明笛について(28) 53号(2)

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斗酒庵 長いものにまかれる の巻明笛について(28) 53号(2)

STEP1 

 内部のインチキ塗料が多少劣化しているほか,管体にさしたる故障はなく----まあお酒を飲んだ直後に吹くとエラいことになるだろうなーという以外,演奏するにもさして支障のなさげな状態の明笛53号ですが。

 庵主はお酒飲みなので,これを吹くにはとても困る(w)ということもあり,まずはこの塗料をできるだけ削っちゃいましょう。

 ときに,この明笛53号の管体には派手に見事に黒い斑模様がついていますが,これはふつうの篠竹を高価な「斑竹」に見えるよう薬品で処理したものです。
 この「人工斑竹」の作りかたは,明治時代の「工芸裏ワザ集」みたいな本によく載ってますが,簡単に言うと皮付きの状態で薬品をふりかけて表面を焦がし,ザッと削って磨いて仕上げるというもの。
 その工法上,管体の表面に竹でいちばんカタい表層部分が中途半端に残ってしまっているため,素材としてはやや不安定で,場合によってはただの皮付竹や完全に皮を剥いた管より割れやすくなっていることがあります。
 量産型で加工が粗いのもありますし,ここは管体保護のためにも表裏ちゃんと磨き,塗り直してやらなきゃなりますまい。

 ----これも粗い加工の賜物。(www)
 管内を削り直してる作業中に,管頭の詰め物がすぽんと抜けとれてしまいました。

 うーむ,ふつうもうちょっとちゃんと固定してあるんですが,これはほぼ紙丸めてつっこんであっただけみたいですね。ちょっとつついただけでポロリですわ。反射壁(唄口に向いたがわ)は塗料で塗りこめてしまうので,それで固定されると考えたのでしょうか。

 ともあれ。
 以前の修理でも何回かありましたが,この管頭の詰め物は笛の製作年代を知ることのできる貴重な資料です。
 さっそく慎重に展開してみましょう。

 出てきたのは,いつかのどっかの新聞の切れ端だと思いますね。
 残念ながら何年何月発行,みたいな部分は残ってなかったものの,記事のひとつに少し興味深い部分がありました。
 記事自体が断片で全体は分かりませんが,今ある部分から察しますに,桑名の物持ち,諸戸清六さんが,建ててから一度しか足を踏み入れたことのないような豪邸を大隈重信の未亡人に寄贈した,というものらしい。
 大隈候が死んだのは大正11年ですから,この笛はそれ以降に製作されたもの,ということになります----比較的新しい明笛ですね。ぴったり何年何月みたいな情報ではありませんが,笛の場合は製作年代の下限が分かっただけでもかなりのみッけもんです。

 詰め物を入れ直します。
 元の詰め物は固定がユルユルだったうえに,ピッチもかなり合ってなかったようなので,そのへんもついでに多少なんとかしておきたいところですが----ま庵主,笛専科じゃないんで,キッチリとはいきますまいが(汗)

 新しい詰め物はコルク。

 コルクは管内に少しユルめにおさまるよう削り,和紙を巻いておさめます。何度か軽く吹いてみて,位置を探りながらピッチを整えたら,管に触れている縁の部分に唄口から,溶いたニカワを筆で挿して和紙に吸わせ,固定します。
 最後に,反射壁になる面全体にニカワを刷いて,管尻から挿した棒の頭でトントンと軽く叩き,表面を平らに整形したら出来上がり。
 あとはしっかり乾燥させてから塗るだけです。

 固定するまでの調整がラクなのと,紙を丸めただけのものだと,塗料を吸っていつまでも乾いてくれないことがありましたので,庵主はこの方法でやっていますね。

 さてこれで残りは表裏塗り直すだけ。
 一日一塗りで,塗った後は何もできませんから,この間にお飾りにも手を入れておきましょうか。
 前回書きましたように,この笛管尻のお飾りは欠けてしまっています。これは「使ってる」うちどっかにブツけて欠けちゃった,とかではなく。「作ってる」うちに材料が粗悪で欠けちゃったのを 「まあいいか」 ということでそのままにした(^_^;)もののようです。

 この製作者には,割れ面をすべすべに加工しておく,くらいの気持ちはあったようですが,そもそもこれを使わない,交換するといった選択肢は,精神面からも経済面からもハナから無かったご様子----まあなんてことざまぁしょう!

 というわけで,後代これを手にした貧乏性で神経質な者が,さンざに文句を言いながら尻拭いをする,という歴史構図となっております,がっでむ,つーよーにー(w)

 牛骨フレットの端材を使いましょう。
 ちょうどいいくらいの厚みのものを切って削って,欠けてる部分にエポキで着けて,磨きます。
 小さいうえに固いんでけっこうタイヘン。
 ----色味が違うので多少BJ先生感は否めませんが,まあこんなところでイイでしょう。

 そうこうしているうちに(とは言っても1ヶ月くらいかかっちゃってますのよ),管体の塗り直しも終わりましたのでさっそく試奏!----うん,これはダメだ。

 この段階では笛を「使用可能な」状態にしただけですので,塗装を削ったり表面を磨いたりはしたものの,唄口や指孔はほぼ製作当時に近い状態のままなんですが。

 唄口の加工が劇的にヒドいですね。
 笛表面に見えている孔の縁は比較的キレイなんですが,孔自体が内がわに向かってわずかに先細りになっている上,内壁がひどく凸凹しています。ちょっとおおげさに描くと上の図みたいな感じになっちゃってますよ----どんな加工具を使ったらこんなふうにできるのか,とりあえず鉄製の椅子に縛り付け両手両足に指締め具を噛ませてから尋ねたいくらいです。

 とりあえず,唄口の孔の縁を整形。
 内がわの凸凹を均し,孔の縁が図下の右みたいに,まっすぐ切り立ったカタチになるよう削り直しました。

 だいたい削れたところで組み立ててお外に出ます。

 頭尾のお飾りの取付けが少しユルくなってたので,持って歩いてもはずれないよう,薄い和紙をニカワで貼って調整しました。接着してはおらずきっちりハメこんであるだけですが,イザという時のメンテナンスを考えたらこのほうがイイです。
 公園に出かけて試奏です。冬なのでちと寒いですが我慢我慢----思いっきり吹いて確かめたいですからね。
 唄口はいちばん大事で繊細な部分です。
 実際に吹きながら,細い丸棒の先にペーパーを貼った治具でさらに調整してゆきます。

 元が劇的にヒドかったので,多少の粗が残るのはカクゴしてたんですが…唄口をざッと削っただけで,ビックリするくらいイイ感じで鳴るようになりました,イヤほんと。
 調整終了後,削り直した唄口や指孔の縁を塗り直し,あらためてオモテもウラもピカピカに磨いて完成です!

  ○ □ ●●● ●●●:合 4C-20
  ○ □ ●●● ●●○:四 4D+40
  ○ □ ●●● ●○○:乙 4E
  ○ □ ●●● ○●○:上 4F#-35
  ○ □ ●●● ○○○:上 4F#-20
  ○ □ ●●○ ○●○:尺 4G#-40
  ○ □ ●●○ ○○○:尺 4G#-30
  ○ □ ●○○ ○●○:工 4Bb-40
  ○ □ ●○○ ○○○:工 4A+45
  ○ □ ○●○ ○●○:凡 4B-5C
  ○ □ ○●● ○●○:凡 4B+25
  ○ □ ○●● ○●●:凡 4B+20

 全閉鎖「ド」のいわゆる 「ドレミ笛」 ですね。
 チューナで測ると全閉鎖から第3音までの間隔が多少おかしいのですが,まあただ聞いてるぶんにはさほど違和感はありません。呂音での最高は ○ □ ○●● ●●● で5Cと5C#の中間くらい……ちょっと高めか…うーん,ピッチの調整,もう少しだったかな?
 ふだんは響孔をマスキングテープでふさいで吹いてるんですが,ひさしぶりに笛膜使ってみたらまあビビるビビる(wwほんらい明笛ではそれで正常)触れてる指や唇にけっこうな振動がくるぐらいです。
 清楽の楽器としてはちょっと使いにくいものの,ドレミ音階の明笛としては悪い出来ではないかと思われますな。


(つづく)

明笛について(28)52号(3)/53号(1)

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斗酒庵 長いものにまかれる の巻明笛について(28) 明笛52号(3)/53号(1)

STEP0 来笛閑話

 楽器というのはフシギなもので。
 こうやって何か直してやってると,関連する何かが引き寄せられるようにやってくることがあります。

 52号修理中に2本の笛が届きました。
 1本はこちら----

 明笛53号----ラベルも破損することなくしっかり残ってますね。
 他の製造元のラベルは管頭飾りのがわを「上」にしているほうが多いのですが,ここのは唄口がわが上,と逆になってますね。上段が 「OSAKA JAPAN」 真ん中斜めに 「SHEIZO MOTO-H.KIDA」 下段が 「MINTEKI TOKUSEIHIN.」

 ----うむ…多少ヘンテコな表記が混じってますが 「大阪・日本」「製造元-H.Kida」「明笛 特製品」 で間違いなかろうもん。
 いまのところ,大阪の「H.Kida」に該当するメーカーさんに行きついておらず,製作者については不明です。

 明治後期から大正時代ぐらいの明笛ですね。
 唄口がやや大きく,表の管尻の飾り孔が省略されています。

 人工斑竹(竹の表面に硫酸等の薬品をふりかけて焦がしたもの)の管体,骨製の頭尾飾り。

 管内外ともに比較的きれいな状態で,使用痕もほとんどありませんが,管内の塗りが経年劣化を起こしており,唄口・指孔の縁をはじめ,あちこちでボコボコになっています。
 この「塗り」はウルシではなく,例のエタノで拭くとベトベトになる顔料系の塗料ですね。清掃ついでに消毒しようと管内に流したら,露切りの布が真っ赤になって出てきましたわい。

 あと,これは「損傷」には含めませんが…尾飾りの一部が欠けています。
 欠けてる部分がキレイに磨かれていることから,これは後でぶつけてこうなったとかじゃなく,製作時に欠けちゃったのを,そのままハメこんでツラっと出荷したもののようですね。このレベルの明笛は,楽器というより玩具一歩前の扱いだったようなので,製作者の「もうイイヤ」加減が堪りません。
 息を入れてみると,多少ひっかかりはありますがいちおう音は出る様子。全体に「キズ」は少ないので,問題となるのは内塗りの塗料と,このお尻の欠けたとこをどう処理するか,といったとこでしょう。
 音はまだ分かりませんが,派手な外見の笛なので吹いてるとカッコ良さげに見えましょうなあ。

 もう1本は…うん「明笛」ではありませんね。

 尺八?洞簫?……尺八はオモテ4孔ウラ1孔,洞簫はオモテ5孔にウラ1孔ですが,これは明笛や古典調の篠笛と同じにオモテ6孔,管尻がわの裏面にもう一つ孔があいてますが,ニンゲンという生物の指で押さえるのは不可能な場所にあるので,おそらくは明笛の裏孔と同じく筒音を決めるための孔でしょう。
 清楽の明笛といっしょに出品されていたので,清楽器として使用されていたものである可能性は高いのですが。
 さてコレ,なんなのでしょうねえ?
 イロイロとギモンはありますが,とりあえずこちらについての考察は後回し----続報をお楽しみに。



STEP3 なんじ牛刀となるも劉備となるなかれ

 さて,52号の修理は終盤。
 いつものように¥100均のめん棒を削って,頭と尾のお飾りをこさえます。

 前々回触れたように,この作者の笛のお飾りはごくシンプルな形ではありますが,頭のも尾のも単純な円筒形ではなくほんのすこーしだけ先のほうが広がっています。寸法が短いのもあって,この微妙な開きを再現するのは意外とタイヘンでした。

 次に,この楽器は両端にあったお飾りの取付部が削りとられてしまっています。

 頭飾りはお飾りのほうに凸付けて管頭の孔に挿しこめばいいのですが,尾飾りのほうはそうはいきません。せっかく最長不倒記録を出した管で,ちょっともったいなくはあるのですが,端のほうを数ミリ削って段差を作り,取付部分を再生することにします。

 骨とか象牙っぽく見せかけるため,これらは白木のまま緩めたエポキを塗ってキツめに目止めして木材っぽさを消し,ラックニスやカシューの本透明でツルツルのピカピカに磨き上げます。

 んで管頭のお飾りにはこうト----いつもの悪戯 「金鈴子」 を仕込みます。

 以上これにて修理完了!----さっそく音出しに公園へ!

  ○ □ ●●● ●●●:合 4Bb_4B
  ○ □ ●●● ●●○:四 5C+25
  ○ □ ●●● ●○○:乙 5D-5
  ○ □ ●●● ○●○:上 5Eb_5E
  ○ □ ●●● ○○○:上 5Eb_5E
  ○ □ ●●○ ○●○:尺 5F_5F#
  ○ □ ●●○ ○○○:尺 5F_5F#
  ○ □ ●○○ ○●○:工 5G_5G#
  ○ □ ●○○ ○○○:工 5G_5G#
  ○ □ ○●○ ○●○:凡 5A_5Bb
  ○ □ ○●● ○●○:凡 5A+35
  ○ □ ○●● ○●●:凡 5G_5Bb

 うむ…楽器の音階としては少々アレですかな?
 もちろん唄口は再生ですから,オリジナルの音階とピッタリ同じというわけではありません。まあ,チューナーの針が高いほうで振り切れて次の音階の低いほう中間くらいまで行くというあたりでは逆に「見事に揃って」ると言えましょうか。
 上の記録はまだ初期のころので,この時は呂音の最高 ○●● ●●● が出せませんでしたが,ちょっと練習してから測ってみたら,5Bb+40くらい----ピッチはだいたい合ってるようです。
 前回の報告で書いたように,後々調整するのを考えて唄口を小さくあけてるので,慣れないうちは甲音が少し混じり気味になりましたが,慣れると中間音になってるあたりも,だいたい低いほうの30%ほどプラスのあたりでまとめられるようです。


 いままでにも「小山」銘の明笛は,何度か見る機会はあったのですが,実物をじっくり調べられたのは今回が初めて。管体が若干細いのもあって,やや扱いにくいところはありますが,51号などと同じく筒内に塗りが施されていないので,音はかなり中国笛子っぽい感じになり,アタック音がけっこう効きます。内塗りがないぶん多少管理に手間がかかりますが,慣れるとそこそこいい音で鳴ってくれますね。

 この笛で残る疑問はこの管頭の刻書----ううむ…クセがかなり強くて読めませぬ。
 最初が「一枝」じゃないかなとか,5・10文字目は「去」かな,とかくらいで…いつもですと一部が分かればそこから何らかの漢詩が検索ヒットするんですが,今回はいかんとも…(^_^;)

 お判りの方がおられましたら,是非ともご教授くださいませ。


(つづく)

明笛について(28)52号(2)

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斗酒庵 長いものにまかれる の巻明笛について(28) 明笛52号(2)

STEP2 ふさぎこむもの

 篠笛とかに比べると,明笛の唄口は小さい。

 Webで見ると,管径に対して唄口が小さいと甲音ばっかり出て呂音が安定しない,みたいな事がよく書かれてますが……これホントでしょうかねえ?
 庵主はいっつも,甲音が出ないんで苦労してるんですが………………

 52号,修理に入りましょう。
 前回書いたように,この楽器で唄口が広げられたのは,そういう使用上の調整ではなく,前修理者が間違って一番大事な唄口の真ん中へんを潰しちゃったためと推測されます。
 孔を広げる工作もちょっと雑で全体の形も少し歪んでますし,その広げてる方向にヘコミが続いてるのですから,そもそもこのやりかたではどれだけ削ってもキレイな周縁には戻りませんな。

 ヒビ割れ修理のため,管を紐か細いハリガネで縛ったためについたものであろうこのヘコミは,ごくごく浅く,ちょっと見には分からないていどのものですが,唄口を横から見ると,本来ならきれいな弧になってるはずのラインが,真ん中のあたりで微妙に歪んでしまっているのが分かります。

 さて,まずはこのヘコミをどうにかせにゃならんわけですが。
 肝心のヘコミがあまりにも浅すぎるので,通常のパテ盛り工作ではうまくいかなそうです。
 こういう場合はむしろ,削って均してしまったほうがラクなんですが,管の肉厚がそれほどないようですし,唄口の周辺ですので,後々どういう影響が生じるか分かったものではありません。
 そこで,まずは骨材を入れずエポキだけを盛ってみました。

 木固めの塗装下地でここだけ厚盛りしたようなものですな。
 エポキだと浅いヘコミにもしっかり食いつきますし,透明なので硬化してから均し,上から保護塗りをすれば目立たなくなります。

 一晩置いて整形。
 とりあえず唄口周縁の管表面が面一で平らになりました。
 これでふつうに音が出れば,唄口の拡張工事自体には目をつぶり,全体をさっと保護塗りして終われたとこだったんですが。

 試奏してみたところ。
 呂音は若干引っ掛かりがあるものの普通に出せましたが,甲音がまったく…ピクリとも…いくらふンばってもスカしてもプっとも出ない状態----なるほど唄口が大きくなると…(以下略,冒頭にもどる)
 つても篠笛に比べると,現状でもずいぶんと小さめなんですが。(^_^;)

 まあ前修理者の工作が雑だったあたりで,こうなる予想はないでもなかったんで,あきらめて唄口を再生することといたしましょう。
 今回はツゲの木粉をエポキで練ったパテを使い,こんな工法でやります。

  • まずはクリアファイルを幅3センチほどの短冊状に切ります。
  • 丸棒に両面テープを少し貼り,先ほどの短冊を巻きつけて,細いマスキングテープで留めます。
  • これを管内に差しいれ,唄口のところでマスキングテープを剥がし,管の内側に展開させ,棒をそっと抜き取る。
 ----従前は,ちょっと固めに練ったパテを硬化直前に唄口へねじ込んでいたんですが,それだとオリジナルの部分への食いつきがイマイチなのと,管の内がわにあふれたぶんをキレイに均すのが(表からまったく見えない作業なので)けっこうタイヘンだったのですが。この方式だと,パテが多少緩くても管内にほとんど入り込まないので,後々の作業がかなりラクですね。

 骨材を混ぜると,エポキの硬化が若干遅くなるようですので,二日ぐらい時間をとってから次の作業に。
 管表面の余計な部分をなるべく傷つけないように,パテを管表面と面一に整形したところで,パテ部分の強化のため,エタノで緩めたエポキを塗って滲みこませます。また一日置いて,表面をも一度整形。

 そして穴あけです。

 クリアフォルダは,孔を開けたあと,ツマヨウジか棒で少し押しこんでやれば,ペコンと簡単にはずれてくれます。
 そこでこれを入れる時に使った棒に最初より多く両面テープを貼り,くっつけて管からひきずり出したらお役御免。

 指孔の大きさカタチを参考に,孔を広げてゆきます。

 時折息を入れ,具合を確かめながら削ってゆきます。
 実際に吹いてみるまでちゃんとした調整は出来ませんが,それを見越し,後々で拡張可能なよう,ちょっと小さめなところでやめときましょう。
 パテ部分はそれなりに固いのですが,角の部分はまだごくモロいので,だいたいのカタチができたらもう一度,緩めたエポキを滲ませまておきます。
 ここまでやったところで外に持ち出し,吹きながら最後の調整。

 せっかく直した唄口が傷つかないよう,やわらかい紙を幾重にも巻いて,公園まで持って行きましたよ~

 従前よりずいぶんと小さい唄口となりましたが,こんどは呂音も甲音もいちおう出るようになりました。
 あとはパテ盛りした部分の補強と補修箇所の誤魔化しのため,少し濃いめの色で保護塗りします。


(つづく)

明笛について(28)52号(1)

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斗酒庵 長いものにまかれる の巻明笛について(28) 明笛52号(1)

STEP1 長いものにはマカロニ

 さて,モノは夏の草刈り帰省から帰ってすぐくらいに届いてたんですが。
 イロイロありまして報告が遅れております。

 明笛52号は管長575……お飾りもなく管がいくぶん細身なので,ちょっと見そんなに長いように見えませんが。これは庵主がいままで扱った明笛の中で,竹の管部分だけだと過去最長。ひとつ前の51号が更新したばかりの記録(560)が,またまた更新されました!

 頭部刻字の最後に 「小山」 と刻まれるこの作者の笛は,だいたい同じような姿寸法で,明治の明笛としてはちょっと古めかしいタイプに当たります。
 明楽・清楽の明笛の多くにはラッパ状の飾りが頭尾についています。これ,当初はごくシンプルなものだったのですが,明治の後半くらいになるとカタチも様々,デザインもやや派手に,大きく長くなってゆきます。

 これに対し,この作者の笛の飾りはだいたい,ごく短く頭尾ともに先端に開きのあまりないシンプルな筒状をしています。

 これは清楽流行前に 「南京笛」 と呼ばれていたタイプ----唄口や指孔の前後に籐や糸が巻いてある----今現在の中国笛子により近いスタイルですね。

 さて,その頭尾の飾りですが,今回はいづれも欠損。
 飾りがないのに取付の凸部だけ残ってたんじゃ見栄えが悪かったからでしょうか,どっちの端もキレイに削られちゃってます。

 明笛のお飾りは取付けが比較的ユルユルで,また素材が骨とか象牙とか牛の角とか動物質のものであることが多いため,落として壊れたりネズミや虫に食われてしまったりでなくなっちゃってることも少なくありません。
 お飾りが壊れたり無くなったりした後の対処として,これと同じように取付け部を削り,両端をふつうの竹笛みたいに整形しちゃってる例はけっこう見ますね。

 管内の汚れがスゴいです…真っ黒ですわ。
 響孔のところに紙を貼った痕もありますし,管のところどころに細かな傷もあり,これが楽器として使用されていたものであることは間違いなさそうです。

 唄口とその周辺には,補修らしき痕跡が見えます。
 その頭がわ少し上に,管をぐるっと巻いて何かが擦れたようなキズ。
 唄口真ん中あたりの縁には,削ったというより圧がかかって潰れたようなごく浅いヘコミができ,上下の縁にも同じようなヘコミが見られます。いづれもちょい見で分かるようなものではありませんが,唄口周辺,けっこう傷だらけですわ。
 唄口の寸法は指孔より一回り以上大きくなってますが,これも製造段階からこうだったのではなく,この修理後の調整・補修として前使用者によって拡張されたもののようです。

 たぶんなんですけどね…コレはまず唄口の上がわにヒビが入ってしまったので,接着剤を割れ目に流し込み,管を糸か細いハリガネで縛って固定したんじゃないかと思います。ところがその作業中に,こんどは唄口の下がわにもヒビが発生----接着作業をもう一度やったんですが,その際なぜかよりにもよって,唄口のど真ん中あたりを思いっきりふン縛ってしまったご様子。
 ……あわててたんでしょうねえ。

 ヒビ割れの処理は接着剤もウルシで当時の定石通り。キッチリきれいに仕上がっていますが,終わってみればエアリード楽器でいちばん大事な唄口の縁が壊滅状態。
 潰れたりへこんだりしてしまった縁をもう一度立てようと,唄口周縁を全体的に削り直した----ってとこでしょか。ただしこちらの作業は,ちょっと見にも縁の内壁がデコボコになってるのが分かるくらいで,お世辞にも上手とは言えません。

 損傷や不具合のある個所をまとめると----こんなとこでしょうか。

 まあ指孔のズレは後付けでなく原作者によるデフォルトなわけですが。
 全体にヨレてるわけではなく,右手・左手でそれぞれふさぐ三つづつで分かれてるので,もしかしたら人間工学的なことを考えて穴掘った結果かもしれません(うーん,たぶん3%くらいの確率だとは思いますwww)。

 中を洗ってちょっと吹いてみましたら……うん「音が出ない」というほどではありませんが,かなり息力がいる感じ。呂音はヒョロヒョロ,甲音は全く出ません。

 今回の修理のメインは,なによりこの唄口の再生になりそうですね。


(つづく)

明笛について(27)51号

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斗酒庵 長いものにまかれる の巻明笛について(27) 明笛51号(1)

STEP1 そのもの蒼き衣をまとい…

 そうこうしているうちに(w)----
 また1本の明笛が,我家に舞いこんでまいりました。
 おぅ…長いですねぇ。
 いままであった長物たちとくらべてみましょうか。

 全長667は南京笛スタイル(現行の中国笛子と同類,管に糸もしくは籐の補強巻がある)のものを除けば,歴代第一位。竹の部分だけでも560あります。
 いままで一番だった31号で全長646,管長539ですからね。
 こっちのが2センチくらい長いです。

 青い錦織のきれいな袋に入ってきました。
 ちッ………もうちょっとボロけてたら,躊躇なくほどいて月琴のバチ布にしたものを。(w)
 縛り紐が若干傷んでますが状態はそこそこ良好。
 布地は上等ですが裏布もなく綿も入ってないんで,持ち歩く時の入れものには向きませんね。

 管頭の飾りがかなりボロボロ。
 前所有者か古物屋さんが再接着したらしく,接合部にどっちゃり接着剤盛った形跡が見て取れますね。
 管尾のお飾りにもちょっとカケがありますが,こちらの損傷はこの一箇所ていどです。

 笛として肝心の管の部分はやたらとキレイ。うむこれはあまり……いや,もしかすると楽器としては一回も使ったことがないんじゃないかな?

 唄口も指孔もほとんど加工時のままみたいな感じ,なにより響孔のまわりに笛膜を貼った痕跡がまったく見えません。
 管オモテには薄く生漆が塗られ,磨かれているようです。

 唄口のところの反射壁が黒くなってますから,ここもやはり漆か何か塗ってあるとは思いますが,管内ほかの部分には塗りが施されてません。削って磨いてはありますが,ほぼ竹のそのまま。やたらと白く,使ってて放置されれば自然とつくようなヨゴレやシミすら見えません。加工時の細かなヤスリ痕みたいのまで見えますね。

 中国笛子は管内いまもほぼ無塗装ですが,ただでさえ篠笛などより長い明笛----高温多湿の日本ではそのままだと保ちが悪いため,内塗りが施されているのがふつうです……いつごろの作かまだしかとは分かりませんが,作られてからこれまで,これでよく保ったもンですねえ。




STEP2 わが腐海(斗酒庵工房四畳半)へと降臨せり


 管の部分に損傷らしい損傷がないので,「修理」といいましても管頭管尾のお飾りの補修だけですね。

 どちらも鼠にカジられたと思われる,スプーンでエグったような浅い食害痕があちらこちらについています。先っぽのそりかえった縁のあたりには,かなり深い齧り痕もありますね。あと,管頭の飾りの管本体とお飾りの間にはまってたと思われる骨製のリングが1本なくなっちゃってるようです。

 まずはお飾りをはずします。
 管尾のお飾りはもともと接着してなかったらしく簡単にはずれてきましたが,管頭は先にも述べたよう,何らかの接着剤で固定されちゃってます。
 接着剤の正体がイマイチ分かりませんが,脱脂綿にお湯をふくませたのを接合部に巻いて,しばらく放置してみましょう。

 あ,白くなった。
 連邦の白い悪魔こと木工ボンドですね----接合部にべっとりはりついたのを,何度かお湯を刷きながらこそいでゆき,2時間ほどで分離に成功。
 うわあぁあ……外より中に詰まってたぶんのほうが量は多そうですね。

 この作業で管のほうも少し濡らしちゃいましたので,ボンドをキレイにこそげた後は,管端にパイプクランプを噛ませ,乾燥時の割れを防止しておきます。
 この大量のボンド……これがもしぜんぶお役にたってたら,この部分をはずすのに継ぎ目のとこで切らなきゃならないとこでしたが,もともとここはかなりギチギチに作られてますので,接着剤のほとんどは頭飾りの凹の奥のスキマに追いやられ,あふれた一部が接合部の外にへっついてただけだったようです。残ってるボンドも刃物やShinexを使って徹底的に除去します。

 さて頭尾のお飾りは水牛の角をメインに,骨もしくは象牙の部品でアクセントをつけてあります。

 時代の古い明笛にはこういうステッキの握り的なデザインのものはなく,まっすぐな筒状であったり,先端が解放された浅いラッパ状の,装飾の少ないものが多いですね。こんなふうにラッパがやや大きく末広がりでさらに管頭が閉じているデザインは,明治後期から大正期以降の,比較的新しい時代に作られた明笛によく見られるものです。

 同じような材質で作られたお飾りは,これまでいくつも補修してきましたが,問題は角の部分のキズを何で埋めるか,ってとこですね。

 基本,音に関係のある部分ではないので。何かにひっかかったりジャマになったりしないよう,欠けたりエグレたりしてる部分が埋まっていればいいだけなんですが。あまり目立つような素材だと,演奏中,目の端にチラチラ入ってきちゃうので,それなりに自然に,目立たないような素材で直したいところです。
 できあがりが透明なエポキだけでもいいのですが,この素材は骨材が入ってないとまとまりが悪く,べたーっと広がっちゃって肝心のキズがちゃんと埋まらなかったりします。そこでいままでも骨材にもなりそうな顔料系の塗料を混ぜてみたり,角を削った粉を混ぜてみたり色々やってはきたのですが………
 けっきょく最も扱いやすく,そして目立たなかったのは,月琴の修理のほうでもたびたび使ってる「木粉」を練ったやつでした。

 庵主の 「端材捨てられない病」 がこじれて貯めこまれた木粉----修理作業で出た削りかすを茶こしでふるったのがいろいろあります。

 白系の骨牙材だとツゲの粉なんかが良かったですね。ふだん月琴の糸巻材として使っている¥100均のめん棒の削りかすも,白くて悪くはなかったです。
 今回のお飾りは黒系。
 黒檀・紫檀といった唐木の粉を使いましょう。
 使うのは特に微細な粉。
 袋から出して茶こしに落とした時,自然に落ちてくる 「一番粉(w)」 だけを使います。
 これをエポキで練ってパテにし,エグレた部分に盛り上げ,さらに表面にも木粉をまぶしておきます。パテはふだんの木部に使う時より,気持ち木粉少な目,エポキ多めですね。
 表面に木粉をまぶすのは,半乾き状態の時に指で整形するからです。ただヘラで盛っただけだと,補修部分の内側までちゃんと入ってないことも多いので,そうやって後からエグレやキズの中までしっかり押し込むわけです。

 ちなみに,10分硬化のエポキでも,完全に硬化するのには最低でも半日くらいかかります。
 「作業可能な強度」になると言うのと,「完全に硬化する」というのは別ですからね。
 こうやって骨材を混ぜたりしたときは,さらに慎重になる必要がありますので,作業後まる一日くらいは間をとりましょう。

 そして整形。
 ツノの補修を木でやっとるわけですが,整形しちゃうと意外と目立たないですよ----ほれ。

 あとで全体を磨きなおしますので,この時点での整形作業は,削りすぎて新しいエグレとか作っちゃわなければ,そんなに神経質にやらなくてもけっこう。

 つづいてもう一つ。
 頭飾りと管本体の間にあった骨のリングですが----これに合うサイズの骨材も手元にありませんし,これもまあついてればイイていどのものなので。

 ツゲで勘弁してもらいましょう。

 ツゲの端材を削ってリングに……書いちゃえば1行にも満たないような工作ですが,コレ,実際作るのに半日くらいかかってますからね(w)
 64号の半月の骨の円盤もそうですが,この類の装飾部品はさしたる効用もないわりに作るとなるとめっちゃタイヘンで時間もかかるものですな。

 実際にハメてみながらさらに整形。
 目の細かいツゲじゃないとさすがにこの薄さにはできませんな。

 これで部品は揃いました。

 つぎに頭飾りの接合部を補強します。
 そもそもこの大きさ重さの部品を,管端の4ミリあるかないかの凸で保持しようというのが間違いなわけですが。
 かといってたとえば,接着のノリシロを増やすため凸を長くすればいいかと言えば。竹の肉部分にはそんなに強度がないんで,どっかに軽くぶつかった時,ポッキリ逝ちゃう未来が見えてくるだけですな。

 頭飾りの凹のほうの深さにはやや余裕があり,さらに凹の底の中心にはもう一段径の小さな凹があります。この小さい凹のところまで凸の先端がとどいてれば,いまよりずっと安定した接合がのぞめましょう。

 というわけでこうします。

 針葉樹材を削り,管頭の端にはめこむプラグを作成。
 これをまず管の凸の先端に接着。
 しかる後,お飾りをハメこむ----と。

 うん,イイんじゃないでしょうか。

 うちに来た時,このお飾りは接合部のところからくにゃりと曲がった感じで取付けられていました。
 前修理者がテキトウやったかと思ってたんですが……オリジナルの凸がちゃんと垂直に切られてなかったようですね。きっちり奥までハメこむと同じようにくにゃりとなってしまうので,一部にわずかなスキマはできますが,管尻のほうから見て確認しながらまっすぐになるよう取付けます。
 プラグで延長したぶん前よりも接着面が広く,さらに内がわも詰まって補強されてますので,ちょっとくらいの浮きなら強度に問題は出ません。

 何度も書きますが,管のほうにほとんど損傷がないので,「修理」つても今回はこのくらいしかやることがない(w)

 一晩おいて,お飾りの接着安定を確認。
 管の内外全体を少し多めの亜麻仁油で拭いて,二三日乾燥して修理完了!

 さて,試奏です。

  ○ □ ●●● ●●●:合 4Bb
  ○ □ ●●● ●●○:四 5C
  ○ □ ●●● ●○○:乙 5C#+35
  ○ □ ●●● ○●○:上 5Eb
  ○ □ ●●● ○○○:上 5Eb+15
  ○ □ ●●○ ○●○:尺 5F
  ○ □ ●●○ ○○○:尺 5F+15
  ○ □ ●○○ ○●○:工 5G
  ○ □ ●○○ ○○○:工 5G
  ○ □ ○●○ ○●○:凡 5A-15
  ○ □ ○●● ○●○:凡 5G#-5A
  ○ □ ○●● ○●●:凡 5G#-5A

 全開放は 5G#-5A の中間くらいでやや安定せず。
 呂音の最高は ○ □ ○●● ●●● で,筒音のほぼオクターブ,5Bb-11 が出ました。

 うん,やっぱりコレ比較的新しい----といっても百年くらいはたってましょうが----笛ですね。
 すでに書いたように,頭飾りのデザインからしてそんな感じはしてたんですが,吹いてみて確信できました。

 西洋音階にあまりも近いです。
 露骨に音が合いすぎてる。

 すくなくとも清楽器に合わせて調整されたものではないようです。
 清楽に使われたものなら 乙 と 工 がもう少し低いかな。
 作り自体はしっかりしてますから…そうですね,山田楽器店あたりの作ではないでしょうか?

 まあ逆に変な音階じゃないんで,用途は広そうですが。

 10分ぐらい吹いて,露拭きを通そうとふと唄口を見たら,唄口の縁の壁がちょっとささくれだってました----ううむ,管内無塗装の明笛のほぼ未使用品,なんてものを吹いたことがないんで分からんのですが,中国笛子なんかでも新品はこうなるのかな?
 なにか支障が出る,というほどのものではありませんがちょいと気になりました。こういう時はほっとけばいいのかな,それとも何か処置をするものなのかしらん?

 笛子吹きで分かる人がいたら教えてください。


 油が染みて刻字に入れられた墨が浮かびあがりました。
 修理前でもそこそこ読み解けてはいたんですが,従前の状態だと墨が薄くしか入ってないとこや,細かい刻みまで良く見えませんでしたので,あらためて解読いたします。

 まず管頭----

  青山隠々水迢々秋盡江南艸
  木凋二十四橋明月夜玉人何
  處教吹簫

 これは杜牧の詩 「寄揚州韓綽判官(揚州の韓綽判官に寄す)」 ですね。
 「二十四橋明月夜」 のところが特徴的なんで,これはすぐ分かっちゃいましたが。

  青山隠々水迢迢
  秋尽江南草木凋
  二十四橋明月夜
  玉人何処教吹簫

  青山隠々として水迢々(ちょうちょう)
  秋尽きて江南 草木凋(しぼ)む
  二十四橋 明月の夜
  玉人何処にか吹簫を教えむ

 三行目の後半,赤の入ってるとこが年記と刻者名なんでしょうがここが問題。最初 「嘉二丁卯 宮林氏」 と読みましたが,名前のところはほか 「雲林」「寒林」 とも 「室林」 とも読めなくはない感じです。そもそも年記と思われる 「嘉二丁卯」 が分からない。31号なんかには明の年号が入ってましたから,これも大陸のほうの年号だとすれば清の嘉慶年間あたりだと思いますが,嘉慶二年(1797) の干支は「丁卯」じゃない。嘉慶十二年(1807 文化4)が丁卯ですが…ううむ,どうみても「嘉」の下「十二」じゃなさそうです。

 日本の幕末,ペリーさんのきた「嘉永」は6年までで干支に「丁卯」がないし,この手の笛が製作されてただろうなー,と思われる時期の中だと 慶応3(1867) の後は 昭和2年(1927) までありませんね。

 指孔の横の二行は----

  三更笛音風在戸
  半夜簫声月在天

 だと思います。6文字目がどう見ても「生」なんですが,一画目が縦じゃなく横から入っているので「在」だと判断しました。いまのところ出典未詳。
 「簫」は意味的には縦笛もしくは「笙」のことで,一見縦笛・横笛と対でキレイに並べた感じにも見えますが,尺八やリコーダを「縦笛」ともいうように,横笛のことを「横簫」とも言います。俗文学だと横笛も合わせて気鳴楽器を「簫」と言っちゃうこともあるくらい,この「笛」と「簫」は通用される語なので,大陸の対句表現としてはあんまり見ない組み合わせです。これは日本の人がアタマひねって考えた対聯かもしれませんね。

 この手の長物にしては明るく軽めの音が出ます。
 おそらくは内塗りがないのが影響してるんでしょうが。

 いちおう完成した後に,唄口と響孔の端に小さなヒビが発見されましたが,すくなくとも唄口のヒビはウルシで修復済らしく,開くような気配もありませんので,そのままにしておきます。管の状態から見て,前所有者ではなく製作段階での補修だったようです。

 ほぼ未使用の楽器なので,庵主の目的である清楽の基本音階の解明には若干物足りませんが,楽器としては音が西洋音階に近いため,清楽以外のところでも使えるアイテムとはなりそうですね。



(つづく)

明笛について(26)49号/50号(5)

MIN_26_05.txt
斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号(5)

 春先に襲来した月琴の修理もひとだんらく。
 修理報告もあげたところで,ちょっと時間軸を巻き戻し。
 その前にやってた明笛の修理報告,完結篇をお送りいたします。
 これ,書いてる途中で月琴のほうが修羅場ったんで,ずいぶん放置しちゃってました。申し訳ない(^_^;)

STEP7 明笛49号

 さて,残すところ内塗りの乾燥をのぞけば仕上げの磨きくらいしかありませんが,明笛49号。

 箱を修理しておきましょう。

 最初の回で書いたように,この笛の入ってきた箱は,この笛のために作られたいわゆる 「共箱(ともばこ)」。
 前所有者の落款なども貼られてますので,それなりに貴重なものです。

 この箱は左右板の木端口近くに溝を切り,そこに上蓋をすべらせる形式になってます。
 まあ,薄くしたところに板つっこんで出したり入れたりするわけで,構造上当たり前の故障なんですが,その溝のところに,まず割れが入っています。
 蓋のついてるがわを,「明笛」と書かれたラベルのあるがわをとすると,右がわの板は上から下までほぼバッキリ,左がわも2/3くらいまで割れてますが,どちらもニカワによる修理が施されています----ほんと,大事にされてたみたいですね。
 しかし,経年の劣化により,現状修理個所右がわは全長のおよそ半分ほど,左がわも端が10センチくらいハガれちゃってますね。

 まずはここを再接合。ニカワによる修理は何度も出来るのが特徴です----壊れたら,また直せば良い。
 割れ目に薄目に溶いたニカワを流し,閉じたり開いたりして全体に行き渡らせてから,ゴム輪などで固定。
 過去の補修箇所もいちどお湯で濡らし,割れ目の周囲にあふれてるニカワなども拭き取って,キレイにしておきましょう。

 つづいて,箱表の上端。
 蓋のストッパーになる部分が欠けちゃってますので付け足しておきます。
 前所有者の貼った「明笛」の古いラベルに少しかかっちゃうとこなので,ちょっと慎重に……何年か前に桐の余り板で小物箱ばっかり作ってた時期があったんですが,ここにきてあの経験が役に立ってますね。なんでもやっとくもんだ。(w)

 この小板は,蓋がスキマなくおさまるように内がわが段になってます。
 このあたりの寸法は,実際にあてがい,蓋を入れてみながら実寸合わせで工作。ぴったりの部品が出来たところで接着し,最後に工房特製「月琴のしぼり汁(w)」などで古めかしく補彩して完了です。

 直った箱に笛を詰め,いざいざ試奏まで----

 ○ ■ ●●● ●●●:合 4B-30
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5C+30
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5D-10
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5Eb-5E
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5E-30
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5F#-45
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺 5F#-40
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5G#-30
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5G#-20
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 5Bb-5
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5Bb-30
 ○ ■ ○●● ○●●:凡 5Bb-30
 全開放は 5Bb+15。  呂声での最高は ○ ■ ○●● ●●● で 5B-5 が出ました。

 数字だけ見るとやや波瀾ぶくみの音階にも見えますが,平均して-30%ほど低くなってると考えれば,全体としてはそろった音階で,聞いててあまり不自然さはありません。

 管の細い笛は鳴らしにくいものなんですが,この笛は比較的鳴らしやすいほうです。もちろん管が細いため,唄口に息の当る角度に微妙な制限がありますが,それを考えて楽器のバランスをとってあるのか,ふつうに構えればだいたい自然と「鳴る」角度に笛がおさまってくれます----でっかい管尾の紐飾り,演奏の時は少々ジャマっけなんですが,どうやらこれもそういうためのウェイトになってるみたいですね。
 甲音(息を集束させて出すオクターブ上の高音)が出しやすいです。唄口の小さい明笛だと,ふつう甲音が出しにくいものですが,この笛だとがんばれば大甲音の上くらいまでイケそうですね。ただそのぶん,ふつうの息遣いで吹く呂音のほうが少し不安定なようで,ちょっと力んじゃうと甲音が混じっちゃいます。
 息の向きをやや管尻がわに傾けると低音が,管頭がわにむけると高音がやや出しやすい----同じような傾向は他の笛でもふつうにありますが,この笛ではそれが少し顕著です。これらも管が細いための現象かと思われます。

 音色的には----意外とやや重たい音がします。低音,ということではなく,音圧が高めと言いますか,ギュッと中身がつまったような,ドスのきいた響きですね。
 内外しっかり塗り込められてるせいもありましょうか。ちゃんとした笛膜を貼って吹いてみたら,笛全体がビリビリ震えるくらいの共鳴がキました。よくある甲高い倍音,ってより重低音ウーハーの横にいるみたいな感じ,日本人の感覚だとちょっとコワい音かもですわい。

 笛自体の調が西洋音階からは少しハズれてるので,こちらを基音としない限り,単純にほかの楽器とコラボするってのにはちょいと難しいところがありますが,清楽器として合奏してみるのはかなり面白いかもしれません。


STEP8 明笛50号


 50号も塗装の乾燥と仕上げを残すのみ。

 こちらは管の内外両方塗りましたが,まあ手間としてはさほど違いはありません。
 管外はShinexや水砥ぎペーパーの細かいのに石鹸水をふくませ,塗装中に付着した微細なホコリなどを削り落とし均して,柔らかい布に研磨剤と亜麻仁油をつけて,管内も細棒の先にShinexをくくりつけたので磨き上げました。

  ----どやぁ!

 オリジナルの状態では表面処理が雑で少しザラザラしてたんですが,割レ継ぎついでに磨いて塗って……とぅるっとぅるのお肌です。
 割れ目が微妙に見えちゃってますが,しっかり継がれているのでまあ再発はしますまい。逆に,あの瀕死の大怪我状態だったのがこの程度に直ってるんですからホめてくださいよぉ(^_^;)


 さて,ではこちらも試奏へ!-----
 ○ ■ ●●● ●●●:合 4C+5
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5D-10
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5E-30
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5F+20
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5F+35
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5G+10
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺 5G+40
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5A+40
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5A-Bb
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 5B+20
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5B
 ○ ■ ○●● ○●●:凡 5B-20

 いわゆる「ドレミ笛」ですね。
 ただ第3音が20%ほど低くなってるのは,清楽の音階の名残かもしれません。
 清楽の運指にした時,「工」 がやや不安定なのですが,これはこのあたりの割れがいちばん酷かったせいもあるかもしれません。管自体が少し変形しているため,指孔の縁が微妙に歪んでいるようなんですね。そこから少し空気が漏れちゃうのかも。
 まあ,もともと量産楽器のため,指孔の加工自体がやや雑,「開けただけ」みたいになっているのも原因でしょうね。押さえるのに少々コツが要りましたが,庵主より指の太い人だとなんともないようですので,これは手が小さく指の細い庵主の特殊事情もあったかもしれません。
 そのままだとちょっと扱いにくかったので,リューターのバフで指孔の縁の角をほんのちょっと丸めてやったら,低音域での不安定さはかなり改善されました。

 全開放は 5B と 5C の中間くらいで安定せず。呂音の最高も ○ ■ ○●● ●●● で # に近いくらいまでいきましたが,これも当初は安定せず。あとで指孔の縁を丸めてから再挑戦したら 5C+20 で安定しました。甲音は少し出しにくく,息道を若干変えたり,笛を少しひねったり,ちょっと工夫をする必要があります。

 まあ難しいことをしないのなら,鳴らすこと自体はたやすい笛です。
 呂音ではよく鳴りますね。
 49号に比べると,音は明るく軽め----うんポップスの笛ですわ。



(おわり)

明笛について(26) 明笛49号/50号(4)

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号(4)

STEP5 明笛49号

 明笛49号の修理は,まず細かくヒビが入り,塗膜の浮いている響き孔周辺の剥落止めから。

 ゆるめに溶いたニカワを小筆で刷いては,布で軽く押して吸い取ります。 管頭のお飾りの接合部周辺以外に竹自体にヒビは入ってませんし,この周辺以外の塗膜は比較的無傷ですので,このあたりのヒビ割れはおそらく,もともとの漆塗装の下地処理か,塗装作業自体に問題があったのだと思います。

 一晩おいて,触ったらプラプラしててハガレそうになってたあたりが,いちおうへっついてるのを確認----ものが笛ですからね,ツバもかかれば息でも湿る,手汗もつくしヨダレも垂れます----道具としての使用を考えるなら,このニカワによる処置は,あくまでも次の作業のための一時的な応急処置です。

 修理作業中にボロボロ逝かれたらたまらんですからね。


 次の作業のための準備をしましょう。
 まずは薄い和紙を小さく丸めたものを用意します。
 お腹の赤丸薬くらいの大きさかな。

 これにニカワをふくませ,反射壁の欠けたところ(上右画像参照)に押し込みます。
 今回の虫食いはこの欠けたところから,90度曲がって横方向へも少し広がってますので,濡らした紙玉をさらに小さくちぎっては,ピンセットや曲げたハリガネで,少しづつ,なるべく深く,奥のほうまできっちり詰め込んでゆきました。

 穴から紙玉が顔を出すようになったら,筆で少量の水をふくませ,管尻から挿しこんだ棒のあたまで表面を軽く叩いて潰す。そしてまたハリガネでつついて押し込み…これを何度かくりかえしました。

 うむ,場所が場所だけに手先の感覚だけでやったみたいなところもあったんですが----なんとか埋まったようですな。

 充填箇所がかっちり乾いたところで,管内を塗装。

 赤と透を半分くらいづつ混ぜ,元の色に合わせてます。
 先に,修理した反射壁と唄口の周辺だけ何度かこってり塗りこめておき,後の部分は保護塗りていどにあっさりと塗りあげました。

 管頭飾りとの継ぎ目あたりに,何本か割れ目が出来てます。唄口にかかってないあたりなので,楽器としての使用上は問題ありませんが,使ってるうちに開いてきちゃったりしたら嫌ですからね----ここも埋めこんでおきましょう。
 修理で出た黒檀の粉を茶こしでふるい,微細な粉をエポキで練って充填します。


 あとは最初に表面の剥落止めをした部分ですが,漆塗りを塗りで補修するのは難しいですので,エタノで緩めたエポキをヒビに沿って流し,固定します。塗膜がめくれちゃってる部分なんかは,アートナイフなどでこそいで落し,パズルよろしく元の場所にハメこみました。
 とりあえず響孔周辺が,竹紙を貼ったりハガしたりしても大丈夫なくらいになってればよかろうもん。

 唄口や指孔など,この笛の各孔には金で縁どりが施されていました。各孔の壁を塗装し直すついでに,この孔の縁もちょちょいと補彩しておきましょう。

 まあ「金彩」っていってももちろん,本物の黄金の粉末が使われているわけでもありません。色合いから言って元のも,いろんなのの混じった工芸用の偽金粉ですね。
 このあたりは使用でかすれて消えちゃうでしょうから,軽く百均の金粉マニキュアを使いましょう。
 もちろん,直接塗ったりはしませんよ。
 まずは,クリアフォルダの切れ端などにマニキュアを塗り,乾かします。次に保護塗りちゅう孔の縁に押し当てますと,軽くハミ出た生乾き状態の塗料にへっついていい感じでプリントされました。
 保護塗りの塗料が固まったところでクリアを軽く上塗りして完成とします。前にも書いたと思いますが,この笛の金彩はもともと,庵主のやったのと同じように,塗料で絵を描いて上から粉ふっただけの 「なんちゃって蒔絵」 なので,強く擦るとほとんど消えちゃうようなシロモノです。上塗りして砥ぎだしたものだと,ちょっとやそっとじゃ消えないんですけどねえ。(^_^;)

 あとは管内の塗装が乾くのを待って,磨いたら完成です!



STEP6 明笛50号

 ヒビ割れの処理の終わった50号。

 しばらく放置して,ヒビが再発したり新しくバッキリ逝ったりしないか様子を見ます。

 中性洗剤でザブザブしましたし,ヒビの修理であちこちコスりましたので,内外ともにパッサパサな感じですが。
 一週間ほどたってもバッキリ鳴ったりパックリ逝ったり(w)しません。

 …………だいじょうぶのようですね。

 内部にハミ出たエポキを削るのといっしょに,管内の塗装もあらかた削ってハガしてしまいました。
 もともと塗ってあった塗料は,明治~大正期の量産品明笛でよく使われていた正体不明のやつで,水ではビクともしないのに,エタノールを流すとベトつきます----たぶんスピットニスみたいなアルコールで溶かして使う手の顔料だったんだと思います。

 酔っぱらって吹いたらエラいことになりそう(www)

 そういえば----前のほうの回で紹介しましたが,この笛の作者の吉田源吉さんはヴァイオリンの作家でもありました。
 今回の笛の管表の染め色は,ふつうの明笛よりやや赤みがありましたが,これってヴァイオリンの胴染めると同じ染料か塗料が使われてたのかもしれませんね。

 管の内外を塗ります。
 管内は赤に透を混ぜたものを唄口や指孔から筆で垂らし,細めの棒切れの先に使い切ったSHINEXの切れ端をくくりつけたもので均して,まんべんなく塗りこみます。
 管表はもともとの色合いを損ねないように,透とクリアを半々くらいにしたものをゆるめに溶いて二度ばかり拭き漆風に滲みこませ,下地を作ってから,ごく薄く表面を塗りあげました。これもそうでしたが----大正期以降の明笛は竹管表面の扱いが雑で,古い管にくらべるとちょっとガサガサした感じなのが多いのですが,補修箇所の保護もありますし,オリジナルより少し塗りを厚くしておきましょう。

 これでこちらも,後は塗料の乾くのを待つだけです!
 それぞれどんな音が出るのか----一週間後が楽しみですねえ。



(つづく)

明笛について(26) 明笛49号/50号(3)

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号(3)

STEP3 明笛49号あらため "封印されし邪黒龍の笛"


 黒い笛です…うん,黒いね。
 そしてだいぶかすれちゃってはいますが,管オモテには金銀で龍(ドラゴン)の線画……これはもう。

 明笛49号あらため----命名 "黒龍を封印せし闇の明笛"。

 この笛の "所有者(マスター)" となるためには,一定の条件を満たすことが必要である。まず最低限必要な装備として----

 1)黒革の指出し手袋(甲に銀糸でドーマンセーマンを刺繍,左手のみ)
 2)同材・眼帯(中心に朱で,梵字もしくはルーン文字が描かれているもの)
 3)編み上げブーツ
 4)古代文字の書かれた布テープ(あらかじめ笛に巻きつけておく)

 ……ほか,マントなどあるとなおよろしい。

 そして左足に体重を寄せるようにしながらやや斜めに立ち,その内部から噴き出さんとする強大な闇の力を押さえつけるかのように笛を握りしめ,開いた右手の指を額に翳すようにしながら以下の台詞をつぶやき,吹くのである。

 ふっ………永劫の時を経て還って来たか我が半身よ。
     いまこそあの忌々しき古代の神々による封印を破り,
  すべてを渾沌へと帰するため,
    その闇の力のすべてを現世に解き放たん!!

 「ぽーーーーーーー。」

 さあ出でよ!

 封印の黒龍よ!
   汝とこの世界の支配者たる我が命ず!
 煉獄にたちのぼる漆黒の炎にて,
   すべてのもの焼き尽くせ!!

 「ぴーーーーーーー。」

 ----とか,いうことをやりたいと思うのですが。
 誰か手袋と眼帯,持ってませんか?


 49号,調査の続きです。

 前回も述べたよう,現状,吹けばいちおう音は出る状態ではありますが,古物の楽器はかならずどっかしら壊れているものです。
 この笛で中二病的なこともしたいので,まずはしっかりと直してまいりましょう。

 外見的には唄口や指孔,響孔周辺を中心とした塗膜の劣化と剥離が若干ある程度ですがさて内部は……と管尻のほうからのぞきこみましたら。

 うわわわわわ…

 管頭の詰め物----反射壁になってるところが一部分,ぞろっとなくなっちゃってるみたいですねえ。
 到着時に露切り通して掃除したんですが,さしてゴミも出ませんでしたから,この崩れたぶんはおそらく,前の持ち主か古物屋さんに掃除されちゃってたんでしょう。唄口のほうからだといまいち見えないんで気づかなかったんですが,こりゃタイヘン。

 明笛の反射壁は,管頭から和紙や新聞紙の丸めたのをつっこんで固めたものが一般的ですが,ハリガネなどを用いて触診してみますと,この紙の詰め物の部分は3~5ミリほどしか厚みがないようで,そこから先には何か硬いものが詰まっています。
 管頭のほうからつついてみても,詰め物のずっと手前で行き止まりになっていますので,おそらくは下図のような構造になっているのではないかと考えられます。

 最初のほうでも述べたようにこの笛の管体はかなり細いので,お飾りを固定するのにじゅうぶんなホゾを作れなかったのでしょう。そこで管内に細い棒を挿して笛本体とお飾りを接合しているのだと思われます。
 明笛の詰め物は,和笛などのように蜜蝋で一時的に固定したものではなく,ニカワなどで固定し唄口がわは管内ごといっしょに塗り固めてあるのが一般的です。
 紙のカタマリを固めるためや固定のためにニカワを使うので,そこを虫に狙われる可能性もないではないのですが,この楽器の場合,管頭がわは上に書いたようお飾りを固定するための棒でふさがれていますし,唄口がわはウルシでカッチリ固められちゃってますから,通常侵入ルートがなく,こんなふうにはならないはずなのですが……おそらくは,使用によって表面の塗膜が劣化し,部分的にハガれたところから侵入されたのでしょうねえ。

 とまれ,ここがこの楽器最大の要修理個所のようです。

 これもふくめ,要修理個所はこんなところでしょうか。(下図クリックで拡大)

 この楽器は頭尾の飾りがとりはずせない構造になってますので,反射壁の修理も唄口がわからするしかありません。また,全体に塗りが施されているため,内部の保護塗りやヒビの補修などの作業も,オリジナルの塗りをなるべく損なわないようにやらなければならないでしょう----ちょっとタイヘンそうです。


STEP4 明笛50号,ランポー怒りの大修理

 50号は修理に入ります。

 まずは洗おう,ジャブジャブジャブ。
 ぬるま湯に中性洗剤で管の内外を……真っ黒ですわあ。
 洗い終わっても乾かさず,濡らした脱脂綿で包み,ラップをかけて2時間ほど放置します。

 ほおら…開いてきましたよぅ。
 前のヒトが連邦の白い悪魔(w)で「修理」したところがねぇ。

 割れ目周りに固まったのはShinexでこそぎ落とし,割れ目の内がわに入ってるぶんは,クリアフォルダの切れ端やアートナイフの刃を入れてほじくりだします。

 こうしてまず,前修理者の「修理」を「なかったこと」にするまでに,3時間くらいかかりました。

 割れ目の清掃が終わったところで,もう一度軽く全体を濡らしてから,パイプクランプを軽めにかけて矯正します。この時点でギッチギチにしめあげちゃうと,別のところが割れ始めたりしますんで。管の形がくずれないていど 「割れ目がせまくなってる」 あたりでよござんす。

 数日乾燥させてから,あらためて割れ目の継ぎに入ります。
 接着剤はエタノールで緩めたエポキ。

 パックリ逝っちゃってるところは,クリアフォルダなどを切ったものをつっこんで両岸まんべんなく,薄物も入らないようなせまいところには,最初にエタノを流し,そこに接着剤を小筆で垂らして何度も流し込み,ヒビの奥まで浸透させてゆきます。エポキだけだとそこに留まってしまいますが,最初にエタノールを流し込んでおくと,そのエタノールに引っ張られる形で接着剤が流れてゆきますので。
 そこそこの作業時間がかかるので,接着剤は硬化までの時間が長めのものをおススメいたします。
 また,今回のように上から下までバッキリ逝っちゃってる場合は,いちどきにやらず,数回に分けて作業するほうが確実です。

 今回は笛全体を4つか5つに分け,管尻のほうから3日かけて順繰り接着してゆきました。

 充填剤としてのエポキシは,作業後の「ひけ」が少ないのが特徴なのですが,ひび割れの修理では,溶剤をせまい箇所の奥まで浸透させるためにエタノールを使っておりますので,硬化後,エタノールが蒸発したぶん,どうしても「ひけ」が生じ,表面にうすーいミゾが残ってしまいます。
 明るいとこだと見える程度であり,内部はしっかりくっついてますから構造上さほど問題はないのですが。唄口周辺はいわずもがな,響孔の周縁だと竹紙を貼るのに影響が出ますし,指孔でもわずかな凸凹が原因で,演奏に何らかの支障が出ないとは言い切れません。
 ま,なにせ吹いてる本人には見えちゃいますしね。
 気にならないといえばウソになる(w)

 これを埋めるのに,も一度エポキを流すのですが。
 このとき,緩めたエポキをただミゾの上に流してもミゾは埋まってくれません。
 ミゾにあるていどの深さがある場合は,筆でふくませれば勝手に吸い込まれていってくれるのですが,ミゾが浅いとエタノを落としても,蒸発するさい混じってるエポキだけ外がわに散ってしまうんですね。

 これを防止するため,補修箇所にエポキを垂らした後,細く切ったクリアフォルダの切れ端をかぶせます。

 こうするとエポキ&エタノの溶剤は,表面張力かなんか知らん力(w)によって蓋のがわにひっぱられ,そのままそこで固まってくれます。
 指定の場所に軽く 「盛った」 感じになってくれるわけですね。

 一晩ほどおいて固まったところで整形します。

 管内にはみ出したぶんは,細棒にSHINEXをくくりつけたやつを管尻から挿しこんでこそぎとりました。

 さあて,これであとは内外を保護塗りしたら完成ですね。



(つづく)

明笛について(26) 明笛49号/50号(2)

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号(2)

STEP2 明笛50号

 49号に遅れることわずか1日。
 50号が到着いたしました。

 「HEIWA」 の明笛ですね。

 いままで見たことのあるラベルでは 「平和」 のところが英文字で 「HEIWA」 になっていました。
 漢字表記になってるのを見たのは,今回がハジメテです。

 どちらのラベルでも 「平和」 の字の上には,丸がいっぱい重なりながら横に並んでる真ん中に,平和の象徴である鳩。下には 「MANUFACTURED BY G.Y.」「TOKYO, JAPAN,」 と書かれています。さらに下には 「No.」「¥」とたぶん笛の番手とか号数,値段を書き込むと思われる白枠がありますが,この中に何か書かれてた例はいまのところ見たことがありませんねえ。
 比較的よく見かけるメーカーの笛なんですが,いままで製造元の身元は分かりませんでした。
 今回,笛の実物が手に入ったので,一丁調べてみることといたします!

 ラベルに書かれているとおりなら,「MANUFACTURED BY G.Y.」 ということは作者のイニシャルは G.Y.「TOKYO, JAPAN,」 ということは東京の作家さん,ということですね----この条件で拙「楽器商リスト」を調べてみると,大14年発行の『職業別電話名簿』(東京之部)に 「笛製作業 浅,北元,4 吉田源吉」 というヒトが見つかりました。

 GENKICHI YOSHIDA----頭文字は G.Y.ですね。で,東京の浅草で,笛屋と。

 …うむ,いちおう条件はぴったりですね。
 ただ頭文字 G.Y. で笛屋,というだけなら他にもいるかもせんので,確証を得るためこのヒトについてさらに探ってゆくと,電話帳では 「笛製作業」 となっていましたがこの方,初期の国産ヴァイオリン製作者の一人でもあるということが判明しました。同じ浅草の山田楽器・山田縫三郎も,月琴や明笛のほかヴァイオリンなんかも作ってましたからね。この頃の楽器屋ではよくあったことなのかしらん。

 そしてさらにさらに探っていったところ,いま話に出てきた 「山田縫三郎」 とこの吉田源吉さん,二人そろって明治11(1922)年に開催された 「平和記念東京博覧会」 に,その 「ヴァイオリン」 を出品していることが判明!!----っと…「平和記念」?

 「平和」 …ですかい?

 もしやと思い,もいちどラベルに立ち戻ってみます。

 過去に見た,別バージョンのラベルの画像をちょー拡大したところ,鳩の後ろに 「平和博覧会 大正十一年」 と書いてあるじゃああーりませんか!!
 鳩のバックの丸いのは,どうやら博覧会のメダルだったようです。

 博覧会のメダルを商品のラベルの意匠として使うのは,このころ楽器のみならず日用品や食品でもよくあったこと。石田義雄や田島勝も楽器の背に貼りつけてましたね。
 お祭りみたいなものとはいえ,もちろん何の係累もないのに博覧会を引き合いに出すわけにもいかないでしょうから,少なくとも,この笛の作者は 「平和記念東京博覧会」に楽器を出品して,何らかのメダルをもらい,その記念に,作ってた笛を「平和」と名付けたのでは,ということになりましょう。
 平和記念博覧会の受賞者とその詳細については,一覧が Web公開されていないのでまだハッキリと分からないのですが,さっきも書いたよう,審査記録などからかの 「吉田源吉」さん が,明笛はともかく「ヴァイオリン」を出品していたことはほぼ間違いありません。

 後に「吉田源吉」さん作のヴァイオリンのラベルの画像を見つけたので見てみると,そこにはなんと,明笛のラベルにあるのとほぼ同じデザインの,鳩と重なった丸の絵が………明笛のラベルではかなり省略されてたようですが鳩の左右に並ぶこの丸いもの,もともとは一枚一枚,作者が出品した色んな博覧会や共進会のメダルの図像だったようですね。

 以上の事から,明笛「HEIWA」の作者「G.Y.」は「吉田源吉」でまあ間違いない,とは思われますが,さて----まだいくつか決定的な証拠が足りませんので,とりあえずは推測,としておきましょう。

 ちなみに…ではありますが,平和記念東京博覧会の審査員サマは吉田源吉氏のヴァイオリンについては, 「 f 孔デカすぎ!音粗ぇ!」 との評価を下しております。
 山田縫三郎の楽器なんか 「外面がキレイなだけじゃ」 とバッサリですのでまあ,それよりは…って感じですが。(www)
 まだ当時は国産でのヴァイオリン製造の初期も初期段階なれども,鈴木政吉のヴァイオリン以外はほぼボロクソでございました。


 大正時代のドレミ明笛です。

 「平和記念博覧会」の開催が大正11(1922)年ですから,作られたのはもちろんそれより後ということになりますね。
 月琴をはじめとする明清楽の楽器の多くは,日清戦争(1894)以降明治の終わりくらいにはもうほとんど作られなくなっていたんですが,「明笛」だけはずっと生き残り,大正・昭和,そして現在もなお細々とながらも製造され続けているんです。

 明治時代の明笛ですと,頭尾には骨や象牙あるいは黒檀紫檀などの唐木で作られたラッパ状の飾りが付いてますが,このころになるとこういう木製のちゃッちい挽物のほうが多くなってきます----材質が一般的な木を使ってるのはともかく,もう唐木っぽく染めたりもしてませんし分解できるような機構もありません。このお飾りで黒や白に塗られてるところには,ほんらい骨や牛の角などを加工したリングがはまってたりもしたものですが,もうコレ,旋盤でちョちょイと削って近代的な塗料でべったら塗りですわあ。

 これは明笛というものが,明清楽の楽器から子供などのための教育玩具的楽器となっていったせいもありましょうね。
 6孔,全閉鎖がドで,基本的には端から指を開けていけば西洋音階になるという演奏の単純さと,日本の笛とはちょっと違った音質,そして値段の安さというあたりが売りだったみたいです。子供むけの安価な楽器,ということで価格競争みたいなものもあったようで,大手のものほど形も作りもどんどん単純化されていきました。いままで扱った中だと…19号 なんかがそうした類ですね。

 現在売られているものと比べると,今回の楽器のはそれでもまだ清楽時代の明笛のお飾りの形をそのままかなり踏襲してる感じではありますね。

 続いてその他の部分を見てゆきましょう----

 ははははは。

 いちおう継いでありますが----派手に割れてますねえ,そして誰ぞが 「修理」 してますねえ。

 しかも木工ボンド使いやがったな,ケツ割るぞコラ。(笑っているが目がマジ)
 唄口上下から最下の管尾飾りの前まで,すべての孔間がバッキリ逝っちゃってるみたいですね。

 このほか裏孔ところにも一箇所。
 あちこちに糸か何かで巻き締めていた痕跡があります。
 かなり容赦なく締め上げたようで,ちょっと横縞の傷になっちゃってるとこもありますね。
 古い補修の痕なのか,ボンドで接着するときの固定痕なのかはちょいと不明。おそらくは後者でしょう。

 損傷状況をまとめるとこんな感じ----

 ううむ……「平和」の明笛,戦線はけっこうな激闘となるもよう。




(つづく)

明笛について(26) 明笛49号/50号

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斗酒庵 平和の世に天民の明笛を鳴らす の巻明笛について(26) 明笛49号/50号

STEP1 明笛49号

 さて新作の実験楽器製作ちゅう,この年の瀬になってとつぜん,明笛が2本やってまいりました。(W)

 まず,箱に入った1本が到着。
 こちらを49号といたします。

 お暇なかたは過去記事から「李朝華竹横笛」の記事などご覧くださると分かると思いますが,「箱入りの古物」 ってのは概してロクでもないことが多いです。今デキの贋物をそこらにあった古めかしい箱に入れるってのは,安物をさも高価なものに見せかける一番容易な常套手段ですものね。
 まあ「李朝華竹横笛」の場合,中身自体の質もさりながら,ヨゴレの上から書かれた箱書きとか,蓋が別の木だとか問題にもならないシロモノでしたが,「筋のいい」古物商の方ですと,同じようなことをするにしても(するんかい-ツッコミ-ww)古色付けにせよ箱の選別にせよ,それなりの手間とコストをかけてやらかしますので,素人さんが見てそうそう分かることはございませんよ,ほほほほほ。

 「ほんとうに良いもの」というのは,良いだけにしょっちゅう使われるので,どんなに大切にされててもどこかしら壊れてる確率が高いものです。出し入れされる回数も多いので,箱なんかも壊れてたりなくなってるのがふつう。だからほんとうの 「掘り出し物」 ってのはハダカで出回っていることが多いのです。

 まあ元・古物屋の門前小僧として,そのように散々脅されてましたので,今回も正直さほどの期待はしてなかったんですが………あ,ひさびさの「当たり」だわコレ。(www)

 まず,箱を見て分かりました。
 これ,「共箱」 ですね。

 こうした古物の笛には,掛け軸なんかの箱が流用されるのが定番です。しかし,軸物の箱というものは寸法やカタチが決まっていますので,見慣れていればそうと分かってしまうものなのですが。この箱は作りと寸法がかなり特殊----一目で軸物の箱でないことは分かります。

 そしてこのブツの収まり具合(w)----ギチギチでもなく,スカスカでもない。
 これはこの箱が,この笛を入れるために作られたものであることを如実に語っていますね。

 箱頭に貼られた「明笛」と言う貼紙の年季も問題なさそうです。
 まあ古い「明笛の箱」にサイズの合うほかの笛を入れるなんてシワザは,そもそも「明笛の箱」というもの自体がレアなことから考えてもあり得ないでしょうな。

 蓋はスライド式になっていて,箱上面の溝にはめこむようになっていますが,箱側面,その溝になってる部分に割れがあります。片面はこの部分からいちど完全にバッキリと逝ったらしく,全面に継いだ痕も見えますが……まあ構造としてこれはしょうがないか。ほかにも上下に接合の剥離,部品の欠損,ネズミに齧られた痕なども多少ありますが,明治時代の箱の状態としては上々----よくいままで,この笛を護ってくれました。

 全面に漆塗りの施された,すらりとした細身の美しい笛です。
 ほんとに細い……明笛の管体にはホウライチクのような,節間が長くやや太目(径2センチくらい)の竹が使われることが多いのですが,そういうむこうから輸入された竹ではなく,国産の篠竹あたりが材料でしょうかね。
 漆塗りの黒地に金銀で装飾が施されております。

 管頭部分には 「仙管鳳凰調」 と文字。
 響孔上下に金銀彩・細筆で描かれているのはのようですね----指孔第六孔の少し上あたりに頭があるんですが,かなり薄くかすれてほとんど見えなくなっちゃってます。

 ちょっと変わった工作だなと思われるところは,黒塗りが管体の竹の部分だけでなく,上下のお飾りの一部にまでかかっているところでしょうか。

 塗りの端部分には,細かな筆でぐるりと輪模様が描きこまれていますが,頭尾管飾りの接合部はそこより手前----管と一体となるように整形されているため,一見すると継ぎ目がどこか分からないような作りになっています。

 そしてこの立派な房飾り----
 笛が細いものでなおのことでっかいく見えますね,この房飾りは。

 笛自体とほぼ同じくらいの長さがあります。
 平紐で編まれていて----蝶と吉祥紋かな?

 では,採寸----

 サイズ,特に管の太さからすると明笛18号が一番近いかな?
 管体は細いですが唄口から裏孔までが325もあるので,おそらく 全閉鎖BもしくはBb の清楽に使われた明笛だと思われます。

 唄口まわりをさっとエタノで拭いて吹いてみましたら,音は出ました。

 外からざっと見た感じでは,あちこちに小さな塗りのハガレや塗膜の浮きはあるみたいですが,それほど深刻そうな損傷は見当たりません。まあ,古いものですからどっかしら壊れている,とは思いますが,楽器自体の状態はさほど悪くなさそうです。

 箱の蓋の端のほうに2センチ角ほどの正方形の紙が二枚,上下に貼られておりよく見るとなにかハンコが押されているようです。

 最近はまあ目も悪くなってきましたので裸眼だと何だか分かりません(w)
 デジカメで撮って拡大,SNSの伝手で何て彫ってあるのか読んでもらったところ,上の白字が 「瑞清」,下の朱字印が 「呉×民(一文字不明)」 とのことです。

 「瑞清」 がこの笛の名前,「呉×民」 が所有者もしくは製作者でしょうなあ。
 不明の2文字目は「ムギ」を本字の「麥」でなく 「麦」 の字体に近く篆字に仕立てたもの…にも見えなくはないんですが定かにあらず…検索では「麦民」 だと何にも出てきませんねえ。

 辛亥革命の先鞭者であった康有為とか梁啓超の仲間が,日本で中国語の雑誌を出したことがあるんですが,その同人の一人に 「呉天民」 という人がいました。明治のころの日本に留学していたみたいですが,革命成る前に行方不明になっているとか…………

 ……たぶん,この笛を修理してゆくと,中から固く巻き締めた紙縒りのようなものが出てきます。

 それを開くと,いくつもの茶碗の絵と短い工尺譜が描かれた手紙。
 さらに小豆粒ほどの小さな宝石と,妙なる芳香を放つ細いお香の欠片のようなものが出てくるわけですね。

 茶碗の絵は革命派を支持していた青幇の暗号で,これを解いてゆくと大運河沿いに山西省にある謎の土地へと至る道筋の地図が。

 そして,そこまで解読した瞬間,

 「ほあたああああああああああッ!!」

 -----と奇声を挙げ,斗酒庵工房四畳半の窓を蹴破って,謎のパンダ顔拳士が!!!

 どうなる庵主!仙管鳳凰調の謎とは!?

(もちろん妄想ですがなにか)




(つづく)