「明清楽復元曲一覧」 部分更新!!

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斗酒庵 夏休みのしくだい発表 の巻「明清楽復元曲一覧」 部分更新!!

 さて,庵主は毎年,春先と夏の帰省時に,データベースへの入力や研究のまとめをやってるんですが。

 最初に入力する時は,ただひたすらに入れ込んじゃればイイものの,データベースってのは,大きくなればなるだけ,個々のデータ間に関係性が出てきて複雑になり,改訂が難しくなってゆくもんです。
 春先の帰省時の作業で,連山派の基本楽譜『声光詞譜』の楽曲についての記事を書き終わり。これで清楽・明清楽の東西の二大流派,渓派と連山派の基本的な曲目については,だいたい網羅しえたのですが。前回までの作業では,各楽曲の「器楽」の部分,なによりも各曲の曲調の基本的な目安となる「標準譜」の作成に重点を置いていたのと,とにかくデータベースとしての体裁を構築するため先を急いだもので。「歌」のついてる曲について,その歌詞や意味についてのあたりはかなりすッとばしました。
 今回からは,そうした「歌」のついてる曲の歌詞の部分。その意味や発音などを語学や民俗学のほうから調べて増強していきたいと思います。

 最後に入力した『声光詞譜』の記事が,フォーマットとしてある程度完成していますので。そちらの記事を基点にして内容を増強し,そこから係累のある過去記事を改訂してゆくカタチにしました。ほんとうはどの記事を一見さんで訪れても同じように理解できるよう,ぜんぶ均等にやってゆきたいのですが,ワタシの寿命と個人作業の労力を考えますと,このあたりが限界かと(w)

 まあ単純にやってもけっこうな分量になるのと,いままで別個に入力してきた,それぞれの流派の記事を擦り合わせる必要もありますんで,そんなにポイポイとは進めませんね。

 今回は『声光詞譜』天・地・人巻の2冊目地巻までの歌曲が中心。
 「金線花」とか「将軍令」みたいな長めの曲までは届きませんでしたが,「九連環」「算命曲」「茉莉花」「紗窓」といったメジャーどころについては,だいたいまとめられました。

 まず各曲解説の曲調復元部分----ここに関しては些少の訂正を加えたほかは,ほとんど手を付けていません。各派複数の版本における工尺譜およびその付点の比較,近世譜への起譜,符号譜や五線譜など,標準的な曲調の復元に関して有用な情報はなるべく取り上げてあります。

 それぞれの派で,その楽曲がどのような曲調で弾かれていたか,分かる限りの資料を駆使して,当時の誰が聞いてもその曲だと分かるような,基本的で「標準的な」メロディラインをさぐってゆきます。この「標準譜」がないと,どの資料がどう間違ってるのか,とか,記録された譜の個人的なアレンジの範囲はどうなのかとかも区別がつけられませんからね。
 今回の改定ではまず,前回までに制定したこの「標準譜」と,歌詞との関係を視覚化するところからはじめてます。曲のどの音「符」が,歌詞のどの語に割り振られるのか,というのを「符割り」と言いますが,これを1拍1マスの表仕立てにしたものを付けました。

 庵主が純粋に音楽畑のヒトだったら,ぜんぶ五線譜に起こしちゃえば済むことだとは思いますが,オタマジャクシの行列がメロディに見えるほどの修業は積んでませんもので(w)。この工尺符字と歌詞をマス目で区切って表示するやりかたは,明楽の楽譜のほか,関西大のアーカイブで公開されている遠山荷塘の『嫦娥清韻』などでも用いられてますね。
 どう考えてもややこしくなる点打ち式の付点法に比べると,分かりやすい点もあるんですが,けっこう描くのが面倒くさいのもあって,清楽家の間では普及しなかったようです。

 次に歌詞の全文とその読みを追加しました。
 前回までは漢字の部分とフリガナを別枠で横に並べていたんですが,今回はいちおうフリガナっぽく見えるよう,上下に配置しています。
 さすがにルビみたいに,漢字とカナの位置をぴったり合わせるとこまではできませんが,まあこれで少し見やすくはなったかと。

 続いて語釈の部分を大幅増強。
 清楽家のほとんどは,中国音楽の専門家でもなければ中国語の専門家でも民俗学者でもありませんから,歌詞に関しては文字も意味もかなりテキトウです。もともとの歌詞の意味も知らないで書き写すものだから,伝言ゲームの間に違う字になってたり読みになってたり,しまいには分んなくなったところを捏造してたりで散々です。
 庵主はもともと中国方面のほうが専門ですから,大陸の古い資料なんかも駆使して,なるべく歌詞のもともとの意味に迫れるよう,いろいろと調べてみてますので,日本での通説や過去の解釈なんかとは違ってる部分も多々出て来てます,あしからず。

 そして最後に日本語訳。
 原歌詞の「正確な意味」については語釈を参考にしてもらうとして,日本語の訳詩はその大意をとって,なるべく「歌えるように」組んであります。
 そう----原曲のメロディで「日本語で」歌ったならこんな感じかな~,と。
 「紗窓」なんかは歌詞が漢詩ですからね。訳すのなら書き下しでいいんでしょうが,中国の歌は基本ライムです。いまでは唐詩をリリックにビートを叩きつけるムキも珍しくありませんが,庵主が『中国のマザーグース』を訳したころには,「らいむ?----押韻ってなーに。」って感じで,ラップもヒップホップもまだそんなに一般的じゃなく,日本語でライムして訳したのにあんまり気づいてもらえませんでしたねー。
 まあどれもこれもライムしたわけではありませんが,原歌詞の抑揚になるべく合うように訳すのは,それはそれで面白かったですよ。

 各記事,かなりの分量がありますので,必要なところだけ飛ばし読みしてお楽しみください。とうぜんMIDIやMP3での再現も付いてますので,なんなら耳でもお楽しみあれ。

「明清楽復元曲一覧」
  http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html

  -渓派『清風雅譜』『清風柱礎』
  -連山派『声光詞譜』

----の各書項目,曲目一覧から曲のタイトル部分をクリックすると,各記事へ跳べます。

「清楽曲曲譜リスト」
  http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/LIST.html

  上掲同書の各項目末「リンク」のところにある「解説」をクリック。

 どっちからでも飛べます。
 最初のほうに書いたように,まだ全面改訂ではありません。ぜんぜん改訂されてない記事もたくさんありますが,そのあたりの更新も追々やってゆきますので,これからもよろしくお願いいたします。

清楽月琴WS@亀戸 2023年6月!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2023年 月琴WS@亀戸!6月!!!


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 ろくがつ場所 のお知らせ-*


 (たぶん)霖雨蕭々たる梅雨の暇の2023年6月,清楽月琴ワ-クショップは,24日(土)の開催予定です!

 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。
 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼さがりの大開催。
 美味しい飲み物・ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか阮咸とか),やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。個別指導・相談事は早めの時間帯のほうが空いてて Good です。あと修理楽器持込む場合は,事前にご連絡いただけるとサイワイ。雨の時期なんで楽器,濡らしたくないですからね~。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 いきおくれのウサ琴EX2。(w)
 お嫁入りさき募集中です!
 うむ,がんじょう。それなりに弾きまくったので響きもあがってきましたよ。板が薄いせいか,楽器の育つのがちょいと早いですね。2年も弾いたら,かなりすごいことになるんじゃないかな?
 清楽月琴の上澄み技術でこさえた1本,ぜひWSにてお試しください。

『声光詞譜』電子版 補遺6曲公開!

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斗酒庵 告知 の巻『声光詞譜』電子版 補遺6曲 復元楽曲と解説を公開!!


 今回復元した補遺6曲は,明治6年の『声光詞譜』には載っていない曲です。

 明治10年に出された,山本小三郎の『月琴手引草』(1枚刷り)と吉見重三郎『明清楽譜』(雪月花3冊)は,タイトルは違ってますが,内容は実質『声光詞譜』と同じで,本の最初のほうにある内題にも「声光詞譜」と銘打っています。要は本の内容をあッちからそッちうちしたもの。剽刻本とでも言いましょうか。
 ただ,この両書の巻末には,平井連山の『声光詞譜』には収録されていない譜が6曲収録されています。それぞれ版形も字組みも違いますが,各曲題も曲順も,譜の内容もほぼ一致しています。
 明治6年から10年の間に,この6曲を含んだ『声光詞譜』の増補改訂版が出てたのかもしれませんが,いまのところ不明ですね。
 明治17年に連山の妹・長原梅園とその息子の春田が出した,連山・梅園派の主要楽曲をまとめた第二楽譜集とも言うべき『清楽詞譜』にも,これらの曲はタイトルを変えて収録されてます。6曲中の3曲はいわゆる「裏曲」で,オモテにあたる曲と同時に演奏すると,あらふしぎ,かっこよく聞こえるよ!----というコンセプトの譜なのですが,もともと「○○(主曲の題)裏」となってたのを,この本では「秋籬香」とか「寒松吟」なんていう,一見してみやび~な感じに変えたりしてます。

 梅園の『清楽詞譜』が出た明治17年には,渓派でも中興・富田渓蓮斎が同派の第二楽譜集にあたる『清風柱礎』を刊行し,この前後には両派ともに楽譜の整理・統一や歌曲の音韻修正などをさかんに行っていたようです。まあ,どっちの「修整」も,もともと実は中国にも音楽にも大して詳しくないような酢豆腐連が,勢いにまかせてイロイロやらかしちゃったもンで----この時やったことのほとんどは,百年ちょいしてからその不正を庵主に暴かれてはプギャーされるハメになってますが。
 今回の6曲はそのはちゃめちゃ修整以前の譜ですんで,初期の連山派における演奏の様子がけっこう色濃く残ってる感じですね。

 1月なかばからほぼ1ヶ月,雪かきしながら組んでおりました。
 資料がそろわなかったものが多いので,標準化の作業までたどりついていないものがほとんどではありますが,閑時聊御笑納あれ。

『声光詞譜』電子版補遺
0)目 次
1)月 宮 調
2)耍 棋
3)松 風 流 水
4)茉 利 花 裏
5)平 板 調 裏
6)四 季 如 意 裏

(つづく)


連山派『声光詞譜』電子版(いちおう)完成!

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斗酒庵 告知 の巻『声光詞譜』電子版(いちおう)完成! 復元楽曲と解説を公開!!

 ----はいけい,ありまきねんがきますね。

 ことしのわたしのゆめはえふふ君です。
 あ,ぷぼ君もがばってね。

 なつやすみからこっち,かせぎ仕事のほかは,ずつと,このさぎょうやってまた。
 かなりへんたいだったでの,ねると,ねむるとやつがゆめにでてくるのです。

 これわ「もずべっろ」くん。

 いもうとの「えれがんとるびー」ちゃんもいたますよ~。

 おかしひ,ワタシのしってる「もずべっろ」くんはこんなんじゃなかったはずだ。
 あ,どうたいが…くびがへにょんとのびてぶらぶらおどってる。(SAN値判定 1d100=3)




 3年かかりましたねぇ…あ,いや,ずぅッとヤってたわけじゃなく。
 途切れとぎれの作業ではありましたが。
 ……長かったですねぇ。


 さて,清楽の楽譜「工尺譜」に使われている「符字」というのは,ドレミ…を「上尺工…」という漢字の羅列にあてはめただけのもので,書き込みがないと,基本その曲がどんな音階で進行するのかは分かりますが,それぞれの音が「どのくらいの長さ」かは分からない状態となっております。

 この「それぞれの音の長さ」を表わすために書きこまれる点とか記号が,「拍点」「付点」「符号」といったものなのですが。

 庵主がさいしょに取組んだ東京の「渓派」と,今回やった大阪の「連山派」とでは,その「音の長さを表わす」方法--付点法--が違っているんですね。

 ごくごくカンタンに解説しますと----

 渓派の付点法では,音が出てる間にタイコが3回鳴ったら,「タイコ3回分の長さの音」とします。
 曲がゆっくりで,音が長くなろうが,軽快な曲で音が短かろうが,「タイコ3回分の長さの音」はいつでも「タイコ3回分の長さの音」です。

 これに対して連山派の場合は,1・2・3…と心のフィーリングで数えて,たぶん3拍の長さだったら「3拍の長さの音」として,文字の横に点を3つ打ちます。1拍なら1つ,4拍なら4つですね。

 まあ分かりやすいっちゃあ,分かりやすい。

 渓派の譜は,基本的にごく数学的,数理的に読み解くことができるのですが,そのまま再現すると,人間味のないオルゴールみたいな音楽になっちゃうことがよくあります。
 これに対して連山派の方法は,長いところは長く短いところは短く記録されるので,いい意味で言うと,蝋管レコードとかみたいに,当時の人の演奏に近く再現されてるんですが。テンポやら拍子やらという概念がごくごくうす~くしかないために,「3拍だ」って書いてあるのをうかつに信じて,そのまんま五線譜とかにおこすと,拍子ズレまくりのはっちゃめっちゃな音楽にしかならない----そんなことが多々あるのです。

 そこで役に立つのが「符号譜」というもの。これは音の長さを「心のフィーリング」で数えるのさえメンドくさくなっちゃった人々(www)が,

 「あ,ここは "た~らら" でいいよね。」

----と,いう具合に。口拍子とか鼻歌で採った調子を,そのまンま「た~らら」って書くと何だか馬鹿っぽくて恥ずかしいので,「それっぽい記号」に換えて,楽譜に書きこむようになったものです。
 連山派の付点法だと,あたまから1音1音記録していくわけですから,「拍点の人」は----

 「えっと…これ何拍かな…2拍?3拍?あッ!と曲,進んじゃうよ!!」

とか,なりながらやってたのは間違いないところですが,これに対して「符号の人」は----

 「ふぅむ…ここは "た~らた~らたー" だ!」

みたいに。フレーズ単位で,あるていどまとめてやれますから「拍点の人」よりはラクで,すこし余裕を持って記録できたことでしょう。
 とはいえまあしょせん鼻歌ですんで。
 それぞれの音の「音楽的な」あるいは「(五線譜的な意味での)楽譜上の」正確な長さなんて分からないわけですが。
 拍点のヒトが「3・1・1拍」だと記録したところが,符号譜で「た~らら」となってたとき,「それ(拍点)がそう(符号)聞こえるか?」というところから,拍点で記録された音長関係----音の長さの組み合わせを,妥当かそうでないか判断する助けにはなります。



 今回の復元では,この二つの情報を組み合わせて,曲の骨子である楽譜の部分と,それを「音楽」にするための演出であるテンポの変化を再現しています。
 まだまだ資料が足りないので,曲調の「標準化」の部分では中途半端なところも多く残ってしまいましたが,歌付きの曲では,以前よりもそれっぽく復元することができるようになってると思いますよ。

 まずはお試しアレ。

 ELECTORICAL EDITED GENERAL TEXT OF "声光詞譜"

----こと,「連山派『声光詞譜』楽曲の復元と解説」へは-----

1)当ブログ左サイドメニュー>
  明清楽復元曲一覧>
  上端文字列の「連山派」を
  クリック(もしくは下スクロール)>
  >連山派『声光詞譜』M.11

 各楽曲の解説へは一覧表の曲題のところから飛べます。
 付点法等の詳しい解説は総目次のところ。連山派『声光詞譜』M.11の原書画像の横にリンクがあるほか,各曲の解説上下にある「TOP」のリンクからも飛べます。
 下にもリンク貼っちゃいましょう。

 「連山派『声光詞譜』楽曲の復元と解説」総目次へ

 このほか,上のように拙HP「斗酒庵茶房」TOPページの「明清楽復元曲一覧」のリンクから。あるいは「清楽曲譜リスト」内の明05『声光詞譜』のところからも飛べるようになっています。

 いづれはすでに公開済の資料や楽曲リストとも細かくリンクさせて,「清楽」「明清楽」の各楽曲の基本情報が,まとめて,かんたんに得られるようなデーターベースに仕上げたいところですが……まだまだお先が長ぅございますよぉ。

(つづく)


2022年6月 月琴WS@亀戸

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斗酒庵 WS告知 の巻2022年 月琴WS@亀戸!6月!!



 

 

*こくちというもの-月琴WS@亀戸 水無月場所 のお知らせ-*


 いまだコロナ禍も完全にはおさまらぬなか,前回もWSに足をお運びいただいた方々,まことにありがとうございます。


 さて,本年度 月琴ワークショップ 第2回 開催ですぅ!!!


 6月の清楽月琴ワ-クショップは,月末第4土曜日,25日の開催予定。


 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。
 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼下りのみなづきといえばういろう開催。
 美味しい飲み物・ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 


 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか阮咸とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。相談事は早めの時間帯のほうが空いててGoodです。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。

  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)


 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 



 現在,ウサ琴EX2号機を製作中。
 量産型と違いやたら時間のかかる加工実験ばっかしてるので,間に合うかどうかは微妙ですが,ちょっと頑張ります(w)

 

胡琴譜の読み方 (2)

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斗酒庵 胡琴譜を読み解く の巻2015.5~ 胡琴譜の読み方 (2 西皮調)

STEP2 西皮は西瓜の皮ではない。


  月琴の場合,ほとんどの曲は 「上/合(六)」,すなわち 「上=ド」 としたとき 「ド/ソ」 にあたる調弦で弾かれますが,一部の曲に 「尺合調」,すなわち 「レ/ソ」 で弾くことになっているものがあります。

  清楽の胡琴も,前回解説した「二凡調(にはんちょう)」,すなわち「合/尺(ソ/レ)」の調弦のものがほとんどなんですが,そのほかに 「西皮調(せいぴちょう)」 もしくは 「四工調(すいこんちょう)」 という調弦で弾かれるものが何曲かあります。
 「四」 は 「ラ」,「工 」は 「ミ 」ですから,「二凡調」を 「ソ・レ」 とすると,一音づつあげて 「ラ・ミ」 のチューニングで弾かれるわけですね。

  「四工調」では工尺符号の 「四・五(ラ)」 は同じ低音開放弦で弾かれ,オクターブ上の 「ラ」 には 「伍」 もしくは 「伵」 とニンベンが付けられます。 「合・六(ソ)」 はどちらも高音弦,楽器の構造上この音のオクターブ上はありません。

  そしてこれが「四工調」の譜読み,最大の特徴なんですが,同じ 「ミ」 を,「工」 とあったら低音弦で 「仜」 とあったら高音弦で弾きます。 通常の工尺譜において 「仜」 は,「工」 のオクターブ上の音を表しますが,ここでは「高音開放弦」を指示する記号であるわけですね。

  「二凡調」では曲の流れで,「仩(高いド)」 がオクターブ下の 「上」 に書き換わったりしますが,「西皮調」ではその手のことはありません。「上(ド)」 のオクターブ上はふつうに 「仩」 ですが,明笛を基準とした音符の並びと違うところは,「仩」 が 「仜」(本当なら工(ミ)の1オクターブ上) や 「伍」(本当なら五(ラ)の1オクターブ上で,四の2オクターブ上) の後になることですかね。

  すべての曲に「二凡調」とか「西皮調」と書いてあればいいのですが,そうでないとき,その胡琴譜がどっちの調弦なのか,どう見分けるかといいますと。庵主所有の『清風雅譜』17年版で言えば,後付で 「合・四/六・五」  にニンベンの付いてるのが「二凡調」,「四(五)」 と 「工」 に付いてるのが「西皮調」ということになります。

  清楽曲に「西皮」もしくは「西皮調」と題される曲があって,タイトル通りこれは西皮調で弾かれます。ちょっと長い曲ですが,まずは『清風雅譜』17年版の原譜を。

  (楽譜画像はクリックで拡大)

  これを1文字=1拍,4/4拍子の近世譜に直すと以下のようになります。黒い文字の部分から読み解かれる,月琴や明笛による標準的な曲調(一部にテキストクリティーク上の変更アリ)は左,同じ楽譜を,前所有者の朱字書き込みから,これを胡琴譜に組みなおしたのが右です。

  六-六-|尺工六-|-○[仩-|六仩五六|
  工-尺工|六五六○|尺工六-|五六工尺|
  上--○|尺尺工五|六--○|工六工尺|
  上--○|工六工尺|上○六六|工六上-|
  -○上四|上-上-|六-工六|工尺上-|
  尺-上-|四-合-|-四工尺|合--○|
  合-工-|四上尺-|-○尺-|--尺-|
  --四上|尺--○|工-尺工|尺上四-|
  工-尺上|四仩合-|-○五六|工六尺-|
  -○六工|六-尺工|六-五六|工尺上-|
  -○尺尺|工五六-|-○工六|工尺上-|
  -○工六|工尺上○|六六工六|上--○|
  上四上-|上-六-|工六工尺|上-尺-|
  上-四-|合--四|工尺合-|-○工-|
  合-四-|四-乙-|乙-五-|五-六-|
  -○六-|六-五-|-六工-|五-六-|
  -○五六|工五六-|-○工六|工尺上-|
  -○工六|工尺上○|六六工六|上--○|
  上四上-|上-六-|工六工尺|上-尺-|
  上-四-|合--四|工尺合-|-○上-|
  上-工-|工六尺-|-○工六|工尺上-|
  -○五六|工五六-|-○工六|工尺上-|
  -○工六|工尺上○|六六工六|上--○|
  上四上-|上-六-|工六工尺|上-尺-|
  上-四-|合--四|工尺合-|-○合-|
  四-乙-|乙-五-|-○五-|--五-|
  --工六|五--○|]
  六- 六四上|尺 六-|-合伍[仩-|六仩 伍六|
  工四上|六伍 六四上|尺|伍六 工尺|
  上--○|尺尺 伍|六--合伍|工六 工尺|
  上--上尺|工六 工尺|上○ 六六|工六 上-|
  -○ 上四|上- 上|六- 工六|工尺 上四上
  尺 上-|四 合-|-伍 合四|合--五六
  合- 工|四上 尺-|-○ 尺-|-- 尺-|
  -- 四上|尺--上尺- 尺|尺上 四上尺
  - 尺上|伍仩 合-|-○ 伍六|工六 尺-|
  -○ 六工|六四上|六 五六|工尺 上-|
  -○ 尺尺|伍 六-|-○ 工六|工尺 上-|
  -○ 工六|工尺 上○|六六 工六|上--○|
  上四 上-|上 六-|工六 工尺|上四上
  上- 四|合--伵|尺 合-|-○ 工-|
  合- 四-|四- 乙-|乙- 五-|五- 六-|
  -○ 六-|六- 五-|-六 工-|五- 六-|
  -○ 五六|工五 六-|-○ 工六|工尺 上-|
  -○ 工六|工尺 上○|六六 工六|上--○|
  上四 上-|上 六-|工六 工尺|上四上
  上- 四-|合--四|尺 合-|-○ 上-|
  上 工-|工六 尺-|-○ 工六|工尺 上-|
  -○ 伍六|工伍 六-|-○ 工六|工尺 上-|
  -○ 工六|工尺 上○|六六 工六|上--○|
  上四 上-|上 六-|工六 工尺|上四上
  上- 四-|合--四|尺 合-|-○ 合-|
  四- 乙-|乙- 伍-|-○ 伍-|-- 伍-|
  -- 工六|伍--○|]

  前回と同じく,赤文字は装飾符。後半に2箇所ただの 「工(低いミ)」 がオレンジになってるところがあります。原書ではここにニンベンはついてないんですが,前2回同じフレーズで 「仜」 になっていることから,ここはニンベン付けるのを省略したものと考えます。まあ,上にも書いたとおり,「四工調」で 「工・仜」 は同じ音の低音弦で弾くものと,開放弦で弾くという運指,すなわち指遣い上の違いでしかありませんから,基本的にはどっちで弾いても構わない(w)のですが。

  ちなみに『清風雅譜』内の曲で(調弦法の)「西皮調」を使って演奏されたことが分かっているのは,この「西皮調」のほか「三五七(尼姑思還)」,「銀鈕糸」「金線花」の4曲だけで,あとはみんな「二凡調」です。

  前回同様,このチューニングにおける三つの楽器の実音と符号の関係を表にするなら----

明笛(乙)
実際の音3G3A3B4C4D4E4F4G4A4B5C5D5E5F5G5A5B6C
月琴六/合五/四𠆾
胡琴四/五工/仜六/合伍/伵亿

  と,なります。
  前回も書いたとおり,あくまで 「上=4C」 とした場合の表で,古い明笛に合わせた実際の清楽の演奏では,これより長音2度ほど高かったと思われます。

  まあ,実際,庵主はMIDIの上では何度も組んで実験してますが,こちらの調弦で,現実(リアル)な楽器を使い,胡琴と合奏してみたことはいまのところありませんねえ。

  無段階楽器とはいうものの,胡琴は短いだけに音域がせまく,「二凡調」でも「西皮調」でも,「工」のオクターブ上(上の表で言うとあとマス2つ先)くらいまでが,なんとか安定した音の出せる高音の限界のようです----そういやまだ見たことはありませんが,四工調の場合,その音を表すときは「工」にギョウニンベンを付けることになるんだろうな~,とは思います。

  庵主,自分では弾けないので~(w)まだ実験と文献の擦りあわせが多少足りてないところもございます。
  SOS団・胡琴弾き諸君の健闘と成長を祈る!

*(曲の)「西皮調」のメロディなどについては こちら でどうぞ。

(つづく)


胡琴譜の読み方 (1)

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斗酒庵 胡琴譜を読み解く の巻2015.5~ 胡琴譜の読み方 (1 二凡調)

STEP1 「胡琴譜」読んで胡琴を弾こう!


  清楽で用いられている楽譜,「工尺譜」っていうものは,ある意味きわめて合理的な楽譜で,月琴や明笛,胡琴など音域の違う楽器が,パート分けされていない,まったく同じ譜面の同じ文字列を同時に見ながら,それぞれの奏者が自分の楽器に合わせた演奏が出来るようになっています。

  「工尺譜」は文字譜,かんたんに言えば 「ド,レ,ミ…」 という音階に 「上,尺,工…」 という漢字を,記号として当てただけのものです。 「上」 を 「ド」 とした場合の,文字の並びは 合 四 乙 上 尺 工 凡 六 五 (乙) これが ソ ラ シ ド レ ミ ファ ソ ラ シ に当たります。

  高音の「乙」から先,1オクターブうえの音には,「仩」 といったぐあいに,漢字にニンベンが付けられます。ちなみに,中国の工尺譜では低音の「乙」は「一」,高音が「乙」と書き分けられますが,日本の工尺譜ではこれがなく,「乙」がどちらの音なのかについては,それぞれの楽器の音域・音階と,前後の符の高低によって判断されていたようです。(すなわち合・四に隣り合わせ,または同じフレーズ内にある場合は低音,五・六,もしくはそれ以上の高音に隣り合わせた場合は高音となる)

  楽譜自体に何の前置きがなくても,月琴の奏者は 「合・四・乙」 を,符字の並びから言えば1オクターブ高い 「六・五・乙」 の音を使って弾きます。月琴の最低音はそもそも「上」で,低音の「合・四・乙」にあたる音はないからですね。
  また,明笛は 「五 仩 六」 と楽譜にあった場合,この3音をすべて甲音(高音)で吹きますが,「四 仩 合」 となっていた場合は,まんなかの「仩」を1オクターブ下の呂音の「上」で吹きます。明笛の最低音は「合」。後者の場合,まんなかが「上」でなく「仩」になっているのは,月琴などの高音楽器のためなわけです。


  胡琴の場合,この読み解きはさらに少し複雑になります。

  胡琴には二つの調弦法があり,曲によって調弦を変えて弾きます。
  このうち「九連環」や「茉莉花」などで使われる一般的な調弦が 「二凡調(にはんちょう/ねはんちょう)」 です。上記のように「上=C(ド)」とした場合,低音弦の開放が「合」,すなわち低いG(ソ),高音が「尺」,すなわちD(レ)のチューニングになります。
  胡琴の譜では月琴と同様,工尺譜の 「合・四」 と 「六・五」 に区別がなく同じ音で弾かれまが,月琴の場合これらの音がいずれも高いほうの音で弾かれるのに対して,胡琴ではこれと反対に低音弦で出す「低い音」として弾かれます。 そして,開放弦のオクターブ高い音は「六・五」ではなく,符字にニンベンを付した 「𠆾・伍」 で表されます。
  また,明笛の場合 「五 仩 六」 とあればまんなかの 「仩」 は高音,「四 仩 合」 とあれば「仩」はオクターブ低い「上」として吹かれますが,胡琴の場合はどちらの「 仩 」も,低音,「伍仩𠆾」 の時だけ高音になるわけです。
  すなわち,胡琴の奏者が工尺譜を見たときの音の並びは----

  (合/六) (四/五) 乙 上 尺 工 凡 𠆾 伍 亿 仩…

  ----となるわけですね。
  基音楽器である明笛での工尺符字の並びを基準とし,月琴の「上」を 「4C」(ピアノの真ん中のド) とした場合,3つの楽器の音域と工尺符字の関係は,以下のようになります。

明笛(乙)
実際の音3G3A3B4C4D4E4F4G4A4B5C5D5E5F5G5A5B6C
月琴六/合五/四𠆾
胡琴合/六四/五𠆾亿


  あくまでも,わかりやすくするため 「上=4C」 とした場合の表ですからね。

  東洋の音楽は基本的に「移動ド」。
  西洋音楽のように絶対音A=440HZを基準とせず,人の声やなんらかの基音楽器の音を基準として,演奏するその時々に決められます。きょうの「ド」は西洋式に言うと「レ」かもしれないし,明日の「ド」は「ファ」になってるかもしれません。(w)

  清楽では楽器の調弦は明笛の音で合わせるのですが,清楽に使われた明笛の全閉鎖音(合)は3Bbから3Bくらいなので,実際の音階は,これより長音で3度くらい高いでしょう。

  月琴と明笛は,通常の工尺譜のままで,弾き分けがほぼ可能なんですが,さすがに胡琴となると,符と音の関係が複雑でちょっとそうはいきません。

  左の画像は庵主所有の『清風雅譜』17年版の一部。

  この本の前の所有者は胡琴弾きだったようで,朱字の装飾符に 「𠆾・伍」 の字が見えるほか,印刷された「六・五」の横に朱でニンベンを書き込んであるのが分かりますね? 上で解説したように胡琴譜のきまりでは,そのままだと「六・五」は「合・四」と同じ低音になってしまうので,胡琴で高音にすべきところにニンベン付してこれを表しているわけです。
  月琴と明笛の奏者は,黒い文字のところだけを追いますから,この状態でももちろん合奏に支障はないわけですね。

  井上輔太郎 『月琴雑曲ひとりずさみ』(M.24)という譜本の巻末に,渓蓮斎によるものという「胡琴譜」----すなわち通常の工尺譜を,胡琴用にわかりやすく書き直した譜が入っています。これを17年版の譜と対照させると,ふつうの工尺譜と胡琴譜の違いが分かりやすいかもしれません。


   (画像はクリックで拡大)

  まあ,画像だけ見ても分からんか。(w)
  ではまず,これらを4/4の近世譜に直します。上が『清風雅譜』17年版の黒い文字部分を変換したもの。下が『月琴雑曲ひとりずさみ』の胡琴譜です。

 上- 工-|尺--○|工- 四上|尺工 上四|
 合- 合四|仩- 仩合|四--○|四仩 四仩|
 四- 仩四|合--○|四合 四仩|合--○|
 工- 工-|尺工 六-|五六 工尺|上--尺|
 上--○|

 上四合六上|尺--○|工尺工 上|尺
 合尺工 四|上 上合|四--○|
 四合四|合--○|四合 四|合--四合
 工- 工六上|尺 𠆾-|伍𠆾|上-合上
 上--○|

  1文字1拍(4分音符),下線がついて小文字になっているのは半拍(8分音符),「-」が伸ばす音,「○」が休符です。

  『清風雅譜』は渓派(東京派)の祖・鏑木渓菴が著した同派の基本楽譜で,渓蓮斎は渓派中興の高弟,当然その楽曲は『清風雅譜』の版を忠実に基にしているはずですから,胡琴譜に変換されているとしても,その基礎となっている部分の曲調は『清風雅譜』の版と同じなはずです。
  下段で赤文字になっているのは,その基本曲調に対する「装飾符」の部分を強調したものですね。先に見た17年版において,朱文字で書き込まれてた小さい符字がこれにあたります。
  この装飾符をのぞくと,ほとんどの部分が基本曲調とほぼ一致していること,また上に書いたように,「仩」で表されていた部分が,オクターブ下の「上」に変換されていること,高音で弾いてほしい「ソ・ラ」が「𠆾・伍」に換わっていることなどが分かるかと思います。

  上の17年版,版の状態もよく,拍点がウラオモテ両方ついてるなど,付点が分かりやすく基本的な曲調の読み解きによいので,庵主はよく工尺譜の見本として使っていますが,先にも書いたように,こちらも胡琴弾きが使ったものなので「胡琴譜」として読み解くことが出来ます。その場合の譜面は以下に----民楽などやってる方のために,数字譜もつけておきましょう。あ,あと「茉莉花」の胡琴譜もついでに。これも調弦は「二凡調」です。記事を参考に,ご練習あれ。


   (画像はクリックで拡大)

  井上輔太郎『月琴雑曲ひとりずさみ』は国会図書館のアーカイブに,庵主の『清風雅譜』もpdfで公開されてますので,より詳しく調べてたり,読み解いて見たい方は,そちらから資料をDLしてやってみてください,ぜひぜひ。

  参照:「斗酒庵夏の資料大公開! 」(2014.7)

(つづく)