2024年3月,月琴WS@亀戸!!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2024年 月琴WS@亀戸!3月!!


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 やよい場所 のお知らせ-*


   2024年,弥生三月の月琴WS@亀戸は,23日(土)の開催予定です。桜は咲いてるかな?

 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。
 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼さがりのとろとろ開催。
 美味しい飲み物・ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 特にやりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の基本的な取扱いから楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。個別指導・相談事は,早めの時間帯のほうが空いてて Good です。あと修理楽器持込む場合は,事前にご連絡いただけるとサイワイ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

2024年2月,月琴WS@亀戸!!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2024年 月琴WS@亀戸!2月!!


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 如月場所 のお知らせ-*


   2024年もあけましておめでとうございます!
 こんどの月琴WS@亀戸は,2月の末,24日(土)の開催予定です。


※※※1月は雪かき帰省のため,お休みしまあす※※※

 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。
 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼さがりのとろとろ開催。
 美味しい飲み物・ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 特にやりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の基本的な取扱いから楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。個別指導・相談事は,早めの時間帯のほうが空いてて Good です。あと修理楽器持込む場合は,事前にご連絡いただけるとサイワイ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

ウサ琴EX3 (4)

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斗酒庵 ことしもウサ琴づくり の巻2023.10~ ウサ琴EX3 (4)

STEP5 棹だけ屋のヒミツ

 今回は,胴体と同時並行で作ってた棹の作業記録です。
 そういえば,前2作はウサ琴と関係なく,資料として作ったまま忘れてた,唐木屋や鶴寿堂の棹の複製を使いましたので,棹自体の製作はありませんでしたね。
 唐木屋の棹の複製品を使った1号ちゃんは実際使いやすかったし,デザイン的にもトラディッショナルで無難,機能的にも実用第一なので,今回も唐木屋やその元となったであろう関西の松音斎・松琴斎あたりの棹をモデルとすることにします。

 斗酒庵謹製の月琴棹は基本的に3ピース---実際の数で言うと,5つの部品で構成されてますが---ちょっと硬めの中心材を,カツラやホオの板でサンドイッチにした構造で作ってます。

 今回はカツラの板を買ったら,銘木屋さんが杢の入ったいかにも良さげなカバの端材をオマケで付けてくれたので,これを中心材にして2本,カツラの同材で1本作ろうと思います。

 中心材は14~15ミリ厚。この厚みがそのまま弦池(糸倉の弦のおさまる部分)の幅となります。清楽月琴の平均がだいたいそのぐらい。すこし広めのほうが,弦の交換などの操作がやりやすいですね。

 次に,型紙をもとに,左右の部分をカツラの板から切り出します。
 こちらの板は昔買った粗材で,厚みは7~8ミリ。
 切り出した左右の板を2枚づつ両面テープで接着し,左右対称になるよう整形します。
 部品が揃ったところで,中心材と左右を接着して一カタマリにします。

 ニカワでもできますが,ここらへんはエポキでやってます----ここの3P構造は,別にメンテの時にバラす必要がありませんしね。ただし,糸倉の天につく間木はニカワで接着します。国産の楽器でまれにある一木造りの棹だと一体で作られますが,本来ここは蓮頭といっしょで,糸倉に衝撃がかかった時,はずれることで被害を少なくする役割もあるところですので。

 左右がくっついたら,上面をキレイに均して指板を接着します。
 今回は黒檀ですね。
 むかーし,銘木屋さんでもらってきた端材がまだあります,ありがたや。

 盛大に木粉が飛び散りますので,この後の整形はお外でやりましょう。
 いちおう棹の形になった四角い物体---棹の素体---を削ってゆきます。

 最初にまず,棹背部分の余分を削ぎ取り,胴にささる部分----棹基部になるところに切れ目を入れます。
 つぎに,山口(トップナット)が乗るところ…三味線だと「ふくら」にあたる部分の左右側面に区切りの溝を刻みます。

 この区切りの溝のところが起点となって,左右側面のテーバーが決まったり,糸倉と握りの境目----「うなじ」の曲面へとつながったりしてゆきますので。ある意味ここが,棹の製作において全体のフォルムを決定するもっとも重要な箇所と言っても過言ではありません。

 どんどこ削ってゆきます。

 棹背を削ぐの以外はほぼ各種ヤスリのみによる作業で,画像ではそう見えませんが,足元はもうけっこうな量のおがくずだらけです。

 最後のほうになると,もう寸法とかじゃなくて,手で握り指でなぞって,実際の感触を確かめながらの作業になっちゃいますね。
 同じ型紙から作っても,木の目や整形時の削り加減で,一本いっぽん微妙に違うものになっちゃうあたりは,むしろ手作りゆえの特徴,と思っていただけるとサイワイ(w)

 二日ほど夕方の公園に通って,3本なんとか完成!
 ここでいちど樹脂で木固めをして,糸倉の背やうなじ部分など細かいところをさらに削り込み,表面を磨きます。

 胴体に表板がついたところで,基部を各胴輪の棹孔に合わせて整形。それぞれきっちり入るようになったら,V字の刻みを入れて延長材を接続します。

 前2作では針葉樹材を使いましたが,今回はホオでいきましょう----いえ,別に意味はなく,端材入れの中からちょうどいいサイズのが見つかったので。

 最後の部分はちょっと作業を急ぎました。
 と言いますのも,このあたりで修理の案件も入り,作業スペースの関係から,こっちの3面を早く画像の状態にまでしておきたかったんですね。
 ここまでやっておけば,胴体を棹と別にして横置きする必要はなく,いっしょにどこかにひっかけておけますからねえ。なにせ工房兼住居の四畳半一間,ただでさえせまいとこに,楽器3面の同時製作+古楽器の修理となると,まさに足の踏み場もなくなっちゃいますのよ----しくしく,あすこがアタシの寝床です。


(つづく)


ウサ琴EX3 (3)

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斗酒庵 ことしもウサ琴づくり の巻2023.10~ ウサ琴EX3 (3)

STEP4 2023年宇宙のウサ琴

 間に内桁についてのよもやまはさみましたんで,報告が進んでませんね~もうしわけない。

 限界まで削った内桁と,半月下の補強材を胴輪に組みこみます。

 内桁は胴の内がわに彫り込んだミゾ---胴輪自体,厚みが5ミリないくらいなうえ柔らかい針葉樹材ですので,けっこう慎重に彫り込みました---に,補強材のほうは表板がわの縁に刻んだ凹にハメこみます。補強材もただ平らな板ではなく,内桁同様に真ん中を少し厚く,端のほうを薄く削ってありますよ。

 接合部にニカワを塗り,ゴムをかけて一晩。
 これで胴体の骨組みが完成しました。

 さて----そしてここから,ウサ琴EXシリーズ固有の地獄作業がハジマリます。

 板を…板を挽きます。
 よいですかみなさん。
 この場合の「挽く」というのはコーヒー豆を粉砕することではありません。
 そう,ノコギリで,板を,切ることなんですが。
 今回の場合,そのノコギる方向が,正直あまりやりたくない向きなのです。
 一枚の板をノコギリで切って2枚にします----縦挽きでも横挽きでも,言葉にするとそれはいっしょなんですが。その「2枚にする」方向が----

 こッちなんですね。

 「厚さ」6ミリの板を,ノコギリで挽いて,半分の厚みの板2枚にするのです。
 一般的な清楽月琴の表裏板の厚さは4~5ミリていど,ウサ琴EXシリーズはそれを半分くらいにしてるわけですね。

 ウサ琴は,胴体の直径がだいたい32センチほど。
 幅7センチの板でこれを覆うためには,5枚必要です。
 表板に5枚,裏板に5枚で,1面につき10枚。
 今回はそれが3面なので,最低30枚。
 加工に不安があるので,予備となる板も多少欲しいものです。
 それも含めて,少なくとも20枚近い板を半分に挽き割ることになりますね。

 …………何日かかったことでしょう?
 少なくとも一週間くらい,毎日板挽いてた気がします。
 月琴の面板が窓にびっしりたかって,ひくひく蠢いてる悪夢を見るくらいにはがんばりました。(SAN値低下)

 続いて,挽いた小板を組み合わせ,横に接ぎまくります。

 朝,仕事に行く前に1枚へっつけて保定,夕方帰ってきたらそれをはずして,夜までにもう1枚----がんばって1日2枚ってとこですね。
 桐は接着性の良い材料ですが,なんせ「のりしろ」が2ミリちょいくらいしかないので,板同士の擦りあわせをしっかりしないとちゃんとくっついてくれません。けっこうたいへんでした。

 接いでできた板を,とりあえず八角形にしておきます。これは角ばったまンまだと,どこかにひっかかったり,ぶつかったりした時に割れやすいからですね。

 板オモテに製材時のキレイな面を使い,鋸の通ったほうは板ウラとしています。板ウラには作業時のキズやエグレがあって凸凹ですが,とりあえず大きな凹になってた部分は,接いでる間に桐塑で埋めておきました。
 あとで凸部分を削って均すのですが,それでも残った凹の桐塑で埋めた部分は,樹脂を浸透させて補強してあります。

 板が出来てきたところで,表板に使うものと,裏板に使うものを分け,裏板には竜骨を接着----今回は実験的に黒檀の薄板を使っています。

 伝統的な月琴の胴体構造には,縦方向への支えとなるモノがなく,基本的には胴をはさみこむ表裏の板の剛性に頼っているわけですが。ウサ琴はその板が通常よりも薄々なので,これを補強するための構造がこの竜骨です。
 竜骨を組み込む手順については,正直けっこう悩みました。
 ネックブロックと内桁とエンドブロックの裏板がわに,これをハメこむための凹が彫りこまれているわけですが。先に胴体に接着して,後で板を被せた場合,板との接着面にちょっとでも浮きが出てしまうと,構造として弱くなってしまいますし。板に接着してからだと,胴体がわの凹の調整ができません。
 なのでまずは板のついていない状態で,竜骨が胴にきちんとハマるよう,接合部をてっていてきに調整しておき,仮組みした状態で接着位置を確認し,この段階で裏板に貼りつけておくこととしました。裏板への接着位置も,表板が着いてない時じゃないと分かりませんからね。

 裏板への竜骨取付け作業が終わったら,いよいよ表板の接着です。
 胴輪にクランプをかけやすいよう,板の余分をさらに切り落しておきます。続いて胴側と内桁にまんべんなくニカワを刷き,内部構造との密着具合を確かめながら,真ん中>内桁・補強材左右端>そのほかの部分,という順番でクランプかけて固定してゆきます。

 一晩置いて,接着完了!
 浅いアーチトップ,ラウンドバックになるよう内桁にアールをつけてあるので,考えナシに固定しちゃうと,真ん中だけ浮いちゃったりしてタイヘンですね。

 縁からハミ出たぶんを切り落し,表面を磨いて。とりま胴体組みたては一段落。
 といったあたりで,お次へ続く----

(つづく)


ウサ琴EX3 (2)

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斗酒庵 ことしもウサ琴づくり の巻2023.10~ ウサ琴EX3 (2)

STEP2 時計仕掛けのウサ琴

 さて,前回までの工程は,工作の精度も含め従前のウサ琴での工作とさして変わらないところでありますが,シリーズEXの真骨頂はここから。

 まずは内桁を徹底的に削ります。
 前2作の時に,削りすぎて何枚かへし折っちゃったりしましたので,どこまで削れるのかの加減はだいたい分かってきました----たぶんね(w)
 途中からは寸法でなく,指で触った感触で削っていきます。ヤバくなってくると,すッとなぞったときに,わずかに毛羽立ってるような抵抗が感じられたりするんス。


 内桁と補強材の材質はいずれもヒノキです。エゾマツとかでもいいんですが,ヒノキのほうが若干削り込める感じですねえ。

 内桁左右のこの孔。

 楽器の解説だと「音孔」とか書かれ,いかにも楽器の音や響きに影響してそうに思えますが,じつのところ,月琴という楽器においては,コレ,あまり意味の加工で----事実,この孔がキレイにあけられてるのにクソも鳴らない楽器もあれば,孔のないただの板がつっこんであるだけなのに,激鳴りな楽器もあるんですね。
 まあ,そもそも月琴の胴内空間というものはせまいので,内桁に孔をあけてちっと空気の通りを良くしたぐらいでは,そんな都合のいい劇的変化が起こり得るはずもありません。

 さらに言うならこの孔,「月琴」においては,もともと「音」のためにあけられていたものじゃないんですね。

STEP3 閑話・月琴の「内桁」のハナシ

 画像は53号天華斎。
 作者は福州南関外茶亭街の天華斎----の後継のたぶん「老天華」。
 古渡り月琴の胴内は,これとだいたい同じ構造になっています。
 棹孔のほか内桁にあいているのは,片側に木の葉型の孔がひとつだけ。そしてこの孔は,「音」のためというよりは,単に「響き線を通すため」にあけられているものでしかありません。

 国産の月琴も,当初はこれと同じ形式を採っていたと思われます。

 じっさい,連山派と関係が深いと思われる関西の「松」のつく一派,松音斎の初期の楽器は,孔の形こそ違え上の唐物とほぼ同じ構造になってますね。

 国産の清楽月琴では響き線の基部が,演奏姿勢の違い(大陸は椅子に座って足を組む,日本は畳の上で正座する)などにより,やがて楽器の肩口から胴の真横に付けられるようになってゆきます。
 これに伴い「響き線を通すために必要」だった内桁の孔は,基本必要なくなったわけで。じっさい先の「松音斎」の後継と思われる松琴斎や,同じ系を引くと思われる関東の唐木屋では,ツボ錐で申し訳程度の孔をあけた,ほぼ「ただの板」を入れるようになりましたが----

同系と思われる松鶴斎の楽器などでは,響き線の構造は変っているのに,なぜか唐物楽器や松音斎の楽器と同じ位置に,孔があいてたりしています。

 おそらくはこの時点で,職人さんたち自身にも,この孔の意味自体がなかば分からなくなっていたんでしょうねえ。

 これらとは別に,関東で作られていた楽器は,もともとが大陸から来た本物の構造をちゃんと分かっていたかどうかあやしいヒト----渓派の祖・鏑木渓菴の自作楽器などを参考にしていた可能性が高く,庵主所蔵の文久3年製13号も,鏑木渓菴の系を引く田島真斎や石田不識の楽器も,唐物の月琴とは全く関係のない独自の構造になっています。

 内桁が2枚になってるのは関西の松派などでも同じですが,ここは中国人と日本人のモノヅクリの「嗜好」に由来するかと----日本の職人さんは実際の強度に関わらず,「丸に一」の構造が不安でガマンできないんですね。「安定」を求めてどうしても「丸にニ」のカタチにしてしまいがち。そして関東の職人さんは元の楽器を知らへんもんやさかい,ただの板でエエちゃうん,てとこにガマンができず----なんとのぅ,あけるようになっちまったのが,この内桁の「音孔」なんですねぶぶ漬け食うていきなはれ。

 上にも書いたよう,古物の清楽月琴において実際の楽器の比較からは,この音孔の工作如何で,楽器としての性能が劇的に異なる----なんてことはないわけで,おそらくは,内桁によって分断される胴内の空間をつなげることで「通り」をよくしよう,ていどの思いつきだったとは思うのですが,松鶴斎の孔のように,まったく効果のないことでも,先行する誰かがやっていると,何か意味がありげに思ってしまい,つい無批判に継承してしまうものです。印刷物の普及とともに初期の通販的なものがはじまり,関東の楽器が全国に広まるようになってからは,ほかの地方の楽器も同じような構造になっていったようです。

 ちなみに,ここに孔があってスカスカの状態になってても,面板や内桁の接合・接着が悪ければクソほども鳴りませんし,孔のないただの粗板みたいなものがつッこんであっただけでも,「箱」としての作りがしっかりしていればふつうに激鳴りします。

 もちろん孔があいていて工作も良ければ,そのほうが鳴るわけですが,それは「孔が開いていて内部の "通り" がイイから」ではなく,「"箱" の振動を邪魔するよけいなモノが少ないから」なんですね。ここを通って空気の対流がどうの言うてるヒトもおりますが,サウンドホールもない楽器のこの胴内の閉鎖空間のどこから,楽器の音が変るほどの大量の空気が流入し,どこから出ていくのか教えてほしいところであります(w)

 すでに述べたよう,明治の職人さんの多くは,そもそもこの孔の意味もよく分からず,ただ「そういうものだから」といったていどで貫いていたようですが。ふつう,外から見えることのないこのあたりの構造は,たいへん御上手に手も抜いておられることが多く,孔の周縁がガタガタだったりするのは当たり前,錐であけた小孔に挽き回し鋸通して横に挽いただけ,なんて超雑な工作も見たことがあります。

 きっちりしっかり丁寧にあけたところで,さして影響のない孔ではありますが。まずい工作や中途半端な加工をされればもちろん,かえって振動の邪魔になったりノイズ発生の原因になったりするわけで----おかげでなんど過去に戻ってサツジンを犯したくなったことか………

 ちょっと長くなってしまいましたが。つまり庵主がウサ琴の内桁を研ぐのは「共鳴空間を広げる」ためではなく,「余計なものを極力削る」ためなのですな。楽器の構造上,この内桁は,棹を支えるためと,表裏板を胴に固定しカタチを保つために必要なものではありますが,強度的に必要なぶんを以外は「余計なモノ」が少なければ少ないほど,箱全体が振動するようになります。

 まあ前にも書いたようにこの部分,近現代の中国月琴(4弦2コース「中国現代月琴」じゃない伝統的なほう)や,台湾・ベトナムの長棹月琴では----

----と,棹孔のあいた板を,面板の補強材を兼ねた細板ではさみこむカタチになってることが多いですね。これも「音孔を大きくしたかった」のではなく,「棹孔以外の部分を必要最小限にする」ための構造であり工作と考えられます。


 まあ上の構造は単純で,削る手間は要らず組み立てるだけの工作で,最小限の構成が達成できるわけですが,パーツが増えるぶん,どんなに接着をうまくしても伝導になにかしらのロスが生じます。すごい数作るわけでもないので,庵主は従来の一体型の桁で,内桁の限界を目指すとしましょう。
 ----と,いったあたりで次回に続く!

(つづく)


ウサ琴EX3 (1)

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斗酒庵 ことしもウサ琴づくり の巻2023.10~ ウサ琴EX3 (1)

STEP1 ウサ琴博士の異常な愛情

 今年は 早くから暑くなったのもあり,夏の草刈りから帰京してもなお10月なかばまで暑かったせいもあって,研究や修理はともかく,製作方面へ回せる時間が少なくて,ちょっとフラストレーションがたまっておりました。
 その解消第一弾が「なんちゃって阮咸」だったワケですが,これは所詮改装。完成したのも,月琴というよりは,阮咸というか双清みたいな楽器でありまして。それなりに楽しめたものの,月琴ジャンキー的にはかえってコレジャナイ感も残ってしまったワケですね。

 去年作ったウサ琴最終形態2作は,近々どちらも無事にお嫁に行ったのですが。
 2号が実家にいた間,練習もギグもずっと相方をつとめてもらってたせいで,気が付くと,いざいなくなったらなんか困るという身体になってしまっておりました。

 清楽月琴は基本5音階のフレット8枚,不完全な2オクターブの楽器,対してウサ琴は高音の「ファ」と「シ」を足したフレット10枚----たかだか2枚フレットが多いだけですが。実際に音楽の場で使用してるとやっぱり,あるとないとでパフォーマンスがずいぶんに違う。

 ふだん使ってるカメ琴も10枚フレットで,そこは同じなものの,これはエレキ楽器。スピーカー内蔵なので単体でも音は出せますが,ウサEXシリーズだとアコースティックでも,その内蔵スピーカーと同じくらいの音が出せますし,音もいわゆる「エレキの音」でなく月琴の生音。清楽月琴の弱みの一つである,ステージ上の音量不足の面でも,PAさんが首吊らなくて良いくらいには使えるわけです,ハイ。

 うん,やっぱウサ琴,作ろう。
 こんどこそ,自分用のをね。

----というわけで,製作開始。
 前2作は棹も胴体も過去に作ってあったものを使いましたが。今回は最後に残ってた胴輪1本のほかは,ぜんぶ最初からの製作ですね。
 イチからの製作は,10年ぶりくらいかな?
 前2作+なんちゃって阮咸改装で,EXタイプの仕様もほぼまとまってますので,製作過程も含めてその検証もしてゆきましょう。EXシリーズではそれ以前のウサ琴の製作より高い工作精度を要求されるので,同時製作数の限界(並ウサ琴では5面)も知りたいところではありますが,とりあえず3面同時進行ということで挑戦してみます。

 さて,ではさっそく胴体からまいりましょう。

 ウサ琴の胴体は,スプルースの板を曲げて円形にした材でできてます。
 通常の清楽月琴は4つの材を組み合わせて円形にしてますが,うちのウサ琴は継ぎ目が一つだけなのが自慢です。
 庵主がずっと使ってきたこの材は,かつてプログレスさんで販売していたものですが,現在では作ってないそうなので,今回3面作っちゃうと,残りはあと2面ぶん。これがなくなったら,ウサ琴シリーズもとりあえず打ち止めですねえ。

 幅5センチを半分に切って2枚にします。
 円形になっているとはいえ木ですし,長いこと保存してきたので,その間に変形もしてます。また接合部のあたりの曲りがもともと少し足りないので,全体をいちど湿らせて木枠にはめ,それらを矯正しつつ,接着して1本の輪っかにします。

 うん,そういえばこの木枠----修理ではずっと面板を接着する時の板クランプとして使ってきましたが,もともとこのために作ったんだったねえ。これも本来のお役目を果たすのは10年ぶりぐらいだと思う。


 継ぎ目の部分は,表面にブナの突板,裏がわにエンドブロックを接着して補強します。ここが楽器の中心の起点となるところなので,接着位置はけっこうしっかり定めますよ。

 輪っかができたら,次はエンドブロックの中心線を延長して,胴の天地を確定し,ネックブロックを接着します。エンドブロックはどちらもカツラでしたが,こっちは残ってた1本がカツラ,新作の2本はサクラとなりました。まあ加工時の感触が多少違うだけで,性能や音色にほとんど違いは出ません。

 ネックブロックに棹孔をあけます。
 今回の棹孔は23x12。表板との間隔が5ミリ,裏板がわが7ミリほどですね。ドリルで小孔を穿ち,表裏から刃物やヤスリで彫り込んで広げ,3面ともなるべく正確に,きっちりそろえます。ここが正確でないと,後々棹とのフィッティングで苦労するんですよねえ。

 清楽月琴,特に大陸の作家さんの楽器はここの加工が特に大陸的で,平行四辺形になってたり台形になってたりするんで,よく大陸まで筋斗雲に乗って殴りにいきたくなったものです。

 棹孔があいたところで,その孔の内壁と胴輪表面を木固めします。

 一日置いて,樹脂が固まったところで次の作業。

 内桁と半月下の補強材の取付け部を彫り込みます。
 各溝の内壁はやや斜めに切って,部材の端と噛合うように彫り込みます。

 なんちゃって阮咸では,長い棹と弦圧を支える関係で2枚桁としましたが,今回は弦長が短く弦圧の緩いいつものウサ琴ですので,1枚桁で半月の下あたりに補強材のつく前2作同様の構造です。

 表裏をごく浅いアーチトップ/ラウンドバックとしますので,内桁は真ん中が少し厚くなるように加工してあります。

 内桁に棹孔左右の音孔を彫り込みます。
 といったあたりで,今回はこれまで----


(つづく)


2023年師走の月琴WS@亀戸!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2023年 月琴WS@亀戸!12月!!



 

 

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 2023年12月,本年最後の清楽月琴ワ-クショップは,23日(土)の開催予定です!(1月は雪かき帰省のため,お休みしまあす)


 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。
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 初心者,未経験者だいかんげい。
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 うちは基本,楽器はお触り自由。
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 特にやりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の基本的な取扱いから楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。個別指導・相談事は,早めの時間帯のほうが空いてて Good です。あと修理楽器持込む場合は,事前にご連絡いただけるとサイワイ。

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名前はまだない(11):RE

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斗酒庵 阮咸を改装す製作 の巻2023.10~ 楽器製作・名前はまだない(11):RE

STEP11 エレキ阮咸>フルアコ阮咸計画(終)

 さて,従前の工作では,4単弦,4弦2コース,3弦など弦制による差異を検証するため,複種類の弦制に対応できるよう,たくさん孔を開けた半月(テールピース)を用意しました。

 月琴で「半月」,琵琶で「覆手(ふくじゅ)」と呼ばれるこの部品。材料は唐木のムク材をがんばって削ったものだし,清楽阮咸の4弦2コースの設定になる孔もちゃんとあいています。現状べつだん壊れてもないし,これをそのまま使うってのも良いのですが,この半月はウサ琴準拠の半月型(というか木の葉を半分にした形),いつもの月琴で見慣れた形状になってます。
 見かけは唐宋の阮咸に近いのに中身は清楽の阮咸で,そのうえ実際には阮咸でも月琴ですらもない(あえて言うなら「円胴の双清」ってとこでしょうか)という,清楽月琴以上のインチキ楽器でありますので,ここらでもう一段,後世の研究者を困らせるような悪戯をしておきたいと思います。

 テールピースを唐宋の阮咸風の形状に。

 正倉院のは,もうちょっと丸っこいかな。
 今回はホワイトラワンの端材に,端材の唐木板を貼りつけたもので作ります----ちょいとカタチが複雑なので,ウチの手工具じゃ黒檀から削り出すのがタイヘンですからね。いまはくっきりツートンカラーですが,あとで一見唐木のムク材から削り出しかのように,全力で誤魔化しますよ。
 ドリルでたくさん孔を穿って裏面から刳り,さらに真ん中を糸鋸で横からえぐって,横から見た時「ユ」の字みたいな形にします

 うん。画像で見てもらえると一目で分かりますが,文章で説明しようとすると難しいですね。

 さて,この形状。実質的には琵琶なんかで見る,Lを上下逆さにしたのと同じタイプになっています。接着面のせまい片持ち式に比べると,前方への張り出しが支えになるぶん,安定は良さそうですが,そのほかに何か意味があるのか,そのあたりちょっと興味が魅かれますね。

 では「ごまかし」作業開始!!!----まずは土台の部分をスオウで赤く染めます。

 この素材は染まりがいいのと,導管の感じが,黒檀とか紫檀と言った高級な唐木材に近いので,流行晩期のころの大陸製の月琴ではよく使われてますね。
 スオウの上から黒ベンガラ。これは小筆を使ってちまちま…わざとムラムラになるように塗ってゆきます。
 ベンガラが乾いたら表面を軽く拭き取り,定着させるため。表面に亜麻仁油を滲ませ。で,数日乾燥させると----

----どやぁ。
 これだけでもちょっと見なら分からんくらいですが,この時点ではまだ,表面のツヤに差があるので,補強を兼ねてラワン部分を中心に樹脂系の塗料を上がけして調整します。軽く模様もつながるような感じに塗ってるので,シロウト眼にはそうそうは分からん。
 何度も書いてるように,こういう誤魔化しを見破れるのは,同じ職人の上級者か,こういう騙し合いで場数を踏んだヤバい筋の人達だけです,気を付けてください。(w)

 同時進行で胴体側面を塗り直します。
 板の貼り換えやら穴埋めで,けっこうキズつけちゃいましたからね。

 スオウやベンガラで補彩した後,全体をカシューの透で塗り直し。

 地味に塗装がいちばん時間かかる作業なんですよね。
 四畳半一間,他の作業もやってるので,あるていど硬化するまでホコリがつかないよう,塗ったらすぐ箱の中に入れておきます。
 けっきょく三週間ほどかかりましたが,なんとか塗り直し完了。
 新しく貼り換えた表裏板を,ヤシャブシで染めます。

 桐板は基本的に小切れを接ぎ継いで作るもの,たとえ同じ木から切り出したものでも,小板ごとに色味がわずかに異なります。ヤシャブシ汁の主成分はタンニンなので,虫除け的な効果もあるようですが,ヤシャブシに砥粉とでんぷん糊を少量溶いたのを刷いて染め,木色の違いを分かりにくくします。

 これが乾いたら,あとは組み立てるだけですね。


----と,ここで非常事態発生!
 覆手の貼付けでしくじり(左に1ミリほどズレてた),やりなおしするハメとなりました。
 原因は,このカタチのテールピースの接着をするのがはじめてだったことで。どうやって保定するかのほうに夢中になるあまり,少し確認が雑になっちゃったようです。
 どんな作業でも最後に指さし確認・ヨシ!は必須ぅ----ニカワ付けが下手に上手くなっているため,はずすのに半日以上かかり,うれしいやら悲しいやら。

 さすがに二度続けて失敗はこきません。(笑)
 こんどはしつこいぐらいに測り直し,絶対ズラさないMAN的に当て木でギチギチに保定して,再取付け,成功しました。


 組み立てて試奏したところ----そのままでもまあ,ウルサイこと言わなければ,じゅうぶんに使えるレベル,とは思ったんですが----チューナーで測ると出るズレが気になり,けっきょく棹上についてたフレットも,一度ぜんぶハガして,フレッティングをし直しました。
 寸法で言うなら,元の位置から1ミリ動いたかどうかという違いなんですが,音の上だと最大で30%くらい差がでちゃってましたからね。

 そんなこんなはあったものの。
 2023年11月16日,なんちゃって唐宋阮咸,
 なんちゃって清楽阮咸に改装完了!

 以前の記事でも書いたように,この楽器のフレット間の音の関係は----

開放10111213
開放2律1律1律1律2律1律1律1律2律2律1律1律1律

----となっており,「1律」を短1度,開放弦を3Cとしたとき,

開放10111213
3C3D3Eb3E3F3G3G#3A3Bb4C4D4Eb4E4F

 となります。これに対して清楽の阮咸(双清)は

開放101112
開放2律2律1律2律2律2律1律2律2律1律2律2律

 上同様,開放=3Cとした場合の音階は----

開放101112
3C3D3E3F3G3A3B4C4D4E4F4G4A

----となります。清楽のほうは基本,月琴と同じく半音のない長音階なわけですね。

 清楽阮咸の調弦は月琴の「ド・ソ」と反対,「ソ・ド」の3G/4Cで音域は2オクターブちょいあるわけですが,今回のように,唐宋阮咸のフレット配置で同じ調弦にすると,最高音は5Fで2オクターブにわずかに届きません。フレットは清楽阮咸のほうが1枚少ないのですが,音域は長2度ほど広い……ふうむ,なるほど。
 今回の楽器のフレット配置で,清楽阮咸のG/C調弦にした場合の全音階はこうなります。

 10111213
開放(3G)3A3Bb3B4C4D4Eb4E4F4G4A4Bb4B5C
開放(4C)4D4Eb4E4F4G4G#4A4Bb5C5D5Eb5E5F

 清楽曲しか弾かないなら,まあこれでも問題はないのですが。色んな音楽に合わせようと思うと,高音弦で2コめの高音の4B(シ)がないのがネックとなります。まあ音自体は,低音弦の12フレットにあるんですが,メロディラインを弾きながら,これを出そうと思うと,棹上の7~8フレットのあたりから,胴上の12フレットまでたびたび指を飛ばさなきゃならないのがかなり不便です。

 そこでまず,2律離れている8・9フレット間に14枚めのフレットを追加----これで高音弦で4Cから5Fまでの長音階が全部出せるようになりました。追加であることが分かるよう,フレットの工作も変えておきましょう。
 さらに低音弦を1度下げ,開放3F/4C(ファ・ド)の調弦として,音域を最低3Fから最高音5Fの2オクターブにします。改造後の全音階は----

 1011121314
開放(3F)3G3G#3A3Bb4C4C#4D4Eb4E4F4G4G#4A4Bb
開放(4C)4D4Eb4E4F4G4G#4A4Bb4B5C5D5Eb5E5F

 赤字のところが追加したフレットの音ですね。
 こんどは低音の「乙(B)」がなくなりましたが,ふだん弾きだとこっちのほうが断然使いやすいし,五音階中心のメジャーな清楽曲ではあまり出てこない音なので,さほど問題ありません。また,そうした曲の伴奏時には調弦をG/Cに戻せばいいだけのこと。
 清楽阮咸は明笛と同じ音階----つまり,中音域の月琴に対して低音パートを担当する楽器とされているのですが,このフレット配置で調弦を3F/4Cとした場合には,低・高弦間の関係が月琴と同じ5度となるので,通常のオクターブユニゾンになるパートだけでなく,月琴の5度下の和音をなぞることの出来る楽器としても使えるようになったわけですね。

 今回はなんちゃって阮咸なんちゃって清楽阮咸に改装し,しかも厳密にはそのどちらでもない楽器にしちゃったわけですが。フレット配置や調弦の差異からは,その二つの「阮咸」が,どういう関係にあり,さらにそれらが短い棹で円胴の「月琴」とどういう関係であるのかが,おぼろげながら見えてきたような気もします。
 こういうきっかけは字面で文字や記号を見比べていてもなかなか得られないものです。こんなふうに,実際に音を出して演奏してみれば,ホントに一瞬でつかめるモノなんですけどね。実験楽器としては,これだけでも十分な成果が出たかなあと思いますよ。

 11月のWSに持って行きますので,実物イジってみたい人はどうぞ~。

(おわり)


名前はまだない(10):RE

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斗酒庵 阮咸を改装す製作 の巻2023.10~ 楽器製作・名前はまだない(10):RE

STEP10 エレキ阮咸>フルアコ阮咸計画(3)

 さて,表板が貼れたので内部構造を仕上げてゆきましょう。

 まずは響き線----もちろん唐宋の「阮咸」には,こンなもん入っちょらんですよ。(w)
 胴体が小さく薄く,材質も針葉樹材で柔らかめ。箱三味線よりもずっと小さいですから,そのままではペコペコした小さな音しか出せません。響き線を入れて,音量の増幅と余韻に効果を与えてもらいます。つまりこの装置の本来の役割は,リゾネーター兼エフェクター(疑似スプリングリバーブ)ということです。

 前回の製作では胴内のスペースの関係から,この渦巻線を採用しました。1コしか入れられませんでしたが,手作業でこれ以上はムリ!ってくらい小さく密に巻いたのでけっこうな効果は得られたものの,この形状の響き線の欠点として,楽器がちょっとでも揺れると盛大にノイズ出しよるんで,演奏姿勢や動作に,けっこうな制限がかかります----つまりは音はイイけど弾きにくい楽器になります。

 今回は回路とかぜんぶとッぱらってしまったので,胴内空間に制限はありませんが,けっきょくウサ琴EXシリーズでおなじみの,Z線を左右に組んだ「天神」型にしました。

 これは国産の清楽月琴の内部構造をヒントに進化させたもので,直線タイプの響き線としては,リゾネーターとしての増幅効果がもっとも高いし,余韻にかかる効果も良い----しかも演奏中のノイズ,胴鳴りがほとんど起きないという優れモノです。
 響き線の調整は,板がついてないとできませんから。こればっかりは表板貼る前に仕込むわけにもいきませんが,明治期の作家さんには,この部品の機能をちゃんと理解してない人が多く,調整もしないで,ただ所定の位置にぶッこんでる場合も多々あって,線はいちおう入ってるのに,ちゃんと機能してない楽器もよく見かけますね~。
 ピアノ線を2本所定の形状に加工して,演奏姿勢で楽器を立てた時,最良の効果が出るようなカタチと取付け角度を探ってゆきます。ちょっとした変更が思わぬところにまで大きな影響を与えてしまう曲線タイプの響き線と違い,これは基本直線なので,調整が比較的ラクなのもうれしいところです。

 カタチが出来たところで線に焼きを入れ,ネックブロックのところの孔に,竹釘とエポキで固定。せっかく調整した位置や角度がズレないよう,エポキが完全に固まるまでは,当て木を噛ませて保定します。

 響き線が固まったところで,後ひと作業。
 エレキ阮咸だった時の名残のジャックの孔も塞いでおきますね。

 端材を刻んでコロコロ……埋め木を作り,とりあえずニカワを塗って孔につっこんでおきましょう。

 あちこち整形,もういちど内がわを精査確認したら,いよいよ裏板を貼りつけ,胴体を箱状にします。
 表裏が平らなら,接着の作業も一度で済むのですが,この楽器はごく浅いとはいえアーチトップ/ラウンドバックになっているので,接着作業は,最初に真ん中部分,それから周縁部,と二度に分けて行います。

 表板だけの状態なら,内がわへのアクセスもカンタンなので,少しばかり浮きやハガレが出来てもどうにでもできますが。裏板の時にはどうにもできませんし,こッちのがわには楽器の背骨,縦方向への支えとして大事な「竜骨」が真ん中に通ってますからね。ちゃんとくっついてくれないと困ります。多少の二度手間,三度手間があっても,後々のことを考えれば善哉善哉。

 表裏板がくっついたところで,胴体まわりに餃子の羽根みたいにハミ出てる余分を切り落し,削り落し,胴側と面一にします。

 さて,これで胴体のメイン部分はあらかた出来上がったわけですが。
 最初のほうでも書いたように,この楽器の胴体はもともと,旧来の量産型ウサ琴のスタイルで作られてました。
 それを今回,進化したウサ琴EXシリーズの基準で作り直してるわけですが。こっちの規格では,表裏の板が従来のシリーズの半分ほどの厚さしかありません。
 なもので,そこに棹を戻すと----

 ----と,いうことになります。あたりまえのことながら,それはもう見事に段差ができまくりですねえ。同様の事態は既成の棹を使った,先のEXシリーズでもありましたので,今回も同じ対処法でいきます。


 足りない分の厚みの板を,さも「補強板」のようなふりをして貼りつけます----いや,事実,ちゃんと補強にもなってるんですけどね。接合部の段差隠しの面のほうが大きいと言いますか。(w)

 同時進行で棹の再フィッティング。
 内桁も取り替えちゃいましたからね。そのあたりの設定はさほどいじってはいませんが,木材なのでどんなに正確に加工しても,前とまったく同じにはなりません。どのみち避けては通れない道ですので,今回もてってえてきにやります。

 古物の月琴で「シロウトさんの作った楽器」「ちゃんとした職人さんの作った楽器」を見分ける場合,けっこうポイントになるのが,この「棹の取付け」です。だいたいのシロウトさんは指板面を胴体面と同一水平面一に……まあカンタンに言うと「棹をまっすぐに」取付けちゃうんですな。しかしながら,三味線でもギターでもバイオリンでも,リュート型の弦楽器の場合,棹はかならず,わずかな角度をつけて取付けられています。
 三味線や三線では,この棹取付けの調整が職人の技量の最も顕著にあらわれるところとされてますし,月琴でも山口(トップナット)のところで3~5ミリ背がわ(裏板がわ)に倒れてるのが「マトモな設定」です。
 さてでは「阮咸」の設定は?----博物館にある楽器の場合,データがありますので各個楽器の数値は分かりますが,唐宋の楽器だとその例が少なすぎて,それが当時の標準であったかどうかは分かりません。まあ,今回の楽器は「なんちゃって阮咸」ですし,材質もサイズも構造も異なるので,とりあえずは近いサイズの三線や三味線のを参考に,試行錯誤してみましょう。

 ついでに,大事な棹基部の,前回の自分の工作の粗かったところもかっちり修整。
 うむ,我がことながら腹が立つ----ちょっと一発蹴り入れてくるわ(w)


(つづく)


名前はまだない(9):RE

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斗酒庵 阮咸を改装す製作 の巻2023.10~ 楽器製作・名前はまだない(9):RE

STEP9 エレキ阮咸>フルアコ阮咸計画(2)

 さて,今回はイチからの製作でなく,いまあるモノの改造がメインなわけですが。もとの楽器が実験・実証のための急造製作だったもので,作者のモチベは高くなく,各所あちこち,工作の粗がかなり目立ちます。
 ----うん,ちょっと4年前の自分,殴ってくるわ。

 棹はほぼそのまま使いますので,作業のほとんどは胴体部分の改修と改造だけですね。

 表裏板をひっぺがした胴体。
 スピーカーや回路を取り付けるための補強材に,内桁も取り払って,ほぼただの輪っかにしちゃいます。
 このまン丸い輪っかは,10年くらい前まで売ってた「エコウッド」という家具材料を加工したもので,材質はギターの表板なんかにも使われてる,スプルースという針葉樹材です。

 通常,月琴の胴体は4塊の木材を組み合わせて作られてますが,これだと合わせ目は1つ----胴箱が多少小さくても,振動の伝わりはこッちのほうが各段にイイわけですな。

 いまは売られてない材料で代替品も見つからないため,ストックから考えても,ウサ琴シリーズは作れてあと4面くらいで打ち止めかな?

 同じような素材があったら,どうか教えてください。

 新しい内桁を作りましょう。
 ウサ琴よりも長モノなため,弦圧は月琴やウサ琴よりも大きくなります。
 月琴はそういう縦方向への力を,胴体側部の板厚と表裏板の剛性によって支えてるわけですが,ウサ琴EX準拠だと,その表裏の板がふつうの月琴の半分くらいの厚みとなりますので,内部構造を少し頑丈にしておく必要があります。
 とりあえずは,棹茎を支える桁を少し厚めにするのと,もう一枚桁を足して,上下の2枚桁にしようと思います。

 内桁は真四角ではなく,真ん中が少し膨らんでるかたちにしてあります。
 大陸の天華斎の楽器なんかが同じようにしてますね。出来上がると表裏がごく浅いアーチトップ/ラウンドバックになります。この構造にはメリットもデメリットもありますが。難しいことをヌキに言うなら,このほうが音が良くなるし,見栄えも良い。
 ……工作がちょっとタイヘンになりますけど。

 強度の保つギリギリまで削り込みました。ほんとギリギリなんで,後で音孔の内壁を,樹脂で補強しましたね。工作時のアラやチップした箇所も埋め込んでおきましょう。
 取付けも,4年前は桁の左右端を削って,胴内壁にただ貼りつけただけでしたが,今回は胴のほうにわずかな溝を切って,そこにガッチリはめこむ方式にします。

 次はEXシリーズでもやった,胴構造縦方向への補強。
 裏板がわに「竜骨」となる薄い細板を通します。

 この板は上下のブロックと内桁に彫りこんだ凹にはめるわけですが,裏板にもしっかり貼りついていてくれないと意味がないので,まずは胴体のほうにガッチリはまりこむよう取付け凹を刻んで調整してから,あとで裏板の中心に貼りつけ,裏板といっしょに胴に組みこみます。

 板を作りましょう。
 平面的なサイズとしては,そのままで貼れるような大きな板もあるのですが,板を通常の半分ほどの厚みに加工する関係で,以前に買った古い桐箱をバラしたものを使います。

 いやね,板の幅があるとうちの手工具じゃ挽き割れないんで----これだと掛け軸の桐箱くらいの大きさの板が限界ですねえ。

 実際にやってみれば,どんなヒトでも数秒で思い知るでしょうが(w)。手ノコで,一枚の木の板を厚さ半分に挽き割る,という作業は,材質の硬軟を問わず非常にタイヘンなもんです。桐板ってのは木材の中でももっとも軟らかく,切りやすいものではありますが,5センチ程度の幅の板を2枚にするのに,2時間くらいはかかっちゃってます。

 ほいで,この出来た小板を横に接(は)いで,一枚の板に仕立てます。
 これも厚みが半分…てことはのりしろも半分しかないのでけっこうタイヘン。
 板同士の擦り合わせを相当繊細にやっとかないと,すぐにパリンですからねえ。

 手工具で挽き割ったものなので,さすがにけっこうアラがあります。
 凸を均したり凹を埋めたりして,全体なるべく均一になるように整形して使うんですが,特に裏板は音の反射のため表板より若干硬め(桐板としては)の材料を使ったせいで,かなりギリギリな状態----パテ埋め痕がイタイタしいですねえ。

 補強のため薄くて丈夫な和紙を,表裏板の板ウラの各小板接ぎ目と,横方向に2箇所通して貼りつけます。古書の補修なんかにも使ってるやつなんで,すごく薄いものですが,けっこう強いですよ。

 なんとか仕上がった表板を貼ります。

 分かります?----真ん中がわずかにふっくら,ちゃんとアーチトップになってますね。

(つづく)


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