明笛について(27)51号

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斗酒庵 長いものにまかれる の巻明笛について(27) 明笛51号(1)

STEP1 そのもの蒼き衣をまとい…

 そうこうしているうちに(w)----
 また1本の明笛が,我家に舞いこんでまいりました。
 おぅ…長いですねぇ。
 いままであった長物たちとくらべてみましょうか。

 全長667は南京笛スタイル(現行の中国笛子と同類,管に糸もしくは籐の補強巻がある)のものを除けば,歴代第一位。竹の部分だけでも560あります。
 いままで一番だった31号で全長646,管長539ですからね。
 こっちのが2センチくらい長いです。

 青い錦織のきれいな袋に入ってきました。
 ちッ………もうちょっとボロけてたら,躊躇なくほどいて月琴のバチ布にしたものを。(w)
 縛り紐が若干傷んでますが状態はそこそこ良好。
 布地は上等ですが裏布もなく綿も入ってないんで,持ち歩く時の入れものには向きませんね。

 管頭の飾りがかなりボロボロ。
 前所有者か古物屋さんが再接着したらしく,接合部にどっちゃり接着剤盛った形跡が見て取れますね。
 管尾のお飾りにもちょっとカケがありますが,こちらの損傷はこの一箇所ていどです。

 笛として肝心の管の部分はやたらとキレイ。うむこれはあまり……いや,もしかすると楽器としては一回も使ったことがないんじゃないかな?

 唄口も指孔もほとんど加工時のままみたいな感じ,なにより響孔のまわりに笛膜を貼った痕跡がまったく見えません。
 管オモテには薄く生漆が塗られ,磨かれているようです。

 唄口のところの反射壁が黒くなってますから,ここもやはり漆か何か塗ってあるとは思いますが,管内ほかの部分には塗りが施されてません。削って磨いてはありますが,ほぼ竹のそのまま。やたらと白く,使ってて放置されれば自然とつくようなヨゴレやシミすら見えません。加工時の細かなヤスリ痕みたいのまで見えますね。

 中国笛子は管内いまもほぼ無塗装ですが,ただでさえ篠笛などより長い明笛----高温多湿の日本ではそのままだと保ちが悪いため,内塗りが施されているのがふつうです……いつごろの作かまだしかとは分かりませんが,作られてからこれまで,これでよく保ったもンですねえ。




STEP2 わが腐海(斗酒庵工房四畳半)へと降臨せり


 管の部分に損傷らしい損傷がないので,「修理」といいましても管頭管尾のお飾りの補修だけですね。

 どちらも鼠にカジられたと思われる,スプーンでエグったような浅い食害痕があちらこちらについています。先っぽのそりかえった縁のあたりには,かなり深い齧り痕もありますね。あと,管頭の飾りの管本体とお飾りの間にはまってたと思われる骨製のリングが1本なくなっちゃってるようです。

 まずはお飾りをはずします。
 管尾のお飾りはもともと接着してなかったらしく簡単にはずれてきましたが,管頭は先にも述べたよう,何らかの接着剤で固定されちゃってます。
 接着剤の正体がイマイチ分かりませんが,脱脂綿にお湯をふくませたのを接合部に巻いて,しばらく放置してみましょう。

 あ,白くなった。
 連邦の白い悪魔こと木工ボンドですね----接合部にべっとりはりついたのを,何度かお湯を刷きながらこそいでゆき,2時間ほどで分離に成功。
 うわあぁあ……外より中に詰まってたぶんのほうが量は多そうですね。

 この作業で管のほうも少し濡らしちゃいましたので,ボンドをキレイにこそげた後は,管端にパイプクランプを噛ませ,乾燥時の割れを防止しておきます。
 この大量のボンド……これがもしぜんぶお役にたってたら,この部分をはずすのに継ぎ目のとこで切らなきゃならないとこでしたが,もともとここはかなりギチギチに作られてますので,接着剤のほとんどは頭飾りの凹の奥のスキマに追いやられ,あふれた一部が接合部の外にへっついてただけだったようです。残ってるボンドも刃物やShinexを使って徹底的に除去します。

 さて頭尾のお飾りは水牛の角をメインに,骨もしくは象牙の部品でアクセントをつけてあります。

 時代の古い明笛にはこういうステッキの握り的なデザインのものはなく,まっすぐな筒状であったり,先端が解放された浅いラッパ状の,装飾の少ないものが多いですね。こんなふうにラッパがやや大きく末広がりでさらに管頭が閉じているデザインは,明治後期から大正期以降の,比較的新しい時代に作られた明笛によく見られるものです。

 同じような材質で作られたお飾りは,これまでいくつも補修してきましたが,問題は角の部分のキズを何で埋めるか,ってとこですね。

 基本,音に関係のある部分ではないので。何かにひっかかったりジャマになったりしないよう,欠けたりエグレたりしてる部分が埋まっていればいいだけなんですが。あまり目立つような素材だと,演奏中,目の端にチラチラ入ってきちゃうので,それなりに自然に,目立たないような素材で直したいところです。
 できあがりが透明なエポキだけでもいいのですが,この素材は骨材が入ってないとまとまりが悪く,べたーっと広がっちゃって肝心のキズがちゃんと埋まらなかったりします。そこでいままでも骨材にもなりそうな顔料系の塗料を混ぜてみたり,角を削った粉を混ぜてみたり色々やってはきたのですが………
 けっきょく最も扱いやすく,そして目立たなかったのは,月琴の修理のほうでもたびたび使ってる「木粉」を練ったやつでした。

 庵主の 「端材捨てられない病」 がこじれて貯めこまれた木粉----修理作業で出た削りかすを茶こしでふるったのがいろいろあります。

 白系の骨牙材だとツゲの粉なんかが良かったですね。ふだん月琴の糸巻材として使っている¥100均のめん棒の削りかすも,白くて悪くはなかったです。
 今回のお飾りは黒系。
 黒檀・紫檀といった唐木の粉を使いましょう。
 使うのは特に微細な粉。
 袋から出して茶こしに落とした時,自然に落ちてくる 「一番粉(w)」 だけを使います。
 これをエポキで練ってパテにし,エグレた部分に盛り上げ,さらに表面にも木粉をまぶしておきます。パテはふだんの木部に使う時より,気持ち木粉少な目,エポキ多めですね。
 表面に木粉をまぶすのは,半乾き状態の時に指で整形するからです。ただヘラで盛っただけだと,補修部分の内側までちゃんと入ってないことも多いので,そうやって後からエグレやキズの中までしっかり押し込むわけです。

 ちなみに,10分硬化のエポキでも,完全に硬化するのには最低でも半日くらいかかります。
 「作業可能な強度」になると言うのと,「完全に硬化する」というのは別ですからね。
 こうやって骨材を混ぜたりしたときは,さらに慎重になる必要がありますので,作業後まる一日くらいは間をとりましょう。

 そして整形。
 ツノの補修を木でやっとるわけですが,整形しちゃうと意外と目立たないですよ----ほれ。

 あとで全体を磨きなおしますので,この時点での整形作業は,削りすぎて新しいエグレとか作っちゃわなければ,そんなに神経質にやらなくてもけっこう。

 つづいてもう一つ。
 頭飾りと管本体の間にあった骨のリングですが----これに合うサイズの骨材も手元にありませんし,これもまあついてればイイていどのものなので。

 ツゲで勘弁してもらいましょう。

 ツゲの端材を削ってリングに……書いちゃえば1行にも満たないような工作ですが,コレ,実際作るのに半日くらいかかってますからね(w)
 64号の半月の骨の円盤もそうですが,この類の装飾部品はさしたる効用もないわりに作るとなるとめっちゃタイヘンで時間もかかるものですな。

 実際にハメてみながらさらに整形。
 目の細かいツゲじゃないとさすがにこの薄さにはできませんな。

 これで部品は揃いました。

 つぎに頭飾りの接合部を補強します。
 そもそもこの大きさ重さの部品を,管端の4ミリあるかないかの凸で保持しようというのが間違いなわけですが。
 かといってたとえば,接着のノリシロを増やすため凸を長くすればいいかと言えば。竹の肉部分にはそんなに強度がないんで,どっかに軽くぶつかった時,ポッキリ逝ちゃう未来が見えてくるだけですな。

 頭飾りの凹のほうの深さにはやや余裕があり,さらに凹の底の中心にはもう一段径の小さな凹があります。この小さい凹のところまで凸の先端がとどいてれば,いまよりずっと安定した接合がのぞめましょう。

 というわけでこうします。

 針葉樹材を削り,管頭の端にはめこむプラグを作成。
 これをまず管の凸の先端に接着。
 しかる後,お飾りをハメこむ----と。

 うん,イイんじゃないでしょうか。

 うちに来た時,このお飾りは接合部のところからくにゃりと曲がった感じで取付けられていました。
 前修理者がテキトウやったかと思ってたんですが……オリジナルの凸がちゃんと垂直に切られてなかったようですね。きっちり奥までハメこむと同じようにくにゃりとなってしまうので,一部にわずかなスキマはできますが,管尻のほうから見て確認しながらまっすぐになるよう取付けます。
 プラグで延長したぶん前よりも接着面が広く,さらに内がわも詰まって補強されてますので,ちょっとくらいの浮きなら強度に問題は出ません。

 何度も書きますが,管のほうにほとんど損傷がないので,「修理」つても今回はこのくらいしかやることがない(w)

 一晩おいて,お飾りの接着安定を確認。
 管の内外全体を少し多めの亜麻仁油で拭いて,二三日乾燥して修理完了!

 さて,試奏です。

  ○ □ ●●● ●●●:合 4Bb
  ○ □ ●●● ●●○:四 5C
  ○ □ ●●● ●○○:乙 5C#+35
  ○ □ ●●● ○●○:上 5Eb
  ○ □ ●●● ○○○:上 5Eb+15
  ○ □ ●●○ ○●○:尺 5F
  ○ □ ●●○ ○○○:尺 5F+15
  ○ □ ●○○ ○●○:工 5G
  ○ □ ●○○ ○○○:工 5G
  ○ □ ○●○ ○●○:凡 5A-15
  ○ □ ○●● ○●○:凡 5G#-5A
  ○ □ ○●● ○●●:凡 5G#-5A

 全開放は 5G#-5A の中間くらいでやや安定せず。
 呂音の最高は ○ □ ○●● ●●● で,筒音のほぼオクターブ,5Bb-11 が出ました。

 うん,やっぱりコレ比較的新しい----といっても百年くらいはたってましょうが----笛ですね。
 すでに書いたように,頭飾りのデザインからしてそんな感じはしてたんですが,吹いてみて確信できました。

 西洋音階にあまりも近いです。
 露骨に音が合いすぎてる。

 すくなくとも清楽器に合わせて調整されたものではないようです。
 清楽に使われたものなら 乙 と 工 がもう少し低いかな。
 作り自体はしっかりしてますから…そうですね,山田楽器店あたりの作ではないでしょうか?

 まあ逆に変な音階じゃないんで,用途は広そうですが。

 10分ぐらい吹いて,露拭きを通そうとふと唄口を見たら,唄口の縁の壁がちょっとささくれだってました----ううむ,管内無塗装の明笛のほぼ未使用品,なんてものを吹いたことがないんで分からんのですが,中国笛子なんかでも新品はこうなるのかな?
 なにか支障が出る,というほどのものではありませんがちょいと気になりました。こういう時はほっとけばいいのかな,それとも何か処置をするものなのかしらん?

 笛子吹きで分かる人がいたら教えてください。


 油が染みて刻字に入れられた墨が浮かびあがりました。
 修理前でもそこそこ読み解けてはいたんですが,従前の状態だと墨が薄くしか入ってないとこや,細かい刻みまで良く見えませんでしたので,あらためて解読いたします。

 まず管頭----

  青山隠々水迢々秋盡江南艸
  木凋二十四橋明月夜玉人何
  處教吹簫

 これは杜牧の詩 「寄揚州韓綽判官(揚州の韓綽判官に寄す)」 ですね。
 「二十四橋明月夜」 のところが特徴的なんで,これはすぐ分かっちゃいましたが。

  青山隠々水迢迢
  秋尽江南草木凋
  二十四橋明月夜
  玉人何処教吹簫

  青山隠々として水迢々(ちょうちょう)
  秋尽きて江南 草木凋(しぼ)む
  二十四橋 明月の夜
  玉人何処にか吹簫を教えむ

 三行目の後半,赤の入ってるとこが年記と刻者名なんでしょうがここが問題。最初 「嘉二丁卯 宮林氏」 と読みましたが,名前のところはほか 「雲林」「寒林」 とも 「室林」 とも読めなくはない感じです。そもそも年記と思われる 「嘉二丁卯」 が分からない。31号なんかには明の年号が入ってましたから,これも大陸のほうの年号だとすれば清の嘉慶年間あたりだと思いますが,嘉慶二年(1797) の干支は「丁卯」じゃない。嘉慶十二年(1807 文化4)が丁卯ですが…ううむ,どうみても「嘉」の下「十二」じゃなさそうです。

 日本の幕末,ペリーさんのきた「嘉永」は6年までで干支に「丁卯」がないし,この手の笛が製作されてただろうなー,と思われる時期の中だと 慶応3(1867) の後は 昭和2年(1927) までありませんね。

 指孔の横の二行は----

  三更笛音風在戸
  半夜簫声月在天

 だと思います。6文字目がどう見ても「生」なんですが,一画目が縦じゃなく横から入っているので「在」だと判断しました。いまのところ出典未詳。
 「簫」は意味的には縦笛もしくは「笙」のことで,一見縦笛・横笛と対でキレイに並べた感じにも見えますが,尺八やリコーダを「縦笛」ともいうように,横笛のことを「横簫」とも言います。俗文学だと横笛も合わせて気鳴楽器を「簫」と言っちゃうこともあるくらい,この「笛」と「簫」は通用される語なので,大陸の対句表現としてはあんまり見ない組み合わせです。これは日本の人がアタマひねって考えた対聯かもしれませんね。

 この手の長物にしては明るく軽めの音が出ます。
 おそらくは内塗りがないのが影響してるんでしょうが。

 いちおう完成した後に,唄口と響孔の端に小さなヒビが発見されましたが,すくなくとも唄口のヒビはウルシで修復済らしく,開くような気配もありませんので,そのままにしておきます。管の状態から見て,前所有者ではなく製作段階での補修だったようです。

 ほぼ未使用の楽器なので,庵主の目的である清楽の基本音階の解明には若干物足りませんが,楽器としては音が西洋音階に近いため,清楽以外のところでも使えるアイテムとはなりそうですね。



(つづく)

明笛について(26)49号/50号(5)

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号(5)

 春先に襲来した月琴の修理もひとだんらく。
 修理報告もあげたところで,ちょっと時間軸を巻き戻し。
 その前にやってた明笛の修理報告,完結篇をお送りいたします。
 これ,書いてる途中で月琴のほうが修羅場ったんで,ずいぶん放置しちゃってました。申し訳ない(^_^;)

STEP7 明笛49号

 さて,残すところ内塗りの乾燥をのぞけば仕上げの磨きくらいしかありませんが,明笛49号。

 箱を修理しておきましょう。

 最初の回で書いたように,この笛の入ってきた箱は,この笛のために作られたいわゆる 「共箱(ともばこ)」。
 前所有者の落款なども貼られてますので,それなりに貴重なものです。

 この箱は左右板の木端口近くに溝を切り,そこに上蓋をすべらせる形式になってます。
 まあ,薄くしたところに板つっこんで出したり入れたりするわけで,構造上当たり前の故障なんですが,その溝のところに,まず割れが入っています。
 蓋のついてるがわを,「明笛」と書かれたラベルのあるがわをとすると,右がわの板は上から下までほぼバッキリ,左がわも2/3くらいまで割れてますが,どちらもニカワによる修理が施されています----ほんと,大事にされてたみたいですね。
 しかし,経年の劣化により,現状修理個所右がわは全長のおよそ半分ほど,左がわも端が10センチくらいハガれちゃってますね。

 まずはここを再接合。ニカワによる修理は何度も出来るのが特徴です----壊れたら,また直せば良い。
 割れ目に薄目に溶いたニカワを流し,閉じたり開いたりして全体に行き渡らせてから,ゴム輪などで固定。
 過去の補修箇所もいちどお湯で濡らし,割れ目の周囲にあふれてるニカワなども拭き取って,キレイにしておきましょう。

 つづいて,箱表の上端。
 蓋のストッパーになる部分が欠けちゃってますので付け足しておきます。
 前所有者の貼った「明笛」の古いラベルに少しかかっちゃうとこなので,ちょっと慎重に……何年か前に桐の余り板で小物箱ばっかり作ってた時期があったんですが,ここにきてあの経験が役に立ってますね。なんでもやっとくもんだ。(w)

 この小板は,蓋がスキマなくおさまるように内がわが段になってます。
 このあたりの寸法は,実際にあてがい,蓋を入れてみながら実寸合わせで工作。ぴったりの部品が出来たところで接着し,最後に工房特製「月琴のしぼり汁(w)」などで古めかしく補彩して完了です。

 直った箱に笛を詰め,いざいざ試奏まで----

 ○ ■ ●●● ●●●:合 4B-30
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5C+30
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5D-10
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5Eb-5E
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5E-30
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5F#-45
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺 5F#-40
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5G#-30
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5G#-20
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 5Bb-5
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5Bb-30
 ○ ■ ○●● ○●●:凡 5Bb-30
 全開放は 5Bb+15。  呂声での最高は ○ ■ ○●● ●●● で 5B-5 が出ました。

 数字だけ見るとやや波瀾ぶくみの音階にも見えますが,平均して-30%ほど低くなってると考えれば,全体としてはそろった音階で,聞いててあまり不自然さはありません。

 管の細い笛は鳴らしにくいものなんですが,この笛は比較的鳴らしやすいほうです。もちろん管が細いため,唄口に息の当る角度に微妙な制限がありますが,それを考えて楽器のバランスをとってあるのか,ふつうに構えればだいたい自然と「鳴る」角度に笛がおさまってくれます----でっかい管尾の紐飾り,演奏の時は少々ジャマっけなんですが,どうやらこれもそういうためのウェイトになってるみたいですね。
 甲音(息を集束させて出すオクターブ上の高音)が出しやすいです。唄口の小さい明笛だと,ふつう甲音が出しにくいものですが,この笛だとがんばれば大甲音の上くらいまでイケそうですね。ただそのぶん,ふつうの息遣いで吹く呂音のほうが少し不安定なようで,ちょっと力んじゃうと甲音が混じっちゃいます。
 息の向きをやや管尻がわに傾けると低音が,管頭がわにむけると高音がやや出しやすい----同じような傾向は他の笛でもふつうにありますが,この笛ではそれが少し顕著です。これらも管が細いための現象かと思われます。

 音色的には----意外とやや重たい音がします。低音,ということではなく,音圧が高めと言いますか,ギュッと中身がつまったような,ドスのきいた響きですね。
 内外しっかり塗り込められてるせいもありましょうか。ちゃんとした笛膜を貼って吹いてみたら,笛全体がビリビリ震えるくらいの共鳴がキました。よくある甲高い倍音,ってより重低音ウーハーの横にいるみたいな感じ,日本人の感覚だとちょっとコワい音かもですわい。

 笛自体の調が西洋音階からは少しハズれてるので,こちらを基音としない限り,単純にほかの楽器とコラボするってのにはちょいと難しいところがありますが,清楽器として合奏してみるのはかなり面白いかもしれません。


STEP8 明笛50号


 50号も塗装の乾燥と仕上げを残すのみ。

 こちらは管の内外両方塗りましたが,まあ手間としてはさほど違いはありません。
 管外はShinexや水砥ぎペーパーの細かいのに石鹸水をふくませ,塗装中に付着した微細なホコリなどを削り落とし均して,柔らかい布に研磨剤と亜麻仁油をつけて,管内も細棒の先にShinexをくくりつけたので磨き上げました。

  ----どやぁ!

 オリジナルの状態では表面処理が雑で少しザラザラしてたんですが,割レ継ぎついでに磨いて塗って……とぅるっとぅるのお肌です。
 割れ目が微妙に見えちゃってますが,しっかり継がれているのでまあ再発はしますまい。逆に,あの瀕死の大怪我状態だったのがこの程度に直ってるんですからホめてくださいよぉ(^_^;)


 さて,ではこちらも試奏へ!-----
 ○ ■ ●●● ●●●:合 4C+5
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5D-10
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5E-30
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5F+20
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5F+35
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5G+10
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺 5G+40
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5A+40
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5A-Bb
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 5B+20
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5B
 ○ ■ ○●● ○●●:凡 5B-20

 いわゆる「ドレミ笛」ですね。
 ただ第3音が20%ほど低くなってるのは,清楽の音階の名残かもしれません。
 清楽の運指にした時,「工」 がやや不安定なのですが,これはこのあたりの割れがいちばん酷かったせいもあるかもしれません。管自体が少し変形しているため,指孔の縁が微妙に歪んでいるようなんですね。そこから少し空気が漏れちゃうのかも。
 まあ,もともと量産楽器のため,指孔の加工自体がやや雑,「開けただけ」みたいになっているのも原因でしょうね。押さえるのに少々コツが要りましたが,庵主より指の太い人だとなんともないようですので,これは手が小さく指の細い庵主の特殊事情もあったかもしれません。
 そのままだとちょっと扱いにくかったので,リューターのバフで指孔の縁の角をほんのちょっと丸めてやったら,低音域での不安定さはかなり改善されました。

 全開放は 5B と 5C の中間くらいで安定せず。呂音の最高も ○ ■ ○●● ●●● で # に近いくらいまでいきましたが,これも当初は安定せず。あとで指孔の縁を丸めてから再挑戦したら 5C+20 で安定しました。甲音は少し出しにくく,息道を若干変えたり,笛を少しひねったり,ちょっと工夫をする必要があります。

 まあ難しいことをしないのなら,鳴らすこと自体はたやすい笛です。
 呂音ではよく鳴りますね。
 49号に比べると,音は明るく軽め----うんポップスの笛ですわ。



(おわり)

明笛について(26) 明笛49号/50号(4)

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号(4)

STEP5 明笛49号

 明笛49号の修理は,まず細かくヒビが入り,塗膜の浮いている響き孔周辺の剥落止めから。

 ゆるめに溶いたニカワを小筆で刷いては,布で軽く押して吸い取ります。 管頭のお飾りの接合部周辺以外に竹自体にヒビは入ってませんし,この周辺以外の塗膜は比較的無傷ですので,このあたりのヒビ割れはおそらく,もともとの漆塗装の下地処理か,塗装作業自体に問題があったのだと思います。

 一晩おいて,触ったらプラプラしててハガレそうになってたあたりが,いちおうへっついてるのを確認----ものが笛ですからね,ツバもかかれば息でも湿る,手汗もつくしヨダレも垂れます----道具としての使用を考えるなら,このニカワによる処置は,あくまでも次の作業のための一時的な応急処置です。

 修理作業中にボロボロ逝かれたらたまらんですからね。


 次の作業のための準備をしましょう。
 まずは薄い和紙を小さく丸めたものを用意します。
 お腹の赤丸薬くらいの大きさかな。

 これにニカワをふくませ,反射壁の欠けたところ(上右画像参照)に押し込みます。
 今回の虫食いはこの欠けたところから,90度曲がって横方向へも少し広がってますので,濡らした紙玉をさらに小さくちぎっては,ピンセットや曲げたハリガネで,少しづつ,なるべく深く,奥のほうまできっちり詰め込んでゆきました。

 穴から紙玉が顔を出すようになったら,筆で少量の水をふくませ,管尻から挿しこんだ棒のあたまで表面を軽く叩いて潰す。そしてまたハリガネでつついて押し込み…これを何度かくりかえしました。

 うむ,場所が場所だけに手先の感覚だけでやったみたいなところもあったんですが----なんとか埋まったようですな。

 充填箇所がかっちり乾いたところで,管内を塗装。

 赤と透を半分くらいづつ混ぜ,元の色に合わせてます。
 先に,修理した反射壁と唄口の周辺だけ何度かこってり塗りこめておき,後の部分は保護塗りていどにあっさりと塗りあげました。

 管頭飾りとの継ぎ目あたりに,何本か割れ目が出来てます。唄口にかかってないあたりなので,楽器としての使用上は問題ありませんが,使ってるうちに開いてきちゃったりしたら嫌ですからね----ここも埋めこんでおきましょう。
 修理で出た黒檀の粉を茶こしでふるい,微細な粉をエポキで練って充填します。


 あとは最初に表面の剥落止めをした部分ですが,漆塗りを塗りで補修するのは難しいですので,エタノで緩めたエポキをヒビに沿って流し,固定します。塗膜がめくれちゃってる部分なんかは,アートナイフなどでこそいで落し,パズルよろしく元の場所にハメこみました。
 とりあえず響孔周辺が,竹紙を貼ったりハガしたりしても大丈夫なくらいになってればよかろうもん。

 唄口や指孔など,この笛の各孔には金で縁どりが施されていました。各孔の壁を塗装し直すついでに,この孔の縁もちょちょいと補彩しておきましょう。

 まあ「金彩」っていってももちろん,本物の黄金の粉末が使われているわけでもありません。色合いから言って元のも,いろんなのの混じった工芸用の偽金粉ですね。
 このあたりは使用でかすれて消えちゃうでしょうから,軽く百均の金粉マニキュアを使いましょう。
 もちろん,直接塗ったりはしませんよ。
 まずは,クリアフォルダの切れ端などにマニキュアを塗り,乾かします。次に保護塗りちゅう孔の縁に押し当てますと,軽くハミ出た生乾き状態の塗料にへっついていい感じでプリントされました。
 保護塗りの塗料が固まったところでクリアを軽く上塗りして完成とします。前にも書いたと思いますが,この笛の金彩はもともと,庵主のやったのと同じように,塗料で絵を描いて上から粉ふっただけの 「なんちゃって蒔絵」 なので,強く擦るとほとんど消えちゃうようなシロモノです。上塗りして砥ぎだしたものだと,ちょっとやそっとじゃ消えないんですけどねえ。(^_^;)

 あとは管内の塗装が乾くのを待って,磨いたら完成です!



STEP6 明笛50号

 ヒビ割れの処理の終わった50号。

 しばらく放置して,ヒビが再発したり新しくバッキリ逝ったりしないか様子を見ます。

 中性洗剤でザブザブしましたし,ヒビの修理であちこちコスりましたので,内外ともにパッサパサな感じですが。
 一週間ほどたってもバッキリ鳴ったりパックリ逝ったり(w)しません。

 …………だいじょうぶのようですね。

 内部にハミ出たエポキを削るのといっしょに,管内の塗装もあらかた削ってハガしてしまいました。
 もともと塗ってあった塗料は,明治~大正期の量産品明笛でよく使われていた正体不明のやつで,水ではビクともしないのに,エタノールを流すとベトつきます----たぶんスピットニスみたいなアルコールで溶かして使う手の顔料だったんだと思います。

 酔っぱらって吹いたらエラいことになりそう(www)

 そういえば----前のほうの回で紹介しましたが,この笛の作者の吉田源吉さんはヴァイオリンの作家でもありました。
 今回の笛の管表の染め色は,ふつうの明笛よりやや赤みがありましたが,これってヴァイオリンの胴染めると同じ染料か塗料が使われてたのかもしれませんね。

 管の内外を塗ります。
 管内は赤に透を混ぜたものを唄口や指孔から筆で垂らし,細めの棒切れの先に使い切ったSHINEXの切れ端をくくりつけたもので均して,まんべんなく塗りこみます。
 管表はもともとの色合いを損ねないように,透とクリアを半々くらいにしたものをゆるめに溶いて二度ばかり拭き漆風に滲みこませ,下地を作ってから,ごく薄く表面を塗りあげました。これもそうでしたが----大正期以降の明笛は竹管表面の扱いが雑で,古い管にくらべるとちょっとガサガサした感じなのが多いのですが,補修箇所の保護もありますし,オリジナルより少し塗りを厚くしておきましょう。

 これでこちらも,後は塗料の乾くのを待つだけです!
 それぞれどんな音が出るのか----一週間後が楽しみですねえ。



(つづく)

明笛について(26) 明笛49号/50号(3)

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号(3)

STEP3 明笛49号あらため "封印されし邪黒龍の笛"


 黒い笛です…うん,黒いね。
 そしてだいぶかすれちゃってはいますが,管オモテには金銀で龍(ドラゴン)の線画……これはもう。

 明笛49号あらため----命名 "黒龍を封印せし闇の明笛"。

 この笛の "所有者(マスター)" となるためには,一定の条件を満たすことが必要である。まず最低限必要な装備として----

 1)黒革の指出し手袋(甲に銀糸でドーマンセーマンを刺繍,左手のみ)
 2)同材・眼帯(中心に朱で,梵字もしくはルーン文字が描かれているもの)
 3)編み上げブーツ
 4)古代文字の書かれた布テープ(あらかじめ笛に巻きつけておく)

 ……ほか,マントなどあるとなおよろしい。

 そして左足に体重を寄せるようにしながらやや斜めに立ち,その内部から噴き出さんとする強大な闇の力を押さえつけるかのように笛を握りしめ,開いた右手の指を額に翳すようにしながら以下の台詞をつぶやき,吹くのである。

 ふっ………永劫の時を経て還って来たか我が半身よ。
     いまこそあの忌々しき古代の神々による封印を破り,
  すべてを渾沌へと帰するため,
    その闇の力のすべてを現世に解き放たん!!

 「ぽーーーーーーー。」

 さあ出でよ!

 封印の黒龍よ!
   汝とこの世界の支配者たる我が命ず!
 煉獄にたちのぼる漆黒の炎にて,
   すべてのもの焼き尽くせ!!

 「ぴーーーーーーー。」

 ----とか,いうことをやりたいと思うのですが。
 誰か手袋と眼帯,持ってませんか?


 49号,調査の続きです。

 前回も述べたよう,現状,吹けばいちおう音は出る状態ではありますが,古物の楽器はかならずどっかしら壊れているものです。
 この笛で中二病的なこともしたいので,まずはしっかりと直してまいりましょう。

 外見的には唄口や指孔,響孔周辺を中心とした塗膜の劣化と剥離が若干ある程度ですがさて内部は……と管尻のほうからのぞきこみましたら。

 うわわわわわ…

 管頭の詰め物----反射壁になってるところが一部分,ぞろっとなくなっちゃってるみたいですねえ。
 到着時に露切り通して掃除したんですが,さしてゴミも出ませんでしたから,この崩れたぶんはおそらく,前の持ち主か古物屋さんに掃除されちゃってたんでしょう。唄口のほうからだといまいち見えないんで気づかなかったんですが,こりゃタイヘン。

 明笛の反射壁は,管頭から和紙や新聞紙の丸めたのをつっこんで固めたものが一般的ですが,ハリガネなどを用いて触診してみますと,この紙の詰め物の部分は3~5ミリほどしか厚みがないようで,そこから先には何か硬いものが詰まっています。
 管頭のほうからつついてみても,詰め物のずっと手前で行き止まりになっていますので,おそらくは下図のような構造になっているのではないかと考えられます。

 最初のほうでも述べたようにこの笛の管体はかなり細いので,お飾りを固定するのにじゅうぶんなホゾを作れなかったのでしょう。そこで管内に細い棒を挿して笛本体とお飾りを接合しているのだと思われます。
 明笛の詰め物は,和笛などのように蜜蝋で一時的に固定したものではなく,ニカワなどで固定し唄口がわは管内ごといっしょに塗り固めてあるのが一般的です。
 紙のカタマリを固めるためや固定のためにニカワを使うので,そこを虫に狙われる可能性もないではないのですが,この楽器の場合,管頭がわは上に書いたようお飾りを固定するための棒でふさがれていますし,唄口がわはウルシでカッチリ固められちゃってますから,通常侵入ルートがなく,こんなふうにはならないはずなのですが……おそらくは,使用によって表面の塗膜が劣化し,部分的にハガれたところから侵入されたのでしょうねえ。

 とまれ,ここがこの楽器最大の要修理個所のようです。

 これもふくめ,要修理個所はこんなところでしょうか。(下図クリックで拡大)

 この楽器は頭尾の飾りがとりはずせない構造になってますので,反射壁の修理も唄口がわからするしかありません。また,全体に塗りが施されているため,内部の保護塗りやヒビの補修などの作業も,オリジナルの塗りをなるべく損なわないようにやらなければならないでしょう----ちょっとタイヘンそうです。


STEP4 明笛50号,ランポー怒りの大修理

 50号は修理に入ります。

 まずは洗おう,ジャブジャブジャブ。
 ぬるま湯に中性洗剤で管の内外を……真っ黒ですわあ。
 洗い終わっても乾かさず,濡らした脱脂綿で包み,ラップをかけて2時間ほど放置します。

 ほおら…開いてきましたよぅ。
 前のヒトが連邦の白い悪魔(w)で「修理」したところがねぇ。

 割れ目周りに固まったのはShinexでこそぎ落とし,割れ目の内がわに入ってるぶんは,クリアフォルダの切れ端やアートナイフの刃を入れてほじくりだします。

 こうしてまず,前修理者の「修理」を「なかったこと」にするまでに,3時間くらいかかりました。

 割れ目の清掃が終わったところで,もう一度軽く全体を濡らしてから,パイプクランプを軽めにかけて矯正します。この時点でギッチギチにしめあげちゃうと,別のところが割れ始めたりしますんで。管の形がくずれないていど 「割れ目がせまくなってる」 あたりでよござんす。

 数日乾燥させてから,あらためて割れ目の継ぎに入ります。
 接着剤はエタノールで緩めたエポキ。

 パックリ逝っちゃってるところは,クリアフォルダなどを切ったものをつっこんで両岸まんべんなく,薄物も入らないようなせまいところには,最初にエタノを流し,そこに接着剤を小筆で垂らして何度も流し込み,ヒビの奥まで浸透させてゆきます。エポキだけだとそこに留まってしまいますが,最初にエタノールを流し込んでおくと,そのエタノールに引っ張られる形で接着剤が流れてゆきますので。
 そこそこの作業時間がかかるので,接着剤は硬化までの時間が長めのものをおススメいたします。
 また,今回のように上から下までバッキリ逝っちゃってる場合は,いちどきにやらず,数回に分けて作業するほうが確実です。

 今回は笛全体を4つか5つに分け,管尻のほうから3日かけて順繰り接着してゆきました。

 充填剤としてのエポキシは,作業後の「ひけ」が少ないのが特徴なのですが,ひび割れの修理では,溶剤をせまい箇所の奥まで浸透させるためにエタノールを使っておりますので,硬化後,エタノールが蒸発したぶん,どうしても「ひけ」が生じ,表面にうすーいミゾが残ってしまいます。
 明るいとこだと見える程度であり,内部はしっかりくっついてますから構造上さほど問題はないのですが。唄口周辺はいわずもがな,響孔の周縁だと竹紙を貼るのに影響が出ますし,指孔でもわずかな凸凹が原因で,演奏に何らかの支障が出ないとは言い切れません。
 ま,なにせ吹いてる本人には見えちゃいますしね。
 気にならないといえばウソになる(w)

 これを埋めるのに,も一度エポキを流すのですが。
 このとき,緩めたエポキをただミゾの上に流してもミゾは埋まってくれません。
 ミゾにあるていどの深さがある場合は,筆でふくませれば勝手に吸い込まれていってくれるのですが,ミゾが浅いとエタノを落としても,蒸発するさい混じってるエポキだけ外がわに散ってしまうんですね。

 これを防止するため,補修箇所にエポキを垂らした後,細く切ったクリアフォルダの切れ端をかぶせます。

 こうするとエポキ&エタノの溶剤は,表面張力かなんか知らん力(w)によって蓋のがわにひっぱられ,そのままそこで固まってくれます。
 指定の場所に軽く 「盛った」 感じになってくれるわけですね。

 一晩ほどおいて固まったところで整形します。

 管内にはみ出したぶんは,細棒にSHINEXをくくりつけたやつを管尻から挿しこんでこそぎとりました。

 さあて,これであとは内外を保護塗りしたら完成ですね。



(つづく)

明笛について(26) 明笛49号/50号(2)

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号(2)

STEP2 明笛50号

 49号に遅れることわずか1日。
 50号が到着いたしました。

 「HEIWA」 の明笛ですね。

 いままで見たことのあるラベルでは 「平和」 のところが英文字で 「HEIWA」 になっていました。
 漢字表記になってるのを見たのは,今回がハジメテです。

 どちらのラベルでも 「平和」 の字の上には,丸がいっぱい重なりながら横に並んでる真ん中に,平和の象徴である鳩。下には 「MANUFACTURED BY G.Y.」「TOKYO, JAPAN,」 と書かれています。さらに下には 「No.」「¥」とたぶん笛の番手とか号数,値段を書き込むと思われる白枠がありますが,この中に何か書かれてた例はいまのところ見たことがありませんねえ。
 比較的よく見かけるメーカーの笛なんですが,いままで製造元の身元は分かりませんでした。
 今回,笛の実物が手に入ったので,一丁調べてみることといたします!

 ラベルに書かれているとおりなら,「MANUFACTURED BY G.Y.」 ということは作者のイニシャルは G.Y.「TOKYO, JAPAN,」 ということは東京の作家さん,ということですね----この条件で拙「楽器商リスト」を調べてみると,大14年発行の『職業別電話名簿』(東京之部)に 「笛製作業 浅,北元,4 吉田源吉」 というヒトが見つかりました。

 GENKICHI YOSHIDA----頭文字は G.Y.ですね。で,東京の浅草で,笛屋と。

 …うむ,いちおう条件はぴったりですね。
 ただ頭文字 G.Y. で笛屋,というだけなら他にもいるかもせんので,確証を得るためこのヒトについてさらに探ってゆくと,電話帳では 「笛製作業」 となっていましたがこの方,初期の国産ヴァイオリン製作者の一人でもあるということが判明しました。同じ浅草の山田楽器・山田縫三郎も,月琴や明笛のほかヴァイオリンなんかも作ってましたからね。この頃の楽器屋ではよくあったことなのかしらん。

 そしてさらにさらに探っていったところ,いま話に出てきた 「山田縫三郎」 とこの吉田源吉さん,二人そろって明治11(1922)年に開催された 「平和記念東京博覧会」 に,その 「ヴァイオリン」 を出品していることが判明!!----っと…「平和記念」?

 「平和」 …ですかい?

 もしやと思い,もいちどラベルに立ち戻ってみます。

 過去に見た,別バージョンのラベルの画像をちょー拡大したところ,鳩の後ろに 「平和博覧会 大正十一年」 と書いてあるじゃああーりませんか!!
 鳩のバックの丸いのは,どうやら博覧会のメダルだったようです。

 博覧会のメダルを商品のラベルの意匠として使うのは,このころ楽器のみならず日用品や食品でもよくあったこと。石田義雄や田島勝も楽器の背に貼りつけてましたね。
 お祭りみたいなものとはいえ,もちろん何の係累もないのに博覧会を引き合いに出すわけにもいかないでしょうから,少なくとも,この笛の作者は 「平和記念東京博覧会」に楽器を出品して,何らかのメダルをもらい,その記念に,作ってた笛を「平和」と名付けたのでは,ということになりましょう。
 平和記念博覧会の受賞者とその詳細については,一覧が Web公開されていないのでまだハッキリと分からないのですが,さっきも書いたよう,審査記録などからかの 「吉田源吉」さん が,明笛はともかく「ヴァイオリン」を出品していたことはほぼ間違いありません。

 後に「吉田源吉」さん作のヴァイオリンのラベルの画像を見つけたので見てみると,そこにはなんと,明笛のラベルにあるのとほぼ同じデザインの,鳩と重なった丸の絵が………明笛のラベルではかなり省略されてたようですが鳩の左右に並ぶこの丸いもの,もともとは一枚一枚,作者が出品した色んな博覧会や共進会のメダルの図像だったようですね。

 以上の事から,明笛「HEIWA」の作者「G.Y.」は「吉田源吉」でまあ間違いない,とは思われますが,さて----まだいくつか決定的な証拠が足りませんので,とりあえずは推測,としておきましょう。

 ちなみに…ではありますが,平和記念東京博覧会の審査員サマは吉田源吉氏のヴァイオリンについては, 「 f 孔デカすぎ!音粗ぇ!」 との評価を下しております。
 山田縫三郎の楽器なんか 「外面がキレイなだけじゃ」 とバッサリですのでまあ,それよりは…って感じですが。(www)
 まだ当時は国産でのヴァイオリン製造の初期も初期段階なれども,鈴木政吉のヴァイオリン以外はほぼボロクソでございました。


 大正時代のドレミ明笛です。

 「平和記念博覧会」の開催が大正11(1922)年ですから,作られたのはもちろんそれより後ということになりますね。
 月琴をはじめとする明清楽の楽器の多くは,日清戦争(1894)以降明治の終わりくらいにはもうほとんど作られなくなっていたんですが,「明笛」だけはずっと生き残り,大正・昭和,そして現在もなお細々とながらも製造され続けているんです。

 明治時代の明笛ですと,頭尾には骨や象牙あるいは黒檀紫檀などの唐木で作られたラッパ状の飾りが付いてますが,このころになるとこういう木製のちゃッちい挽物のほうが多くなってきます----材質が一般的な木を使ってるのはともかく,もう唐木っぽく染めたりもしてませんし分解できるような機構もありません。このお飾りで黒や白に塗られてるところには,ほんらい骨や牛の角などを加工したリングがはまってたりもしたものですが,もうコレ,旋盤でちョちょイと削って近代的な塗料でべったら塗りですわあ。

 これは明笛というものが,明清楽の楽器から子供などのための教育玩具的楽器となっていったせいもありましょうね。
 6孔,全閉鎖がドで,基本的には端から指を開けていけば西洋音階になるという演奏の単純さと,日本の笛とはちょっと違った音質,そして値段の安さというあたりが売りだったみたいです。子供むけの安価な楽器,ということで価格競争みたいなものもあったようで,大手のものほど形も作りもどんどん単純化されていきました。いままで扱った中だと…19号 なんかがそうした類ですね。

 現在売られているものと比べると,今回の楽器のはそれでもまだ清楽時代の明笛のお飾りの形をそのままかなり踏襲してる感じではありますね。

 続いてその他の部分を見てゆきましょう----

 ははははは。

 いちおう継いでありますが----派手に割れてますねえ,そして誰ぞが 「修理」 してますねえ。

 しかも木工ボンド使いやがったな,ケツ割るぞコラ。(笑っているが目がマジ)
 唄口上下から最下の管尾飾りの前まで,すべての孔間がバッキリ逝っちゃってるみたいですね。

 このほか裏孔ところにも一箇所。
 あちこちに糸か何かで巻き締めていた痕跡があります。
 かなり容赦なく締め上げたようで,ちょっと横縞の傷になっちゃってるとこもありますね。
 古い補修の痕なのか,ボンドで接着するときの固定痕なのかはちょいと不明。おそらくは後者でしょう。

 損傷状況をまとめるとこんな感じ----

 ううむ……「平和」の明笛,戦線はけっこうな激闘となるもよう。




(つづく)

明笛について(26) 明笛49号/50号

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号

STEP1 明笛49号

 さて新作の実験楽器製作ちゅう,この年の瀬になってとつぜん,明笛が2本やってまいりました。(W)

 まず,箱に入った1本が到着。
 こちらを49号といたします。

 お暇なかたは過去記事から「李朝華竹横笛」の記事などご覧くださると分かると思いますが,「箱入りの古物」 ってのは概してロクでもないことが多いです。今デキの贋物をそこらにあった古めかしい箱に入れるってのは,安物をさも高価なものに見せかける一番容易な常套手段ですものね。
 まあ「李朝華竹横笛」の場合,中身自体の質もさりながら,ヨゴレの上から書かれた箱書きとか,蓋が別の木だとか問題にもならないシロモノでしたが,「筋のいい」古物商の方ですと,同じようなことをするにしても(するんかい-ツッコミ-ww)古色付けにせよ箱の選別にせよ,それなりの手間とコストをかけてやらかしますので,素人さんが見てそうそう分かることはございませんよ,ほほほほほ。

 「ほんとうに良いもの」というのは,良いだけにしょっちゅう使われるので,どんなに大切にされててもどこかしら壊れてる確率が高いものです。出し入れされる回数も多いので,箱なんかも壊れてたりなくなってるのがふつう。だからほんとうの 「掘り出し物」 ってのはハダカで出回っていることが多いのです。

 まあ元・古物屋の門前小僧として,そのように散々脅されてましたので,今回も正直さほどの期待はしてなかったんですが………あ,ひさびさの「当たり」だわコレ。(www)

 まず,箱を見て分かりました。
 これ,「共箱」 ですね。

 こうした古物の笛には,掛け軸なんかの箱が流用されるのが定番です。しかし,軸物の箱というものは寸法やカタチが決まっていますので,見慣れていればそうと分かってしまうものなのですが。この箱は作りと寸法がかなり特殊----一目で軸物の箱でないことは分かります。

 そしてこのブツの収まり具合(w)----ギチギチでもなく,スカスカでもない。
 これはこの箱が,この笛を入れるために作られたものであることを如実に語っていますね。

 箱頭に貼られた「明笛」と言う貼紙の年季も問題なさそうです。
 まあ古い「明笛の箱」にサイズの合うほかの笛を入れるなんてシワザは,そもそも「明笛の箱」というもの自体がレアなことから考えてもあり得ないでしょうな。

 蓋はスライド式になっていて,箱上面の溝にはめこむようになっていますが,箱側面,その溝になってる部分に割れがあります。片面はこの部分からいちど完全にバッキリと逝ったらしく,全面に継いだ痕も見えますが……まあ構造としてこれはしょうがないか。ほかにも上下に接合の剥離,部品の欠損,ネズミに齧られた痕なども多少ありますが,明治時代の箱の状態としては上々----よくいままで,この笛を護ってくれました。

 全面に漆塗りの施された,すらりとした細身の美しい笛です。
 ほんとに細い……明笛の管体にはホウライチクのような,節間が長くやや太目(径2センチくらい)の竹が使われることが多いのですが,そういうむこうから輸入された竹ではなく,国産の篠竹あたりが材料でしょうかね。
 漆塗りの黒地に金銀で装飾が施されております。

 管頭部分には 「仙管鳳凰調」 と文字。
 響孔上下に金銀彩・細筆で描かれているのはのようですね----指孔第六孔の少し上あたりに頭があるんですが,かなり薄くかすれてほとんど見えなくなっちゃってます。

 ちょっと変わった工作だなと思われるところは,黒塗りが管体の竹の部分だけでなく,上下のお飾りの一部にまでかかっているところでしょうか。

 塗りの端部分には,細かな筆でぐるりと輪模様が描きこまれていますが,頭尾管飾りの接合部はそこより手前----管と一体となるように整形されているため,一見すると継ぎ目がどこか分からないような作りになっています。

 そしてこの立派な房飾り----
 笛が細いものでなおのことでっかいく見えますね,この房飾りは。

 笛自体とほぼ同じくらいの長さがあります。
 平紐で編まれていて----蝶と吉祥紋かな?

 では,採寸----

 サイズ,特に管の太さからすると明笛18号が一番近いかな?
 管体は細いですが唄口から裏孔までが325もあるので,おそらく 全閉鎖BもしくはBb の清楽に使われた明笛だと思われます。

 唄口まわりをさっとエタノで拭いて吹いてみましたら,音は出ました。

 外からざっと見た感じでは,あちこちに小さな塗りのハガレや塗膜の浮きはあるみたいですが,それほど深刻そうな損傷は見当たりません。まあ,古いものですからどっかしら壊れている,とは思いますが,楽器自体の状態はさほど悪くなさそうです。

 箱の蓋の端のほうに2センチ角ほどの正方形の紙が二枚,上下に貼られておりよく見るとなにかハンコが押されているようです。

 最近はまあ目も悪くなってきましたので裸眼だと何だか分かりません(w)
 デジカメで撮って拡大,SNSの伝手で何て彫ってあるのか読んでもらったところ,上の白字が 「瑞清」,下の朱字印が 「呉×民(一文字不明)」 とのことです。

 「瑞清」 がこの笛の名前,「呉×民」 が所有者もしくは製作者でしょうなあ。
 不明の2文字目は「ムギ」を本字の「麥」でなく 「麦」 の字体に近く篆字に仕立てたもの…にも見えなくはないんですが定かにあらず…検索では「麦民」 だと何にも出てきませんねえ。

 辛亥革命の先鞭者であった康有為とか梁啓超の仲間が,日本で中国語の雑誌を出したことがあるんですが,その同人の一人に 「呉天民」 という人がいました。明治のころの日本に留学していたみたいですが,革命成る前に行方不明になっているとか…………

 ……たぶん,この笛を修理してゆくと,中から固く巻き締めた紙縒りのようなものが出てきます。

 それを開くと,いくつもの茶碗の絵と短い工尺譜が描かれた手紙。
 さらに小豆粒ほどの小さな宝石と,妙なる芳香を放つ細いお香の欠片のようなものが出てくるわけですね。

 茶碗の絵は革命派を支持していた青幇の暗号で,これを解いてゆくと大運河沿いに山西省にある謎の土地へと至る道筋の地図が。

 そして,そこまで解読した瞬間,

 「ほあたああああああああああッ!!」

 -----と奇声を挙げ,斗酒庵工房四畳半の窓を蹴破って,謎のパンダ顔拳士が!!!

 どうなる庵主!仙管鳳凰調の謎とは!?

(もちろん妄想ですがなにか)




(つづく)

明笛について(25) 明笛38号(3)

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斗酒庵 ひさびさにまたまた明笛を買う(W) の巻明笛について(25) 明笛38号(3)

STEP3 唄口の中心は愛をうたう

 さて,問題の明笛38号。

 貫きなおした唄口にはいまだ調整の要がありそうですが,とりあえず音は出る状態となりました。まだ「完全」とは言えませんが, 「鳴らない筒」 から何とか 「笛」 といえるモノにまでは戻ってくれたかと(w)

 もともと,管体は新品のように綺麗な保存状態でしたが,唄口の修理調整のため,その周辺を中心にけっこう傷をつけてしまいました。
 また,古いタイプの明笛としては珍しく,材料として表層の皮が付いたままの竹が用いられていますので,このまま使用を続けると,46号のように温度湿度の差によってヒビ割れの生じる懸念があるため,管全体に薄く保護塗りをほどこしておきたいと思います。

 月琴でもそうですが,楽器の修理では,切った貼った削った組んだの作業より時間と手間のかかるのは,染めや塗りの工程です。
 いちど塗ったら次は三日後とか,けっこうなインターバルが空きますので,その合間になくなっている管尻のお飾りを作っておきましょう。

 材料はブナパイプ。

 実のところ,入手直後に素体の状態まで加工してあったのですが,その後,笛本体と同じくずっと放置しちゃってましたね。


 まずは整形。
 作りかけのお飾りは,ラッパの広がりが少しキツめでした。管頭のお飾りも笛全体も,どちらかといえばスマートな感じですので,それに合わせて少しすぼめます。

 つづいてスオウで赤染め。
 ブナパイプは,このところ使ってる¥100均めん棒にくらべると,若干染まりにくいですね。
 塗っては乾かしで,三日ぐらいかけて染め上げ,下地完成。


 いちど磨いて,黒ベンガラとオハグロで二次染めします。
 頭飾りと色合いが近くなるまで染めを調整し,乾いたところでカシューで塗り固めました。
 赤っぽい部分は,実のとこ磨きの時にちょっとガリッっとやっちゃった(w)箇所なんですが。何か意図せずしてイイ感じになりましたのでそのままにしときます。

 あちこち削り直しているうちに,取付が多少ユルくなってしまいましたので,例によって管の取付け部にニカワで和紙を巻いて調整します。

 メイン作業の管体の保護塗りでちょっと失敗して,ほぼ完了していた塗りをいちどハガして塗り直すというトホホがあり,予定よりかなり時間がかかってしまい,ワークショップでのお披露目もできませんでしたが,帰省前ギリギリの七月末になってなんとか完成しました。

 さあて,駆け込み試奏とまいりましょう!

 音階は----

 ○ ■ ●●● ●●●:合 4B+30
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5C#+34
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5Eb
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5E+35
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5E-5F
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5F#+25
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺  〃
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5G#+10
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5G#+25
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 5Bb+35
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5Bb+25
 ○ ■ ○●● ○●●:凡 5Bb+30

 西洋音階の +30 のあたりでかなりきっちりとまとまっていますね。
 清楽の音階は最低音をドとするとミにあたる音,3番目の音が 20~30%低めというのが定番なんですが,これも 5Eb プラマイ0でちゃんと体現しています。

 ちなみに月琴の場合,最低音は なので3つめの が20~30%低めとなりますが, と同じフレットの高音弦がわの音は ですから,当然これも同じように低くなります。つまりは7音階の3・7番目が西洋音階のそれよりやや低い,というのが清楽音階の特徴。この笛の場合,上述のとおり はバッチリ。 は右手全開放の指遣いだとやや高めになりますが,中指をおろしたほう (右手が○●○のほう) だと誤差の範囲----教則本でもこちらの表記のほうがやや多いようですね。

 唄口の工作はめちゃくちゃでしたが,孔の配置に使用されたたスケールもしくはテンプレートの精度が良かったんでしょう。かなり正確な清楽音階になっているかと思われます。

 管体が細めな割りには音量もそこそこ出ますし,勘所が合えば笛全体が震えるような状態にもなりますのでピッチも合っているようです。
 ただし,唄口の小さな古いタイプの笛なので,篠笛などにくらべると多少癖があり,慣れないと吹き始め,全閉鎖からの低音が少し出しくい傾向があります。
 まあ曲前の音出しで,出しやすい右手開放の高音からはじめ,低音域での息の方向や笛の角度を少し確認しておけばいいことですし,いちど身体がこの笛に最適の構えさえつかんでしまえばさほどの問題もなかろうかと思われます。


(おわり)

明笛について(25) 明笛47/48号(3)

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斗酒庵 ひさびさにまたまた明笛を買う(W) の巻明笛について(25) 明笛47/48号(3)

STEP3 彩湖ぱす

 7月もおしませってきましたので。

 仕事先から一日おヒマをもらい,朝から近所の公園へ。
 修理の終わった笛の試奏と,音階の計測に行ってまいりました。

 これに合わせて新しい計測表も作成。

 ふつうだと考えられない----というか,ふつうの人は考えない変態的な運指も含め,「可能性」として吹いてみます。

 金属やプラスティックの笛と違い,竹笛の場合はほんの小さな管の状態・加工の差が原因となって,通常のピタゴラスさんでは考えられないような現象が生じちゃってることもなきにしもあらず……というか,そういう結果をもとに管に異常がないか,あらためて確かめるのも目的の一つです。

 まずは47号タマネギ----

 ○ ■ ●●● ●●●:合 5C-5C#
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5D-5Eb
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5E+30
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5F#-25
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5F#
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5G#+5
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺 5G#-15
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5Bb-10
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5Bb
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 6C-30
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 6C-35
 ○ ■ ○●● ○●●:凡 5B+40

 「上」 から 「工」 には2種類,「凡」 には3種類の指遣いがあります。
 おもに教則本による違いですね。このほかに長原春田らの提唱した,全閉鎖を 「凡」 とする音階法がありますが,清楽の音階とは関係がないので,ここでは用いません。

 う…うむ,波瀾な音階ですな。
 全閉鎖と1孔開は音の安定がイマイチ。「上」 以降は比較的安定してます。
 「工」b なことから,筒音を # としての配置だったと思われますがさて。
 次にいろんな指遣いを呂音の息遣い(ふつうに吹いた場合)で試してみます。
 やはり筒音が # だと,半開きをしないと は出せませんでしたが,

  ○ ■ ●●○ ●●●

 の運指で,+20 ほどで安定した音が出ました。 

  ○ ■ ●○● ●●○

 もしくは

  ○ ■ ●○● ●○○

 という変態的運指で比較的安定した音が得られます。
 呂音の最高は----

  ○ ■ ○●● ●●●

 で,6C#-35 ,やはり # のちょっと高めなあたりが基音となってるみたいです。




 続いて48号。これは吹きやすい笛ですね。

 47号と比べると管自体がやや太めなのもあり,比較的軽めの息で安定した音が出せます。
 長さからして,もしかすると全閉鎖BかBbの清楽笛かも----と思ってたんですが,全閉鎖Cのドレミ笛でした。

 ○ ■ ●●● ●●●:合 5C
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5D+30
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5E
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5F+35
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5F-5F#
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5G+20
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺  〃
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5A+25
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5A(やや不安定)
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 5B+15
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5B-30
 ○ ■ ○●● ○●●:凡  〃

 呂音の最高は----

  ○ ■ ○●● ●●●

 で,6C ピッタリくらいが出せました。
 高音域が少々安定しない時がありますな,あと,ちょっと甲音が出しにくい。
 吹きはじめはほとんど出ませんで,10分ほどやってたら出るようにはなりましたが多少安定が悪い。
 大甲音(2オクターブ上)は無理っぽいなあ。


STEP4 調整湖の調整

 ----修理は終わっても,「調整」は続きます。
 楽器の場合,外見上また機構的に問題がなくなったとしても,「音」との関係はまた別物。そこからまた,最適な音を出すための細かな調整を経ていなければ,音を出す道具としての復活はあり得ません。

 前回修理の46号も,修理後の試奏の結果を踏まえて唄口の向こう岸や反射壁のへりを小整形したら,かなり吹きやすくなりました。庵主はこの「調整」というのを「穴を埋める」とか「ヒビ割れを継ぐ」といった修理工作とは,まったく別次元の作業だと思っています。時には「音のため」にせっかく修理した箇所を,自分自身を呪いながら(w)破壊したりしなければならないこともありますしね。

 47号は試奏の結果,音階等にさほど問題はない(全閉鎖が から # の中間である事を「問題」としないなら)ものの。呂音で吹いている時,響孔の効果とは関係なく倍音のノイズが混じることがありました。
 この手の異常の原因はたいてい唄口にあるため,あらためて調べてみますと,ちょうど向こう岸の真ん中あたりの縁に,小さなキズが見つかりました。
 おそらくここで息が乱れて,出る音にノイズをかぶせちゃってたんでしょうねえ。

 エポキを盛って補修します。

 見た感じ,ひっかき傷程度の浅いものだろうと思ってたんですが,削って整形してみるとこれが意外と深く,底が頂点であるV字型の谷間のようになってました。
 おそらくは何か四角くて硬い物体……たとえば机の角のようなものにぶつけた痕かと愚考いたします。

 唄口の周辺は笛で最も大事なところなので,ふだんこんなキズがつかないようにいちばん注意する箇所だと思うんですが……この笛の状態や状況をいろいろと考えてみますと,この事故の原因はおそらく----タマネギでしょうねえ。
 前回も書きましたが,アレ,ちょっと重すぎるんすよ。
 演奏姿勢で構えてる時はまだいいんですが,ふつうに持って歩く時とか少しバランスが悪い。
 それで取り落とした時にはアタマのほうから行きますわな,その結果かと。




 48号は保護塗りをした唄口内壁の塗膜に浮きがあり,すこし凸凹していましたので,下地になっているオリジナルの塗料層までいちど削り落とし,均してから再度塗り直しました。

 あとは唄口向こう岸の縁にあった微小なキズを補修。
 47号と同じく,このあたりのキズは微細なものでも,ノイズや不調の原因になることがありますので,ちょっと丁寧にやっておきます。
 これもまた小さい割に意外と深かったため,エポキで充填。練ったエポキをキズの上に盛り,少し固まってきたところで,上からクリアフォルダの切れ端をかぶせて指で押さえつけ,キズの奥まで確実に押し込みます。
 一晩置いて整形----せっかくの黒々ツヤツヤにキズつけたくないので,きわめて精密に加工(w)。

 キズの補修後,47・48号ともに作業部分を塗り直し,磨きなおしました。


STEP5 調整池の伝説


 Web記事でときどき見かける笛子の伝説に,

 管尾の「飾り孔」は紙を貼って笛の調子を変えるためのもの

 ----というアホゥなものがあります。

 実物の笛を見て,ちょーっと考えていただければ分かると思うのですが。
 笛子・明笛の筒音すなわち笛の音の高低は「裏孔」の位置で決まります。一般の笛では,唄口から管尻の先端までの長さでその音の高さが決まりますが,笛子や明笛の場合にはそれより手前に空気の漏れる孔があいてるわけですから,そこで音が決まっちゃうわけですね。
 そして問題の2コの「飾り孔」は,たいてい「裏孔」より管尾がわにありますので,ピタゴラスさんから言ってここを塞ぐことで大きくナニカが変わることはふつうありえません。

 しかしながら,庵主とて。左腕に邪龍が封印されている人もおり,右目を解放すると世界が滅ぶという人のいることくらいは知っており,そのていどにはロマンを信じております。過去の笛でも何かの原因で,ピタゴラスさんに対し叛乱を起していた例がないではないので,いちおう確認してみることにします。

 47号で実験してみましょう。

 まず管表の「飾り孔」だけをふさいだ場合ですが
 ----ピタゴラスさんは偉大なり(w)

 計測結果は何も変わりません。

 次に飾り孔と裏孔をぜんぶふさぎます。
 あたりまえですが全閉鎖の音が低くなります……4B+35 くらいになりましたね。
 おお,これは確かに調子が…と一瞬思い,第1孔をあけてみます。

 従前と変わらず D の音が出ました (物理学的にはwあたりまえ)

 あたりまえのハナシ,「調子が変わる」というなら,全閉鎖が になれば第2音も なり # になってなきゃならんのです。このままだと,第1音と2音の間が長2度あいちゃってるわけですね----どこの超古代音階ですか?

 ほかいろいろなパターンでやってみましたが,まあマトモな音階になることはなく。
 Webの記述とそのコピペ虫どもが,こういう簡単な実験もせずにテキトウたれ流し,拡散してるのが判明したわけですが。

 ただ,この47号の場合。

 マステで裏孔を半あけ状態にすると全閉鎖が のプラマイ10くらいで安定します。その状態で使うと,最低音がCの比較的マトモなドレミ音階になりました。(デフォルトのあまり嬉しくない最低音wは上記事参照)

 ----これがまあ今回の実験のケガの功名,みたいなもので(w)

 この「裏孔」には通常,飾り紐が通されます----ということはですな。
 紐が少し太めのものなら,紐をかけることでマスキングテープと同様の効果があるかもしれないわけ……まあ作りから見て,原作者がそこまで考えてたとは思えませんが

 また,最初のほうの記事でも書いたように,47・48号の前所有者は管尾の飾り孔や裏孔を絶縁テープでふさいでいたようですが,これが「調子を変える」という目的のものでなかったことは,上の実験からも明らかで。さらに47号の場合,テープによる日焼け痕の痕跡は,裏孔のほか管尻と管頭のギリギリにあるので,おそらくは47号のともまた違って,取付がユルユルだった頭尾のお飾りを固定しようとしたものであろうと思われ,そこにWeb記事や庵主の実験のように「管の調子を変えよう」という意図はなかったものと考えられます。



(おわり)

明笛について(25) 明笛38号(2)

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斗酒庵 ひさびさにまたまた明笛を買う(W) の巻明笛について(25) 明笛38号(2)

STEP2 鳴らぬなら鳴るまでホジくれホトトギス


 さて,鳴らない笛はただの筒。

 いや,ただの筒ならむしろ,息を吹き入れさいすれば,何かしらの音が出てもおかしくないはずですが,それすら鳴らないというのですから……これはいったい,何なのでしょう?(www)

 唄口の塗装は全周ハガれ,周辺内部の塗りもボロボロですが,見た感じ唄口自体に欠ケや傷はなく,縁もきれいにピンっと切り立った状態になっています。

 まずはも一度,ふつうに吹いてみましょか。
 それ,フーーーッとな。

 …………ピーもプーもありませんね。息が完全,唄口にスルーされてる感じ。

 ふつうに鳴る笛の場合。唄口に息を吹きかけると,音が出るのと同時に唇に若干抵抗が感じられるものなんですが,これはまあ見事に無感触。

 ちょっと前にも書きましたが,古いタイプの明笛の唄口は,篠笛などのそれに比べて小さいので,息を吹きかけて音の出るスィート・スポットが小さい。
 もしかすると庵主,ちゃんと唄口に息を向けてなかったかもしれん----そこでも一度,こんどはしっかり目視で確認,さらに上唇で孔の位置をしっかり確認してから。

 フーーーーーーーッ

 ……ストローでも吹いてるみたいな感じです。 吹いた直後に管の表面の曇りを確認すると,息はちゃんと唄口に向けて流れているようす。

 ----にもかかわらず,音が,出ない。

 はてさて,理解不能。こりゃまたちょっとした怪奇現象……いや,ワレワレは科学の子。
 まずは前回言ったとおり,この笛のことを徹底的に調べ上げるところからハジメてみましょう!!

 ----ハイ,キターーーーッ!!

 調べはじめて10分(ww)……ご覧ください。
 唄口が指孔の正中線からかなりズレちゃってますねえ。
 前所有者はこれに気がついて,上の画像で見るところの左がわの縁を広げて調整しようとしたみたいなんですが,それでも音は出なかった,と。
 まあ,おそらくこれが 「吹いても音が出ない」 原因の最たるものであろうとは思われるのですが。
 実はこの唄口,ほかにもヘンなこと…いやまあ,ヘンと言いますか,ナットクのゆかないところが何点かございます。

 左を図1,右を図2とします。
 唄口のところでぶった切ったものを,管のお尻のほうから見ていると思ってください----
 材料がポリパイプとかでない限り,実際にはこんな真円であることはありませんがね。(w)

 オレンジ色の部分が唄口です。
 通常,明笛の唄口というものはこんな感じ,篠笛だともう少し幅(β)が広くなってましょうか。

 とまれ,唄口が管の正中線 i に合わせて貫かれていれば,図1のように,唄口の縁から管内側部の端までの距離 γ と δ の寸法はほぼ同じなはずです。
 それで,38号の唄口はこの絵でいうと左がわにズレてるわけですから,単純に考えると図2のように,唇に当るがわの γ はせまく,向かいがわの δ が広くなってるはずですよね----しかし。
 実際の笛を調べてみますと なぜかδがわのほうがせまい----せまいどころか,唄口の縁が内壁ギリギリになってます。

 さらにも一つ。

 図1の状態ですと,唄口βの両端 c と d の縁は,ほぼ同じ高さにあります。そして,38号の唄口が左にズレているとすると,図2のように c と d の関係は d(高)>c(低) となるはず。

 でも,なぜでしょう----

 笛を図2のように,本来の正中線に対して直角に立ててみても,c のがわから d の縁が見えません。
 指孔をふさいで,吹く時の構えにしてみると,dの縁がcの縁よりも「下に」なっている のです!
 d が c より低い位置にあると,吹いた時の息は d の角に当らず,管の表面をただそのまま通り過ぎてしまいます。横笛は集束された息が d の角に当って内外に分かれ,渦を巻くことで音が出る(----らしい。横笛の発音の正確な原理については難しすぎて庵主には分かりませんww)ので,ここに息が当らないということは,いくら息を吹きかけても,音には変換されないわけですね。

 そりゃこの笛,どやったって鳴りませんわな(w)

 ………でもナゼだ。
 庵主のさんすう脳が沸騰してきたぞ。
 唄口の孔βの中心が,管の正中線iよりも左がわにズレているのに,γ>δであり,かつ,唄口の縁 d が c よりも低いとするなら,これはいったいどうなっているのか?

 たすけてぇッ!!
  さんすう先生ーーーーッ!!
(泣)


 うむ………おそらく,基本のところはこんな感じでしょうか。

 正確な角度とかは分かりませんがこの作者,唄口をかなり妙な角度で斜めに貫いてしまったのだと思われます。

 ただ,それだけだと左右の空間が γ>δ となっている問題は解決されますが,唄口の縁の高さの問題は残ります。 そこでさらにしつこく観察を続けていきますと,この唄口のあたりで管がわずかながら平たく潰れているらしいことが判ってきました。
 左図の濃い緑色のラインは,それを少し大げさに描き入れてみたものです。

 その上で前所有者が縁を削って加工してしまった(図の青色の部分)ため状況がさらにこじれ,上述のよう,ウンともスンとも鳴らない物体になってしまった,と。

 ……ようやく,解決。(泣)

 三日ばかり修理もせず,竹ざっぽをあーでもないこーでもないと眺めていたわけですが----むかし知識の深淵に到ろうとして,友人といっしょに庭の竹を何日もニラミ続けた先生がいた,というハナシをおもわず思い出しましたわいな。(ちなみに,数日したら友人はおかしくなり,さらに数日したら自分までおかしくなってきたみたいなのでやめたそうですww)

 しかし分かってみますと………エラい笛売りやがったものですな,この作者は(汗)

 唄口というのは,笛の孔でいちばん最初に穿たれるものです。ふつう,竹はみんな太さや長さが微妙に違うので,最初に唄口をあけてその竹筒の音を確認し,指孔や詰め物の位置を調整しながら作ってゆきます。
 もしこの笛が最初からこの状態だったとすれば,音が出ないのですから,この笛の作者はその確認をしていない----ということは,彼は竹筒に孔をテキトウにあけるだけの作業をしていた,ということになります。
 まあもちろん,唄口や指孔の位置は何らかのスケールシートやテンプレートのようなもので決められていたんでしょうが……同じような例は月琴のフレットの工作なんかでもありましたので,同様に薄利多売楽器である明笛で同じようなことがされていたとしても,庵主的には何ら不思議はありませんが----

 どうれ,とりあえずその頭を出せ,このゲンノウで殴ってやろう(怒々 笑っているが目が笑っていない)

 前所有者の行為や最初に見た保存状態から考えますと,この笛はおそらく,笛屋の店先でちゃんと選んで買ったのではなく。

 通販か何かでお取り寄せ>
 吹いてみた>ダメ。
 イジってみた>やっぱりダメ。
 >ハイ押入れ行き決定!!

 というような過程をへてウチに来たのではないか----と推察されます。
 ホレ今だって,雑誌やTVの通販とかネットのお取り寄せで同じような目にあったオボエのある人----周りにけっこういますよね?(www)


 唄口の問題も含めて,観察から判明したこの笛の要修理個所をまとめると,だいたいこんなものでしょうか。

 まずは唄口にいろいろと部分的な補修・調整をやってみましたが,どれも音が出る,まではゆくものの実用的なレベルには達しませんで。もう少し,もう少し,と調整してゆくと,こんどはまた音が出なくなるというのの繰り返し……原作者のあけたこの孔,よっぽど絶妙にイヤな位置と角度であけられてたみたいですね。

 これはもう根本療治,これしかありません----

 いちど埋めてあけなおしましょう。

 範囲が広く,後で精密な加工をする必要がありますので,パテの骨材にはいつもの竹粉ではなくツゲの木粉を使っています。
 あらかじめ管の中にラップを巻いたガリ棒を差し込んで固定し,内がわにあふれないようにしてから。
 たっぷりのパテを唄口に盛り付け,半固まりの状態の時,さらにしっかりと押し込みます。

 用心のため数日置いてきっちり硬化させ,表面を平らに整形したら穴あけ作業です。
 こんどはしくじらないよう,管の中央を出すのと,唄口の中心決めはかなり神経質に何度もやり直しました。
 さらに工作でも万全を期すため,穴あけのさいに位置がズレないよう,角材ではさみクランプでしめて管をがっちり保定します。

 最初はネズミ錐。
 竹に孔をあける時の手工具は主にこれです。穿孔の際に竹が割れにくいんです。

 指孔の正中線上に丸い孔があきました。
 吹いてみましょうかね----うむ,笛というよりまさしく瓶の口に息かけた時のような,ぼーっていう音が鳴ります。

 あとは吹いて音の出具合を確かめながら,ナイフやリューターで慎重に慎重に広げてゆきます。指孔とほぼ同じか,わずかに大きいくらいがふつうですね。
 あるていど広がったところで中を覗いてみますと----埋めこみの際,パテが内がわにあふれないよう,いちおう処置はしておいたんですが,それでも漏れた少量のパテが反射壁や内部の周縁にへっついて固まっちゃってました。こういうのももちろん音の邪魔になりますんで,ガリ棒やリューターで掻き出し削って取り除きます。

 こんどの唄口の中心は,指孔の正中線とほぼ同じです!


(つづく)

明笛について(25) 明笛48号(2)

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斗酒庵 ひさびさにまたまた明笛を買う(W) の巻明笛について(25) 明笛48号(2)

STEP2 ナイスバルク!ナイスバルク!!

 48号の修理は,まず貼られていた赤い絶縁テープを剥がすとこから。

 すでに粘着力はほとんどなく,テープ本体はカッチカチの板みたいになっており,裏面についていた接着剤は笛の表面に残って変質し,硬いツヤツヤの層をなしております。
 このカチツヤ層……水やエタノでぬぐったぐらいじゃビクともしませんな。
 かと言ってシンナーなどの乾性油系を使うのは,下の塗装が解けちゃいそうで怖いですねえ。

 ここはいっちょう職人ワザ(w)で。

 接着剤層の表面をペーパーで軽く荒し,エタノを塗ってはナイフでこそぎます。(原始的www)
 おおおおおお……もとは接着剤なのに粘りはゼロ,なんか完全に固まって,別の物質になっちゃってますね。
 シャリシャリと伝わる指先の感覚だけで,下地紙一重のところまで削ってゆきます。

 まあ,多少キズがついちゃってもしょうがないか----とは思ってたんですが,意外とうまく取り除けました。

 つぎに指孔の2-3付近で,竹表面のカケから浅い溝が出来ちゃってますのでこれも埋めちゃいます。これ自体はそんなに深刻な故障ではないんですが,指孔の周辺にこういうのがあると,わずかな空気漏れとかで運指や音に微妙な支障が生じる場合がありますのでいちおう念のため。
 色が黒いんで,いつもの竹粉ではなく唐木の粉のパテを使います。
 これもテープ痕と同じく下地紙一重まで削り込んで……ほーれ,ちょっと分かりますまい?

 あとはこちらも内外の保護塗りと,お飾りの補修のみ。

 こちらの要補修箇所は管尻の黒いラッパ飾りの縁にあるネズミの齧り痕と,白いリングの欠ケ
 頭飾りにも多少のキズはありますが,このくらいなら磨けば目立たない程度ですね。
 頭飾りは二つに分解できますが,基部のほうがかなりガッチリ接着されており,ひっぱったりひねってはずれるような感じでもなさそうでしたのでそのままに。お尻飾りのほうも同様しっかりと接着されちゃってましたが,こちらははずさないと修理ができない状態ですので,大きめのコップに水を張って,そこにお飾りの縁まで2時間ほど漬け込みました。
 これで無事はずすことには成功したんですが……うわあ,接着剤べっちゃりつけられちゃってますねえ。

 黒い部分の齧り痕は唐木のパテで埋めるとして,問題はこっちのリングですね。
 フレットに使った牛骨の端材で継ぎましょう。
 小さい部品なんで保定しづらく,加工するのがけっこうタイヘンです(w)
 うまくはまるようあらかた整形した部品を,作業台にくっつかないようクリアフォルダの切れ端にのせ,そこでそのままたっぷりのエポキで接着します。上からもう一枚クリアフォルダをかぶせ,クランプではさみこむと,はみだした接着剤に補修部分がいい具合に包まれ,その後の作業がしやすいカタチでガッチリ固定されます。
 小さいもの,細かいモノを作る時は,素材をケチったり最初からきっかりピッタリ仕事をしようとすると,後でかえって仕事が増える可能性があります。
 いつも言ってるように 「小さいものは大きく」「大きいものは小さく」 して作業するのが基本(w)

 一晩置いて整形し,磨き上げます。
 ちょっと色味が違っちゃってますが,まあこんなものでしょう。

 お飾りの補修も終わったところで,塗りの終わった管を磨きます。

 #1000の Shinex に石鹸水をつけて表面のホコリや凸凹を取り除き,さらに細かいペーパーで磨きこみます。

 最後に,亜麻仁油とカルナバ蝋に#3000のコンパウンドで全身磨き上げました。
 見よこの上腕二頭筋!…ではなくお飾りのテカり加減を!!(w)

 おおーぅ,黒く艶光りするこの管体…やや太めのがっちりした印象もあいまって,思わず 「ナイスバルク!」 と叫びたい(w)

 管頭飾りが中空でないので,けっこう持ち重りがしますね。
 今季修理した明笛の中でいちばん重いかも。
 演奏姿勢に構えると,お飾りの重さで頭がわがやや下がりますが,大きめの笛なのでバランスは悪くないですね。

 管の修理は完了しましたが,47号ともども,実際に演奏レベルでの音を出しながらの最終的な調整がまだなので,この時点では 「楽器としてちゃんと直ってるかどうか」 はまだ分からないのですが……まあ,やたらキレイに仕上がりましたねえ。
 調整作業と並行して行うので,試奏と音階計測の結果については,あとでまとめて報告します。

 さてこれで,あと残るのは明笛BOXから出てきたやり残しの38号……ふうむ,今度は鳴るように直せるでしょうか?


(つづく)