたいに,却って笛を吹けないもの,吹きにくいものにしちゃうことにもなりかねません。
 この楽器もそういうのの一例かなあ----前所有者はこの作業をするのに,どうやら小刀の類を使ったようなのですが,ヤスリと違って刃物は竹の目に沿ってこそげてしまいがちですからね。小刀とかでも出来なくはない作業ではありますが,明笛の唄口は篠笛なんかよりずっと小さいので,かなりやりにくかったんだと思います。刃の背とか峰にあたる部分が,反対のほう,唇がわの縁に当っていくつもキズを付けてますね。
 まずはこの歪んだ孔の縁を整形しましょう。リューターやヤスリで軽く削って,これをきれいな楕円形に直します。
 孔の縁を塗り直してから吹いてみて----だいたいこれでも良かったんですが,孔の管頭がわのへりにほんのちょっとだけ前所有者の加工痕が残っちゃったので,ここから少し息が逸れちゃうようです。もういちど補修しましょう。

----上にも書いたように,これ,前所有者が孔を削った時についた刃物の背の当たり傷ですね。反対がわをゴリゴリ削るのに夢中になって,刃物の背が関係ないとこに当ってキズしてるのに気が付かなかった模様----浅慮者めが。ごく小さく浅いエグレではあるんですが,唄口ではこの程度でも音の出具合にかなり影響が出ます。
 まずは綿棒にエタノを付けてキズとその周辺を拭います。それからエポキ。
 ごく小さなキズなので木粉は混ぜず,そのままで使います。二液式のを練ってつまようじでちょんちょんと。

 硬化後に整形。でっぱってるぶんを刃物でざっと削り落として,リューターでコンパウンドつけたパフかけて均します。
 このていどのキズだと,恒久的なものでなくてよいなら蜜蝋の類を落として埋めたていどでも良いのですが,それやると,あとでちゃんと修理しようと思った時,いちど付けたロウがいろんなものをはじいちゃって大きな障害になっちゃうことが多いですね。伝統的な技法だと生漆を盛るか,もう少し大きなキズなら木糞漆で埋めたりするところですが,硬化に時間がかかるうえ,傷自体は小さいのでどうやっても周辺への巻き込み被害が大きくなっちゃいますね。

 わずかなヘコミでしたが,ここを埋めただけで,かなりラクに息が通るようになりました。うーむ,このあたりは糸物よりはるかにセンシチブ。

 生漆といえば,この唄口のところ,唇の付くあたり(上画像管の下側)が少し色濃く変色してるんですが。これは使ってるうちに表面が荒れたので生漆を塗って保護したんでしょうね。響孔のところに紙を貼った痕もしっかりついてましたし,それなりに使い込まれた楽器だったようです。

 修理の終わった笛を担いで,近所の橋の下へ。

  ○ ■ ●●● ●●● 合 4B-35
  ○ ■ ●●● ●●○ 四 5C#-10
  ○ ■ ●●● ●○○ 乙 5Eb-40
  ○ ■ ●●● ○●○ 上 5E+27
  ○ ■ ●●● ○○○ 上 5E+30
  ○ ■ ●●○ ○●○ 尺 5F#+20
  ○ ■ ●●○ ○○○ 尺 5F#+25
  ○ ■ ●○○ ○●○ 工 5G#+30
  ○ ■ ●○○ ○○○ 工 5G#+32
  ○ ■ ●○● ○●○ 凡 5Bb~5B
  ○ ■ ○●● ○●○ 凡 5Bb+15
  ○ ■ ○●● ○●● 凡 5Bb+20

 唄口の調整がまだまだで,多少安定は悪いものの,筒音はだいたいBb,清楽の音階ですね。


(つづく)

【公開】古楽譜PDFと『声光詞譜』電子版 地巻途中まで!

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斗酒庵 告知 の巻【公開】古楽譜PDFと『声光詞譜』電子版 地巻途中まで!

 冬休みといいますか,恒例の雪かき帰省より帰京いたしました!

 任期満了直前にどばッと降りやがりまして。
 屋根近くまで積もったやつを2日かけてとりのぞきますた。
 まずは「明清楽復元曲一覧」にて新公開のPDF資料を2つ。

 ■長原梅園・春田『清楽詞譜』第一巻 明治17年 宮次郎追記(PDF 20MB)

 長原梅園は連山派の流祖・平井連山の妹で,大阪から東京に居を移して「梅園派」を開きました。長原春田はその息子,明治政府の音楽関係部署「音楽取調掛」に勤めておりました。
 庵主が入手したのは全二冊本の一巻のみ。いわゆる端本ですが,収録83譜中のけっこうな数に付点が付されております。口拍子にしか変換できない符号じゃなく,ちゃんと五線譜や近世譜に変換できる拍点のほう。ありがたやありがたや。

 ■小野芳連『西奏楽意譜』(上)(PDF 9MB)

 2件めは長崎派の『西奏楽意譜』。これも上巻のみの端本ですが,正直下巻が出されてるのかどうかも分からない。
 同じ書題で著者も違う譜集が何種類か伝わっているようですね。これもその一つでしょうが,奥付も刊行年記もないので,いつごろ出されたものかは分かりません。
 書題は「西 "奏"」でなく「西 "秦"」と書くものもあって,早稲田大学にある宇田川榕庵の写本などは後者ですね。長崎の研究家・中村重嘉は長崎において初期の写本家が「西 "奏"」と誤写したのが広がったのだろうと書いて(「清楽書目」『長崎談叢』27),「西 "秦"」が正解という感じのようです。
 かなりキッチリした活字の本で,オモテ表紙見返しに「崎陽・小野芳連選/東京門人・荻原芳雲,今村香蓮校正」とありますので,東京で出されたものかもしれませんね。
 収録曲は35譜。ウラ表紙見返しに「竹内福」と署名があって,連山派などで用いられた符号が朱墨で施されています。
 東京における清楽の「長崎派」というのには浅草の月琴舎瑞蘭(松本端闌)なんて人もいますが,渓派や梅園派に比べると少数派だったようで,その楽曲の全容もふくめて,イマイチ詳細の分からないところが多いので。偶然とはいえこういうのが手に入ったのもまたありがたやなハナシであります。

 以上2冊のくわしい収録曲目は「清楽曲譜リスト」 のほうにあげてあります。
 「復元曲一覧」のPDF資料では,ほかにも数多くの付点資料を公開しておりますので興味のある方は見に行ってやってください。商用でない限りDLも再配布も自由です。


 続いては,一昨年からはじめた清楽,連山派(大阪派)の第一基本楽譜『声光詞譜』(明治5年)の楽曲の復元と標準化の作業。今回は2冊目「地巻」21曲めまで----うん,終わりませんでした,あと10曲。


 曲自体について分かる範囲での解説と,曲調復元の過程をイチからやっています。まず原書から規格を統一した拍点譜,拍点から近世譜,符号から口拍子を読み解き。その曲がおおよそどんな感じの曲として演奏されていたか。比較対照の基準となるような,連山派内における「標準的な曲調」というのをもとめてゆく作業です。
 器楽の曲はMIDIのみですが,歌唱のつく曲は人工音声ソフトの AquesTone など使ってMP3に仕立ててます。
 コンテンツも増えてきたので,今回久しぶりにリンクチェックなどしたのですが,ファイル数が4000を越えてました。ほとんどが再現MIDIと資料の画像ですねえ。

 電子版『声光詞譜』トップページはこちらから----


 「電子版 『声光詞譜』 目次」
 http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/SKALL/SK_ALL00.html

 上のページでは各解説ページの構造の説明や,連山派を含めた清楽の付点法(符音の長さをあらわすための方法),そしてそれに用いられる拍点や符号についても簡単に説明しております。

 各曲の解説へは,「清楽曲譜リスト」の『声光詞譜』の項からも飛べるようになってますからね。


 「清楽曲譜リスト」
 http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/LIST.html

『声光詞譜』電子版/ 『声光詞譜』電子版・天巻公開!

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斗酒庵 告知 の巻『声光詞譜』電子版 天巻 復元楽曲と解説公開!

 夏休みといいますか,恒例の草刈り帰省より帰京いたしました!

 こたびの厳しいご時世・時局でありますれば,どこへも出れず。
 ただひたすらに庭草を狩り(襲ってきますので),書き物の毎日。

 おかげさまで去年からはじめた清楽,連山派(大阪派)の第一基本楽譜『声光詞譜』(明治5年)の楽曲の復元と標準化の作業が進みました。

 とはいえまだ先は長く,全3冊のはじめ「天巻」30曲くらいまでですが----拍点からの復元から,標準化に至る手順の制定やら,それに伴うMIDIやMP3ファイルの作り直し。渓派『清楽詞譜』など,すでに公開されているほかのコンテンツとの整合をとったり,画像や解説を整理したりと。データベースというものは大きくなればなるほど,新しく打ち込む作業より,すでにあるものの改造改訂作業のほうがずっとたいへんになっていきますね。

 トップページはこちらから----

 「電子版 『声光詞譜』 目次」
 http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/SKALL/SK_ALL00.html

 解説ページ各項のざっとした説明や,清楽の付点法(符音の長さをあらわすための方法),拍点や符号についても簡単に説明しております。

 各曲の解説へは,先に公開した「清楽曲譜リスト」の『声光詞譜』の項からも飛べるようになってますからね。


 「清楽曲譜リスト」
 http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/LIST.html

 作業は2冊目(地巻)の最初のほうまで進んでますが,とにかく時間を喰らう仕事なのでなかなか進めません----ご飯も稼がなきゃなりませんしねえ。

 どちらかといえば数理的に読み解ける渓派の譜と違って,連山派の付点法は,付記者の個人的な感性やら音感やらといったあたりも考慮しないとうまく読み解けないんで,文章が「と思う」とか「考えられる」で終わっちゃうことが多いです。
 さらに後に分かれて本拠地を東京に移した梅園派との関係や影響もあって,「標準的な演奏」が時に2つくらいになってしまい,流派系統としての「大阪派」全体の「標準譜」というのが決めにくいこともありましたが,まあ無難に無難に。

 歌の付いてるものは歌曲としての復元もしています。
 歌詞のカナ読みがついてないので耳で聞くしかないのですが,面白いのもあるんで試してみてください。

明笛について(28) 53号(2)

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斗酒庵 長いものにまかれる の巻明笛について(28) 53号(2)

STEP1 

 内部のインチキ塗料が多少劣化しているほか,管体にさしたる故障はなく----まあお酒を飲んだ直後に吹くとエラいことになるだろうなーという以外,演奏するにもさして支障のなさげな状態の明笛53号ですが。

 庵主はお酒飲みなので,これを吹くにはとても困る(w)ということもあり,まずはこの塗料をできるだけ削っちゃいましょう。

 ときに,この明笛53号の管体には派手に見事に黒い斑模様がついていますが,これはふつうの篠竹を高価な「斑竹」に見えるよう薬品で処理したものです。
 この「人工斑竹」の作りかたは,明治時代の「工芸裏ワザ集」みたいな本によく載ってますが,簡単に言うと皮付きの状態で薬品をふりかけて表面を焦がし,ザッと削って磨いて仕上げるというもの。
 その工法上,管体の表面に竹でいちばんカタい表層部分が中途半端に残ってしまっているため,素材としてはやや不安定で,場合によってはただの皮付竹や完全に皮を剥いた管より割れやすくなっていることがあります。
 量産型で加工が粗いのもありますし,ここは管体保護のためにも表裏ちゃんと磨き,塗り直してやらなきゃなりますまい。

 ----これも粗い加工の賜物。(www)
 管内を削り直してる作業中に,管頭の詰め物がすぽんと抜けとれてしまいました。

 うーむ,ふつうもうちょっとちゃんと固定してあるんですが,これはほぼ紙丸めてつっこんであっただけみたいですね。ちょっとつついただけでポロリですわ。反射壁(唄口に向いたがわ)は塗料で塗りこめてしまうので,それで固定されると考えたのでしょうか。

 ともあれ。
 以前の修理でも何回かありましたが,この管頭の詰め物は笛の製作年代を知ることのできる貴重な資料です。
 さっそく慎重に展開してみましょう。

 出てきたのは,いつかのどっかの新聞の切れ端だと思いますね。
 残念ながら何年何月発行,みたいな部分は残ってなかったものの,記事のひとつに少し興味深い部分がありました。
 記事自体が断片で全体は分かりませんが,今ある部分から察しますに,桑名の物持ち,諸戸清六さんが,建ててから一度しか足を踏み入れたことのないような豪邸を大隈重信の未亡人に寄贈した,というものらしい。
 大隈候が死んだのは大正11年ですから,この笛はそれ以降に製作されたもの,ということになります----比較的新しい明笛ですね。ぴったり何年何月みたいな情報ではありませんが,笛の場合は製作年代の下限が分かっただけでもかなりのみッけもんです。

 詰め物を入れ直します。
 元の詰め物は固定がユルユルだったうえに,ピッチもかなり合ってなかったようなので,そのへんもついでに多少なんとかしておきたいところですが----ま庵主,笛専科じゃないんで,キッチリとはいきますまいが(汗)

 新しい詰め物はコルク。

 コルクは管内に少しユルめにおさまるよう削り,和紙を巻いておさめます。何度か軽く吹いてみて,位置を探りながらピッチを整えたら,管に触れている縁の部分に唄口から,溶いたニカワを筆で挿して和紙に吸わせ,固定します。
 最後に,反射壁になる面全体にニカワを刷いて,管尻から挿した棒の頭でトントンと軽く叩き,表面を平らに整形したら出来上がり。
 あとはしっかり乾燥させてから塗るだけです。

 固定するまでの調整がラクなのと,紙を丸めただけのものだと,塗料を吸っていつまでも乾いてくれないことがありましたので,庵主はこの方法でやっていますね。

 さてこれで残りは表裏塗り直すだけ。
 一日一塗りで,塗った後は何もできませんから,この間にお飾りにも手を入れておきましょうか。
 前回書きましたように,この笛管尻のお飾りは欠けてしまっています。これは「使ってる」うちどっかにブツけて欠けちゃった,とかではなく。「作ってる」うちに材料が粗悪で欠けちゃったのを 「まあいいか」 ということでそのままにした(^_^;)もののようです。

 この製作者には,割れ面をすべすべに加工しておく,くらいの気持ちはあったようですが,そもそもこれを使わない,交換するといった選択肢は,精神面からも経済面からもハナから無かったご様子----まあなんてことざまぁしょう!

 というわけで,後代これを手にした貧乏性で神経質な者が,さンざに文句を言いながら尻拭いをする,という歴史構図となっております,がっでむ,つーよーにー(w)

 牛骨フレットの端材を使いましょう。
 ちょうどいいくらいの厚みのものを切って削って,欠けてる部分にエポキで着けて,磨きます。
 小さいうえに固いんでけっこうタイヘン。
 ----色味が違うので多少BJ先生感は否めませんが,まあこんなところでイイでしょう。

 そうこうしているうちに(とは言っても1ヶ月くらいかかっちゃってますのよ),管体の塗り直しも終わりましたのでさっそく試奏!----うん,これはダメだ。

 この段階では笛を「使用可能な」状態にしただけですので,塗装を削ったり表面を磨いたりはしたものの,唄口や指孔はほぼ製作当時に近い状態のままなんですが。

 唄口の加工が劇的にヒドいですね。
 笛表面に見えている孔の縁は比較的キレイなんですが,孔自体が内がわに向かってわずかに先細りになっている上,内壁がひどく凸凹しています。ちょっとおおげさに描くと上の図みたいな感じになっちゃってますよ----どんな加工具を使ったらこんなふうにできるのか,とりあえず鉄製の椅子に縛り付け両手両足に指締め具を噛ませてから尋ねたいくらいです。

 とりあえず,唄口の孔の縁を整形。
 内がわの凸凹を均し,孔の縁が図下の右みたいに,まっすぐ切り立ったカタチになるよう削り直しました。

 だいたい削れたところで組み立ててお外に出ます。

 頭尾のお飾りの取付けが少しユルくなってたので,持って歩いてもはずれないよう,薄い和紙をニカワで貼って調整しました。接着してはおらずきっちりハメこんであるだけですが,イザという時のメンテナンスを考えたらこのほうがイイです。
 公園に出かけて試奏です。冬なのでちと寒いですが我慢我慢----思いっきり吹いて確かめたいですからね。
 唄口はいちばん大事で繊細な部分です。
 実際に吹きながら,細い丸棒の先にペーパーを貼った治具でさらに調整してゆきます。

 元が劇的にヒドかったので,多少の粗が残るのはカクゴしてたんですが…唄口をざッと削っただけで,ビックリするくらいイイ感じで鳴るようになりました,イヤほんと。
 調整終了後,削り直した唄口や指孔の縁を塗り直し,あらためてオモテもウラもピカピカに磨いて完成です!

  ○ □ ●●● ●●●:合 4C-20
  ○ □ ●●● ●●○:四 4D+40
  ○ □ ●●● ●○○:乙 4E
  ○ □ ●●● ○●○:上 4F#-35
  ○ □ ●●● ○○○:上 4F#-20
  ○ □ ●●○ ○●○:尺 4G#-40
  ○ □ ●●○ ○○○:尺 4G#-30
  ○ □ ●○○ ○●○:工 4Bb-40
  ○ □ ●○○ ○○○:工 4A+45
  ○ □ ○●○ ○●○:凡 4B-5C
  ○ □ ○●● ○●○:凡 4B+25
  ○ □ ○●● ○●●:凡 4B+20

 全閉鎖「ド」のいわゆる 「ドレミ笛」 ですね。
 チューナで測ると全閉鎖から第3音までの間隔が多少おかしいのですが,まあただ聞いてるぶんにはさほど違和感はありません。呂音での最高は ○ □ ○●● ●●● で5Cと5C#の中間くらい……ちょっと高めか…うーん,ピッチの調整,もう少しだったかな?
 ふだんは響孔をマスキングテープでふさいで吹いてるんですが,ひさしぶりに笛膜使ってみたらまあビビるビビる(wwほんらい明笛ではそれで正常)触れてる指や唇にけっこうな振動がくるぐらいです。
 清楽の楽器としてはちょっと使いにくいものの,ドレミ音階の明笛としては悪い出来ではないかと思われますな。


(つづく)

より以前の記事一覧